元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『海のある奈良に死す』  有栖川 有栖
2017-05-26 Fri 10:27
海のある奈良に死す (双葉文庫)
海のある奈良に死す
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有栖川 有栖
双葉社 1995.03
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 シリーズ4作目。
 「私」こと有栖川有栖は、東京の出版社・珀友社で推理小説作家仲間の赤星楽に会った。彼は取材旅行に「海のある奈良」に行くと言って出発したが、翌日、「海のある奈良」とも呼ばれる福井県の小浜で赤星の死体が発見された。
 作品のVシネ化の話でプロダクション「シレーヌ企画」の社長・穴吹奈美子とプロデューサー・霧野千秋と会った後に赤星の死を知った「私」は、東京で可能な限り事件を調べて関西に戻り、友人の臨床犯罪学者・火村に相談した。
 赤星の元恋人で推理小説作家仲間の朝井小夜子を火村に紹介して話を聞いたが、彼女が赤星と別れたのは、赤星が穴吹美奈子に心変わりしたからだと言う。
 その後、赤星の従弟・近松ユズルが服毒により死亡した。

 アリスの新刊が『セイレーンの沈黙』、赤星の執筆予定作品が『人魚の牙』、プロダクション名「シレーヌ」はセイレーンの語源、伝説の人魚の肉を食べたように若さと美しさを保っている穴吹美奈子、八百比丘尼伝説が残る小浜、とやたらと人魚を絡ませてある。若干強引さを感じなくもないくらい、人魚だらけの話。それに纏わる歴史文化的な引用がちょっと退屈かな。
 有栖川先生2作目かつシリーズ初の旅情ミステリーなわけだけど、『マジックミラー』の時も思ったけど、有栖川先生はクローズドサークルより旅情モノの方が面白い気がする。もちろんあくまでこの時点での「今のところ」であって、デビュー30年を誇る有栖川先生のたかだか6年目8冊を作家の方向性として語るのは変なんだけど。
 アリスと火村のやり取りが今まで以上に軽妙だし、アリスの作家としての人付き合いがちょっと見えたり、火村の心の闇も垣間見えたりしてシリーズとしてキャラクターの輪郭が明確になってきて面白かった。今回の序盤はアリスが単独で積極的に情報収集をするから、いつもより頼もしく見える。事件の展開も、本格ミステリーにふさわしい流れ。今まで物語においてオマケっぽかったアリスだけど、今回は自分の職業を活かして聞き込みする辺りは有能だ。
 そんな感じで、途中までは楽しく読んでいたわけなんだけど、殺人トリックの話になった途端、滑らかだった話の流れに淀みを感じ始めた。特に、サブリミナル効果にはがっかり。それでウイスキーを飲ませたくさせるって当たるも八卦みたいなやり方はミステリー小説としてどうかと。そもそも、サブリミナル効果ってデマなんじゃなかったっけ?この年代って、まだ信じられてた?私がサブリミナル効果を知るきっかけになったトンデモ漫画『MMR』が90年代前半だったと思うから、まだ一般的には信じられてたのかな?
 さらに、赤星殺人のトリックもトリックってほどではない小手先の物だったんで二度目のがっかり。動機が嫉妬っていうのも浅いけど、実は穴吹と霧野は親子でしたっていう展開もモヤッとした。このモヤッとは、『46番目の密室』で動機が同性愛者による嫉妬という時と似てる。好みの問題かもしれないけど、ミステリー小説は事件とトリック以外は普通であって欲しい。そもそも穴吹は男関係が派手だったっぽいけど、何で赤星と付き合った時に特別に嫉妬したんだろうか。ただの噂に過ぎなかった近松まで、確かめもせずに殺したのかも謎。
 ていうか、事件に学文路が関係あるかも、って話が出たから片桐編集者が有休使って行ってくれて人魚伝説で真相きたか!?と思わせといで、こっちで事件解決って殺生じゃない?エピローグ読む限り無駄足やん。石童丸伝説とか、何のために掲載したんだ。ずっと謎だった、「海のある奈良」の真相とも関係ないし。
 そんなこんなで事件が解決したわけだけど、ラストはちゃんと事件の真相を明らかにしてから捕まるなり自害するなりして欲しかった。霧野の遺書が部分的に意味が通らず、火村が語った推理が確実に正解と言えない状態で終わっるって、そんなあやふやな・・・。
 という感じで、前半面白かったけど後半ちょっと不満。アリスと火村がレンタルビデオ屋に行くところまでは面白かったけど、借りてからがあんまり好きじゃないかな。
 火村が人を殺したいと渇望したのは特定の誰かを殺したかったのか、殺人そのものに興味があったのか。夜中に悲鳴を上げて起きる理由、今後わかるんだろうか。アリスは学生時代から気付いてるらしいけど、ばあちゃんこと篠宮時絵も気付いてるのかな?死別してる両親が関係あるのか、「ロシア紅茶の謎」のラストで言ってた「胸を掻きむしられる想い」をした相手か、はたまた自分自身か。まだまだシリーズ4/27だから、先は長い。つーか、シリーズ長いな・・・。
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『ロシア紅茶の謎』  有栖川 有栖
2017-03-31 Fri 15:32
ロシア紅茶の謎 (講談社ノベルス)
有栖川 有栖
講談社 1994.7.28
売り上げランキング: 69,343

