元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
2007年9月に読んだ本
2007-09-30 Sun 23:55
『バッテリー 2』  あさの あつこ (9/27)
『ララピポ』  奥野 英朗 (9/24)
『獣の奏者Ⅱ 王獣編』  上橋 菜穂子 (9/22)
『トワイライト』  重松 清 (9/21)
『十四番目の月』  海月 ルイ (9/19)
『明日の記憶』  荻原 浩 (9/18)
『配達あかずきん』  大崎 梢 (9/17)
『図書館危機』  有川 浩 (9/15)
『あかね空』  山本 一力 (9/13)
『QED 龍馬暗殺』  高田 崇史 (9/10)
『ナイフ』  重松 清 (9/9)

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『バッテリー 2』  あさの あつこ
2007-09-27 Thu 21:45
バッテリー〈2〉 (教育画劇の創作文学)バッテリー〈2〉 (教育画劇の創作文学)
あさの あつこ

教育画劇 1998-04
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 中学生になる直前の春休みに出会い、お互いの才能を認め合ってバッテリーを組むことにした巧と豪。2巻では中学生になっていた。全てにおいて野球を優先させる巧は、入学早々教師から反感を買う。また、彼の才能は先輩に嫉妬心を抱かせた。
 巧は本当に性格が悪い。強すぎる自我を持ち、それを絶対に曲げない上に、自分がされて嫌なことを平気で他人にする。ただそれは生来の性格じゃなくて、母親が病弱すぎる弟の青波しか見れなかったために自己防衛で作ってしまった性格なのかな。そう思わせるような書かれ方してる。巧は、青波が病弱じゃなかったら、もっと違う人間になってたかもしれない。
 今のところピッチャーとキャッチャーのことしか書いてない。次の巻辺りで「野球」をしてくれると思う。楽しみだ。
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『ララピポ』  奥野 英朗
2007-09-24 Mon 20:30
ララピポララピポ
奥田 英朗

幻冬舎 2005-09
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 世の中のいわゆる底辺層の人達の生活と性を描いた短編集。それぞれの話が少しずつ繋がっているという手法を取っている。帯には「いや~ん、お下劣」の文字があるけど、そういう軽妙な言葉で括れるような話じゃなかった。この底辺っぷりっていうか、底辺根性はすごい。ていうか、すごくグロい。
 
 1話目「WHAT A FOOL BELIEVES」:フリーライターの博は資料の要約をするだけの仕事で細々と暮らしていた。ある日アパートの上の階に住むホスト風の栗野という男が女を連れ込んでる事を知り、盗み聞きを繰り返す。
 博自身は、図書館で知り合った小百合という太った女と肉体関係を持つことで性欲を満していた。

 2話目「GET UP,STAND UP」:1話目で博の上階に住んでいた栗田健治が主人公。彼はキャバクラのスカウトマンで、スカウトした女性達の売り上げから給料を得て生活をしている。
 清楚な女性トモコのスカウトに成功した健治は、彼女に少しずつ上のランクの店を勧める。同じ時期に、先輩がスカウトした中年AV女優のマネージャーも押し付けられる。「親子丼」AV企画の女優に2人を選んだ健治は、直前に2人が親子だと気付いた。

 3話目「LIGHT MY FIRE」:2話目で健治がマネージャーを勤めた中年AV女優の良枝は妻としても母としても女性としても最低な人間になっている。向かいの家の郵便物を盗み見るという日課で、迷惑状が届いたことを発見した。犬の吠え声がうるさいと書かれた迷惑状は次第にエスカレートしていき、最終的には家に火を点けると書いてある。
 そんな折、近隣からゴミと悪臭に対する苦情が来ていると市役所の人間が来る。良枝の家の2階には、彼女が介護を放棄した義母の死体があった。そこで、迷惑状通り火を点けに来た若者を捕まえて自分の家に火を点けるように言う。

