元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
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『死にぞこないの青』  乙一
2004-12-08 Wed 21:10
死にぞこないの青 (幻冬舎文庫)死にぞこないの青 (幻冬舎文庫)
乙一

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 飼育委員になりたいために些細な嘘をついたマサオは、担任の羽田先生からいじめの標的にされてしまう。良いことをしても悪いことをしても馬鹿にされ、誰かが宿題を忘れてもクラスが騒がしくても全部マサオのせいにされ、精神的ないじめが執拗に繰り返される。
 次第にクラスメイトからもいじめられていくマサオの精神が壊れそうになった時、「アオ」が見えるようになった。ペンキで塗ったような青い肌、縫われた口、片耳はなく、片目は接着剤でつぶされて、拘束服を着せられている「アオ」。マサオが虐げられていると「アオ」は現れ、その場に現れる恐ろしい姿でマサオをじっと見つめている。
 エスカレートするいじめに限界まで追いつめられたマサオは、先生を殺そうと決意した。

 最近ハマッててすんごい好きな乙一だけど、初めてハズレを引いた。といっても駄作ではない。作品自体は素晴らしいんだけど、これまで私が好きだった乙一とはちょっと違う感じの話だった。
 江戸時代に「部落」が作られたように、クラスをまとめやすくするために羽田先生はマサオをいじめる。子供達は影響を受けて同調し、クラスという狭い社会で追い詰められたマサオは幻覚が見え始める。これはもう、現実としてありそうな話じゃないか。担任教師にいじめられた人って結構いると思うし、こういうふうに標的にされる人もいそうだ。
 いじめそのものもだけど、精神的に追い詰められていくマサオの精神が妙にリアルで苦しい。胸クソ悪いストーリーだけど乙一は文章が上手いから、読んでてこっちまで精神的に追い詰められていくようだった。小学生の目線で書いてるのに妙に大人びた思考してて、それが不快じゃない気味悪さも相変わらず乙一だ。
 これまで私が読んだ乙一作品は、他の人には見えないけど確かにそこに存在する「なにか」があった。例えば「はじめ」も空想だけには収まらなかったし、「しあわせは子猫のかたち」も子猫の飼い主は共存してたし、『暗黒童話』も主人公が見る幻ってだけでは片付けられない不思議な現象が書かれてる。でも「アオ」は、マサオの精神が生み出した幻覚という枠にしか収まらない。ここの所にちょっと物足りなさを感じた。
 違う人が書いた作品だったら、いじめ文学として普通に評価できたと思う。でも乙一の奇想天外な発想が好きだったから、このラストにはちょっと拍子抜け。教師による精神的いじめを鬱々とした気分で読みつつ、乙一だからきっと最後には鬱気分を吹っ飛ばすようなことになると思ってたのに。でも、普通に爽やかに終了。あれ?終わり?いや、面白いんだけど、でももうちょっとさー。って感じ。
 ただ、こんな作品まで書けるんだという驚きはあった。あとがきでマサオの外見は自分がモデルって書いてあったけど、まさかいじめも体験談だったりとかしないよね?乙一をそんな目に合わせた教師とか、万死に値するよ。

 余談だけど、『暗いところで待ち合わせ』での“追われてる主人公が盲人の家に忍び込んで隠れる”というシチュエイションは元々この『死にぞこないの青』で使おうと思ってたネタらしい。でも結果的に切り離して、『暗いところで~』が完成したとか。切り離してくれてありがとう、乙一。私、あの話大好き。
 余談ついでに。私は最近、乙一のタイトルのセンスにも惚れつつある。
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