元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
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『きみはポラリス』  三浦 しをん
2009-04-25 Sat 14:40
きみはポラリスきみはポラリス
三浦 しをん

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 「恋愛」をテーマに書かれた短編集。

「永遠に完成しない二通の手紙」 (お題「ラブレター」)
 岡田勘太郎のアパートに寺島良介が訪ねてきた。合コンで出会った内村洋子という女性にラブレターを書くのを手伝ってほしいと言う彼を、岡田は文句を言いながらもそれを手伝う。

「裏切らないこと」 (自分お題「禁忌」)
 まだ赤ん坊の息子・勇人をお風呂に入れるためにと急いで帰った「俺」は、妻の恵理花が勇人のペニスを口に含んでいるところを窓から見てしまう。以前から女性が身内の男性に向ける親しさが理解できずにいた「俺」は、その疑問をますます深くしていた。
 その不可解さから、「俺」は子供時代にお世話になった老夫婦のことを思い出す。

「私たちがしたこと」 (自分お題「王道」)
 喫茶店で料理を作っている「私」は、友人の美紀子のウェディングドレス作りを手伝っている。その最中に、美紀子は「私」が恋をしない理由と「あの日」起こったことを聞いてきた。ずっと気に掛けていた様子の美紀子に、「私」は忘れられない彼と「私」との出来事を話すことにした。
 高校時代、付きあっていた俊介の家に行った帰り道に「私」は何者かに河原で犯されそうになった。そこに俊介が駆けつけ、棒のようなもので男を殴り殺した。2人で穴を掘って埋めたが、俊介は後悔してないから警察に言うつもりはないと言う。しかし「私」は犯した罪に怯えるようになっていった。
 
「夜にあふれるもの」 「自分お題「信仰」)
 ミッション系の高校に通っていた時の友人・真理子は人間を超越した存在を体感し、ミサの最中に感極まってて失神するような子だった。
 その真理子の夫・木村芳夫から電話を受け、彼と会って話すことになった「私」ことエルザ。夫によると、真理子は妊娠してから「家に悪霊がいる」と言うなどおかしな言動が目立つようになってきたらしい。その日の夜、真理子が夫と共に「私」のアパートにやってきた。行きたい所があるから付き合ってほしいと言う。「私」と恋人の有坂は、青森のキリストの墓まで連れて行かれる。

「骨片」 (お題「あのころの宝物」)
 「私」こと蒔田朱鷺子は、大学卒業後は実家のあんこ屋を手伝ったり寝たきりの祖母の世話をしたりしている。ある日「私」のもとに、敬愛する恩師が亡くなったという連絡が入った。火葬場で「私」は、恩師の骨片をこっそり持ち帰る。

「ペーパークラフト」 (自分お題「三角関係」)
 夫・始と共に二歳の息子・太郎を連れて行った水族館で、夫の高校時代の友人・熊谷勇人と知り合った里子。ペーパークラフト作家をしているという彼は、時々家に来るようになった。
 ある日始の出張中にやってきた熊谷は、始が女性と写っている写真を見せた。始との再会は、彼の素行調査をするためだったようだ。

「森を歩く」 (お題「結婚して私は貧乏になった」)
 捨松と同棲し、未提出とはいえ婚姻届に判を押している「私」ことうはねは、彼が何の仕事をしているのか知らない。時々長期間いなくなり、年に1~2度50万か100万のお金を渡されるだけだった。捨松と暮らすようになって充足感を覚えてはいるが、「私」は彼の仕事を知るために後をつけることにした。 

「優雅な生活」 (自分お題「共同作業」)
 自分以外の女子事務員達が実践しているロハス生活に興味を持ち、手始めに玄米を買って帰った。貧乏で結婚もできないから2人で何か共同作業をしたかったと言うさよりの言葉で、最初は大反対していた俊明もロハスに拘るようになっていく。

「春太の毎日」 (お題「最後の恋」)
 麻子に拾われた「俺」こと春太は麻子が大好きだけど、麻子は「俺」がいてもしょっちゅう米倉健吾を家に上げていちゃついている。しかし麻子にとって「俺」が一番だとわかっているから、黙認していた。

