元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『鷹姫さま』  諸田 玲子
2008-03-10 Mon 09:45
鷹姫さま お鳥見女房鷹姫さま お鳥見女房
諸田 玲子

新潮社 2004-09-18
売り上げランキング : 405018
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 密命を帯びて沼津へ行っていた伴之助が戻ってきて一安心だったが、伴之助の心の傷はなかなか癒えないようだった。球世は気がかりも心配事もその笑顔で包み込む。石塚源太夫と多津は無事結婚し、5人の子供達も次第に礼儀作法を身に付けつつある。しかし源太夫の仕官先はなかなか見付からずに浪人のままだ。
 年頃になった球世自身の子供達のことも気がかりではある。長男・久太郎に縁談が持ち込まれるし、家督を継げない次男の久之助は沼津から帰って以来随分と大人びてきたものの、身の振り方はまだ決まっていない。長女の幸江は男の子を産み姑と上手くやっていけるようになったようだが、次女の君江の嫁ぎ先のことも考えないといけない。久之助の友人と密かに逢っているようだけど・・・。
 という具合に、この巻は矢島家自身の問題が大きい。

「雪夜の客」
 筋向いに、古谷という近所付き合いの悪い中年夫婦が引っ越してきた。ある雪の日、球世と久之助はその家に訪ねて行った白装束の女が追い出される所を見た。放ってもおけず矢島家に一晩泊めたが、女は翌朝にはいなくなっていた。後になり、古谷が手を出した餌差しの娘だと知る。

「鷹姫さま」
 久太郎に水野忠邦の鷹匠・和知正太夫の三女・恵以との縁談話が来た。相手方の方が身分が高いが、長男だから婿入りするわけにはいかない。嫁に来てもよいと言われたが、伴之助は水野忠邦の命で沼津へ行って心身ともに傷を負って帰って来た。自分がが水野家に縁のある嫁をもらえば、家庭内が気まずくなると久太郎は思い悩む。
 また、球世の幼馴染の松井次衛門が恵以に仕えているということで訪ねて来た。彼女は見目麗しく聡明だが、手のつけられないわがまま娘。女だてらに鷹匠の真似事をし、鷹姫さまと呼ばれているという。
 久太郎は悩んだ末、自分は婿に行くわけにも行かず、碌が少ないために和知家の姫を迎えることができない。水野の口利きで出世できるという話も、婚家のつてを頼った身の程をわきまえない出世はしたくないと断った。

「合歓の花」
 隼人と相思相愛である君江を、彼の元に嫁がせることができるよう球世と伴之助は取り計らいを決めていた。そんな矢先、君江は隼人に組頭の娘との縁談が持ち上がっていると知る。ショックで家に帰る気にもなれずにいると、偶然出会った汚い老婆に家まで送って欲しいと頼まれる。
 一方、久之助は妹のために隼人に勝負を申し込んだ。ところが隼人は、君江を嫁にしたい、組頭の娘との縁談は断ったと言う。

「草雲雀」
 球世は、父・久右衛門の遺族を探しているという娘に会った。しかし父はまだかくしゃくとしている。不審に思いつつその事を告げると、彼女は何も言わずに去って行った。
 その後久之助は、矢島家を塀の節穴から覗こうとしている女と会った。綾と名乗るその女性は、母と自分は久右衛門が現役時代に甲府に滞在していた折、一緒に暮らしていたと言う。久右衛門は死んだものだと思い、母は生涯久右衛門の後生を弔っていたそうだ。
 一方球世はその話を、久右衛門から聞き出した源太夫から知らされた。お上の命令で友人を斬らなければならず、その折に妻子を頼むと言われたそうだ。罪滅ぼしのつもりがあってか、彼の妻子と共に暮らすうちに情が移った。できれば全てを捨てて、彼女達との暮らしていきたいと思ったと言う。
 しかし久右衛門は仕事で的に追われて深手を負う。母娘に危険が降りかかるのを防ぐため、死んだものとして江戸へ戻った。
 娘が久右衛門の形見として持ってきた小袖は、源太夫が預かることとなった。

