読んだ本をひたすら記録する備忘録ブログ。思ったことは全部書き、平気でネタバレしてます。
『塩の街』  有川 浩
2008-05-18 Sun 00:59
塩の街―wish on my precious (電撃文庫)塩の街―wish on my precious (電撃文庫)
有川 浩

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 ある日突然、いくつもの巨大な塩の塊が降ってきた。その時から、生き物の体が塩そのものになって死んでいくという奇妙な現象「塩害」が起こり始める。ライフラインも危うく、社会秩序も崩壊しつつある世界で、17歳の真奈は秋庭という青年の許に身を寄せる。
 塩害のどさくさに紛れて警視庁科学捜査班所属から陸上自衛隊立川駐屯地の司令になった入江は、空から降ってきた塩は生命体であるという説を唱えて東京湾に突き刺さっている巨大な塩の塊を攻撃しようとしていた。その役に白羽の矢が立ったのは航空自衛隊の戦闘機乗りだった秋庭。さらに秋庭は、塩塊に攻撃をする戦闘機を米軍から奪うという計画を立てた。立川に来てから何となく秋庭を遠く感じていた真奈だったが、その話を聞いて彼への恋心を抑えきれなくなる。

 「図書館戦争」シリーズの作家さんだけど、文芸誌やネットで見かけると「自衛隊三部作」とやらに触れてあることが多い。どんなもんかと図書館で予約してみたんだけど、カウンターで受け取った瞬間うげって顔になったと思う。なにこのイラスト。こりゃまた下手なイラストレーターですなぁ。家に帰って口絵を見て、さらにげんなり。イラストに関してはツッコミどころに事欠かなかった。
 しかし内容は面白い。最初は塩害のことにはあまり触れず、何となく混沌とした世界で起こる出来事が連作短編のように描かれている。体がどんどん塩になっていってやがて死ぬという設定を活かした前半2編が好きだった。重そうなバッグを持って群馬から歩いてきたという青年・遼一は塩化した幼馴染の女性が入っていた。彼はその女性を静かに海に流し、その後自分も塩化した。
 次の話はその帰りのこと。車が銃を持ったひとりの男に襲われた。その男は真奈に銃を突きつけ、2人の家に連れて行けと言う。彼は脱獄した囚人だったが、塩化現象の研究のために人体実験をさせられていた。どんどん塩化していきながら、彼は高校時代に好きだった女の子の話をする。
 そこまでの話は面白かったんだけど、何かメインストーリーの塩塊攻撃辺りから何となく物足りなさを感じた。何かいきなり好き好きモードになったと思ったら、「愛か世界か」みたいな話になった。真奈は世界より秋庭がいてくれることを求めるんだけど、そんな選択は誰にでもできるからわざわざフィクションストーリーで持ってこられてもお腹いっぱいって気分になってうんざり。それまでは真奈のこと結構好きだったけどなぁ。
 さらに戦闘機のことがゴタゴタと書いてあって、基本読み飛ばさない主義の私は眠くて眠くて何度か落ちかけた。あってもなくてもストーリーに影響しない専門知識は、ストーリー展開を邪魔しない程度に書いてほしいと思う。
 専門知識をさんざん披露しておいて、電信が「猫は巣を飛び出した」と「バベルの塔は崩壊した」だってんでこれはもう笑ってしまった。暗号電文ってもうちょいかっこいいイメージなのは、トラトラトラの影響か?
 頭がいいという設定の入江に頭がいいエピソードがあまりないのも、何か拍子ぬけ。塩害の原因を突き止めたことがそういうことって言いたいのかもしれないけど、些細な閃きと膨大な実験データに依ってたんだったら「天才」とは言わないよなぁ。周囲を阿呆に描いておいて、ちょっとだけ鋭い演出を「頭がいい」という役にするのは無理がある。これは「図書館」シリーズも然り。まあこの『塩の街』はラノベだからこの程度も・・・って、作者がこれでデビューしたのは30歳越えてからか〜。うーん。
 さらに私はこの作家と相性が悪いのかもしれないと思うことがある。「図書館」シリーズは私の専門分野のために、あれ?と思うことが多くて物語に集中できない部分が多くあった。そして今回。私のかつての知り合いに航空自衛隊の戦闘機乗りがいてさー。かなり親しかったんで戦闘機についてはほんの少しは知ってるわけで。マニアよりは知らないだろうけど一般人よりはってレベルなんだけど、おかげさまでこの本でもあれ?と思うことが何点かあったんだよなぁ。些細過ぎるけど、戦闘機乗りが英語が堪能じゃないから米兵と意思の疎通が難航するとかあり得ないから。ただのサル芝居のシーンでもあり得ないから。そりゃねーべと思ってしまうと集中力が削がれるのは悪い癖なんだろうけど。
 何かこう、前半の2話が面白かったのに後半が残念。そして一番残念なのはこのイラスト。骨格や肉付きがおかしかったり、同一人物が違う人に見えたりと、ストーリーを損なってる。去年ハードカバーで改訂増補版が出てるけど、そっちは変なイラストはなし。さらに大幅に改稿してあるらしいから読んでみようかな。
 ところでこの本、「自衛隊三部作」の陸自編らしい。確かに拠点は陸自だったけど、活躍してるのは空自なんでずっと空自編だと思ってた。
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『図書館革命』 有川 浩
2008-02-11 Mon 22:03
図書館革命図書館革命
有川 浩

