元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
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『別冊図書館戦争2』  有川 浩
2009-02-13 Fri 00:35
別冊 図書館戦争〈2〉別冊 図書館戦争〈2〉
有川 浩

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 『別冊図書館戦争1』の続編。

「もしもタイムマシンがあったら」
 タイムマシンがあったらいつに戻りたいか?そんな話で盛り上がる堂上班で、ふと郁が緒方副隊長に話を振った。元メディア良化委員の隊員という異例の経歴を持つ彼が、戻りたいと考える大学時代の回想。
 大学時代、同級生の佳代と付き合い始めた緒方。卒業後は親の希望通り公務員となったが、反感を買われやすいメディア良化委員会への配属される。配属先を周囲に言えないまま過ごしていた緒方は、加代子が小説家を目指していたことを知った。デビュー作が乗るという雑誌は、2日後に検閲の対象となっていた。
 なんかさー、独自の世界について書けば書くほどリアリティのなさが露呈していく作者っていうのも珍しいよなぁ。良化委員会は国家2種を受けた人から配属されるらしいけど、思想と体力が必要な課がそんなんでいいのか!?とまずツッコミ。自衛隊のように、独自に募集・採用しないとあっという間に弱体化だろう。それからこの検閲。中国ですか?みたいな。
 このシリーズへのレビューをネットでいくつか読んで、メディア良化法がいつの間にかできてたって設定を「日本ならあり得そう」とか書いてる人が結構いて驚いた。私は日本だからこそあり得ないと思ったんだが。日本人は争いを嫌う。過去の戦争からか、海外の内紛にまで心を痛めるような人種だ。このシリーズの世界では同じ人種でドンパチやって怪我人も出るし、過去には死者も出たという。これはもう、日本人なら赤の他人なのにデモやら座り込みをするレベルだと思う。
 
「昔の話を聞かせて」
 郁の長所でもあり短所でもあるウエイトの軽さをからかった堂上は彼女を傷つけたお詫びにと、乞われるがままに昔の話をする。郁に昔の自分を重ねる堂上が、過去の失敗や小牧とのことが浮かび上がる。
 郁の戦闘能力で標準体重ないってどんな魔法使った戦闘してんだよ、とこの話でもツッコミ。郁は170センチだっけ?これまでの戦闘での足腰の強さ、短距離走をやってたという過去、この本の4話目で男の部下を右フックで吹っ飛ばすシーンがあることを考えると、少なくとも平均のウエイトないと無理でしょう。筋肉って脂肪より重いうえに、郁は女。見た目より重いっていうのがリアルな話だ。
 4話目で郁が殴った相手は防衛部とやらに配属されてる男。アッパー狙って沈ませるんならともかく、フックで吹っ飛ばしたんなら技を出した方のウエイトも重要。短距離走も、ある程度の体重がないと風に煽られてスピードが出ない競技じゃないっけ?
 ひどい運動音痴だけどスポーツ観戦好きって程度の私がこの程度わかるんだから、有川さんってよっぽど・・・。もしくは、どうせわかんないだろうと思ってこんな魔法使い的強さで郁を描いたのか?
 まあツッコミは置いといて。堂上は今のキャラがいいんであって、新人の頃のキャラはイマイチかな。出来る男は出来るイメージのままでいて欲しかったのは私の勝手なんだけど。
 ところで実際図書館で働いてると、本好きな男って少ない上にほとんどが地味極まりない。でもこの世界の図書館司書は自ら選んで司書という職業に就いてる、堂々たる男子が大勢いることには軽く驚く。実際問題、図書館司書に出会いってあんまりないっすよ。マジで。

「背中合わせの二人」(1)
 柴崎は水島という同期と同室になった。三正である柴崎との上下関係を頑なに貫こうとする彼女の態度にげんなりさせられつつも上手く付き合おうとする。
 その柴崎は、奥村という利用者からストーキングをされている。利用者としての立場を利用した巧妙なストーカーっぷりに、一線を引きながらも相手をしていた。その奥村が調子に乗って迫ったところを手塚に助けられ、それ以来彼氏のふりをしてもらうことにする。ところが奥村は作戦を変え、柴崎が家に行かざるを得ない状況を作り出してきた。
 この話も何だかなぁ。ご都合主義だなぁ。そもそも柴崎って、頭いいって設定でしょ?その割には著者が描ききれてないっていうのは置いといて、類いまれなき頭脳持ってんじゃなかったっけ?こんな奴に隙見せる所がまずご都合。それから、柴崎が家を一人で訪問せざるを得ない状況っていうのもおかしい。個々の状況に応じたサービスとして家に行かせるのはまあ、図書館によるからいいだろう。だけど一人で行かないといけない理由が皆無。「一人」にこだわって図書を返却してくれないんだったら、窃盗として訴えていいんですけど?そこのとこを避けて書くのは卑怯だよ。