「冬の一等星」 (自分お題「年齢差」)
 「私」こと映子は文蔵と過ごした時のことを思い出して時々車の後部座席で寝る。
 「私」が八歳の冬のことだった。母親の車の後部座席に忍び込んで寝ていたら、いつの間にか知らない男の人が運転をしていた。文蔵と名乗るその男は、「私」がいることを知らずに車を盗んだようだった。

「永遠につづく手紙の最後の一文」 (自分お題「初恋」)
 岡田勘太郎と寺島良介は体育倉庫に閉じ込められた。閉じ込められた状態でも馬鹿な寺島に、岡田はこれまでの付き合いを思い返す。

 巻末に書いてあったんだけど、三浦さんは恋愛をテーマにした短編を依頼されることが多いそうだ。依頼者から指示されたテーマを「お題」、自分勝手に設定したテーマを「自分お題」として載せてあったんで、各タイトルに括弧書きして付けた。
 大して厚くもない本に11編も入っているから、1話がとても短い。それなのに妙に深みがある。でもその深さは尋常じゃない感じで、フィクションとして扱わないと私の常識を大きく逸脱しすぎて嫌悪しそうになる物もあるくらいだ。
 例えば1話目と11話目は時間軸は違うけど同じ登場人物で、最後に同性愛だったことが明確になる。三浦さんが好きらしいホモネタは、私は基本的に大嫌いだ。友情に紛れ込ませたホモネタとか、特に嫌い。
 それからやたらと出てくるダメ男。「ペーパークラフト」の始、「森を歩く」の捨松、「優雅な生活」の俊明なんかがそうで、普通に見たら付き合ってる主人公達は不幸だ。彼女達はそのダメ男らと別れるつもりは全くなさそうという点も普通に考えたら理解できないけど、主題はそこではなくて別のところにあって別のことを伝えようとしてくる。
 どうしても受け入れがたかったのは、「裏切らないこと」の恵理花。これはちょっと、私の中の常識をシャットダウンしても受け入れ難い。先日の日記に書いたように、私は今妊娠中だ。腹の子は女の子らしいから、この行動を公平に受け取ることもできない。でも逆の立場で考えて、配偶者が娘の股間にそんなことしてたら殺人もんだと思う。老夫婦の話は良かったんだけど、どうも冒頭がね・・・。
 全体的に精度の高い作品だとは思うけど、好きか嫌いかというとやっぱ嫌いかなぁ。きれいすぎて昼ドラみたいとも感じるし、きれいだけどこんな恋愛は経験しなくて結構だとも思うし、あんま共感もできないし。
 あと、とても個人的なことだけど最近適当に借りる本が短編集ってことが多い。短編集は嫌いじゃないけど長編の方が好きだし、短編ばっか読んでると飽きてくる。久々に、ハラハラドキドキの長編小説を読みたいなぁ。
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『格闘する者に○』  三浦 しをん
2008-07-05 Sat 00:39
格闘する者に○格闘する者に○
三浦 しをん