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 シリーズ4巻目、最終巻。敦賀原子力発電所がテロリストにより襲撃を受けた。そのニュースが流れた日、郁はカミツレに思い入れのある堂上をハーブティが飲めるお店に連れて行くという初デートが実現する。ドキドキ初デートも束の間、2人は基地に呼び戻された。
 今回起こったテロの手口が『原発危機』という小説に酷似してた。メディア良化委員会はその作品を危険書みなして、作者である当麻蔵人の身柄を拘束しようとしているらしい。いち早くその情報を入手した折口は、当麻を連れて図書館基地内に連れてきていた。
 これを前例に今後作家狩りが始まることを恐れた図書館隊は、当麻蔵人を匿いながらメディア良化委員会と戦うことになる。その作戦の一端として柴崎は手塚の兄・慧と交渉し、図書館隊は「未来企画」と一時的に手を結ぶことになった。また折口の協力によってテレビで大々的に取り扱わせ、国民の目を向けさせようという試みは成功しつつある。
 当麻を原告にメディア良化委員会を訴える裁判に持ち込んだが、最高裁でも敗退。かねてから敗退した場合は大使館に逃げ込んで、当麻の国外亡命により他国から日本の言論弾圧に注目してもらおうとした図書館隊。しかし情報が漏れたらしく、亡命先候補の大使館ではメディア良化委員会が待ち受けていた。

 さて、最終巻。これはちょっと、私には無理。恋愛モード全開すぎてキツイ。上司の堂上に恋してる郁は、一生懸命なのに空回りして失敗してばかり。その度に堂上がさりげなく慰めてくれる。頭を撫でてくれる。ここぞという時には手を握って励ましてくれる。さらに実現した初デートでは特別視する発言が多々。そしてそれに舞い上がる郁。しかもモロに顔に出る性格の郁。わかっててやってるだろう、堂上。もういいから適当なとこで押し倒して、恋愛部分ははちゃちゃっと片付けてくれ。うざいったらありゃしない。ってこの本はいわゆる「ベタ甘」が売りで、それがこのシリーズの人気にも一躍買ってるんだろう。だから恋愛モノ嫌いの私は、お前は読むなと言われて然るべきなんだろうな。この本の「ベタ甘」な点に関しては少女マンガレベルで、主要人物全員が平均値よりずいぶん高いビジュアルを持ち、誰もが誰かとイチャこきイチャこきともうめんどくさいったら。
 このシリーズ、1巻目、2巻目くらいまでは面白かった。特に1巻が出た時は内容が斬新でもあり、取り扱うテーマの重さと若者言葉を多用した会話文のギャップが楽しかった。3巻目でそろそろ浅さが目立ち始め、4巻に至ってはツッコミどころ満載。今作は司書としての仕事は皆無だったんで、私も司書としてのツッコミはできない。それにしてもツッコミどころ満載。いつも通り、お前何様かと言われるようなツッコミを書こう。