 4話目「GIMMIE SHELTER」:ノーと言えないカラオケ店アルバイト店員の光一は、バイト先で女子高生のウリを黙認することを要求される。斡旋者の脅しにどんどん屈し、カラオケ店は援助交際の場になっていった。
 アパートでも隣室のテレビの音や断れない押し売りなどで気が休まらない光一は、近所の家に犬がうるさいと訴える迷惑状を書いて投函する。

 5話目「I SHALL BE RELEASED」:官能小説家の敬次郎は、官能小説の位置付けの低さに嫌気が差していた。昔のように純文学畑に戻りたいと思いつつ、官能小説の幅を広げるという理由を付けながらカラオケ店で女子高生との援助交際を楽しむようになる。

 6話目「GOOD VIBRATIONS」:1話目で登場した小百合が主人公。小百合は男を家に連れ込んで体の関係を持ち、それを盗撮したDVDを売って結構稼いでいる。小百合の外見のためか罵られる関係が多いが、マニアにとても受けがいいそうだ。
 定期的に会っていた博の次に連れ込んでいた郵便配達員は、2回目以降素朴な印象が一変。部下も連れてきて交代で小百合をなぶる。

 こんな感じの、同じ場所・時間軸にいる6人の不気味なアンソロジー。すごいとは思ったけど、私はこれを楽しむのは無理。本当、完成度の高い短編集だと思うんだけどね。好みの問題で、やっぱ女には生理的に厳しい話だと思う。
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『獣の奏者Ⅱ 王獣編』  上橋 菜穂子
2007-09-22 Sat 21:32
獣の奏者 II 王獣編獣の奏者 II 王獣編
上橋 菜穂子

講談社 2006-11-21
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 闘蛇編の続編。野生の王獣を見たことがある数少ない人間のエリンは、傷を負った王獣の子供リランの世話を任された。餌を食べない日が続いたリランだったけど、エリンの記憶と工夫で餌を食べ、傷の手当を受け、やがてエリンとリランは心を通わせることができるようになった。
 この世界では闘蛇という戦闘用大型獣がいる。王獣は闘蛇を超える存在として、王都だけで飼われていた。その王獣を手懐けてしまったことで、エリンの運命はどんどん望まない道へと向かう。
 いやー、面白かった。魔法とかは一切なく、ただ変わった動物と変な法律の国が出てくるだけ。主人公は生い立ちは不幸ながら、コツコツと知識を重ね、考え続けることを怠らずに、まだ誰も成し得なかったことをやり遂げる。それだけに、エリンの努力を応援してしまい、苦悩にハラハラしてしまう。強力な武器をどんどん開発しようとするこの世界に通じるものがあり、とても面白かった。
 欲を言えば、政治が絡むとちょっと面白味に欠けるというか、書き足りてない気がする。でも児童書だと思うと、対象年齢的にもこれくらいが上限っぽいな。児童書ってこと忘れるくらい面白かったから、ついそう思ってしまったのかもしれない。
 この本は、「人間と獣の超えられない壁」があると言う。そんなもんがあるとしたら、現実には人間はとっくにそこ超えてると思う。
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『トワイライト』  重松 清
2007-09-21 Fri 18:26
トワイライトトワイライト
重松 清