「背中合わせの二人」(2)
 柴崎のヌードコラージュに、柴崎自身の正確なスリーサイズとブラのカップ数まで記された写真が男子下士官の間で出回っていた。郁たちは柴崎を守りつつ警察にも相談するが、犯人はなかなか捕まらない。さらに今度はアダルト系出会いサイトに柴崎の名前と携帯番号が登録され、事態は深刻化する。
 誰からかわからない悪意をあからさまに突きつけられた柴崎。男子下士官達が柴崎のコラ写真を見せ合っていたことに激怒する郁。柴崎を心配しつつ支えようとする手塚。堂上も小牧も当然協力する。やっと面白い話になってきたけど、楽しむには苦々しいネタだなぁ。
 その後何者かに攫われた柴崎を車で追おうとした手塚に、柴崎と同室の水島が一緒に行きたいと言ってきた所で、この話は(3)に続く。

「背中合わせの二人」(3)
 手塚は柴崎に、GPS発信機を仕込んだお守りを渡していた。それを頼りに柴崎の居所へ向かう手塚は、柴崎の悪口ばかり言う水島に辟易させられながらも運転を続ける。水島は柴崎の気遣いを悪意ある受け止め方しかできなかったような女だった。
 柴崎はアパートの一室で手足を縛られ、少しずつ肌が露出していくように写真を撮り続けられていく。手塚が水島に苛立って車から降りさせたため、一連の事件の共犯である坂上に連絡が行ってしまった。その頃には郁達は水島と坂上が犯人だと突き止めており、寮に帰った水島はそのまま逮捕された。手塚は堂上から知らされた坂上の住所ではなく、発信機が表示させた場所に向かった。
 図書館とか表現の自由とか、そういうの関係ない話だとこうも楽しめるのか、有川さんは。犯人の男や女が本当に気持ち悪かった。手塚を間に合わせるために坂上を“自分をじらして楽しむMタイプ”で描いてるのにはわかってるのに、ギャーッ手塚早くっ!とか思っちゃったよ。
 そして、無事2人がくっついて良かった。あとがきによると、柴崎と手塚の結婚が決定した辺りで物語を終了する予定だったらしい。しかしあまりにも後味が悪いと旦那さんから言われて結婚式のシーンを追加したとか。確かに。大きな不幸の後には大きな幸せがあると、爽やかな気分で本を閉じれるよね。

 この本では郁はずっと脇役だった。その代り、緒方、堂上、柴崎が主役を張る。こうなると、郁がいかに主人公向きの性格だったかが良くわかるな。郁が張り切ってた頃ほどの面白さはない。郁が主人公だった時では、穴ぽこが多くて不満に思う話と面白い話が同等あった。しかしこの本はひどい。前半2話の面白くなさが、シリーズ全体を通してピカ一だと思う。今回ばっかりは読むのやめようかと何度も思った。やっぱ1巻目が一番面白かったなぁ。
 私は人生で、読みかけて途中で止めた本は一冊もない。どんな本でも、どんなに時間かけてでも読み始めた以上は完読する。これはしょうもないこだわりだ。たまにこうやって自分を縛って自分で「あーつまらなかった」とか言う。我ながらアホだな。しかしこのシリーズは自分が就いてる職業。都合で多少遅れつつも後回しせずに読んだのは、まあ半ば義務かな。
 これをもって、このシリーズは終わりらしい。書けば書くほどつまらなく思えていったシリーズだけど、そう思うのは私だけみたいだ。ていうか、つまらないと思った人達はそれ以上読まなかったんだろうな。実際それが普通のリアクションだと思うし。 
 まあ、やっとシリーズ終わってくれて勝手に自分で背負ってた肩の荷を下ろせたって感じ。しかも最後は円満に終わって、良かった良かった。柴崎も最後には意地張るのやめて良かった。こうやって幸せに読み終えることができるっていうのは、アンチ読者でも嬉しく思う。
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別窓 | [あ行の作家]有川 浩 | コメント:4 | トラックバック:0 |
『別冊図書館戦争1』  有川 浩
2008-09-13 Sat 23:18
別冊図書館戦争 1 (1)別冊図書館戦争 1 (1)
有川 浩

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 『図書館危機』では当麻(だったっけ?)の件でやっと想いを伝えた郁と堂上。エピローグで結婚生活を描いて終わっていた。この「別冊」はその間の話を埋めるために作られたもの。この作家の「説明し過ぎ」感は最終話を終えてもなお続くのか~、さすがラノベの人。