 ずっと気になってたし前も書いたけど、国民の無関心さ。今回は玄田の作戦で国民が興味を持ち始めた。それまで国民は自分に関係ないから無関心だったとか、日本人馬鹿にしてんのかと。野党馬鹿にしてんのかと。それとも法案可決当時、巨大連立政権でもあったんだろうか?

 それから柴崎の「切れ者」という設定に伴うエピソードがぬるい。手塚慧との会話とか聞いてても特異なまでに頭がいいようには思えないのに、他の登場人物に「頭がいい」と言わせてる(思わせてる)ことで頭の良さを表現するってのがちょっと。普通に先読みの勘がいいってレベルじゃね?
 手塚慧の方も同じだ。彼は誰がどうやってこの法案を通したのかは掴んでるらしいけど、それを発表すると世の中がめちゃくちゃになるそうだ。で、その後それは秘密のまま物語は終了。これは世の中がめちゃくちゃになるフラグだと思って楽しみにしてたんだけど・・・。伏線じゃなかったんすね。うーん、ぬるい。まあ、単行本の形を取ってるけどこの本はラノベなんだと思うとこんなもんかと思えてきた。そうすると無駄の多い構成も納得。会話文にわざわざ普通は日常では使わない言葉(日和る、奇貨、etc.)を挟んでくるのも納得。ちなみに私の中で「頭がいい」登場人物を作れる人のベストは冨樫義弘で、中でも『レベルE』がベスト。「富樫かよ!」と言われたけど、彼は本当に頭いい。小説家では東野圭吾とかだろうか。