 作家アリスシリーズの3作目で、シリーズ初の短編集。


「動物園の暗号」
 大阪の動物園の猿山で、飼育委員が撲殺された。被害者は暗号やパズルを作るのが好きで、右手に自作の暗号を握りしめて絶命していた。
 大阪府警の船曳警部が火村助教授に助けを求め、火村英生助教授から「推理小説家好みの事件が起きたから一緒にこい」と呼び出された「私」こと有栖川有栖。火村と一緒に、暗号の謎に取り掛かる。
 
 有栖川有栖さんの作品を出版順に読んでいるけど、ずっと長編ミステリーだったんで今回もそのつもりで読み始めてたんでちょっとびっくり。どうりで暗号の謎が解けるの早いと思った・・・。
 それにしても有栖川さんの短編、いいね。元々心理描写があっさりしてて、ロジカル重視で感情移入皆無の作品を書く人だけど、短編だとそのあっさり感が読みやすさとわかりやすさを生んでると思う。被害者が作った暗号の答えがたまたま加害者の事で、絶命間際にポケットから取り出すという辺りにはやや都合の良さを感じなくもないかな。
 あと、警察が火村を呼び出すのが早過ぎるのも疑問。警察、頼りなさすぎ。もうちょっと捜査してから外部の手を借りてくれないと、私が関係者で事情聴取を受ける立場だったら不信感出しまくるし、クレームの電話もするし、マスコミにリークするかもしれんわ。
 ところで、確かアリスって大阪市内に住んでたはずで、市内の動物園といえば天王寺動物園!?偶然にも、ちょっとした用で大阪行くついでに家族で天王寺動物園行くつもりの時にこの小説を読んだんで、内心盛り上がった。小説内では阿倍野動物園って書いてあるけど、天王寺区じゃなくて隣の阿倍野区にあるって設定がわかったのも嬉しい。ただ、帰ってからこの感想を書いているんだけど、猿山なかった・・・。猿系は、基本的に檻に入ってた。猿山は必要でしょ、天王寺動物園。


「屋根裏の散歩者」
 またまた火村に呼び出された有栖川有栖は、船曳警部と共に殺人現場に向かう。アパートを経営している独居老人が殺害されたが、彼はアパートの屋根裏を歩き回って住人を覗き見して日記に綴る趣味があった。日記によると、住人の中に巷で騒がれている女性連続殺人事件の犯人がおり、その人物にそれとなく探りを入れたらしい。5人の住人を記すときには「大」「太」「く」「卜」「I」と記されて、誰の事かわからない。
 聞き込みが終わった火村は、夜中に出直したいと言った。

 連続殺人事件犯に覗き趣味と、大小はあれど二つの異常性が面白かった。ただこの話、火村さんの推理は光ってなくない?行動力の問題というか、夜中に屋根裏から覗いてみるのは警察がやるべき仕事だったのでは?いや、大家殺しで自重するだろうから、張り込みやら家宅捜索やらの手間を省いたって事なのか。
 「大」と「太」の違いは、ちょっと微妙な気分になる。いや、わかりやすいというか、ユーモアって言い分もわからなくもないんだけどね。我ながら、小娘じゃあるまいしと思うけど、何か微妙な気分になる。良し悪しは置いといて印象には残ったから、被害者のダイイングメッセージがわかりにくいながらも面白いかな。