文藝春秋 2002-12
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 小学6年生の時に埋めたタイムカプセルを開くために集まった39歳の元同級生達。集まったのは半数ほどだけど、その中に今の厳しい現実と向かい合いかねている4人がいた。それぞれの目の前にある問題をどう乗り越えればいいか、戸惑って前に進めないでいる。
 彼らの子供の頃の人柄を「ドラえもん」の登場人物に例えながら現実と比較しているのが見事に嵌ってて、相対する現在の彼らの姿が妙に重苦しく感じられる。
 メガネをかけていたために「のび太」と呼ばれていた克也はリストラ寸前、当時体が大きくて乱暴だった「ジャイアン」の徹夫は家庭崩壊。そのジャイアンと結婚した皆のマドンナ「しずかちゃん」である真理子は、徹夫からの暴力に苦しんでいる。一人だけ輪から外れている淳子には「ドラえもん」のキャラ役柄はないけど、予備校講師としての地位がどんどん低迷している最中だ。
 当時の未来の象徴だった大阪万博も絡め、徹夫と真理子の2人の娘も巻き込まれながら、現実はますます歪になっていく。
 重いけど読まされる。どうなるのかと読み進めたけど、何とかなりそうな、ならなさそうな、でもわりとほのぼのする終わり方で良かった。徹夫・真理子夫婦は本当に、どうなるんだろうなぁ。結構末期っぽかったけど、再スタートできるんだろうか。読み終えてからそんなこと考えてしまうくらいリアルな現実を、読み手にも突きつける本だと思う。
 「トワイライト」は「黄昏」という意味。最後のシーンと、人生における39歳という地点を掛けてるんだろうか。上手いよなぁ、清。
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『十四番目の月』  海月 ルイ
2007-09-19 Wed 23:24
十四番目の月十四番目の月
海月 ルイ

文藝春秋 2005-03
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 2歳の娘が誘拐され、身代金の受け渡しは母親の樹奈が指名された。警察の監視が付く中、犯人の策略によって身代金の受け渡しは成功してしまう。
 身代金の持ち運び方も動機も不明のまま、語りは身代金受け渡しが行われたホテルでたまたまピアニストをしていた奈津子になる。母子家庭の奈津子はある女性タクシードライバーと知り合いになり、息子のことでお世話になるようになった。
 時折樹奈の話に戻るが、樹奈は生来の忘れっぽさや場の読めなさでどんどん周囲から疎まれるようになっていた。誘拐事件で同情されてしかるべき立場なのに、ずれた行動や愚かな言動が目立つ。自分が間違えていることにすら気付かずいつも迷惑を掛けるものの、人が迷惑している事すら気付かないという最悪なタイプだった。
 部分では面白いんだけど、読み終わってから思い返すとご都合主義が多かった気がするなぁ。各家庭の事情みたいな、誘拐事件操作とは違う方向でどんどん進むんだけど終盤で突然犯人が判明する。誘拐がテーマで始まったくせに現場に偶然居合わせただけの奈津子の視線で話が進む時点で、作者の意図丸わかり・・・。やっぱ偶然は1~2回程度にしとかないと不自然だと思う。でも、各章ではちゃんと面白かった。
 好きでも嫌いでもないけど、どっちでもないと言うほど薄い印象でもない。とりあえず著者名と本のタイトルから、きれいな話だと思って読んだら裏切られた。
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『明日の記憶』  萩原 浩
2007-09-18 Tue 12:38
明日の記憶明日の記憶
荻原 浩

光文社 2004-10-20
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 映画化された時にちょっと気になって読んだ本。随分前だけど。
 主人公の雅行は広告代理店に勤める50代の男性。最近物忘れががひどくなってきたのは年齢のせいだと思っていた。しかし彼は病院で、若年性アルツハイマーだと診断される。
 日記をつけ、ポケットにメモをたくさん入れ、アルコールを断ち、食生活に気をつけても症状はどんどん進行していく。中には雅行の病気に付け入る人も出てきて、悲劇に拍車が掛かる。必死で支える妻の枝美子も追い詰められていき、どんどん暗く重い物語になっていった。唯一、娘の結婚式の様子だけが和む。
 著者の筆力にぐいぐい引っ張っていかれたけど、扱うテーマがこれだからハッピーエンドになるはずがない。若い頃だけを鮮明に思い出して行動し、最後はきれいにまとめてあってもやっぱり悲劇だった。
 アルツハイマー症の研究はどんどん少しずつ進んでいるようだけど、まだまだ明確な治療法はない。しかも誰にでも起こりうる。私もなるかもとか、配偶者がなったら、とか考えずにはいられない本だと思う。
 ただ、日記の様子は『アルジャーノンに花束を』、身の回りがメモだらけになっていく様子は『博士の愛した数式』と丸かぶりなのが残念だった。
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『配達あかずきん』  大崎 梢
2007-09-17 Mon 22:57
配達あかずきん (ミステリ・フロンティア)配達あかずきん (ミステリ・フロンティア)
大崎 梢

