元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『長い夜』 赤川 次郎
2012-04-21 Sat 18:51
長い夜 (桃園新書)
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赤川 次郎
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 5億の借金を負ってしまい一家心中を決意した白浜夫妻と娘・仁美の前に、借金を肩代わりすると言う謎の男が現れた。小西と名乗るその男の条件は、ある小さな町に住んで自分の娘・宏子と孫・久弥が殺された事件について調べる事だと言う。宏子と久弥を殺したのは、娘の夫であり孫の父親である江田洋介。彼は妻子を殺した後、自殺してしまった。その件以外でも突然小さな事件が多発するようになっているその町で、一体何が起こっているのかを調べてもらいたいそうだ。依頼を引き受けた白浜家の3人と、彼らにくっついて来た仁美の幼馴染・武彦は、小西が指定する町の家に移り住んだ。
 一方、車上荒らしの三神は、ひょんなことから小西の運転手になる。小西に言われて運転した先の病院で、髪を振り乱した女から襲いかかられる。別の日に小西の使いでその病院に行った際に、その女の脱走を手伝ってしまった。

 赤川次郎はコミカルな話を書くイメージの人だけど、ホラー書いたらしっかりと怖い。ちょこちょこ視点が変わるけど、何となく背後は大丈夫かって感じの不気味さがつきまとう。1回読んでしまうと2回目は全然なんだけど、1回目は怖いんだよなぁ。赤川次郎ホラーは、人知を超えた何かによって人が死んでいって最終的には解決するけど結局“何か”の正体はわからないまま終焉するというパターン。これもそうだろうなと思いつつ読んだけど、それでもしっかりと怖かった。
 でも多少引っ掛かる点が。我が子の1人が行方不明なのに残ってる方の子に家庭教師を付けるなんて随分余裕じゃないですか、なんて思ってしまった。いやー、ティーンエイジの頃の私は何もわかってなかったけど、母親になった今は「いやいやいや!私なら半狂乱で解決策を探し続けるよ!」と進とルミの母親にツッコミ。ルミを発端に町の人達はおかしくなっていったようなんだけど、何か隠してるっぽいけど普通に生活するとか私にはできないと思う。ま、こういう浅さも赤川次郎ほどの人ならアリかな。
 それに、白浜夫妻は武彦を簡単に同行し過ぎだと思う。武彦の両親にはちゃんと連絡したのか?大体幼馴染とはいえ、白浜夫妻は仁美と武彦の仲を軽視しすぎじゃないか。私なら、一応武彦は旦那と同室にするし、仁美は自分と同室にする。
 こういうとこ、ある意味ラノベっぽい気がする。ラノベと言い切っていいのかどうかはわからないけど、少なくとも「ライト」な「小説」・・・つまり「ノベル」である事には間違いない。そういえば赤川次郎のシリーズ物・・・例えば三毛猫ホームズとか、三姉妹探偵団とか、精神病棟のやつとか、四字熟語シリーズとか、悪魔シリーズとか、天使と悪魔シリーズとか、萌え系のイラストさえ挿入すればラノベだよなぁ。そっかー、中学時代の私はラノベリーダーだったのかぁ。ラノベ流行期に、受け付けない司書が多い中じゃんじゃん読めてたわけだ。・・・ていうか、読者として完全に親目線になっちゃったな。初めて読んだ時はローティーンで、仁美・武彦と同じくらいだったのになぁ。
 思わずツッコミ入れちゃったとはいえ、このホラーテイストは今でも存分に楽しめた。私がいた図書館では一番貸出数が多い作家さんだったと思うし、まんべんなく色んな世代の人が借りてたように思うし、当分の間人気は不動なんだろうな。
 赤川次郎の大半は読んできたけど、この人のホラーでは『白い雨』『死が二人を分かつまで』が印象が強烈だった。何だか立て続けに読みたくなった。
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『インペリアル』 赤川 次郎
2012-04-20 Fri 15:58
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赤川 次郎
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 有名ピアニストの影崎多美子は、3年ぶりに開いた演奏会で演奏中に倒れてしまう。彼女はステージに駆け付けたスタッフに、「インペリアル」と呟いて意識を失って病院に運ばれた。命は取り留めたけど、原因は心臓の持病で予断は許されない。
 多美子の2人の娘のうち、気質も才能も母に似た姉のそのみは高いプライドを持つピアニストになり、穏やかな性格ながら音楽家としての才能には恵まれなかった妹の由利は普通のOLとして生活していた。母の入院で先立つ物が必要になり、由利は偶然を重ねながら芸能界に入っていく。
 特殊な世界をディープに突っ込むことなく、ごく浅いけど妙にリアルに描いてあるからわかりやすい。プロの音楽家の激情あり、芸能界の薄汚さあり、不倫を含む男女のドロドロあり。サスペンスと書いてあるけど、ヒューマンドラマって感じ。わかりやすいからサラララ~と読んじゃうけど、終わってから「で?」って思った。
 多美子はどうして「インペリアル」と呟いたのか。音楽用語での「インペリアル」とは普通のグランドピアノより鍵盤が多いピアノの事らしいけど、その謎は最後の最後まで引っ張る。で、ラストに病院から抜け出した多美子の口から聞かされた事実が、もの凄くつまらない。もうちょっと意味ある事だと思ったよー。
 小中学生の頃にやたら赤川次郎を読んでたけど、実家に帰省して暇つぶしに読み返したコレ。当時も、何これつまんないって思ったのを思い出した。そして当時は、あんまり意味わかってなかった事も理解した。芸能界や音楽家の世界って本当にドロドロしてるらしいとか、大人の男女はそう簡単に関係を持つもんじゃないとか。
 読み終えた感想が「つまらない」でも、どんどん読んじゃうのはさすが赤川次郎。何かが起こるんじゃないかって気がしながら読んでしまって、読み終えるまでつまらない事に気付かなかった。そういう意味では、つまらないじゃなくて面白いのかな。
別窓 | [あ行の作家]赤川 次郎 | コメント:0 | トラックバック:0 |
『顔のない十字架』  赤川 次郎
2009-12-21 Mon 17:01
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 25歳のOL・宮川佐知子は、だらしのない弟・秀一から夜中の山中で人をはねて殺してしまったという連絡を受けた。現場に駆け付けた佐知子は秀一から、死体のポケットに入っていたという身代金要求の脅迫状を見せられる。
 弟が起こした事故を隠蔽したいが誘拐を放ってはおけないと思った佐知子は、この件を1人で調べていくうちに辰巳と名乗る殺し屋と手を組むことになった。



