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元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『長くつ下のピッピ』  アストリッド・リンドグレーン
2019-07-21 Sun 16:27
長くつ下のピッピ (岩波少年文庫 (014))
アストリッド・リンドグレーン
岩波書店
売り上げランキング: 15,546

 ピッピは船長の父と共に世界中を航海していた9歳の女の子。嵐の時に海に吹き飛ばされた父親がいつか帰って来ると信じて、猿のニルソン氏を連れ、金貨が詰まったスーツケースを持ち、父親が買っていた「ごたごた荘」に住むことにした。
 隣の家に住む同じくらいの子供達、トミーとアンニカはあっという間にピッピと仲良くなり、大変力持ちなうえ、自分達が思いもしなかったことを次々とやってのけるピッピが大好きになった。


 子どもの頃に読んで、内容はあまり覚えてないけどすっごく面白かった記憶だけが残っているこの本。我が子に読ませるついでに自分も久し振りに読んでみて、全くワクワクしない事に驚いた。こんな子嫌だ!自分の子がこんな子になるなんて耐えられない!やっぱり自由過ぎるのは良くない。教育って大事だなぁってしみじみ思い、自分が心の穢れた大人になったとしみじみと思った。
 でも、身も心もすごく自由で、お金はたくさんあって、牛や馬を持ち上げられるほど力が強く、心もとっても強く自信に満ち溢れた怖いものなしっぷりのピッピは羨ましくもある。とはいえ、現代はそんな時代ではない。
 深読みせず単純に、「『長くつ下のピッピ』すっごく面白い!ピッピ大好き!」と思っていたあの頃が懐かしい。
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『悼む人』  天童 荒太
2019-04-22 Mon 11:07
悼む人
悼む人
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天童 荒太
文藝春秋 2008.11
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 坂築静人は、全国を放浪しながら死者を悼む旅をしている。老若男女問わず、死因を問わず、遺族にどう思われようとも、一人ひとりの死をただ覚えておくために旅をしている。そんな静人を想う、3人の人物を描く。
 雑誌記者の蒔野抗太郎は、かつて父親に捨てられた過去を持つ。恨んでいる父親が危篤だから会いに来て欲しいと何度も連絡を受けていたが、無視していた。暴力や愛憎絡みの事件の記事を得意とし、人から嫌われながら追い荒んだ生活を送る蒔野は、元妻のホームページにある息子の日記を読むのが唯一の癒しだった。
 人伝に静人の存在を知った蒔野は、北海道に行って彼の話を聞く。不躾な質問を投げかけても揺るぎない答えを淡々と答える静人に苛立ちを覚えたが、東京に戻ってからも忘れ難く思い、サイトで情報を募ったり静人の実家を訪ねたりしていくうちに、蒔野自身も人の在り方が次第に変化していく。

 静人の母親・坂築巡子は末期がんを患い、余命宣告を受けた。明るく活動的な巡子は在宅ホスピスを選び、夫と娘の協力を得てボランティア活動を再開させながらも静人の帰りを待っていた。
 がんと前向きに戦おうとする巡子だったが、娘であり、静人の妹である美汐が妊娠している事を知る。美汐は静人の存在を理由に、恋人・高久保から別れを告げられていた。巡子は高久保とその兄に静人の信念を丁寧に説明し理解を得たが、受け入れてもらう事はできなかった。巡子は静人の帰りを待ち、美汐の妊娠を憂いながらも、持ち前の明るさでがんに立ち向かう。
 闘病する巡子、対人恐怖の気がある夫の鷹彦、未婚で子供を産み育てようとする美汐を、甥の怜司が精一杯明るく支えようとする。

 いつも気が付けば交際相手に暴力を振るわれるようになる奈義倖世は、結婚相手からの暴力から逃げて訪れた寺で甲水朔也と出会った。朔也が運営するDV被害者のシェルターに保護された倖世は、求められて朔也と再婚した。幸せだと思っていたが、、ある日朔也から自分を殺して欲しいと頼まれた。断ったものの、精神的に追い詰められ続けて殺人を引き受ける。
 刑期を全うして出所した日、倖世の右肩に朔也の幻が現れた。朔也は倖世に、誰かに倖世自身を殺すように頼めと言う。殺してくれる人は見付からず、自分で死ぬこともできず、朔也を殺した場所を訪れた倖世は、静人に出会った。静人の話に不信に思っていたが、やがて静人の行動に惹きつけられて共に行動するようになる。