東京創元社 2006-05-20
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 書店で起こるちょっとした事件を、しっかり者の店員杏子と勘のいいアルバイト店員多絵のコンビが解いていく短編集。古書店程度が出てくるのは読んだことあるけど、こういう明るいイメージの書店を舞台にした本って私は初めて読んだ。書店の日常やお客さんとのやり取りがふんだんに盛り込まれてつつ、ストーリーが軽快に進んでいくのが楽しい。

1話目:「パンダは囁く」
 寝たきりになった老人が友人を介して本を注文してきた。しかし彼はタイトルとも著者名ともつかない意味不明な言葉しか言うだけ。その友人は主人公の杏子が働く「成風堂」に相談するが、謎は解けないまま。しかし後日また、老人は本を注文したがる。
 いくつかのレビュー読んだけど、予想外だったって思った人多かった。私はわかったよ(自慢)。司書はあまり重視してない部分だけど、「あのじゅうさにーち いいよんさんわん ・・・」で、これって文庫のアレじゃね?って思ってたら次のキーワードは「パンダ」。間違いないと思って読み進めたらビンゴ。
 基本的にミステリーの暗号とか最後まで解けない私としては、何だか嬉しかった。だから何だと言われればそれまでだけど。

2話目:「標野にて 君が袖振る」
 「成風堂」の常連の女性が、『あさきゆめみし』を手にした途端に失踪したらしい。何か手がかりはないかと、娘さんが「成風堂」にやってくる。
 この事件は、ちと強引な展開とか真相がメロドラマっぽいなぁ。でも『あさきゆめみし』が出てくる意外さが面白かった。

3話目:「配達あかずきん」
 美容院に届けられた雑誌に盗撮写真が挟まっていた。写されていたのは、その美容院で威張り散らす中年女性の客。その雑誌を配達したのは、「成風堂」の天然キャラ、ヒロちゃんだった。事件に巻き込まれていることに気づいてないヒロちゃんのため、杏子達が真相を探る。
 中年女性客がなかなか本気でむかついた。多分リアルでモデルがいるんだろうなぁ。著者は書店で働いてたことがあったらしいし。

4話目:「六冊目のメッセージ」
 入院中に母親が差し入れで持ってきた本がとても気に入り、選んでくれた店員さんを探しに「成風堂」来た女性。しかし選んだ店員がわからない。選書の傾向はどの店員にも当てはまらなかった。
 本が繋ぐ出会いって何かいいね。本に携わる仕事をする者として、自分が選んだ本がそこまで喜んでもらえるなんて憧れるわ~。私が選書傾向を褒められて気に入ってくれた常連利用者は、92歳のおじいさんだったなぁ・・・。

5話目:「ディスプレイ・リプレイ」
 ある人気漫画のディスプレイ・コンテストに参加することになった「成風堂」。お客さんにも好評だったけど、ある日そのディスプレイがぐちゃぐちゃに荒らされていた。
 これの真相は、私的にはなかなか好きだったな。勝手ながら、その人気漫画が私の中で『ワンピース」に置き換わってた。なので最後に登場したのは尾田栄一郎だった。

 かなり個人的な感想になったけど、こんな感じで楽しんで読めた。まあ実際には書店の仕事ってこんなもんじゃなくて、もっともっと大変なんだろうけど。
 知らないうちにシリーズとしてもう2冊出てることに驚き。今度読もう。いつかわかんないけど。
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『図書館危機』  有川 浩
2007-09-15 Sat 22:44
図書館危機図書館危機
有川 浩

メディアワークス 2007-02
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 メディア良化委員が設立されたという設定。不適切な表現が見られるメディアを摘発する委員会と、

