元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『模倣犯』 上・下  宮部 みゆき
2002-11-04 Mon 11:13
模倣犯〈上〉模倣犯〈上〉
宮部 みゆき

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 読む前からダルそうなこの厚みを2巻。図書館からの借り物だけど、2週間で読めるのか?1冊ずつ借りた方が良かったんじゃないのか?と思いつつとりあえず上巻を開いたけど、読み始めると止まらなくなった。
 なにこれ、宮部さんって天才すぎ!異常すぎる事件を、被害者、加害者、捜査員、ただの目撃者etc.と様々な視点で描きまくってて上下巻共にこんなに厚みのある長々しい本(各4cmずつくらいの厚さ)になってるのに、全然退屈しなかった。それぞれの人物をきちんと掘り下げてあるから誰が主人公なのかわからなくなってしまうくらい複雑だけど、隅々まで気の抜けない緊張感が付きまとっていた。
 でもやっぱり主人公は真一君なんだろうな。真一君、かわいそうすぎる。家族が全員殺された事件も凄惨だけど、彼につきまとう樋口めぐみの存在がまた恐ろしい。狂ってるようにしか見えない。でも樋口めぐみの執念深いストーカーっぷりがあったからこそ、下巻の高井由美子の行動がいかに遺族を傷つけているかがよくわかる。
 バラバラだった人間関係が出会いを重ねていき、真一君と有田さんが出会って、傷を舐め合うような感じじゃない関係が築かれていったのは何だか嬉しかった。最終的には水野さんも加わって、3人が友達みたいになってるのが良かった。
 そしてこのラスト。読書で固唾を呑むとか、あんまりないんだけどなぁ。読み終わって力が抜けて初めて、力んで読んでたのに気付いた。犯罪の内容的に読んで楽しい話ではなかったから、楽しく読めたって意味の「面白い」というとちょっと違う。暗い気持ちになりながら、でも惹きつけられて読んでしまった。本っ当、宮部さん天才だと思う。犯人があっさり罪を認めるなんて、下手すればご都合主義になる。でも、読んでてそんな感じはしなかった。上下巻通してピースの性格がしっかり描かれていたから納得できたのかな。
 一足先に読んだ友達が「視点がコロコロ変わるから、誰に感情移入したらいいかわからなかった」という前情報をもらってたんで、私は全視点に感情移入して読んだ。当然、もの凄く疲れた。疲労困憊っす。でもこうやって色んな視点から見て、事件の全容を知るってことになるのかもしれない。結局異常な人間って理由があるものなんだろうか。栗橋浩美と母親の関係を読んでいると、あんな鬼畜野郎なのに同情してしまう。そんな感情の行ったり来たりが意外と体力を消耗させられた。
 小説って書かれてることが全てなのは当然だけど、つい物語の後を考えてしまう。小さい頃の癖で、惹き付けられる物語に出会うと「終わって欲しくない」と思って自分で続きを考える。きっとよくあることなんだろうけど、何か恥ずかしいから人に話したことはない。そんな文学人間でもメルヘンチックな人間でもないのに、この点だけは頭がメルヘンなことを認めよう。
 で、この物語については。72歳の有馬さんがもうちょっと頑張って生きて、何年後かに真一君と水野さんの結婚式に出席できるといいなぁとか思っちゃったり。有馬さんなら花嫁になれなかった鞠子を憐れむんじゃなくて、水野さんを鞠子に重ねて祝福してくれるんじゃないだろうか。たった一人の孫が惨たらしい殺され方をし、そのことで一人娘も精神を病んで、長閑な老後を奪われた有馬さんの心が晴れる出来事って、もうそれくらいしか思い付かない。網川浩一の裁判とか、刑の確定とか忘れさせてくれるような出来事であってほしい。若い2人に子供ができたりとかね。そんなことを考えた。こうやって書くと、やや恥ずかしいな・・・。
別窓 | [ま行の作家]宮部 みゆき | コメント:2 | トラックバック:0 |
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