 あと、公には使用を自粛させられる、差別用語として制定されてる言葉について。「片手落ち」は語源そのものは「片」=「仕事」+「手落ち」=「終わってない」で、仕事を残してしまっている状態のこと。「片方の仕事を残している」の意味が転じて「片方に対する配慮が欠けている、不公平」という意味になる。現在では身体障害者を連想させられると、公には使用を自粛させられている言葉だ。
 これを身体障害者に対する差別用語とすることを、この本は馬鹿げているように書いている。それを差別用語だと指摘する人を蔑みつつ「善意の人々」と言ってるように感じた。「盲撃ち」「盲船」「按摩」「乞食」なども、物語や時代背景も考えずに指摘することを蔑んでいる。
 私は6年間の図書館司書時代にも障害者の利用者とたくさん出会ってきたし、今は障害者施設の司書をしてる。だから実体験として言える。障害者の人達って、やっぱそういう言葉は嫌がるもんだ。それはそういう言葉で彼らを差別したり傷つけたりしてきた歴史があって、今でも彼らは健常者から奇異の眼差しで見られたり気味悪がられたりすることに暗い感情を抱いてる。でも本書は、そういうのは無視。「片手落ち」の語源は上記の通り。でも、何らかの事情で片手がない人がそういう表現を見たら傷つくのではないかと思うことの何が悪いのか。
 彼らは健常者と違うことを多少なりとも気にしている。それが気にならないような福祉の充実、例えばドイツは障害者が障害者であることを忘れてしまうほど福祉が充実してるらしい。そういう社会になり、障害者が健常者と対等に生活できるようになれば差別用語なんて自然になくなるものでは?現在の日本で、差別用語を障害者の被害妄想のように言うってどーよ。
 この本で主要人物である作家の当麻は、物語の状況や時代背景で使うんだからとか言う。一部の人を傷つけてでも書きたい小説があるなら書けばいい。そういう言葉を使っても売れると、出版社を思わせる本を書けばいいじゃないか。差別用語だと指摘する投書を跳ね返すくらいの強さを持てばいいじゃないか。屈した奴が何を言うか。差別的表現があるくらいで物語観に損ないを感じずに読める人の方が圧倒的に多いんだし。
 出版社がNG出すなら自費出版でもしたらいい。買い手がある作家なら尚のこと。そしてそれを売ってみせて、ほれみろと言えばいいじゃないか。売れれば出版社の方が頭下げるだろ。それをしないで差別用語を指摘する人を陰で蔑む、その姿勢が気にくわない。
 時事ネタになるけど、倖田來未の羊水発言をバッシングすることは言論弾圧だと言う人もいるらしい。じゃあ羊水発言で傷ついた人のことは無視か?確かに35歳過ぎると出産は体に負担が掛るらしい。障害児が生まれる確率もわずかだけど上がるそうだ。でも実際には、子供欲しいけど35歳までに子供を産めずにいる人はたくさんいる。そしてそういう人達に「早く産んだ方がいいよ」という人は、もっとたくさんいる。私はあと5ヶ月で30歳になるけど、ガンガン言われてる。でもってそれは、とても不快だ。私は子供欲しいと思ってないし、配偶者はあと2年はいらないと言っている。そんな私が不快なんだから、産みたいと思ってるのに産めない人は本当につらいだろうと思う。これは25歳過ぎて「結婚は早い方がいいよ」と周囲から言われるようになることと似てるけど、それ以上に不快だ。だからバッシングしてんのに言論弾圧だとか、不快を不快と言えなくなることこそ言論弾圧なんじゃないのか? このシリーズでは、身体に何らかの障害を持ってる人が2人出てくる。片足がない人と、難聴者。せっかくそういう人達が登場するのに、主人公達の説に都合いいようにしかその障害がアピールされない辺りが残念だ。そして、物語全体の浅さを加味する。
 この『図書館革命』を読んで、差別用語について言いたいことはわかるし神経質すぎるっていうのもわかる。ただ、表現の自由ってそこまで偉いの?と思う。表現の自由は基本的人権の尊重を凌駕するのか?これは現時点ではまだまだ課題であり、改善の段階には来てないと思うんだけどなぁ。

 というわけで、ツッコミ終わり。自分でも頭悪いくせに何様かとか、自分はこんな小説書けるのか?書けないくせに、とか思う。他人が読んだら、自分が自分宛てに思ってる何百倍も言いたくなるだろうな・・・。
 こういうこと考えながら読んでたから、この巻は楽しめなかった。このツッコミどころに加えて恋愛モノ苦手体質で、楽しめるわけがない。現段階では、アマゾンでは見事に★5つですなぁ。私も客観的に見て評価は高いと思うよ。好き嫌いはともかく、3.5〜4は付けたい。でも、このストーリーに込められたメッセージ性みたいなのがどうも一方的すぎる気がする。
 これが日本の近未来的パラレルワールドじゃなくて架空の世界の物語だったらほとんどのツッコミが成り立たないんだけど、日本なんだからなぁ。文明が進んでるようには見えないから、現代とほぼ同時代と思っていいだろう。そうするとちょっと腹が立ってくる。
 でも、これまで執筆活動してる人達の間だけにあった「差別用語」という壁を悪い物として、なおかつ物語仕立てで問いかけたその勇気は評価したい。
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『図書館危機』  有川 浩
2007-09-15 Sat 22:44
図書館危機図書館危機
有川 浩

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 メディア良化委員が設立されたという設定。不適切な表現が見られるメディアを摘発する委員会と、

一、図書館は資料収集の自由を有する。
二、図書館は資料提供の自由を有する。
三、図書館は利用者の秘密を守る。
四、図書館はすべての不当な検閲に反対する。
図書館の自由が侵される時、我々は団結して、あくまで自由を守る。