一、図書館は資料収集の自由を有する。
二、図書館は資料提供の自由を有する。
三、図書館は利用者の秘密を守る。
四、図書館はすべての不当な検閲に反対する。
図書館の自由が侵される時、我々は団結して、あくまで自由を守る。

の理念の下に戦う図書館を描くシリーズ第3巻。
 女性戦闘要員司書の郁の周囲で様々なトラブルも起こりつつ、メディア良化の問題も少しずつ深刻化していく。
 いいテンポで話が進み、持ち上がった問題に体当たりでぶつかる主人公。それを支えたり引っ張ったりする周囲の人々ともますます結束が固まりつつ、ラブい話があちこちで持ち上がっている。郁が少しずつ成長しているのもいい。読むだけならとても面白い。
 でも単行本で出すならもうちょっと掘り下げて欲しいと思う。メディア良化委員会ばかりが悪者になってるけど、この法律自体の葛藤とかもっと書いてほしいなぁ。図書館=善、メディア良化=悪という単純構成が一元的すぎじゃないか。
 「床屋」や「魚屋」は不適切表だから使えないというのは実際にある規定だ。それに対して「誰が決めたんだ。おかしいじゃないか」というのは浅はかだ。決めたのはどっかの偉い人だろうけど、この言葉を公然と使うことで「傷付いた!賠償金払え!」と言う奴がいるのが現実なんだよね。そこまで書き込んで欲しいと思うのは贅沢ですか?
 あと、戦争放棄している日本なのに図書館VS.メディア良化委員会の抗争が内紛レベルにまで大きくなっており、それでも右翼が何も言わないのは不思議だとか言っちゃいけないんだろうか。どっちも税金で運営されてる機関なのに、「一般人は興味がない」とかあり得ん。法案が持ち上がった時点であちこちの政治討論番組でギャンギャン言われるはず。

 ここからは感想ではなくて司書としてツッコミ入れておきたいこと。大規模図書館なのに司書が暇すぎるとかはまあいい。作者は司書じゃないんだから。
 でも、これだけは言いたい。あの「読み聞かせ」がテーマになった話は結構頭にきた。図書館での読み聞かせは幼稚園や学校の先生、または教育テレビで俳優がやるような読み聞かせとは異なる。優秀司書という設定のはずの柴崎さんの読み聞かせは、児童担当司書の中じゃ「勉強不足なのに目立ちたがるボランティアレベル」だ。キャラによって声色変えるとか、失笑されるっつーの。
 あと、イソップの「すっぱいぶどう」を読んだ手塚の最後のトーク。あれもNGだ。内容を踏まえて人生訓につなげるなんて、司書はしてはいけない。司書がやるのはあくまで本との架け橋まで。主観を入れちゃいけない。本書の内容のように子供の方から問いかけてくることもあるけど、そこは“答えらしきもの”は言わないでちょっと考えさせる手助けをする程度に留めるのが仕事。
 どっちも入門書に書いてあること。入門書の入門書ってくらいのやつにも書いてあった。優秀司書というキャラ設定のこの2人が読んでないという方が不自然。
 この著者は図書館が抱える問題とか、日常でよく起こるトラブルなんかをそれなりに勉強して書いているとは思う。読み聞かせもどっかの図書館に見学とか行ってそうだけど、どうも客寄せのために本来成すべき形とは違った方向に行った図書館にでも行ったんじゃないか。
 それから、図書館を託児所代わりにして子供を置いてどっかに出かける親と、教育がなってなくて騒いだり喧嘩してる子供達にお仕置きする柴崎さん。そういう子達を上手に手懐けて、図書館大好きっ子にできるようなお母さんタイプのベテラン司書はこの図書館にはいないんだろうか。かわいそうな図書館だし、かわいそうな子供達だ。
 この章は全体的にひどい内容だった。私が司書じゃなかったら楽しめたのかな。
 この本を読んだ図書館司書がどう感じたのか聞いてみたい。前の職場を辞める直前に職員さんの中でも責任者的立場にいた人に勧めてみたけど、読んでくれたかな?そうたくさん本を読めないくらい忙しい人だったから、どうだろうか。
 ストーリー展開は面白かったから、多分全く知らない職業について書いてあったら騙されて面白がってたと思う。自分がたった6年司書やったせいで、素直に楽しめないのはある意味残念。
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『あかね空』  山本 一力
2007-09-13 Thu 22:39
あかね空あかね空
山本 一力

