元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
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『博士の愛した数式』  小川 洋子
2005-07-16 Sat 18:55
博士の愛した数式博士の愛した数式
小川 洋子

新潮社 2003-08-28
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 家政婦協会から「私」が派遣された先は、元数学者の男性の家。彼はかつて事故にあい、それ以降の記憶が80分しか続かなかった。浮世離れした彼への家政婦業は困難を極めたが、私の息子と会ってからは一変した。彼は息子に「ルート」というあだ名を付け、大きな愛情を注いでくれた。私とルートもまた、彼のことを「博士」と呼ぶようになる。そんな彼らの日常を描いた物語。
 なんて美しい話なんだろうと思った。「美しい」とかいう表現は苦手なんだけど、この本はそうとしか言い表せない。殺人もなく恋愛もなく騙し合いもなく、物静かな幸福感が漂ってる。母子家庭に生まれ、自分も女手ひとつで子供を育てる家政婦。記憶障害を持つ博士。それだけだと悲しい設定だけど、数々の3人でのエピソードは暖かくて楽しそうで幸せそうだ。
 数学の美しさを私とルートに語る博士、かつての阪神のエース・江夏豊の話、博士とルートの留守番の話、3人で甲子園球場に行った話、江夏の野球カードを探す話、パーティの話・・・ひとつひとつが小さな幸福を感じさせる。でも博士の記憶は80分間しか続かないため、何とも儚い幸福だ。読み終わって全体を思い起こすと本当に美しいと思うのは、その儚さなのかもしれない。
 江夏のカードを探す話って、何であんなに感動してしまうんだろう。私はあんまりいい読者じゃないから物語に身を委ねずに「どうせ見つかるんだろう、物語的に」と思って読んだ。でも実際見付かった時、その喜びの表現が控えめすぎてかえってすんなり私の中に入って来た。で、何か一緒になって喜んでしまったんだよねぇ。
 こんな日常の羅列でどう収拾つけるんだろうかと思ったら、終わり方もきれいだった。
 本屋大賞というやつを受賞して、ちょっと話題っぽいからってだけで読んだ本。本屋大賞なんて聞いたことないし、大したことないと思って読んだ。すいません、完敗です。ものすごく良かった。儚い幸福なのに、私まで幸せな気分になれた。
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