「赤い稲妻」
 夜の雷雨の中、京都府内のマンションでアメリカ人女性モデルが転落死した。目撃証言によると、バルコニーで誰かともみ合った末の転落らしい。しかしマンションは鍵もチェーンも掛けられており、犯人が脱出した形跡はない。京都府警の柳井警部に頼まれて現場を訪れた火村は、その奇妙な事件に有栖川も呼び出した。
 被害者のパトロンは、妻が踏切で電車と衝突事故を起こして死亡したために亀岡警察署にいた。事故の時刻は、モデルが転落死した時間と30分ほどしか変わらないかった。

 目撃者が火村の教え子という事もあって呼び出されたらしいけど、こういう美味しそうなネタは長編でじっくりやって欲しかった・・・。これ、目撃者が誰であろうと視力さえ良ければ成り立つ話で、設定の無駄遣いに感じる。生徒から見た助教授・火村像やら、犯罪学をちょろっとレクチャーする図とか、見たかった。
 トリックは面白かったし、火村が犯人を追い込むシーンもかっこ良かった。
 

「ルーンの導き」
 火村の下宿先を訪ねた有栖川は、何か面白い話があれば聞いてやると話を振る。火村は、2年ほど前に起こった事件を話し始めた。
 英都大学のイギリス人講師が嵐山のログハウスで殺人事件に巻き込まれ、火村を呼んだ。刺殺されたアメリカ人被害者は、ルーン文字が書かれた石を4個握りしめて絶命していた。火村は馴染みの柳井警部と共に現場検証と事情聴取を行う。

 今まで火村の人間関係は大学来の友人である有栖川と、フィールドワークの重要な協力者である警察しか描かれてなかったけど、ちゃんとお友達いるんだね。根暗な変人と思っててスンマセン。まあ、友達というより同僚っぽいけど。
 関係者が外国人だらけでちょっと戸惑ったけど、混乱するまでもなくすぐ解決したのが短編の良いところ。外国文学では毎度誰が誰だかわからなくなる私だけど、人物紹介を兼ねた事情聴取の後にすぐ解決編に入ったから読みやすかった。ダイイングメッセージのわかりにくさと状況証拠のあやふやさは、ちょっと引っ掛かるかなぁ。一応私も元司書なんで、和書のISBNは4から始まるのも知ってる。英語は0と1、フランス語が2、ドイツ語が3、とか一応知識はあるけど、これが超身近だったとして死に間際にこんな曖昧なダイイングメッセージ。うーん、藁をも掴む感じで残す・・・?殺された事ないから、わからなくて当然か。でもなんかこう、わかる人にしかわからない暗号の登場はモヤモヤする。というか、思わせぶりだったルーン文字は関係ないのかよっ!とも思うし。
 死にゆく被害者の気持ちはわからないから置いといて、多国籍な集まりだったり、出版が絡んでたり、ルーンの占いでミスリードしておいたり、ジョージの中国表記が「佐治」という偶然があったりで、トリックありきのストーリー感がちょっとすっきりしない読後感を醸してるかなぁ。


「ロシア紅茶の罠」
 有栖川を訪れていた火村に、兵庫県警の樺田警部から電話があった。火村が興味を持ちそうな事件が起こったという連絡に、有栖川と共に神戸に赴く。
 自宅パーティーの最中に、家主である作詞家が毒殺された。妹が淹れたロシア紅茶を飲んだ直後に絶命したが、犯人がどのようにして毒持ち込み、どうやって盛ったのかさえわからなかった。集まったメンバーは、妹以外は全員恋愛絡みで被害者を恨んでいた可能性があった。