「明日はときどき血の雨が降るでしょう」
 交際が始まった途端ラブラブ全開の主人公2人。むしろ堂上。その堂上が退院して間もない頃、毬江が図書館のゴミ箱から本に付いてるはずのバーコードシールを拾って持ってきた。調べてみると高価な本が何点か消えている。そこで堂上班が張り込むことになった。
 これまで図書館の仕組みを上手く説明してきた作者だけど、ここにきてなぜレファレンスの説明があんなに不自然だったのかが謎すぎる。説明的会話文で読者に解説するって、昔のマンガにはよくあったよな~と懐かしくなった。これまでシリーズ読んできて、柴崎と小牧の司書レベルであんな会話するか?私の尊敬する司書Mさんと、なぜ公務員なんかに・・・と思うほどバリバリ仕事をこなせる司書Kさんがレファについてこんな会話をしてるところを想像してみて、なんだか笑えてきた。言ってることは図書館の抱える問題の核心を突いてるんだけどね。ぷくく・・・。
 しかし最後のシーンは爽快に笑えた。抵抗する犯人を拘束するために何度か殴って返り血を浴び、そのままものすっごい笑顔を見せる郁。その笑顔を見てドン引きする堂上、小牧、手塚。殴ってる間に返り血浴びたことに気付かないってアドレナリン出過ぎなんだけど、その一生懸命さが郁らしいといえば郁らしい。
 何にせよ身体能力が高いというのは羨ましい話だ。

「一番欲しいものは何ですか?」
 実家に帰りづらくて正月を寮で過ごした郁に、堂上の妹から電話があった。それをきっかけに堂上家にお邪魔した郁。確実に距離を縮めつつある。
 正月休館明け、スーツ姿の中年男性がアルコール臭を漂わせて図書館のあちこちで寝入っているという騒動があった。注意した際に暴れても困ると言う理由で防衛部がそれとなく見張ることになる。その男が子供向けのお話し会の会場に乱入して寝入ってしまったために、思わず強めに注意した手塚。しかし酔っ払いは逆ギレして土下座を要請した。その姿を哀れに思って優しい言葉を掛けた郁だったが、後日「俺の気持ちをわかってくれるのはあんただけだ」と抱きつかれてしまう。
 図書館をこういう「無料暇つぶし場所」と思ってる人は確かにいる。実際に浮浪者は恐ろしく多い。まあそう思って頂いて結構だけど、そうとしか思ってない人ってムカつくよなぁ。しかも「自分は納税者だ!」とか言い出す奴とか相当ムカつく。「支払税金少ないクソが何言ってんだよ」とか言い返したかったんだけど、そんな大問題に発展しそうなことを言えるはずもなく。
 ところで業務部の司書は怯えて酔っ払いに注意が疎かっぽい表現はやっぱ気になるな。タチ悪そうな人に注意しに行く前に上司とに「もし逆ギレされて私が刺されたら、きちんと訴えて買ってくださいね。生きてたら自分でしますけど」とか言っていた私はおかしいのか?それともこの本の中の図書館の司書が、図書館を守るという気概が足りないのか?防衛部というのがあるがためについ頼ってしまうのか?
 ちなみにタイトルは堂上の実家で酔いつぶれた郁が、堂上からお詫びの品を聞かれて考えてたことがただ漏れだったという話。ラブラブい。

「触りたい・触られたい二月」
 堂上の実家で両親が留守にしていた時、突然押し倒された郁。それ以来ぎくしゃくしてしまったうえ、慰めた手塚の胸で泣いているところを堂上に見られて余計きまずい思いをしてしまう。その気まずさの中、図書館内に催涙弾が投げ込まれた。
 外に避難したところ、社会科見学で来ていた小学生が一人足りないという報告を受ける。どうやら聴覚障害児で、避難放送が聞こえてないらしい。防護服が届く時間を惜しんで館内に飛び込んだ郁は追いかけて来た堂上と共に、逃げ遅れた小学生を無事避難させることができた。

「こらえる声」
 武蔵野第二図書館で麻薬中毒者が人質を取って立て篭もる事件が起こった。以前、痴漢を撃退した時の服装で犯人を釣ることに成功した郁は、一気に攻めてこの件を解決させる。
 その数日後、郁達が務める図書館で雄大という4歳の男の子が行方不明になる。幸い小牧と手塚がすぐに見付けたが、その後度々、雄大は館内で姿をくらませた。さらにお菓子をあちこちに隠すようにもなってきた。
 ある日また行方不明になった雄大を、郁と堂上が見付けた。逃げ出した雄大に追い付いた郁だったが、過剰な反応から雄大が母親から虐待を受けていたことを知る。
 この話では冒頭で、初めてのお泊りにスポーツブラで行ってしまうという失態を乗り越えて初体験を終えた郁の話が書かれている。タイトルはその時の事かと思わせといて、実は雄大のことだったんだなぁ。
 麻薬中毒者の事件が解決した時に図書館安全神話書かれてたけど、何でみんな図書館を安全だって思うんだろうな。不審者を入らせないようにする体制は全くできてなくってほとんどザルだって、見てわかるだろうに。

「シアワセになりましょう」
 郁は堂上、小牧、手塚、柴崎の協力で昇任試験に無事受かり、士長から三正になることができた。堂上から昇任祝いに欲しい物を聞かれて、2人きりの時間を増やすために部屋を借りたいと提案してみた。しかしあっさりと却下されたことで腹を立ててしまう。
 周囲に心配されつつもなかなか許せないでいた郁は、館内で遊んでいた中学生を注意したところ「うるせえ公僕」と反抗される。その言葉づかいは、最近若い人に人気の木島ジンという作家の影響だった。木島ジンはメディア良化委員会が違反語に指定している言葉を一切使わずに、人を不愉快にさせる表現を使った作品を作る作家らしい。
 その木島ジンが、教育委員会とPTA団体からの依頼でメディア良化委員会の検閲の対象とされることになった。4回の検閲抗争から図書館を守った後、郁は堂上をデートに誘う。その席で堂上は部屋を借りるより婚約指輪を買いたいと言った。