「そういえば昔の赤川次郎は面白かったよな~。久々に読んでみようかな。そういえば『顔のない十字架』、ドキドキしてハラハラして、最後は切なかったよな」

 そう思って20年ぶりくらいに読んだけど、やっぱり今読んでも面白かった。小物なんかは古臭いけど、話自体は全然古臭くないし、色褪せてない。ミステリーの部分は軽くないけど重すぎず、解決した時のスッキリ感もいい。最近の赤川次郎作品ってあんまり好きじゃないんだけど、やっぱ昔のは凄い。今のポジションに、なるべくしてなったっていうのを改めて納得させられた。
 いつも毅然としている佐知子がどんどん危険な方向へ足を踏み入れざるを得なくなっていき、同時にどんどん辰巳に惹かれていく。本当に辰巳を愛したのか、ストックホルム症候群みたいな感じなのか。相乗効果だったのかな。否応なく引き込まれ、最後にはどうにも逃げられない所まで追い詰められていう様子には、結末を知っていていもドキドキしてしまう。
 読んだのが20年近く前ということは、今や薹が立ってる私も小娘だった頃。かつては細かい設定はわかってなかったことにも気付かされる。前田や辰巳、森田なんかはヤクザ者だとか。秀一のダメっぷりも、あんまり理解できてなかったのかもしれない。逃亡生活を強いられた佐知子の気持ちも、最後に「待つ」と言ってくれた坂本さんの優しさも、あの頃はそういうもんとしか思ってなかった気がする。もう一回読んで、しっかり理解できて良かった。 
 かつての私は危険な香りぷんぷんの辰巳を「ステキ・・・」とか思ってたけど、20年も経つとそこんとこは冷めてた。こんな男は絶対嫌!安全な男がいいわ~。
 余談だけど、美人だけど勝気な性格が顔に出ているという佐知子は、私の脳内で柴咲コウに設定されてしまった。そのまま柴咲コウで読み進めて、彼女のことが結構好きな私は「辰巳許せん!」とか思ってた。