 前作『ダリの繭』で出てきた兵庫県警の樺田さん・野上さんコンビ再登場。『ダリの繭』を読んだ時には気付かなかったけど、野上部長刑事ってドラマでは優香演じる小町ちゃんか。野上は自分の凡才を棚に上げて火村を目の敵にしてる姿がちょっと腹立つけど、優香は可愛かったから目の保養にはなってて、私的には良い改変だったと思う。むさいおじさんより可愛い女性がいいのは当然だし、若すぎない優香を使ってるのも良かった。演技は上手くはなかったけど。
 さてこの話、表題作だけあって一番トリックが面白かった。真ん中に毒を閉じ込めた氷を口に含むという、自殺行為ギリギリの殺人というスリルが加害者の深い気持ちを表していると思う。その命懸けの殺人を火村が暴き、火村を快く思ってないはずの野上がすかさずサポートするとこが面白い。
 あと、現実ではあり得ない推理小説あるある的なサイトを最近読んだんだけど、青酸カリって殺すなら意外と量が要るし、独特の味と臭いがあるらしいから紅茶みたいな繊細な飲み物だとバレると思うし、もし犯人の口で溶けたとしてもすぐ吐き出してうがいと胃の洗浄すれば大事には至らないはず。ということは、死を掛けた殺人ってほどじゃない。でもって何より、紅茶冷めない?なんて考えながら読むと滑稽だけど、リアリティよりファンタジーと思って読めば、やっぱ一番面白かった話だと思う。
 樺田さんには有栖川向けの事件とか言われつつ、結局火村が解決してる。あれ?デジャブ?と思ってページを戻ると、一話目でも有栖川が期待されつつスベッてたな。
 ところで、最後のやり取りがいただけない。「俺だって、胸を掻きむしられるような想いをしたことはあるさ」「本当か、先生」「多分」という会話、それって有栖川にってことじゃないですよね・・・とBL嫌いの私でも思わずにはいられない唐突さ。こりゃラノベ化した時にやたらBLっぽい絵になるはずだわ。対象が完全に婦女子やん。
 作家アリスシリーズはまだ序盤だけど、ち、違うよね?変な展開になったりしないよね?うーん、どうもこの本に入ってから2人の関係が怪しいというか、男臭くなさすぎて気持ち悪いんだよなぁ。ドラマの終盤も、愛の告白めいててキモかったし。独身社会人同士の友人関係って、もっとこう・・・。あれ?どんなだっけ?そういや、そういう本ってあんまり読んだことないな。せいぜいIWGPのマコトとタカシとサルくらいしか思い付かない。やっぱ、有栖川の必要性の薄さが駄目だと思う。


「八角形の罠」
 有栖川が書いた推理劇の練習を見学に来た有栖川と火村だったが、劇団内の揉め事が起きたので席を外している間に男優が毒殺された。被害者の襟元には蛍光塗料が塗られており、練習室の電気が突然消えた隙に毒を注射したようだ。8人の劇団関係者達は恋愛関係や借金や劇団の脱退を巡る問題などで複雑な人間関係を抱えていたが、殺人に発展するような深刻な問題はなかったという。
 兵庫県警から樺田警部と野上部長刑事が捜査に当たる最中、別の男優が煙草を吸った途端に苦しみ出した。

 この小説は、作者の有栖川有栖さんが実際に原案を書いた犯人当てゲームイベントをノベライズしたものらしい。1993年に尼崎市の施設で行われたイベントらしいけど、都会って面白いイベントがあるもんだ。それにしても、演目が『八角館の殺人』だなんて、綾辻行人過ぎて笑える。
 これも面白かった。共犯者オチがわかりやすかったのは、実際のイベントでこのトリックを使って犯人当てゲームをしたからだろうな。原案ってことだから、有栖川と火村、樺田警部達は出てこないで事件だけを扱ったのかも。実際当てれた人はいるんだろうか。私は、絶対わからないだろうなぁ。文字で読んだから、犯人は2人以上ってパターンかなって思った程度。犯人を当てるなんて無理に違いない。
 それにしても、自分が原案を書いた舞台を火村に観せたがって稽古に呼ぶなんて、なんかこう・・・私の知ってる三十代男同士の友情ではないんだよなぁ。じゃあ具体的にどうかと言われると難しいんだけど、時々居酒屋なんかで会って「舞台の原案書いたんだぜ」とか自慢する程度なイメージ。舞台が観に来れないから稽古だけでも観て欲しいって、何か気持ち悪い仲だなぁと思う。