 
 私の計算によると・・・ってほど大したもんじゃないけど・・・『図書館革命』はこの本の2年後くらいになるのか。思ったほどラブモードがうざくなかったと思う。普通にいい感じの付き合い始めって感じ。喧嘩後の仲直りが毎回同じパターンではあるけどね。
 しっかし主要キャラ全員が美形ってもう勘弁してほしい。これまでは郁はただの元気印娘って扱いだったのに、堂上と付き合いだして可愛くなって悔しい思いをしている男性職員も多いとか、もうちゃぶ台ひっくり返しちゃうよ。美形キャラって1作品男女1人までだというのが持論だ。ちなみに肉親はOKね。それ以上出ると不自然だと思う。
 さてこのシリーズ読んでると、どうにも司書時代を思い出す。今も司書だけどちょっと特殊系なんで、ごくごく普通の司書時代は懐かしい。だもんで思い出話を思い出すままに書いちゃった。あーあ、あの頃が永遠に続いたら楽しいのになぁ。とはいえ以前私が勤めていた図書館は現代の荒波に揉まれてアップアップでもあるんだけど。
 現代図書館が抱える問題がいい感じで取り込まれてる。一部時代遅れやら矛盾やらを感じる部分があるのも相変わらずだけど、現状の問題を取り入れてあるのは司書としては「そーそー、そこんとこ利用者に知ってて欲しかったりとかするけど難しいんだよね~」と思う所もある。図書館神話説とか、殊更に思った。
 図書館を安全と思ってる人は本当に多くて、小さい子供を児童コーナーに置いて自分は出掛けたりというのはよく聞く。私が以前勤めてた図書館は規模が大きい方で利用者も雑多だから、小さすぎる子を置いて行くような人はいなかった・・・と思う。でも規模が小さくて利用者も比較的少ない図書館だと、わりと多いようだ。図書館に来る人は良識ある人ばっかりとか、根拠なく思ってたりするのかなぁ。浮浪者が変態だったらどうすんのかなぁ。疑問すぎ。他にも、置き引き、のぞき、盗撮、露出なんかは、私達が把握してる以上にあったことだろう。
 図書の切り取り、持ち出しも本当に多い。ひどいのはティーンズ雑誌で、書架に出してるとあっという間にほっそりとなって発見されたりとかする。一部の図書館では荷物の持ち込み禁止とかしてるけど、あれってもっと強化してくれないかなぁと思う。この「図書館」シリーズの世界をリアルに考えてみると、検閲によって手に入らなくなる本当に貴重な書籍も現実世界とは比較にならないほど多いはず。そんな時代に手荷物持ち込み禁止に踏み込んでないのは、図書館側の怠慢だと思うけどな。こういう点が矛盾を感じたりするんだが。
 それから有川さんは、どうにもこうにも「差別用語」に対してかなりご不満をお持ちみたい。絶対この手の話は来るよなぁ。しかも薄っぺらく。いやもうこの作家さん何冊か読んでるから、厚みとか期待してないけど。薄っぺらいエンタメも嫌いじゃないんだけど、自分の専門分野にもろ被りなもんだから、どうしてもこの上から目線発言が気になってしまう。
 例えて言えばアメリカ人が日系移民を「Jap」って呼んだのが語源だから、日本人を「Jap」って言っていいじゃんみたいな?アメリカ人作家が20世紀初期の日系移民の小説を書いて「Jap」って使ってても、私はわりと不愉快だけどなぁ。不愉快に思われようと言葉としてあるんだからしょうがないじゃんだって?そりゃしょうがないっちゃしょうがないけどさ、やっぱアメリカ人が有色人種をどっか侮蔑してるという思想が限り「Jap」と言われると、何だとこのホワイトピッグめが!とか思っちゃうもんじゃないだろうか。それが例え、最初に時代的考察によったとしても、私はめっちゃ不快。
 気の遠くなるような年月をかけて人種差別が根本から無くなる世界が来て、ようやく気兼ねなく使えるようになる言葉だと思う。同じように、障害者を嫌な目で見ているような健常者が多い現状で「時代考察による言葉なんだから」と言われてもさー。言葉という表面的な物しか見てない発言であって、背景にある歴史や文化や思想を無視して語れることじゃないっつーの。
 って感じでこの作者に手紙送っていい?それとももう来てる?歴史や文化や思想まで掘り下げた上でこの「違反語」やら「自主規制」を扱う小説ならいいと思う。でもこのテーマはこの作家には荷が重すぎるだろうな。
 さて、この『別冊~』は既に2が出てる。1が恋愛モード全開だと聞いて躊躇してたんで図書館に予約するのが遅れて、当分回ってこない。このシリーズはどういうふうに本当の終わりを迎えるんだろうか。
別窓 | [あ行の作家]有川 浩 | コメント:0 | トラックバック:0 |
『塩の街』  有川 浩
2008-05-18 Sun 00:59
塩の街―wish on my precious (電撃文庫)塩の街―wish on my precious (電撃文庫)
有川 浩

