元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『図書館の神様』  瀬尾 まいこ
2003-02-04 Tue 00:53
図書館の神様図書館の神様
瀬尾 まいこ

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 清く正しく生きることをモットーとし、バレーボールに夢中だった清(きよ)。高校3年生の時に練習試合でミスを重ねた同級生を詰ったところ、その同級生は翌日自殺した。それから彼女はバレーボールも、清く正しく生きることも止めてしまう。目指していた体育大学ではなく地方の小さな私大に進み、妻帯者と恋愛をし、いい加減な理由で教師になり、文学に興味がないのに部員が1人しかいない文芸部の顧問になってしまった。

 「図書館」と付くと何となく読みたくなってしまうのは、図書館司書の性だろうなぁ。何かの雑誌で見かけた作家だし、悪くはないだろうと思って読んでみた。・・・悪くはなかった。でも、好みじゃなかった。読み終わってまず思ったのは、「で?」。
 まず、どこを切っても長所を見出せない清が苦手だ。清く正しく生きた結果同級生の自殺に直面し、それで弱ることもない。先生になった理由は、何となく再びバレーに関わりたくなったけど直接プレイするのが怖いから先生になってバレー部の顧問になるため。しかしバレーのコーチにはなれずに文芸部の顧問になってしまい不平タラタラでやる気ゼロ。
 さらに、清の男のチョイスも微妙。騙されてるし大切にされてないとしか思えない。浅見さんは清と出会う前から婚約者がいる。けど清とも付き合っている。同時に2人の女性を愛せるって、こういう人なんだろうか。それにしても、明らかに清の方が分が悪いし、都合のいい女にされてる。
浅見さんは自分にも他人にも厳しい人で、経営するお菓子教室の生徒がどんどん辞めていく。でも彼は理由が理解できなくて、勝手に悩んでる。清は理由を理解してるけど敢えて教えないで、根拠のない励ましだけを与える。恋愛のスタイルは人それぞれなんだろうけど、それにしてもなぁ。ロールキャベツをパスタで縛るのがいい女なんじゃない。ベーコンやかんぴょうで巻いたり爪楊枝で留めたりしないでも崩れないように巻けるのがいい女だと思うよ。
 1歳下の弟の拓実は、しょっちゅう遊びに来た挙句に不倫男の浅見さんとも仲良くなってしまうような子。ちょっと変わってるけど思いやりのあるいい子・・・かと思いきや、読んでも読んでも友達いなさそうキャラを払拭できなかった。何このネクライメージ。
 文芸部唯一の部員、垣内君はひたすら部活に専念する。顧問と部員が1人ずつなのに真面目に会議をし、本を読み続けている。運動神経がいいのに運動部には入らず、運動部と比べて「文芸部は何一つ同じことをしていない。僕は毎日違う言葉をはぐくんでいる」と言い切る姿に清は感動する。確かに、読書ってそうなのかもしれない。同じ「本を読む」という行為でも、毎回必ず違っている。でも人生30年間まるっと運動不足で運動コンプレックスの私には運動しない人の言い訳にしか思えなかった。運動しなきゃと思いつつもサボってばかりなんだけど、サボってるだけでも自分を甘やかしてるのにさらに言い訳するのが嫌いなんだよね。ダイエットしてる人が「チョコレートはポリフェノールが入ってるから健康のために食べる」というのと同レベルの言い訳って感じがする。まあ垣内君は社会人のバスケチームに所属してるから、運動してたんだけど。
 ほかに登場する主な人物は、同僚の松井先生。担当教科は体育でいかにも体育会系って話っぷりだけど、序盤で清は彼を「好きになれなかった」と言い切る。いい人っぽいのになぁ。ていうか、清以外の登場人物は男ばっかじゃないか。何この偏り。
 こうやってまず清に感情移入できないところから始まった。
 この物語は、清は垣内君を通して文学の楽しさを少しずつ理解するようになっていくという話。品がある文章で、いい作家だなって思う。主人公をこれほど平凡っぽく書けるのが上手い。全体的に考えが浅くてだらしないように見えるとことか、共感できれば瀬尾ワールドに没頭しそうだ。取り立ててすごい人も悪い人も出てこなくて、主人公が人との関わりの中でほんのちょっと成長する。
 ただ、好みの問題で私はこの手の話は楽しむことができない。私はもっと波のある話が好き。ものすごく頭いい人や破天荒な人が出てきたりとか、前代未聞の事件が起こったりとか、知らない世界の話とか、私の薄っぺらい好奇心を刺激してくれるような話でないと楽しめない。主人公が日常の積み重ねの果てに一皮剥けてお終いってのはつまんないなーと思う。やっぱフィクションは平凡より波乱万丈がいい。
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