 暗号、ダイイングメッセージ、技巧を凝らしたトリックと、本格ミステリーが短編でキュッと詰まってる感じで面白かった。と同時に、色んな設定が判明したのも読んでて楽しかった。主人公2人の年齢が、「ルーンの導き」までは33歳なのに「ロシア紅茶の謎」では34歳になっててちゃんと加齢してたりとか。有栖川は名目上、火村の助手という事で殺人現場に同行させてもらってるんだとか。大阪府警、京都府警、兵庫県警の3府県の警察捜査一課と懇意にしてるんだとか。小説に描かれている以上に、火村が解決した事件や有栖川も同行した事件が存在することが匂わせてあったりとか。
 シリーズ1作目の『46番目の密室』で有栖川は初めて火村のフィールドワークに立ち会ったって言ってて、『ダリの繭』では有栖川の助手名目は出てこなかったと思うけど、『ダリの繭』以降「動物園の暗号」まででいくつか事件に関わったって事か。しかも各県警とすでに数回ずつ絡んでるみたいだから、相当な数の事件に同行させてもらってるのか。私が読んだ事ある探偵物って警察と関わって段々と信頼を得ていく過程も描いていくものがほとんどなのに、既に関係が出来上がってるこのシリーズの描かれ方は斬新に思える。絡んでる事件は全部読みたい!という気持ちと、そこまで民間人巻き込むのもどうなんだろうかという、複雑な気持ち。
 この本では警察がちゃんと時間を掛けて捜査をすれば解決しそうな事件を火村が早期解決というパターンが多かったと思う。「屋根裏の散歩者」では家宅捜索すれば解決しそうだし、「赤い稲妻」では火村も言ってたけど被害者宅を詳しく調べればいずれ逮捕できそう。「ルーンの導き」も、人間関係を徹底的に洗えば判明しそう。暗号は解けなかったかもしれないけど、実際の事件で暗号やらダイイングメッセージをそこまで真剣に捜査するとは思えないし。となると船曳、柳井、樺田は、面子より早期解決を優先する柔軟な方々なんだろうな。
 「作家アリス」シリーズをamazonで検索すると、数種ある新装版の中でも角川ビーンズ文庫版はちょっと異彩を放ってる。昔の有名出版物をラノベっぽい新装丁にして出版して売る手法を聞いたことあるけど、なぜこんなBLっぽい絵柄なんだと情けない気持ちを抱いていた。気になってイラストレーターを検索すると、BL作家。なぜそっち方面に持って行く!?と、世の腐女子を情けなく思ってたんだけど。こりゃそっち方面に行かせちゃうのもわからんでもない展開だわ。2人の関係が2人で完結しすぎてる。火村は有栖川がいなくても解決できそうなのに会いたいから呼び出してるようにしか見えないし、被害者や警察関係の人と話す時は淡々としてるのに有栖川と話す時だけ砕けた話しぶりという二面性。そう言えば、『ダリの繭』では野郎2人でちょっと高級そうなレストラン行ってるし。三十代前半の男友達とちょっといい物食べるって、肉じゃないの?焼肉。食後はキャバクラとか行かないの?私の男の友情像、歪んでる?
 有栖川は『ダリの繭』で高校時代の失恋のトラウマ話をしてたし、「ロシア紅茶の謎」でモデルに見惚れるくらいだからノーマルっぷりが伺える。けど火村がね・・・。ウィキで人物紹介読むと、女嫌いって・・・、待て待て待てーい!そんな設定止めて・・・。この人間関係なら、女好きにしてくれた方が清々しいわ。
 何だか、ミステリー以外のところでモヤモヤしてしまった。
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『ダリの繭』  有栖川 有栖
2017-03-06 Mon 00:26
ダリの繭 (角川文庫)
ダリの繭 (角川文庫)
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有栖川 有栖
KADOKAWA (1993-12-31)
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 宝石チェーンのオーナー社長・堂条秀一が、別邸で殺害された。彼はリビングで殺害され、自慢の癒し道具であるフロートカプセルの中で全裸で専用液に浸かった状態で発見される。ダリを模してトレードマークにしていた髭が切り取られていた。
 それぞれ母親の違う弟である堂条秀二と吉住訓夫が財産目当てで殺害したか、それとも鷺尾優子を巡った恋のライバルである長池伸介が犯人か。
 「私」こと有栖川有栖は、吉住とは元々昔の仕事関係の知り合いであり、数日前に共通の知り合いの結婚式で彼と再会していたために兵庫県警捜査一課の警部・樺田から証言を求められる。樺田はアリスの親友であり臨床犯罪学者である火村に捜査の協力を依頼したと言う。火村に同行する形で、アリスも事件現場を訪れた。
 作家アリスシリーズの2作目。