の理念の下に戦う図書館を描くシリーズ第3巻。
 女性戦闘要員司書の郁の周囲で様々なトラブルも起こりつつ、メディア良化の問題も少しずつ深刻化していく。
 いいテンポで話が進み、持ち上がった問題に体当たりでぶつかる主人公。それを支えたり引っ張ったりする周囲の人々ともますます結束が固まりつつ、ラブい話があちこちで持ち上がっている。郁が少しずつ成長しているのもいい。読むだけならとても面白い。
 でも単行本で出すならもうちょっと掘り下げて欲しいと思う。メディア良化委員会ばかりが悪者になってるけど、この法律自体の葛藤とかもっと書いてほしいなぁ。図書館=善、メディア良化=悪という単純構成が一元的すぎじゃないか。
 「床屋」や「魚屋」は不適切表だから使えないというのは実際にある規定だ。それに対して「誰が決めたんだ。おかしいじゃないか」というのは浅はかだ。決めたのはどっかの偉い人だろうけど、この言葉を公然と使うことで「傷付いた!賠償金払え!」と言う奴がいるのが現実なんだよね。そこまで書き込んで欲しいと思うのは贅沢ですか?
 あと、戦争放棄している日本なのに図書館VS.メディア良化委員会の抗争が内紛レベルにまで大きくなっており、それでも右翼が何も言わないのは不思議だとか言っちゃいけないんだろうか。どっちも税金で運営されてる機関なのに、「一般人は興味がない」とかあり得ん。法案が持ち上がった時点であちこちの政治討論番組でギャンギャン言われるはず。

 ここからは感想ではなくて司書としてツッコミ入れておきたいこと。大規模図書館なのに司書が暇すぎるとかはまあいい。作者は司書じゃないんだから。
 でも、これだけは言いたい。あの「読み聞かせ」がテーマになった話は結構頭にきた。図書館での読み聞かせは幼稚園や学校の先生、または教育テレビで俳優がやるような読み聞かせとは異なる。優秀司書という設定のはずの柴崎さんの読み聞かせは、児童担当司書の中じゃ「勉強不足なのに目立ちたがるボランティアレベル」だ。キャラによって声色変えるとか、失笑されるっつーの。
 あと、イソップの「すっぱいぶどう」を読んだ手塚の最後のトーク。あれもNGだ。内容を踏まえて人生訓につなげるなんて、司書はしてはいけない。司書がやるのはあくまで本との架け橋まで。主観を入れちゃいけない。本書の内容のように子供の方から問いかけてくることもあるけど、そこは“答えらしきもの”は言わないでちょっと考えさせる手助けをする程度に留めるのが仕事。
 どっちも入門書に書いてあること。入門書の入門書ってくらいのやつにも書いてあった。優秀司書というキャラ設定のこの2人が読んでないという方が不自然。
 この著者は図書館が抱える問題とか、日常でよく起こるトラブルなんかをそれなりに勉強して書いているとは思う。読み聞かせもどっかの図書館に見学とか行ってそうだけど、どうも客寄せのために本来成すべき形とは違った方向に行った図書館にでも行ったんじゃないか。
 それから、図書館を託児所代わりにして子供を置いてどっかに出かける親と、教育がなってなくて騒いだり喧嘩してる子供達にお仕置きする柴崎さん。そういう子達を上手に手懐けて、図書館大好きっ子にできるようなお母さんタイプのベテラン司書はこの図書館にはいないんだろうか。かわいそうな図書館だし、かわいそうな子供達だ。
 この章は全体的にひどい内容だった。私が司書じゃなかったら楽しめたのかな。
 この本を読んだ図書館司書がどう感じたのか聞いてみたい。前の職場を辞める直前に職員さんの中でも責任者的立場にいた人に勧めてみたけど、読んでくれたかな?そうたくさん本を読めないくらい忙しい人だったから、どうだろうか。
 ストーリー展開は面白かったから、多分全く知らない職業について書いてあったら騙されて面白がってたと思う。自分がたった6年司書やったせいで、素直に楽しめないのはある意味残念。
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『図書館内乱』  有川 浩
2007-05-20 Sun 07:25
図書館内乱図書館内乱
有川 浩