草思社 2000-04
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 就職活動を始めた大学生の可南子は、マンガに出てくる編集者の仕事なら楽そうだと出版社に就職しようとする。就職活動を始めた時期は遅めだし常識知らずだが、友達の砂子と二木君はもっとのんびりしていている。家は父の義母と弟との3人暮らし。父の再婚相手である義母とは適度な距離を保ちつつ、半分だけ血の繋がった弟・旅人(たびと)とはそれなりに仲良く、暗黙の了解を保ちながら家族の形を保っていた。
 そんな可南子の行き当たりばったり就職職活動と、家でのゴタゴタと、七十歳前後の脚フェチのおじいさん・西園寺さんとの恋愛や、砂子や二木君とのゆるい会話を描く・・・と書くとすごいぐっちゃんぐっちゃんな話なんだけど、これがきちんとまとまるのが三浦しをんだ。彼女のデビュー作だけど、何作かしか読んでない私が抱いてる彼女そのものの世界が凝縮されている。当然、面白い。
 可南子の家、藤崎家は複雑だ。政治家だった可南子の祖父が後継者を育てる前に他界。一人娘だった可南子の実母は、父親の秘書の中で一番若かった可南子の父を婿養子に選んだ。しかし可南子の母も可南子を産んだ後に他界し、父は別の女性と結婚して旅人が生まれた。ここで後継ぎ問題が生じる。藤崎の血を引くのは可南子しかいないが可南子に政治家の器はないし、なりたくもないと思っている。旅人は優秀だけど、こちらも政治家にはなりたくないと言う。しかし本人達の意見を無視して、親族・後援会は可南子派と旅人派に分かれている。特に旅人を溺愛する父の秘書・谷沢は、旅人の進路に口出ししたり可南子の就職活動先に口添えしたりして煙たがられていた。
 三浦しをん作品の、読み進めてようやくじわじわと背景がわかってくる感じは好きだ。伏線だけぽんぽんと置いておいて、物語の流れに合わせて後々わかってくる。ミステリーだとよくある手法かもしれないけど、ヒューマンノベルみたいな話で使って、それがスッと物語に溶け込む。物語において重要な事柄でも、最初は雰囲気だけ匂わせておいて後から事実がやってくる。そこが面白い。
 例えば、可南子と西園寺さんの関係は脚フェチ変態じじいとの援助交際と思ってら、西園寺さんといる時の可南子は穏やかで、本当に愛し合ってたりする。微妙な人間関係の藤崎家において中核にいながらほとんど家にいないという可南子の父親はどんな冷徹人間かと思ってたら、意外とおちゃめなお父さんだったりとか。そもそも可南子の父親が政治家で藤崎家の直系は可南子しかいないということ自体が、西園寺さんにペディキュアを塗ってもらいつつ九十歳のタネばあさんにマニキュアを塗るという変なシーンで語られる。普通ならヒロインが誤解されないように、西園寺さんとの良好な関係は彼のことに触れた時点で語るもんじゃないか?そこを、誤解させておいて後から説明する。可南子の家の事情も家のことが書かれた時点で説明するのがセオリーだろうに、最初は家の雰囲気だけ書いておく。そういう技法が型破りに見えるし、使い方が絶妙すぎ。
 就職活動のことは、作者自身の実体験だろうな。どこまでがリアルなのかな?面接官とか面接内容とか、全てだったら面白いな。
 タイトルの「格闘」は、就職活動のこと?家のこと?両方?と思ってたら、就職試験会場で「カクトウするものに丸をしてください」と言う男のセリフから。二木君の推理で「該当」のことらしいとわかるけど、恥ずかしい間違いと思うと同時にタイトルはここから!?とどうでもいい場所から取ってることに笑えてくる。
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『私が語りはじめた彼は』  三浦 しをん
2008-06-15 Sun 23:51
私が語りはじめた彼は私が語りはじめた彼は
三浦 しをん

新潮社 2004-05-25
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 不思議ともてる冴えない中年男の村川によって、日常が歪んでいった人達を描く連作短編集。

1話目「結晶」
 村川が学生と関係を持っていることを告発する怪文書について、村川夫人に話を聞きに行った助手の三崎。村川夫人は既に何度も浮気をされており、離婚の話が進んでいた。村川夫人と話をするうちに、村川が講師を務めるカルチャースクールの生徒・太田春美ではないかという疑惑が持ち上がる。また三崎は、尊敬する村川から怪文書の差出人として疑われていること、恋人の倉橋香織も村川と関係を持っていることを知る。

2話目「残酷」
 賢司は有権者・飴屋の家に婿養子に入っていた。お嬢様生活が抜け切れない妻の真沙子をどことなく蔑み、訪ねる人のほとんどいない大屋敷に住んでいる義父を憐れみつつも、妻と娘を愛していた。しかし真沙子がカルチャースクールの講師である村川と浮気をしていることを知り、呆然とする。信じられない気持ちのまま問い詰められずにいると、その日から賢司は飼っているうさぎ達が自分の上で丸くなっている夢を見続ける。
 ある日持家のことで喧嘩になり、耐えかねた賢司は浮気のことを持ち出した。悪びれることもなく村川の良さを語る真沙子を、賢司は思わず殴ってしまう。真沙子は娘の千沙を連れて父の元へ行ったが、翌日仕事から帰ると家にいた。千沙が泣きながら仲直りするように言い、同じクラスの村川のむすめ・ほたるに怒鳴ってやったと言い出した。
 この話は1話目から何年か経っているようだ。1話目では夫の浮気に無感情になってしまっていた村川夫人が真沙子を訪ねてやってくるし、大学2年生だったほたるが小学生の千沙のクラスメイトとして登場する。