 決して大きくはない人間関係の中で噂や嫉妬が錯綜し、有力な証拠がある容疑者は火村によって覆される。このパターンが面白くもあり、ややお約束感もあったけど、全体的には面白かった。今まで読んだ有栖川さん作品は誰が誰だかわかんないまま巻頭の人物紹介頼りで読み進んでたけど、今回はそれぞれの役割がはっきりしてて人物が人間臭くて、混乱することなく読めて楽しめた。
 読めば読むほど、剛腕だけど繊細だった被害者の人物像に好感が持てて妙に同情してしまう。かなり年下の優子に純粋に想いを寄せる様子も、社長の立場のせいかどこか控えめで切ない。そして、想われ人の優子の聡明さも素敵。
 トリックも面白い。なぜ殺害後フロートカプセルに運び込まれたのか、なぜトレードマークの髭がなくなっていたのか、犯行時刻にフロートカプセルに入っていた吉住の無実は証明されるのか?なぜ凶器は長池が持っている物と全く同じ物が使われたのか?その凶器に企画室室長の相馬の指紋が付いていた理由は?相馬と優子の関係は?と、色んな謎と、それに関する火村の尋問がワクワクする。賢くない私にとっては、登場人物だけじゃなくトリック自体がわかりやすかったのもありがたい。
 でも、相馬に女装癖があることを引き延ばしたのと、優子がハマってる占い師にセクハラされたっぽい事を仄めかす設定、必要だった?優子の浮気疑惑からの相馬女装癖はもっとパッと判明してもいいレベルだし、占い師がやったことは妙に抽象的で不快な後味が残るだけだからもう少し何とかならなかったのかなーと。
 あと大前提にいちゃもん付けるけど、アリスの存在意義が薄い。いわゆるワトソン役なんだろうけど、ワトソンほど役には立ってないというかぶっちゃけ金田一少年の美幸ちゃんよりも役に立ってないし、ただ吉住と知り合いだったから個人的に話が聞けたって点だけかな?火村の「フィールドワーク」においてアリスはおらんでもいいやん・・・って何回も思った。ドラマで見てた時から薄々思ってたけど、原作からしてこうだったとは。火村がアリスをフィールドワークに付き合わせる理由は?作品の参考のために呼んでくれた?だったら横溝正史とか内田康夫みたいに、事件後に探偵から話を聞かされるという設定で十分じゃないか。いや、私がそういう設定が好きってだけなんだけど。
 というか、そもそも警察も素人をあんまり巻き込むなっつーの。樺田警部は口が軽すぎて、そりゃ野上刑事の面白くなさそうな様子も仕方ない。これまで読んだ有栖川さん探偵物はクローズドサークルばっかだから「語り部」としてのアリスは必要だったけど、今回の事件においては変にうろつき過ぎてハラハラする。吉住と旧知の間柄だから関わった以外の役割がもう少しあると、もっと読んでて楽しいと思う。警察が火村を信用している根拠も教えて欲しい。火村がアリスを連れてくることに難色を示さない警察についても、もう少し説明して欲しい。警察と火村・アリスの関係が完成した状態で幕が開いてるから、そこんとこあやふやなのが個人的に気になり過ぎる。
 アリスが火村に作中のキャラクターがいつも似てることを指摘されて「単純に技量の問題や」と憮然とするシーンがあるけど、自嘲なのかブーメランなのか・・・。前者だとは思うけどね。
 とはいえ、アリスと火村の掛け合いが仲良さげで読んでて楽しい。今後もう少し、上記のことを掘り下げてくれると嬉しい。
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『マジックミラー』  有栖川 有栖
2016-07-24 Sun 01:22
マジックミラー (講談社ノベルス)
有栖川 有栖
講談社   1990.04
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 古美術商・柚木新一の別荘で、一人で過ごしていた妻の恵が殺された。真っ先に疑われた夫の新一と、双子の弟・健一はそれぞれ福岡と山形に出張しており、目撃情報も切符の指紋もあり疑いようもない。
 天涯孤独となった恵の妹・ゆかりは姉の元恋人で推理小説家の空知雅也と前日に偶然再会しており、恵死亡の連絡を受けて駆け付けてくれた彼を心の頼りにしていった。
 捜査が全く進展しないまま数ヶ月後が過ぎたある日、双子片方が首と手を切断された状態で発見される。双子のもう片方は行方不明になっており、一卵性双子である彼らのどちらの死体なのかわからない。捜査線上には健一の内縁の妻の戸籍上の夫が疑われて別件で逮捕されたが、ゆかりに頼まれた空知が無実を証明してみせた。