文藝春秋 2001-10
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 2002年の直木賞受賞作。それまで無名だったけどこの受賞であっという間に人気になった作家だ。
 京で豆腐作りを修行し、独立のために江戸に来た永吉。そこで同じ長屋に住む桶屋の娘おふみに助けられながら開業するが、当時の江戸庶民の豆腐は固い物が主流。永吉の作る柔らかい豆腐はなかなか受け入れられなかった。それでも信念を貫き通した永吉の豆腐は、周囲の力添えで次第に有名になっていく。
 やがて結婚して3人の子供に恵まれた永吉とおふみだけど、少しずつ「家族」というものが狂いだす。長男の栄太郎ばかりに執着して猫っかいわいがりするおふねに、苦い顔をする永吉。豆腐屋は繁盛しても、幸せには見えない一家になってしまっていた。
 兄妹3人が互いに腹に抱えていた物を吐露できたのは、永吉もおふみも死んでからだった。これからは少しずつわだかまりを忘れていけるんだろうなって感じで終わる。
 読み終わってからしばらく考えてみたけど、取り立てて面白いとは思わなかった。序盤からあったご都合主義がずっと続くし、掘りも浅い。書き込めてない部分があるのがとても残念だ。在家には結局何もしなかったのか、序盤に名前だけ出てきた傳蔵を最後にいぶし銀な親分役で出す必要はあったのか、栄太郎の嫁とは?とか、書くだけ書いてそれだけって事柄が多いのが気になる。
 それなのに、がつがつ読んだ。引っ張られるように読まされたこの感じは嫌いじゃない。おいしそうな豆腐の様子とか、ちゃきちゃきした江戸町人の人情とか、その辺がとても魅力的で引き込まれた。
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『QED 龍馬暗殺』  高田 崇史
2007-09-10 Mon 13:14
QED 龍馬暗殺 (講談社ノベルス)QED 龍馬暗殺 (講談社ノベルス)
高田 崇史

講談社 2004-01
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 シリーズ7作目。研修で高知に行く奈々と、それにくっついて行く龍馬オタクの妹、沙織。高知の辺鄙な村に住む友人の家に招待された2人だけど、なぜかその家にはタタルも来ていた。
 そんな折、嵐のせいで起こった土砂崩れで村が孤立してしまう。3人で酒を飲みながら坂本龍馬の話をしていると、次々に殺人事件が起こっていった。
 タタルって幕末にも詳しいんだね。それはもう、ウザいほどに。龍馬が暗殺された時の状況を検証し、最終的には黒幕を推察する。最後にはあまり関わろうとしなかった殺人事件も解決させる。
 しかし今回の殺人事件ってこれまたあっさりしてるなぁ。身近で起こってる殺人事件より、100年前の暗殺事件の方に色濃くスポットが当たってるのも相変わらずだ。
 私がもう少し幕末に詳しかったらもっと楽しめたと思う。
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『ナイフ』  重松 清
2007-09-09 Sun 23:26
ナイフナイフ
重松 清

新潮社 1997-11
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 『その日の前に』を読んで、他の著作物も読んでみたくなった作家さん。適当に借りたけど、ダークな話だった。「いじめ」と「家族」をテーマに描いた5編の短編集で、リアルだけど何か冷静で、やっぱすごい作家さんなんだなぁと改めて思った。