「嵐の置き土産」
 嵐がやってきた。矢島家に避難してきた源太夫一家だったが、源太夫は自分達一家に納屋を貸してくれている庄兵衛も避難させてほしいと言う。頑として家を離れないと言う庄兵衛を、源太夫と久之助が迎えに行った。
 庄兵衛には庄吉という勘当した息子がいたが、彼が訪ねて来るのではないかと家を空けないようにしているようだ。渋々やってきた庄兵衛だったが、その日球世は勝手口から不審な男が入ってきてそのまま立ち去った所を見た。もしや庄吉ではないかと思ったが、翌日その男は死体となって発見された。
 また、縁談を断った恵以から見舞いの品が届いていた。恵以とは以前鷹狩の場で会って勝負を挑まれた久太郎だったが、見舞いの品は「敵に塩を送る」という意味を込めて贈ったようだ。

「鷹盗人」
 久太郎が仕官する御鷹屋敷では、最近立て続けに飼育している鷹が消えていた。三羽のうち二羽は見付かったが、その直後の鷹狩の場で将軍家のお鷹さまに矢を射た者があった。一早く狼藉者の姿を目にした久太郎と先輩の石川は後を追ったが、追いついてみると久太郎の父・伴之助が気を失った少年を担いでいた。
 少年の父はお鳥見役で伴之助とは昔馴染みだった。伴之助と同じように命令により遠出し、その地で命を落としたと言う。少年はそのことを恨みに思い、その恨みが鷹に向かった。もし伴之助も沼津で死んでいたら、家族にこんなつらい思いをさせていたのかと思うと放っておけなかった。
 看病には少年の母親だけでなく球世も加わったが、再婚した夫に負い目もあるようだ。夜は帰らせて、球世・伴之助夫婦が看病することになった。

「しゃぼん玉」
 以前、矢島家に来たことがある藤助と再会した。その再会の場で、源太夫が用心棒を務める家で物頭の息子・左金次を呼びつけ、話の次第では叩き斬るとまで言う者があった。直参だと威張る彼らを源太夫が追い払ったが、源太夫は物頭から息子の性根を叩き直してほしいと言われる。
 左金次は根っからの甘やかされっ子で根性がなく、石塚家も矢島家も困り果てていた。彼を鍛えることができないまま申し込まれた手合わせを受けた左金次だったが、当日は手ぶらでやってきた。

「一輪草」
 君江の縁談がまとまり、嫁ぐ日が近付いて来た折、球世のいとこの登美が来てあれこれと仕切り始めた。何から何まで口を出す登美の存在はありがたくも疎ましくもある。
 君江が嫁ぐ前日の散策で、久右衛門は久太郎に嫁を取らせ、久之助に養子先を見付けることを考えていた。その散策中、久之助が武家の娘らしき女性と歩いているのを目にした。喜びも束の間、その娘がかつて甲府で共に暮らした女性の娘だと気付いて蒼白になる。
 翌朝、君江の花嫁仕度が進む中、登美の姿が見えないことに気付いた。探しに行った球世と源太夫は、足を挫いてうずくまる登美を見付けた。縁起のいい日に忌み事は禁物だと自分を連れて行かないように言う登美を説得して、源太夫が登美を担いで矢島家へと急ぐ。 