3話目「予言」
 父から突然、母と離婚するから家を出ていくと言われた中学生の呼人(よひと)。高校に入ってからはバイクを乗り回したり女遊びをしたりするようになった。風除けと顔隠しの意味で水中メガネをしてバイクを走らせていたが、隣のクラスの篠原椿がバイクを見せてほしいと言ってきた。約束をすっぽかして父親の家を訪ねてみた呼人だが、父親は2人の娘がいるおばさんと同棲していた。父親は平然と接し、おばさんはあからさまに邪険にする。耐えかねて帰った呼人だったが、家の前では椿が待っていた。それから2人は何となく仲良くなっていく。
 しばらく経ったある日、自分が通う高校の付属小学校の制服を着た父の新しい娘が呼人の教室まで訪ねて来た。彼女は、自分の家のドアに腐った豚肉をなすりつけたりするのはやめろと言って走り去る。
 これは1話目の直後~数年後の話だ。村川は太田春美と再婚していた。またこの話の終盤で、姉の婚約に触れてある。これは5話目につながるようだ。

4話目「水葬」
 依頼により村川綾子を観察している渋谷。完璧なカモフラージュをし、よりよく知るために綾子の有人・佐原直絵と付き合う。しかしその視線に綾子は気付いており、渋谷を母親が依頼した殺し屋だと勘違いしていた。妻子ある身の父を奪って結婚した母は、今度は自分が奪われる番だと思い込んでいるらしい。綾子は父の弟子と付き合っていたために、父と綾子の関係まで疑うようになった母が自分に殺意を抱いてると思っていた。殺されるよりは自殺するから渋谷に見守っていて欲しいと言う。

5話目「冷血」
 どこからともなく白い背中が現れるという夢を見続ける中学教師の律は、婚約者のほたるに父の再婚相手の連れ子の死を調べて欲しいと言われる。ほたるの義理の妹は村川綾子という名前で、海で死んでいた。ほたるは結婚式に参列してほしいと父に連絡したが、娘の死を理由に断られたことに傷付いていた。
 律は昔、どこかの社長の愛人の愛人だった。愛人達を管理する江畑という男にも気に入られていた。しかし愛人女性の太ももにある蜥蜴の刺青と同じ物を自分の腰に施し、一緒に暮らしたいと言うようになってから江畑から「潮時だ」と言われる。愛人女性の暇つぶしの礼に一度だけ力になるという約束をしてくれた江畑を、村川綾子の件で頼る。調査の結果わかったことは、村川綾子は海に入る時に揃えた靴と共に殺し屋が彼女について書いた観察記録を残していた。村川綾子は自分の筆跡がわかるものを残していなかったために捜査は難航したが、結局は彼女の創作として片付けられていた。
 律は村川綾子が住んでいた地を訪ねる。観察日記に殺し屋として登場する渋谷俊介とは連絡がつかず、友人だった佐原直絵とは会うことができた。
 村川の離婚はほたるが20歳頃だと書いてあった。村川綾子が死んだのは大学1年の18歳。母の再婚が小6だったことは4話に書いてあったから、ほたるさんは26~27かぁ。淡々としている律だけど、幸せになって欲しい。