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 この日本が出版検閲を義務化された世界になってしまったが、図書館は独立した機関として国家と戦うという『図書館戦争』の第2弾。いくら法律で独立した機関として守られているとはいえ、全図書館が民営化でもしてない限りありえない世界だという現実は置いといて読むと面白い。
 この本は前作の続きから始まる。図書館が危険な職場になってしまったこの世界で、両親から司書の仕事を反対されている主人公の郁。戦闘部隊にいることは秘密にしていたが、その両親が仕事の様子を見に来る事になったところから始まる。
 その他5章から成り、今回はそれぞれの登場人物にしっかりスポットが当ててあるし、「メディア良家法」と「図書館」という対立がしっかりと織り込まれていて物語としては面白さを増していた。
 書き方はライトで読みやすいけど、図書館のことをある程度勉強して書かれてるようで専門的なことも砕いて書いてあってわかりやすいと思う。
 でも今回は恋愛要素をかなり盛り込んであり、恋愛物が苦手な私はちょっとうんざり。登場人物が美形だらけというラノベ張りに不自然な設定がさらに苦手。この業界にはそんなに出会いはゴロゴロ転がってません。
 でも、面白かったと思う。

 以下余談だけど。
 郁の動機の手塚君とやら、この本で日本図書館協会の会長の息子であることが判明した。物語とは無関係だけど、私は現実の日本図書館協会の会長の常世田さんの講演会に4回くらい行った事がある。浦安図書館の元館長で、とても頭が良くて、話が上手で、堅いお役所仕事の連中を説得できるという素晴らしい人だ。読んでると、手塚君がその人の息子に思えて仕方なかった。

 あと、前作の時にも書いたツッコミというか揚げ足取りだけど。
 主人公が父親から探して欲しい本のジャンルを言われて書架に行くシーンがある。主人公が書架に行くと、その分野の本がごっそりなかった。上司に聞くとそのジャンルは今、展示コーナーでテーマとして扱ってるからそちらに置いてあるとのこと。そういえば、ミーティングでそんな事言ってたと思い出す主人公。
 ここのシーンは、図書館としてどうかと思う。表示しろ、表示。本を動かしたり特別に別置したら、自分達の仕事のためじゃなく利用者のために表示を作るべき。常連の利用者は、他の場所なんか見ないで自分が見たい本のジャンルに直行する人が多い。そして、どんなに人気がないジャンルでも利用している人はいると考えて図書館運営すべきだ。
 「このジャンルの本は展示コーナーに置いています」とプリントした簡易な物でもいいから、本を動かしたら利用者に対して断りをしないといけない。
 あと、少年犯罪者の実名報道をした雑誌の利用規制をするかどうかというミーティングについて。勝手に「閲覧不可」と決めた新しい上司(副館長だっけ?)がワンマンすぎるし、誰も彼を説得できないのは不自然。これまでの歴史を無視するのは、公的機関としてどうよ?図書館は「知る権利」を保障しているし、既刊された物を制限するのはそれこそ越権行為。税金を払ってる市民の同意なしに閲覧できないようにするのは、図書館本来の役割を履き違えてる。上司を誰も説得できなかったのは、図書館の理念を理解した司書が少ない図書館だと思う。
 それから、図書館のリンクに個人の書籍評価HPを貼るのも明らかにこの上司の越権行為。ダメな理由は主人公が言った通りだし、それを理解できない司書は勉強し直せ。私だってわかる理論を、この世界の優秀であるべき司書が理解してないのはおかしい。
 専門分野じゃなかったら(読んだ時はまだ私は現職だった)普通に物語そのものを楽しめただろうに、生来の性格のせいもあって粗が気になってしまった。
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『図書館戦争』  有川 浩
2006-06-30 Fri 21:42
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有川 浩

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 公序良俗を乱し人権を侵害する表現を取り締まる『メディア良化法』という法律が施行され、この日本で検閲が義務付けられることになった。
 しかし、図書館は、