 有栖川さん初の単発物。
 冒頭の「ダイアローグ」で双子らしき人物2人が殺害計画を話していたから、犯人は登場人物一覧を見れば既にわかる状態。推理展開だけを楽しみに読み続けていると、いきなり容疑者双子が死んだ。死体は1つしかないけど、もう片方は行方不明だからどこかで殺されてる可能性も高い。登場人物はかなり限られてるから・・・えーっと、この人しかいないじゃん!という衝撃。この二重構造が面白かった。ラストの小桑双子には、ちょっとジョークを感じたけれども。ジョークじゃなければご都合主義だよ、これ。うん、ジョークなんだろう。
 あとがきで「アンチ鉄道ミステリ」と書いてあったけど、鉄道ミステリーじゃないのか・・・うーん、飛行機使うし、双子トリックの要素も大きいからかな?いやでも、地名で既にわけわかんなくなって、出発時刻やら到着時刻やらで目が滑って、双子だから2人分の行動だし、もう何かよくわかんないけど出来るんですね、ハイって状態で結局トリックの大半はどうでもよくなって流し読みしちゃった私にとっては、鉄道ミステリーだと思うんだけど。巻頭に地図が3つもあった時点で、読む前から心は折れてたのかもしれない・・・。
 視点がかなり変わっていくから誰が主人公ってわけじゃない俯瞰って感じの小説だった。若干ガチャついてたり、もうちょっとこの視点から読みたかったなーって事もあったけど、この書き方だったからラストが映えたと思う。その後どうなったのかなぁって思わずにはいられない。私だったら・・・惚れ直すかなぁ、とかね。恵さん、何であの時柚木なんか選んだんだよ、空知の方が良かったじゃん!見る目ないなぁ、とか。空知さんやっぱベタに自首するのかな、いやゆかりさんと幸せにおなりよ、大体推理小説家がトリック殺人とか前代未聞過ぎるからからさー、とか。後半、おばちゃんお節介みたいになってしまってるけど、やっぱ自首して実刑下って、彼の小説は逆に大きな話題にって展開もアリかなぁ・・・。うーん、妄想が膨らむ。
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『46番目の密室』  有栖川 有栖
2016-06-20 Mon 12:34
46番目の密室 (講談社ノベルス)
有栖川 有栖
講談社   1992.03.02
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 作家アリスシリーズ、第一作目。「私」こと作家の有栖川有栖は、親友で大学助教授の火村英生と共に北軽井沢にある大物推理小説家・真壁聖一の家に招待された。他にも招待された推理小説家仲間や編集者達と共に楽しくクリスマスイブを過ごしていたが、真壁の姪の真帆が別荘の外で顔に火傷跡のある男がうろついているのを見たという。
 明けてクリスマスの日、「私」も別荘の車庫でその男を目撃する。その夜のパーティーの後に何者かによってあちこちに白にまつわるいたずらが施されていた。階段に石灰粉がまかれ、安永彩子の部屋の窓ガラスいっぱいに白いハートが描かれ、船沢辰彦の部屋のクローゼットでは彼の靴に白ワインが注がれ、「私」と火村の部屋にはトイレットペーパーがあちこちに這いまわり、高橋風子の部屋には時限爆弾を模した白いテディベアが置かれていた。
 誰のいたずらか憶測の域を出ないまま就寝したが、深夜に目を覚まして別荘の玄関へと続く足跡を見つけた「私」は階下に降りて書斎に入った瞬間、何者かに殴られて昏倒する。石町に起こされて事情を話し書斎を見に行くと、何者かが暖炉で顔を焼かれながら死んでいた。その後火村も加えた3人は、地下室の暖炉で顔を焼かれながら死んでいる真壁と思われる男を発見した。
 共に密室で発見されたこの死体は、明らかに自殺ではない。山荘に滞在しているのも、仲間内の11人だけだった。