6話目「家路」
 三崎は恩師・村川の死を新聞の訃報欄で知った。彼は村川教授とは決裂し、女子大の講師となっていた。妻の伊都との間に子供はできずに2人で暮らしている。伊都が知り合った奥村君という少年が毎日夕食を食べに来ているが、全くの他人である奥村君が来ることに三崎は何も言えないままでいた。
 九州まで行って村川の葬式に参列した三崎は、太田春美が村川と関係があった女性を見付けだして自分と優劣を付けようとしていることを悟ってぞっとする。その帰り、奥村君が幼少の頃に誘拐された話を聞かされた。彼の真意が読めずに怯えた三崎は、伊都との仲への疑惑と相まって家に来るのを止めるように言う。
 村川の実娘・ほたる伝いにお墓の場所を知らされた三崎は、遠くから納骨式を見た。骨壷を抱えて砂浜を一人歩く太田春美を見て、村川に愛し愛された女性達の間に理解はなかったことを悟って憐れみを憶える。

 適当に三浦しをんの作品を借りたんだけど、前回読んだ『むかしのはなし』に引き続き連作短編を引き当ててしまった。ジャンル的には苦手だけど、やっぱ上手いな、三浦しをん。1話ごとに語り手だけじゃなく時代も変わり、その多角性にに混乱させられる。でもきちんと整理ができて人間模様を理解するのに時間は掛ったけど、三浦しをんって並みじゃないなと改めて思った。エッセイではあんななのに・・・とどうしても思ってしまう。
 ちなみに、2話目「残酷」の10年後が1話目の「結晶」、その直後が3話目「予言」で、7年後が4話目の「水葬」、そのまた1年後が5話目の「冷血」、二十数年後が6話目の「家路」となっている。
 解決してないことはたくさんある。怪文書を書いた犯人についての記述はないし、太田春美の家のドアに腐った豚肉をなすりつけた犯人も不明。渋谷俊介の正体も何だか曖昧だ。大学に学生のふりをして潜入してしているだけのようだけど、綾子の死後に警察から取り調べを受けていて何も出てないってあり得るか?綾子は自分の肉筆の物を全て処分して死んだらしいけど、大学への提出物は?忍び込んだりなんかして回収したの?伊都と奥村君の関係は実際のところどうなの?という疑問が浮かんでくる。
 まあこうやってつい現実的にはどうかと考えてしまうこともあって私は、心情を丁寧に描いた本が苦手でもある。ていうか、表現が丁寧になるとどうしても事象の濃度が薄れる。私は事象を読みたいから、この本は評価するけど好みではないかな。何だか退屈に感じる。三浦しをんをこの本から読み始めてたらあまり好きにならなかったかもしれない。代表作『まほろ駅前~』や『風が強く~』やエッセイから読み始めたから好きかなって思い始めてるところ。
 それにしても物語の描き方の多様性に驚かされている。
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『むかしのはなし』  三浦 しをん
2008-04-08 Tue 00:33
むかしのはなしむかしのはなし
三浦 しをん

幻冬舎 2005-02-25
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 昔話からイメージを膨らませて綴られた7編の短編集。少しずつ繋がりがある話もあり、4話目以降は地球に隕石がぶつかるという話に絡めた話となっている。

「ラブレス」(かぐや姫)
 話全体が「お前」宛に送るメールの文章になっている。
 「俺」の父親も祖父も27歳で死んでいた。母親に「27歳の一年間はあまりで歩くな」的なことを言われて育たが、問題なく27歳の誕生日を迎える。人気ホストの「俺」は色んな女からプレゼントを貰うが、神保という女性は子どもをプレゼントすることにしたと言う。
 そんな「俺」は今、城之崎組に追われていた。晴海埠頭の倉庫に潜み、「お前」になぜ追われることになったのかを全て語る長いメールを送る。

「ロケットの思い出」(かぐや姫)
 「俺」が弁護士だか取調官だかへの語りは、子どもの頃に飼っていた犬の話から始まる。ロケットと名付けられたその犬の散歩を毎日欠かさずしていた「俺」は、散歩中によそ様の家を観察するようになった。そうするうちに家を見るという特技を身に付け、空き巣を生業にするようになる。
 「俺」はたまたま空き巣に入ったマンションは高校時代の同級生・犬山のもので、運悪く早く帰ってきた犬山に見付かってしまう。彼は警察に通報しない代わりに、元カノの家に空き巣に入ってほしいと言い出した。交際中に自分がプレゼントした物を全て取り返したいためだそうだ。こうして「俺」と犬山は一緒に空き巣をすることになった。