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 ある日突然、いくつもの巨大な塩の塊が降ってきた。その時から、生き物の体が塩そのものになって死んでいくという奇妙な現象「塩害」が起こり始める。ライフラインも危うく、社会秩序も崩壊しつつある世界で、17歳の真奈は秋庭という青年の許に身を寄せる。
 塩害のどさくさに紛れて警視庁科学捜査班所属から陸上自衛隊立川駐屯地の司令になった入江は、空から降ってきた塩は生命体であるという説を唱えて東京湾に突き刺さっている巨大な塩の塊を攻撃しようとしていた。その役に白羽の矢が立ったのは航空自衛隊の戦闘機乗りだった秋庭。さらに秋庭は、塩塊に攻撃をする戦闘機を米軍から奪うという計画を立てた。立川に来てから何となく秋庭を遠く感じていた真奈だったが、その話を聞いて彼への恋心を抑えきれなくなる。

 「図書館戦争」シリーズの作家さんだけど、文芸誌やネットで見かけると「自衛隊三部作」とやらに触れてあることが多い。どんなもんかと図書館で予約してみたんだけど、カウンターで受け取った瞬間うげって顔になったと思う。なにこのイラスト。こりゃまた下手なイラストレーターですなぁ。家に帰って口絵を見て、さらにげんなり。イラストに関してはツッコミどころに事欠かなかった。
 しかし内容は面白い。最初は塩害のことにはあまり触れず、何となく混沌とした世界で起こる出来事が連作短編のように描かれている。体がどんどん塩になっていってやがて死ぬという設定を活かした前半2編が好きだった。重そうなバッグを持って群馬から歩いてきたという青年・遼一は塩化した幼馴染の女性が入っていた。彼はその女性を静かに海に流し、その後自分も塩化した。
 次の話はその帰りのこと。車が銃を持ったひとりの男に襲われた。その男は真奈に銃を突きつけ、2人の家に連れて行けと言う。彼は脱獄した囚人だったが、塩化現象の研究のために人体実験をさせられていた。どんどん塩化していきながら、彼は高校時代に好きだった女の子の話をする。
 そこまでの話は面白かったんだけど、何かメインストーリーの塩塊攻撃辺りから何となく物足りなさを感じた。何かいきなり好き好きモードになったと思ったら、「愛か世界か」みたいな話になった。真奈は世界より秋庭がいてくれることを求めるんだけど、そんな選択は誰にでもできるからわざわざフィクションストーリーで持ってこられてもお腹いっぱいって気分になってうんざり。それまでは真奈のこと結構好きだったけどなぁ。
 さらに戦闘機のことがゴタゴタと書いてあって、基本読み飛ばさない主義の私は眠くて眠くて何度か落ちかけた。あってもなくてもストーリーに影響しない専門知識は、ストーリー展開を邪魔しない程度に書いてほしいと思う。
 専門知識をさんざん披露しておいて、電信が「猫は巣を飛び出した」と「バベルの塔は崩壊した」だってんでこれはもう笑ってしまった。暗号電文ってもうちょいかっこいいイメージなのは、トラトラトラの影響か?
 頭がいいという設定の入江に頭がいいエピソードがあまりないのも、何か拍子ぬけ。塩害の原因を突き止めたことがそういうことって言いたいのかもしれないけど、些細な閃きと膨大な実験データに依ってたんだったら「天才」とは言わないよなぁ。周囲を阿呆に描いておいて、ちょっとだけ鋭い演出を「頭がいい」という役にするのは無理がある。これは「図書館」シリーズも然り。まあこの『塩の街』はラノベだからこの程度も・・・って、作者がこれでデビューしたのは30歳越えてからか~。うーん。
 さらに私はこの作家と相性が悪いのかもしれないと思うことがある。「図書館」シリーズは私の専門分野のために、あれ?と思うことが多くて物語に集中できない部分が多くあった。そして今回。私のかつての知り合いに航空自衛隊の戦闘機乗りがいてさー。かなり親しかったんで戦闘機についてはほんの少しは知ってるわけで。マニアよりは知らないだろうけど一般人よりはってレベルなんだけど、おかげさまでこの本でもあれ?と思うことが何点かあったんだよなぁ。些細過ぎるけど、戦闘機乗りが英語が堪能じゃないから米兵と意思の疎通が難航するとかあり得ないから。ただのサル芝居のシーンでもあり得ないから。そりゃねーべと思ってしまうと集中力が削がれるのは悪い癖なんだろうけど。
 何かこう、前半の2話が面白かったのに後半が残念。そして一番残念なのはこのイラスト。骨格や肉付きがおかしかったり、同一人物が違う人に見えたりと、ストーリーを損なってる。去年ハードカバーで改訂増補版が出てるけど、そっちは変なイラストはなし。さらに大幅に改稿してあるらしいから読んでみようかな。
 ところでこの本、「自衛隊三部作」の陸自編らしい。確かに拠点は陸自だったけど、活躍してるのは空自なんでずっと空自編だと思ってた。
別窓 | [あ行の作家]有川 浩 | コメント:0 | トラックバック:0 |
『図書館革命』 有川 浩
2008-02-11 Mon 22:03
図書館革命図書館革命
有川 浩