 1巻目から球世はずっと変わらないけど、周りはどんどん変わっていく。源太夫と多津が結婚し、源太夫の連れ子達も成長しつつある。夫の伴之助は心の傷がようやく癒え始め、久太郎・久之助・君江にはそれぞれ想い人がいて、今回は君江が嫁ぐ。
 私は結婚と親に関することにあまりいい思い出がない。両親にあれこれ命令調で口を出され、反論すると罵られ、私自身が最低限譲れない部分を守ることに精一杯で疲れ果てた思い出が大半を占める。だから、こうやって両親が娘の結婚を心から喜んでくれる親の話はかなりじーんと来る。
 また今回は、久右衛門の過去が明らかになった。鷹姫さまこと恵以さまと久太郎の関係、久之助と綾の関係も、今後進展していくんだろう。特に久之助と綾の関係が進展すれば、久右衛門も穏やかではないはずだ。
 この本は、悪い人がほとんど出てこない。そういう良い人だらけの本って私は嫌いなんだけど、この本はわりと楽しく読めてる。お鳥見役の務めの意外な厳しさが、いい人だらけで主人公がちょっと成長して終わるだけの本とは一味違ってていい。私はそういうの、結構好きだ。それから、シリーズを重ねても球世の包容力ってやっぱいいね。
別窓 | [ま行の作家]諸田 玲子 | コメント:0 | トラックバック:0 |
『蛍の行方』
2007-11-23 Fri 12:20
蛍の行方―お鳥見女房蛍の行方―お鳥見女房
諸田 玲子

新潮社 2003-01
売り上げランキング : 301606

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 将軍の鷹狩の下準備をする「お鳥見役」を代々務める矢島家。その家族模様を描く「お鳥見女房」シリーズ2巻目。密命を帯びた主・伴之助の行方不明になり、次男の久之助と居候の源太夫が探しに行ってから1年が経とうとしている。彼らを心配しながらも笑みを絶やさず家を守る珠世と、相変わらず賑やかな家族達を描く短編集。
 この巻では子供達に多少の成長も見られ、剣術を学び始めたり、多津の教育で礼儀作法を覚え始めている。まだまだぎこちないけど、そこがまた微笑ましい。そんな日常の中に、お鳥見役の裏の仕事の厳しさが絡む。
 珠世の温かさと芯の強さは、読んでいて穏やかな気分になれる。やんちゃ盛りの子供達5人、隠居の身でお鳥見役の全てを知る久右衛門の憂さ、姑の目が気になる長女の幸江、兄の友人に思いを寄せる次女の君江など、全てをどんと来いと受け止めている。そして今後は誰よりも伴之助が珠世の温かさを必要とするんじゃないかな。
 私は殺伐とした話が好きだけど、たまにはこんな風にじんわり温かな話もいいな。書き方が上手いからただの温かな話じゃなくてちょっとスパイスが利いてる所が結構好きだ。「ちまき泥棒」「蛍の行方」「捨案山子」「緑の白菊」「大凧、揚がれ」「雛の微笑」「裸嫁」「風が来た道」を収録。
別窓 | [ま行の作家]諸田 玲子 | コメント:0 | トラックバック:0 |
『お鳥見女房』  諸田 玲子
2007-10-02 Tue 23:44
お鳥見女房お鳥見女房
諸田 玲子

新潮社 2001-06
売り上げランキング : 244099
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 お鳥見役を務める矢島家を中心に起こる事件の短編集。
 「お鳥見」とは、将軍の鷹狩りの下準備をする仕事だそうだ。鷹の餌である雀を生きたまま捕まえたり、野鳥の生息状況を調査したりするのが主な仕事。しかし、諸藩の動向を探るという裏の任務も受け持つらしい。
 代々お鳥見役を務める矢島家を突然訪ねて来た子沢山の浪人・源太夫。彼を仇敵と付け狙う娘・多津。彼らは主人公・珠世の計らいで、矢島家に居候することになった。
 矢島家は主人公の珠世、珠世の父、夫、息子2人、娘1人の一家。そこに源太夫とその幼子5人、多津が加わり、周囲には次々に事件が起こる。また夫の伴之助がお鳥見役の裏の仕事を仰せつかり、その後失踪。
 しかし珠世は何事にもめげず、穏やかで暖かい機転で最終的には源太夫と多津の運命まで変えてしまう。いつも明るい家庭だけど、伴之助の行方不明をきっかけに数人が矢島家を離れることになり2巻へ続く。
 ちょっと穏やかだけど、面白かった。「千客万来」「柘榴の絵馬」「恋猫奔る」「雨小僧」「幽霊坂の女」「忍びよる影」「大鷹狩」収録。
別窓 | [ま行の作家]諸田 玲子 | コメント:0 | トラックバック:0 |
| よむよむ記 |