「ディスタンス」(天女の羽衣)
 「あたし」がカウンセリングの一環でで自分の内を書いている。実の叔父と愛し合い、14歳で肉体関係を持った「あたし」だが、両親にそのことがバレてしまった。「あたし」は鉄八だけを想って生きてきたのに、誰からの理解も得られない。当然、鉄八は「あたし」の家を出入り禁止になるが、「あたし」の方から鉄八に会いに行く。しかし最近、勉強が忙しいと言って鉄八と会えなくなってきた。
 思い返せば、鉄八は中学を卒業する頃から「あたし」の写真を撮らなくなっていた。それでも鉄八を信じ続ける痛切な想いを語っている。
 どう見てもロリに引っかかった女の子が成長と共に飽きられてるんだけど、それでも信じ続けてる。鉄八が吐き気がするほど卑怯な男で、「あたし」がかわいそうで、でも「あたし」から見たらそんな大人の意見なんて関係なさそうな強い想いが痛々しくて、悲しい読後感だった。

「入江は緑」(浦島太郎)
 海が大好きで、毎日舟屋で寝起きしている「ぼく」は日記をつけ始めることにした。今回は、物語全体が「ぼく」の日記になっている。
 久し振りに帰ってきた幼馴染の修ちゃんが、きれいな女性を連れて来ていた。日本政府から国民に向けて重大な発表がある日、「ぼく」はその女性・カメちゃんと修ちゃんを船に乗せて入り江に出た。重大発表の内容はカメちゃんが知っていて、教えてくれた。三ヶ月後に、地球は大きな隕石と衝突する予定らしい。脱出用のロケットは一千万人しか乗れず、科学者であるカメちゃんとその伴侶になる予定の修ちゃんは乗れることが決定しているそうだ。
 政治家や科学者が乗った後の残りの枠は一般公募で抽選になるから、「ぼく」も応募すべきだと修ちゃんは言う。

「たどりつくまで」(鉢かつぎ)
 地球滅亡が近付き閑散としていく街でタクシードライバーを続ける「私」は、タクシードライバーをしている「私」は、観葉植物に読み聞かせるために覚え書きをつけている。その日「私」は銀座で、大きな帽子を目深にかぶり、長いコートを着て、顔に包帯を巻いた女性を乗せた。「私」とその女性は雑談をする。彼女は死を目の前にして整形をしている最中だと言う。また、彼女は「私」を女として扱ったが、「私」の乗務員証の名前が男のものであることには何も触れなかった。
 なんでもない雑談なのに、何だかしっとりとした雰囲気で読まされてしまう。不思議な話だった。

「花」(猿婿入り)
 ほとんど詐欺的方法で元カレの友達「サル」と結婚させられた「私」。観賞用の花を開発する仕事をしていたサルは科学者として脱出用ロケットに乗る権利を得たけど、「私」はただサルに押し切られただけ。「私」は、もしサルが「私」を愛することを止めたら・・・と不安になる。
 地球に隕石が衝突し、宇宙のどこかに作られたドームで不安に駆られ続ける「私」がカウンセリングロボットに語る。
 読んでから、すごく寂しい気分になった。この話の時には、もう脱出用のロケットは地球を出発している。「私」が「地球はどうなったかしらね」と言っているから、たぶん隕石は衝突したんだろう。それが寂しい。そして、直径五キロのドームで暮らすいち女性の空虚も寂しい。寂しさが上手く重なって、読んだだけなのに喪失感さえ感じさせられた。