「ワニとハブとひょうたん池で」
 ある日突然、つまらない理由でハブられることになった女子中学生ミキが主人公。平坦な日常にゲーム感覚で「ハブられ」てると理解したミキは、ゲームに負けないように耐え続けた。時々、ワニが住み着いたという噂の近所の池に行って、ちょっと心を病んでるっぽいおばさんと話す。多分それが息抜きみたいになってたんだろう。あとは極力平静を装ってる。
 彼女が両親にだけは知られないようにと願う心理描写が見事だった。心配をかけたくないからじゃなくて、意地というかプライドというか、そんな感じ。
 男子は「弱い者いじめ」がエスカレートしていくイメージだけど、女子って変哲ない所から集団無視が始まる気がする。何でなんだろうね。
 
「ナイフ」
 体が小さいことで悩んだ少年期を過ごした父親が、同様に体が小さいためにいじめを受けている息子に向ける眼差しの変化を描いたもの。心配する母親に、大丈夫と言いつつ息子と向かい合うことを避けているように見えた。当然息子も、いじめられていることは隠している。
 ある日父親はナイフを買ってポケットに忍ばせ、何かある度に「けれど私はナイフを持っている」と思うことで自分を強く保とうとする。
 我が子がいじめを受けた時の親の無力さってこんなんだろうか。最終的にはいじめられている息子と向かい合うんだけど、何も解決してないと思うんだけどなぁ。内容的には釈然としないけど、親が関わっても解決しないのが「いじめ」なんだろう。

「キャッチボール日和」
 ひどいいじめを受けている大ちゃんの幼馴染み、好美の目線。
 高校球児だった大ちゃんの父親は、息子に大好きな野球選手の名前を付けた。しかし息子はひ弱で、陰湿ないじめの対象になっている。父親はそれを認めることができないで「逃げるのは負けだ」と転校も許さない。
 好美はいじめにも大ちゃんの親子関係にも口を挟むことなく、明るくて無難で冷静な少女として存在している。傍観者って一番ありがちで、一番賢い手段だと思う。でも最終的には相容れない親子の架け橋となって、少しだけ2人が歩み寄る手助けをしてくれて、良かった。
 これはいじめのシーンが一番悲惨だった。よく自殺しないで耐えたなと思うけど、多分こういう子は自殺する勇気もないんだろうな。いじめる側を認める言葉になるけど、「いじめられる方も悪い」タイプだと思う。

「エビスくん」
 ひろしは重病を抱えて入院している妹に、学校で起こったことを何でも話す。クラスに転校してきた戎(えびす)という苗字の少年のことを「きっと神様の子孫だ」と話すと、妹は願い事を叶えてもらうためにエビスくんに会いたがるようになった。
 ところがエビスくんは暴力的な少年で、ひろしは彼からいじめられるようになる。妹の頼みのために耐えるが、クラスメイトはそれを知らず無抵抗なひろしを蔑む。小学生の話だけどそれぞれ譲れない思惑があって、そこが妙に大人びていた。ひろしは本当に強い子だと思う。

「ビタースィート・ホーム」
 この話は5話中唯一、いじめとは少し違う。主人公は小学生の娘を持つ父親。小4の娘の日記をけなすだけで理解しようとしない担任に苛立つ元教師の妻を、主人公は持て余しつつも黙って話を聞く。事態はどんどん悪い方向に行き、保護者対担任の直接対決にまで持ち込まれる話。
 娘の日記は出来事を淡々と書いているだけのもので、担任は「それについてどう思ったかを書け」としつこい。娘は頑として書かないが、最後にその理由が明らかになる。あまりにもしょうもないんだけど、確かに小学生の女の子ってしょうもない事を実行しちゃうんだよね。
 最後には幸せそうな一家になってて、後味悪い話を4話読ませられた後だったからやっと人心地つけた気がした。

 評価が高い理由がよくわかる内容とリアルさの本だったけど、2度読みはしたくないな。1度でおなかいっぱい。
別窓 | [さ行の作家]重松 清 | コメント:0 | トラックバック:0 |
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