 有栖川有栖さんの小説、4冊目にしてようやく「作家アリス」シリーズに入った。火村さんはドラマとは若干イメージが違うんだね。この作品では、クールでめちゃ頭いい人って感じ。ドラマが大げさだったのか、今後もっと変な人になっていくのか・・・。
 「作家アリス」シリーズの幕開けは、関係者が似たような人ばっかりで誰が誰だかわからないまま始まって終わった・・・。人物的にかぶるのは数人なんだけど、その数人の中に犯人がいて誰これ?状態。アリス火村コンビと真壁ファミリーはわかるとして、その他の男性3人と女性2人は区別つかないまま読んだ。関西弁の船沢は、アリスの発言とごっちゃになるし。ちゃんと集中して読めてない証拠か?
 でもトリックは面白かった。ザ・密室な感じを楽しく読んでたんだけど、動機でドン引き。記念すべきシリーズ1話目で、性的マイノリティーはないわー。この手の驚かせ方はは、私は苦手。もう少しシリーズを重ねてからだったら、まだイロモノ動機で受け入れられた気もするけど。
 これだけ推理小説テーマになってる話なんだから、実は真鍋のトリックは犯人が考えたものばかりで、弱みを握られてて・・・というベタな展開の方がまだ収まりがいいんじゃないの?駄目?素人の浅知恵か。
 あと、警察が介入した翌日に責任者らしき鵜飼警視から、県警の栗田本部長から火村に協力するよう連絡があったと聞かされるシーン。当たり前のように名前出されるから、もしかしてこの話はシリーズの2作目以降で、「栗田本部長」は読者にとって暗黙の了解なのかと思った。アリスが火村の探偵ぶりを見るのは初めてと書いてあるのを読んで、これがちゃんと1作目である事を理解して、驚かさないでくださいよ状態。あんまり1話目だとか意識させない書き方をする人なのかな、作者さんは。そう思うと納得いくんだけど、近くにスマホあったら危うく読むの中断して調べてるとこだった。
 ちょっとワクワクした点は、アリスが次作は「学生の僕、有栖川有栖が語り手になってるシリーズ」で「大雨で孤立した山奥の村が舞台で」、「またそこに学生が閉じ込められる」だと言う。『双頭の悪魔』のことなんだろうけど、『双頭の悪魔』の方では学生アリスが書く予定だったか今書いている小説がだったかが「臨床犯罪学者」が出てくる「作家アリス」シリーズだと書いてあった。双方はパラレルワールドだとネットに書いてあったけど、これがパラレルかと思って思わずにやりとしてしまった。
 今後も双方でお互いが描かれつつ進んでいくのかな?何それ楽しい!やっぱ出版年順に読んで正解だった!というわけで、何だかんだ言っといてまだまだ読みたいです。
 ところで。学生アリスって地の文は何人称で書いてあったっけ?「俺」だったような気がするし、この『46番目の密室』で次作の話をする時にも「俺」って書いてある。という事は「俺」なんだろうけど、やたらアリスアリス書いてあるイメージもあって三人称だったっけ?いや違うな・・・と全く思い出せない。マイルールで地の文が一人称の時は前半の内容まとめで記録するようにしてるつもりだったけど、過去の感想文読んでも「アリス」としか書いてない。というか、内容にアリスがあんまり絡んでこないせいか存在感薄いイメージなんだけど。『双頭の悪魔』では、主要キャラと分断されたからいつもより多めにスポット当たってたけど。
 本気で思い出せず、かといってそれだけのためにまた図書館で借りるのも面倒だし、シリーズ4作目を読む時に確認しよう。感想を記録するようになって十数年。自分の記憶力の衰えに、頭抱えてる。ていうか、恐怖してる。
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