「懐かしき川べりの街の物語をせよ」(ももたろう)
 モモちゃんこと神保百助にはたくさんの伝説があり、高校では恐れられた存在だった。モモちゃんと仲がいいのは、唯一の友人らしき有馬真白、彼女の宇田鳥子だけ。モモちゃんに密かに憧れている「僕」は夏休みにひょんなことからモモちゃん達とつるむようになり、宇田さんの母親の形見とも言えるダイヤを父親の愛人の元から盗む計画に加担する。
 無事ダイヤを盗み出したある日、宇田さんの父親であり、モモちゃんの父親かもしれない男が「僕」に地球脱出のチケットを渡した。モモちゃんに渡してほしいが、「僕」が使っても構わないと言う。「僕」はチケットのことを切り出せないまま、日本政府からの重大発表後も何となく学校に通うモモちゃんとつるみ続ける。そして「僕」は今、季節のない場所でこの話を宇宙空間に送り出すためのディスクに保存している。
 うわー、何だろう、この話。際立った取り柄のない「僕」だけど、何となくモモちゃんにチケットを渡せないでいたことを責める気分にはなれない。モモちゃんは強くてめちゃめちゃな人で何だか底知れない魅力があるけど、でも運命には逆らえなかった。それだけなんだろうか。「僕」が卑怯だったんだろうか。生きることへの本能に従った「僕」の行動が当たり前だっただけだろうか。どれも正解のようで、それだけじゃないような不思議な話だった。

 短編集だけど、物語同士が少しずつリンクしている。例えば「たどりつくまで」の「私」の幼い頃の思い出として、飼えなかった子犬を川に流すシーンがある。「ロケットの思い出」の「ロケット」のことじゃないだろうか。また乗客の女が「あの子はなににもならなかった。おとなになりたくなかったのよ」と話す昔の友人「あの子」は「ディスタンス」の女の子を彷彿とさせる。その女性を降ろした後にタクシーに乗ってきた男は季節はずれの桜を持っていた。この男は「花」の「サル」のことだと思う。それから「懐かしき~」のモモちゃんこと神保百助って最初の「ラブレス」でホストの「俺」が妊娠させた女性のことで、その「俺」を追っていたヤクザが「懐かしき~」で「僕」にチケットを渡した男だ。モモちゃんの短命の運命ってそういうことみたいだ。
 ひとつひとつの物語も面白いんだけど、この運命のようなリンクがまた素敵だった。この作家さんは読めば読むほど面白い作家さんだなぁ。主人公ひとつ取っても、引出しの多さに驚く。そしてさらに物語のバリエーション。長編もいいけど、短編もかなり面白いじゃないか。短編小説ってこれ以上長くても短くても魅力が損なわれるだろうギリギリのところで完成してるところが好きなんだけど、もう完璧っすよ。
 最後まで読んで、『むかしのはなし』というタイトルの意味するところがただ昔話をアレンジしたってだけじゃないことがわかって、終わってしまっている悲しさが襲ってくる。
 三ヶ月後、地球に隕石がぶつかるとわかったらどうするだろう?全く想像つかない。焦燥感を抱きつつも、半信半疑で普通の生活を続けるかもしれない。でもやっぱ、最後の日は配偶者と一緒にいたいと思うだろうな。
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『人生激場』  三浦 しをん
2008-02-27 Wed 22:16
人生激場 (新潮文庫)人生激場 (新潮文庫)
三浦 しをん

新潮社 2006-07
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 雑誌『週刊新潮』に連載されていたエッセイを1冊にまとめたもの。2003年刊の改装改訂版。
 三浦しをんの『まほろ駅多田便利軒』『風が強く吹いている』が面白かったんでもっと読みたいと思ったんだけど、この人の本は図書館でいっつも貸出中。何とかエッセイコーナーで彼女の本を見付けたという、『しをんのしおり』を読んだ時と全く同じ状況で借りた。
 始終妄想してたりとか、胸毛のある男性が好きだとか、友達との駄話とか、くだらないことが面白い。それでいて、さすがに文学作品には造詣が深そうですなぁ。本の話はそうたくさん出てくるわけじゃないけど、渋いとこ押さえてる。私はタイトルと作品のイメージしか知らない本とかで、面白文章の中に違いを見せつけられた気がした。
 良い本を読んでるせいか、文章や言葉選びはきれいだ。だけど書いてることは妄想だらけで、そのギャップで面白さがプラスされる。
 しかし連載されてたのは『週刊新潮』だったんだけど、読者層である中高年男性はどう思いながら読んだんだろうなぁ。
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