 1982年刊。アマゾンの画像は新装版。
別窓 | [あ行の作家]赤川 次郎 | コメント:2 | トラックバック:0 |
『一億円もらったら』  赤川 次郎
2007-11-06 Tue 00:14
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赤川 次郎

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 大富豪の宮島とその秘書・田ノ倉は持て余す金を見ず知らずの人に進呈し、相手の人生がどうなるのかを観察していた。彼の観察対象になった人々を描く5編の短編集。


「一億円もらったら」
 サラリーマンの武井は、毎朝挨拶を交わす女性からお金を貸して欲しいと頼まれる。八田というその女性は、父親が会社の金を横領したために社長から愛人関係を要求されているらしい。何もできないまま彼女と別れたが、そんな武井に突然一億円をやるという男が現れた。
 武井は彼女のためにお金を使おうとするが、混乱した彼女は受け取りを拒否する。武井はそのまま家族のためにお金を使うことにし、彼女の方は愛人を決意したものの父親が自殺未遂をする。
 これって一億円はあんまり関係ない話なんじゃないか?それにしても、赤川次郎らしいオチだったな。1話目にしては面白くなかった。


「故郷は遠くにありて」
 田ノ倉の前に、食事代を払ってくれたら自分を好きにしていいという女性が現れた。訳ありに見えたため、田ノ倉は彼女を1億円進呈者に選ぶ。その女性は1億円で、復讐のためにある町の大きな屋敷を買って町の人達をパーティに招待する。
 この復讐の動機、またかって感じ。赤川次郎はこのネタ使いすぎで、いい加減飽きた。復讐も中途半端で私の方がすっきりしない。この女性はよくこの程度で許したなと思う。


「一、二の三、そして死」
 朝の満員電車で痴漢の罪を着せられた北河は、会社からクビになる寸前、妻とは離婚寸前というところで宮島から一億円を受け取った。翌日北河は、昨日の女性が別の人を痴漢呼ばわりしている所に遭遇した。
 これも結局一億円ってそう関係ないように思える。「一億円もらったら」がテーマなのに、一億円なくても成り立つんじゃないかな。読後、何か物足りない。


「仰げば尊し」
 高校3年生の早苗は、学校の登下校時だけ自分のオリジナル制服を着て楽しんでいた。ある時、その制服をとても気に入ったという妙子と出会う。病気で高校に通えない妙子は早苗と仲良くなって体調が良くなった。制服に憧れを抱き、その制服を着て一緒に卒業式に出たいと言うようにまでなる。しかし妙子が憧れている制服は早苗のオリジナル。今さらネタバレもできず、一人で悩む早苗が今回のターゲット。
 これはまあ、高校生の友情の話だから爽やかだった。こうなるだろうなって思う方向に話が流れ、安心して読めた。


「ミスター・真知子の奮闘」
 キャリアウーマンの妻を持つ平凡な会社員の前沢は、内助の功として妻を支えている。その妻がある有名な経営学者の講演会を企画していたが、仲介者によって企画を別の人物に売られてしまう。
 この話で一億円を受け取るのは夫の前沢なんだけど、やられたことにやり返す力がないはずの人が一億円を使っての反撃。この話のお金の使い道が一番面白かった。


 赤川次郎の本を読むのは本当に久し振り。小中時代はこの人ばっか読んでたのにな・・・。
 この小説の「一億円もらったら、人はどう行動するか」というテーマは面白い。でも、どの話も小さくまとまっていまいちだった。もっと波乱多い話かと思ったんだけど、受け取り手がみんな理性的過ぎてつまらん。
 やっぱ赤川次郎は20年くらい前のピーク以来、惰性で作家やってるだけな気がする。それなのに売れてるという、すごい人でもあるんだけど。
 でもこの本読んで、つい「もし私が一億円・・・」と無駄に考えてしまうのが空しい。
別窓 | [あ行の作家]赤川 次郎 | コメント:0 | トラックバック:0 |
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