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 シリーズ4巻目、最終巻。敦賀原子力発電所がテロリストにより襲撃を受けた。そのニュースが流れた日、郁はカミツレに思い入れのある堂上をハーブティが飲めるお店に連れて行くという初デートが実現する。ドキドキ初デートも束の間、2人は基地に呼び戻された。
 今回起こったテロの手口が『原発危機』という小説に酷似してた。メディア良化委員会はその作品を危険書みなして、作者である当麻蔵人の身柄を拘束しようとしているらしい。いち早くその情報を入手した折口は、当麻を連れて図書館基地内に連れてきていた。
 これを前例に今後作家狩りが始まることを恐れた図書館隊は、当麻蔵人を匿いながらメディア良化委員会と戦うことになる。その作戦の一端として柴崎は手塚の兄・慧と交渉し、図書館隊は「未来企画」と一時的に手を結ぶことになった。また折口の協力によってテレビで大々的に取り扱わせ、国民の目を向けさせようという試みは成功しつつある。
 当麻を原告にメディア良化委員会を訴える裁判に持ち込んだが、最高裁でも敗退。かねてから敗退した場合は大使館に逃げ込んで、当麻の国外亡命により他国から日本の言論弾圧に注目してもらおうとした図書館隊。しかし情報が漏れたらしく、亡命先候補の大使館ではメディア良化委員会が待ち受けていた。

 さて、最終巻。これはちょっと、私には無理。恋愛モード全開すぎてキツイ。上司の堂上に恋してる郁は、一生懸命なのに空回りして失敗してばかり。その度に堂上がさりげなく慰めてくれる。頭を撫でてくれる。ここぞという時には手を握って励ましてくれる。さらに実現した初デートでは特別視する発言が多々。そしてそれに舞い上がる郁。しかもモロに顔に出る性格の郁。わかっててやってるだろう、堂上。もういいから適当なとこで押し倒して、恋愛部分ははちゃちゃっと片付けてくれ。うざいったらありゃしない。ってこの本はいわゆる「ベタ甘」が売りで、それがこのシリーズの人気にも一躍買ってるんだろう。だから恋愛モノ嫌いの私は、お前は読むなと言われて然るべきなんだろうな。この本の「ベタ甘」な点に関しては少女マンガレベルで、主要人物全員が平均値よりずいぶん高いビジュアルを持ち、誰もが誰かとイチャこきイチャこきともうめんどくさいったら。
 このシリーズ、1巻目、2巻目くらいまでは面白かった。特に1巻が出た時は内容が斬新でもあり、取り扱うテーマの重さと若者言葉を多用した会話文のギャップが楽しかった。3巻目でそろそろ浅さが目立ち始め、4巻に至ってはツッコミどころ満載。今作は司書としての仕事は皆無だったんで、私も司書としてのツッコミはできない。それにしてもツッコミどころ満載。いつも通り、お前何様かと言われるようなツッコミを書こう。

 ずっと気になってたし前も書いたけど、国民の無関心さ。今回は玄田の作戦で国民が興味を持ち始めた。それまで国民は自分に関係ないから無関心だったとか、日本人馬鹿にしてんのかと。野党馬鹿にしてんのかと。それとも法案可決当時、巨大連立政権でもあったんだろうか?

 それから柴崎の「切れ者」という設定に伴うエピソードがぬるい。手塚慧との会話とか聞いてても特異なまでに頭がいいようには思えないのに、他の登場人物に「頭がいい」と言わせてる(思わせてる)ことで頭の良さを表現するってのがちょっと。普通に先読みの勘がいいってレベルじゃね?
 手塚慧の方も同じだ。彼は誰がどうやってこの法案を通したのかは掴んでるらしいけど、それを発表すると世の中がめちゃくちゃになるそうだ。で、その後それは秘密のまま物語は終了。これは世の中がめちゃくちゃになるフラグだと思って楽しみにしてたんだけど・・・。伏線じゃなかったんすね。うーん、ぬるい。まあ、単行本の形を取ってるけどこの本はラノベなんだと思うとこんなもんかと思えてきた。そうすると無駄の多い構成も納得。会話文にわざわざ普通は日常では使わない言葉(日和る、奇貨、etc.)を挟んでくるのも納得。ちなみに私の中で「頭がいい」登場人物を作れる人のベストは冨樫義弘で、中でも『レベルE』がベスト。「富樫かよ!」と言われたけど、彼は本当に頭いい。小説家では東野圭吾とかだろうか。