 一、図書館は資料収集の自由を有する。
 二、図書館は資料提供の自由を有する。
 三、図書館は利用者の秘密を守る。
 四、図書館はすべての不当な検閲に反対する。

 図書館の自由が侵される時、我々は団結して、あくまで自由を守る。

という信念の元、国家と戦うことになる。
 国家VS図書館の対立は次第に激化し、どちらも武力行使で戦う世の中となっているというすごい世界だ。新人研修には戦闘訓練がある。本を巡った紛争があり、銃とかで戦って蔵書を守る。図書館を巻き込んだ社会問題が起こる。規制に引っかかった本をめぐって撃ち合いが起こる。こんな過激な話。
 さて、私の職業を明かす。ほとんどの人は知ってるはずだけど、司書だ。この本を読み始めて、「図書館の自由に関する宣言」を久々に思い出したよ。習ったな、そういえば。最後の一文はこの有川浩が作り出したものだけど。
 この本、人物作りがいい。主人公は単純バカな短大を卒業したばかりの司書。思考の単純さで問題を起こしたり、壁にぶち当たったりするけど、優しかったり厳しかったりする周囲の人々によって少しずつ成長する。ありがちなキャラばかりだけど、魅力的に描いてあるのがすごい。このキャラ達の作りこみのおかげでストーリーが面白くなってるんだろうな。 
 奇抜な設定、月並みだけど魅力的なキャラクター、そして図書館。不思議な寄り合わせがすごくいい感じで絡まってて、なかなか面白く読ませていただいた。
 この本のメインテーマとも言うべき表現規制は、実際に厳しくなってきてるみたい。文学界での有名どころで言うと、ハリポタでの「兎口」という表現が、その障害を持つ人の団体から講義されたらしい。身体障害者を指す言葉は、もうほとんど見ないもんな。トーク番組ではそれほど過激なトークでもないのに音がかぶせられてたりする。前後の話で「死ね」とか「気ちがい」とか、そういう言葉だと思う。またあるマンガ家が、「畜生」という言葉で引っかかったと言っていた。「犬畜生」だといいんだって。表現の自由は、よっぽど強い意志とか権力とかカリスマとかないと得られない時代になりつつあるっぽい。



 感想とは別に、ツッコミどころをどうしても書いておきたい。まず、閉架に分類番号の表示をしろ。大きい図書館ならなおさら。本の場所を覚えれなくて右往左往する主人公を描きつつ、休みの間に完璧に覚えてきた同僚と対照的に書いてあるけど・・・。司書さえわかればいいような表示をするよ、普通。研修で、○番〜○番までは×門で・・・とかいちいち口頭で説明しないっつーの。時間がもったいない。どうせ休みの日に覚えさせるんなら、もっと大切なこと覚えさせた方がいいと思う。
 それから、犯罪を犯した少年が過去に借りた本を公表しろって社会問題になって大変だった件。最近は全部パソコン管理だから、返却処理したら過去に借りた分はわからなくなる。公民館図書室じゃあるまいし、名前残すかよ。もしかしたら私が知らないだけで、データを復活させる技術があるのかもしれない(図書館勤め6年目だけど、そんな話は聞いたこともない。研修でも聞いたことない)。そしたらそれに対抗して、データを完全に消去させるシステムを作ってるだろう。第三条の守秘義務について事件を書きたかったんだろうけど、「現在借りている本」しかわからないんだから、もっと別の事件にしてほしかったな。

 いや、揚げ足とりだから、書かないでいようか悩んだんだけどね。結局書いちゃった。思ったことは言わずにはいられない腐った大人ですから。
 でも、図書館に関してわりと細かいシチュエーション設定をしてあるのには驚いた。相当司書にインタビューとかしたのか、知り合いに司書がいるのか、有川浩自身が司書資格を持っているのか。いずれにしろ、有川浩自身は図書館で働いたことないのか、あってもかなり小規模な図書館っぽいけどね。
 
 さて、思ったことは書ききったから言っていいよ、お前は何様かと。
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