 あと、公には使用を自粛させられる、差別用語として制定されてる言葉について。「片手落ち」は語源そのものは「片」=「仕事」+「手落ち」=「終わってない」で、仕事を残してしまっている状態のこと。「片方の仕事を残している」の意味が転じて「片方に対する配慮が欠けている、不公平」という意味になる。現在では身体障害者を連想させられると、公には使用を自粛させられている言葉だ。
 これを身体障害者に対する差別用語とすることを、この本は馬鹿げているように書いている。それを差別用語だと指摘する人を蔑みつつ「善意の人々」と言ってるように感じた。「盲撃ち」「盲船」「按摩」「乞食」なども、物語や時代背景も考えずに指摘することを蔑んでいる。
 私は6年間の図書館司書時代にも障害者の利用者とたくさん出会ってきたし、今は障害者施設の司書をしてる。だから実体験として言える。障害者の人達って、やっぱそういう言葉は嫌がるもんだ。それはそういう言葉で彼らを差別したり傷つけたりしてきた歴史があって、今でも彼らは健常者から奇異の眼差しで見られたり気味悪がられたりすることに暗い感情を抱いてる。でも本書は、そういうのは無視。「片手落ち」の語源は上記の通り。でも、何らかの事情で片手がない人がそういう表現を見たら傷つくのではないかと思うことの何が悪いのか。
 彼らは健常者と違うことを多少なりとも気にしている。それが気にならないような福祉の充実、例えばドイツは障害者が障害者であることを忘れてしまうほど福祉が充実してるらしい。そういう社会になり、障害者が健常者と対等に生活できるようになれば差別用語なんて自然になくなるものでは?現在の日本で、差別用語を障害者の被害妄想のように言うってどーよ。
 この本で主要人物である作家の当麻は、物語の状況や時代背景で使うんだからとか言う。一部の人を傷つけてでも書きたい小説があるなら書けばいい。そういう言葉を使っても売れると、出版社を思わせる本を書けばいいじゃないか。差別用語だと指摘する投書を跳ね返すくらいの強さを持てばいいじゃないか。屈した奴が何を言うか。差別的表現があるくらいで物語観に損ないを感じずに読める人の方が圧倒的に多いんだし。
 出版社がNG出すなら自費出版でもしたらいい。買い手がある作家なら尚のこと。そしてそれを売ってみせて、ほれみろと言えばいいじゃないか。売れれば出版社の方が頭下げるだろ。それをしないで差別用語を指摘する人を陰で蔑む、その姿勢が気にくわない。
 時事ネタになるけど、倖田來未の羊水発言をバッシングすることは言論弾圧だと言う人もいるらしい。じゃあ羊水発言で傷ついた人のことは無視か?確かに35歳過ぎると出産は体に負担が掛るらしい。障害児が生まれる確率もわずかだけど上がるそうだ。でも実際には、子供欲しいけど35歳までに子供を産めずにいる人はたくさんいる。そしてそういう人達に「早く産んだ方がいいよ」という人は、もっとたくさんいる。私はあと5ヶ月で30歳になるけど、ガンガン言われてる。でもってそれは、とても不快だ。私は子供欲しいと思ってないし、配偶者はあと2年はいらないと言っている。そんな私が不快なんだから、産みたいと思ってるのに産めない人は本当につらいだろうと思う。これは25歳過ぎて「結婚は早い方がいいよ」と周囲から言われるようになることと似てるけど、それ以上に不快だ。だからバッシングしてんのに言論弾圧だとか、不快を不快と言えなくなることこそ言論弾圧なんじゃないのか? このシリーズでは、身体に何らかの障害を持ってる人が2人出てくる。片足がない人と、難聴者。せっかくそういう人達が登場するのに、主人公達の説に都合いいようにしかその障害がアピールされない辺りが残念だ。そして、物語全体の浅さを加味する。
 この『図書館革命』を読んで、差別用語について言いたいことはわかるし神経質すぎるっていうのもわかる。ただ、表現の自由ってそこまで偉いの?と思う。表現の自由は基本的人権の尊重を凌駕するのか?これは現時点ではまだまだ課題であり、改善の段階には来てないと思うんだけどなぁ。

 というわけで、ツッコミ終わり。自分でも頭悪いくせに何様かとか、自分はこんな小説書けるのか?書けないくせに、とか思う。他人が読んだら、自分が自分宛てに思ってる何百倍も言いたくなるだろうな・・・。
 こういうこと考えながら読んでたから、この巻は楽しめなかった。このツッコミどころに加えて恋愛モノ苦手体質で、楽しめるわけがない。現段階では、アマゾンでは見事に★5つですなぁ。私も客観的に見て評価は高いと思うよ。好き嫌いはともかく、3.5~4は付けたい。でも、このストーリーに込められたメッセージ性みたいなのがどうも一方的すぎる気がする。
 これが日本の近未来的パラレルワールドじゃなくて架空の世界の物語だったらほとんどのツッコミが成り立たないんだけど、日本なんだからなぁ。文明が進んでるようには見えないから、現代とほぼ同時代と思っていいだろう。そうするとちょっと腹が立ってくる。
 でも、これまで執筆活動してる人達の間だけにあった「差別用語」という壁を悪い物として、なおかつ物語仕立てで問いかけたその勇気は評価したい。
別窓 | [あ行の作家]有川 浩 | コメント:0 | トラックバック:0 |
『図書館危機』  有川 浩
2007-09-15 Sat 22:44
図書館危機図書館危機
有川 浩

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 メディア良化委員が設立されたという設定。不適切な表現が見られるメディアを摘発する委員会と、

一、図書館は資料収集の自由を有する。
二、図書館は資料提供の自由を有する。
三、図書館は利用者の秘密を守る。
四、図書館はすべての不当な検閲に反対する。
図書館の自由が侵される時、我々は団結して、あくまで自由を守る。

の理念の下に戦う図書館を描くシリーズ第3巻。
 女性戦闘要員司書の郁の周囲で様々なトラブルも起こりつつ、メディア良化の問題も少しずつ深刻化していく。
 いいテンポで話が進み、持ち上がった問題に体当たりでぶつかる主人公。それを支えたり引っ張ったりする周囲の人々ともますます結束が固まりつつ、ラブい話があちこちで持ち上がっている。郁が少しずつ成長しているのもいい。読むだけならとても面白い。
 でも単行本で出すならもうちょっと掘り下げて欲しいと思う。メディア良化委員会ばかりが悪者になってるけど、この法律自体の葛藤とかもっと書いてほしいなぁ。図書館=善、メディア良化=悪という単純構成が一元的すぎじゃないか。
 「床屋」や「魚屋」は不適切表だから使えないというのは実際にある規定だ。それに対して「誰が決めたんだ。おかしいじゃないか」というのは浅はかだ。決めたのはどっかの偉い人だろうけど、この言葉を公然と使うことで「傷付いた!賠償金払え!」と言う奴がいるのが現実なんだよね。そこまで書き込んで欲しいと思うのは贅沢ですか?
 あと、戦争放棄している日本なのに図書館VS.メディア良化委員会の抗争が内紛レベルにまで大きくなっており、それでも右翼が何も言わないのは不思議だとか言っちゃいけないんだろうか。どっちも税金で運営されてる機関なのに、「一般人は興味がない」とかあり得ん。法案が持ち上がった時点であちこちの政治討論番組でギャンギャン言われるはず。

 ここからは感想ではなくて司書としてツッコミ入れておきたいこと。大規模図書館なのに司書が暇すぎるとかはまあいい。作者は司書じゃないんだから。
 でも、これだけは言いたい。あの「読み聞かせ」がテーマになった話は結構頭にきた。図書館での読み聞かせは幼稚園や学校の先生、または教育テレビで俳優がやるような読み聞かせとは異なる。優秀司書という設定のはずの柴崎さんの読み聞かせは、児童担当司書の中じゃ「勉強不足なのに目立ちたがるボランティアレベル」だ。キャラによって声色変えるとか、失笑されるっつーの。
 あと、イソップの「すっぱいぶどう」を読んだ手塚の最後のトーク。あれもNGだ。内容を踏まえて人生訓につなげるなんて、司書はしてはいけない。司書がやるのはあくまで本との架け橋まで。主観を入れちゃいけない。本書の内容のように子供の方から問いかけてくることもあるけど、そこは“答えらしきもの”は言わないでちょっと考えさせる手助けをする程度に留めるのが仕事。
 どっちも入門書に書いてあること。入門書の入門書ってくらいのやつにも書いてあった。優秀司書というキャラ設定のこの2人が読んでないという方が不自然。
 この著者は図書館が抱える問題とか、日常でよく起こるトラブルなんかをそれなりに勉強して書いているとは思う。読み聞かせもどっかの図書館に見学とか行ってそうだけど、どうも客寄せのために本来成すべき形とは違った方向に行った図書館にでも行ったんじゃないか。
 それから、図書館を託児所代わりにして子供を置いてどっかに出かける親と、教育がなってなくて騒いだり喧嘩してる子供達にお仕置きする柴崎さん。そういう子達を上手に手懐けて、図書館大好きっ子にできるようなお母さんタイプのベテラン司書はこの図書館にはいないんだろうか。かわいそうな図書館だし、かわいそうな子供達だ。
 この章は全体的にひどい内容だった。私が司書じゃなかったら楽しめたのかな。
 この本を読んだ図書館司書がどう感じたのか聞いてみたい。前の職場を辞める直前に職員さんの中でも責任者的立場にいた人に勧めてみたけど、読んでくれたかな?そうたくさん本を読めないくらい忙しい人だったから、どうだろうか。
 ストーリー展開は面白かったから、多分全く知らない職業について書いてあったら騙されて面白がってたと思う。自分がたった6年司書やったせいで、素直に楽しめないのはある意味残念。
別窓 | [あ行の作家]有川 浩 | コメント:0 | トラックバック:0 |
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