 強迫観念症と言っても過言ではないような・・・。静人も、静人の帰りを待つ末期がんの巡子も、妹の美汐も、巡子の後を追おうとする鷹彦も、蒔野も倖世も、他人から見ると不幸な人達ばかりだけど、なぜか一欠けらの美しく輝く物が垣間見える気がして、何となく惹きつけられてしまった。他人の死を悼む旅をする静人は、巡子の死は同じように悼むんだろうか。それとも、違う悼みになるんだろうか。行動には全く共感できないし、薄気味悪いものさえ感じる。小説内でも、人々は否定的な意見が多い。ただ、どこまでも真摯に人の死を悼み、揺るぎなくその全てを自身に刻んでゆく静人の急き立てられるような旅に哀れさは感じる。
 遺族を怒らせる事も警察を呼ばれる事も多いようだけど、一部の人には静人の行動が救いにもなっているわけで、これは世が世なら新しい宗教になっていると思う。残念ながら現代日本では、薄気味悪くて哀れな人で、物語は静人の孤高を強調するかのように終わっていく。
 薄気味悪い印象が拭えなかったけど、倖世へ気持ちを伝えるシーンはぐっと来た。愛し合うようになった2人だけど、やっぱり静人は変わることはなかったことが当然なような残念なような。妊娠、してるかな?巡子の死の際に美汐の子供も生まれたみたいだし、鷹彦はどうなっていくんだろうな。
 ゲスい人間だった蒔野が静人の話を聞き、サイトで情報を募り、巡子の話を聞いていくうちに、ほんの少しだけど変化していったけど、運命が残酷なのか、自業自得なのか。死を意識した時に静人の存在を拠り所にしたけど、病魔が進んだ巡子を訪ねてきたのは幻だったんだろうか、本物だろうか。幻だったように思うけど、本物だったらいいなと思わされる。
 どうか、巡子を失って悲しみに暮れる坂築家に静人が帰ってきますように。信念を曲げられないなら、ほんのしばらくの滞在でいいから。
 生と死が本当に身近であることを見せつけられたような、尊い気持ちになってしまうような本だった。
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『破滅の王』  上田 早夕里
2019-02-22 Fri 16:37
破滅の王
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上田 早夕里
双葉社 2017.11
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 宮元敏明は満州事変から4年経った中国へ渡り、上海自然科学研究所の細菌学科で働くことになった。友人もでき、大都市の中の国際色豊かな研究所生活を楽しんでいたが、日中の対立は次第に激しさを増していく。宮本の友人・六川も行方不明になった。
 ある日、日本領事館に呼ばれた宮本は、バクテリアを食べるバクテリア「R2v」、暗号名「キング」の存在を知る。コレラに似た強い毒性を持っているが抗生物質が効かず、目下のところ治療法は皆無だと言う。生物兵器として作られたキングは、自然界に存在した細菌から人為的に作られた。しかしキングが作られた研究所は閉鎖され、開発社・真須木や研究員は死亡、混乱に乗じて研究文書と菌株を持ち去った人物がいると言う。
 キングについて調べ始めた宮本の下に、半年間行方不明だった六川の死体が見付かったと知らされた。六川は何らかの事情でキングの存在を知り、ワクチンと治療薬開発を試みようとしていたようだった。
 

 序盤は時代背景の説明が細かかったため、知性も教養もない私は時間を掛けてもなかなか読み進められないで難儀した。宮本と灰塚が出会った辺りから急に面白くなり、軍への協力に抵抗を見せていた宮本が否が応でも戦争に巻き込まれていく辺りから面白いというより空恐ろしさから読み止めがたくなっていった。さすが直木賞候補作品。
 宮本のジレンマは、まだ軽い。キングの開発に携わってしまった早川と兄の六川、マッドサイエンティストになり下がりキングを作り上げ人体実験の要望まで出すようになった真須木、真須木とは古くからの友人でありながら最期に青酸カリを注射したうえに解剖までさせられた藤邑。この時代は誰しも戦争から無関係ではいられなかったし、抗えなかい悲しさやつらさは想像を絶する。
 そんな中で断じて科学者であろうとした宮本達や、軍人然とした冷酷さの灰塚少佐が内に秘める真の軍人像を持っていることには感動すら覚えた。生真面目な木戸少尉が時折表情豊かになるところなんて、何だかかわいい。
 ただ、その背景にはかくも悲惨な戦争がある。物語の中に西暦の年数が出る度に祈りのような気持にさせられた。早く1945年になってくれと、何回も思った。
 ラストは美しいけど、やっぱり宮本と灰塚はもう一度会ってほしかったなぁ。補記として灰塚は行方不明、宮本はキングの研究に障害を費やしたことが書いてある。記録に残ってないだけで灰塚はどうにかしてドイツから日本に戻り、戦後の日本で宮本と交流していて欲しい。
 この本は時代背景を細かく描写してあるし、実在の人物の名前も多く登場する。これって本当の話?キングって本当に存在するの?え?フィクション?あれ?やっぱ実話?と、読みながら何度も考えた。このリアリティ、相当に調べ上げられてるんだろうとおもったら、巻末の参考文献の多さが凄い。
 補記に「R2vは、まだ世界各地に生息している」とあって、私の中で実話確定したけど、最後の最後に補注である菌をモデルにしてあるだけであることが書かれていてホッとした。でも、戦争中にあらゆる国で似たようなことが行われていたことは事実だ。人としての尊厳を奪われそうになりながらも守り通した人達の存在に、感謝したい。
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『ハーバードでいちばん人気の国・日本』  佐藤 智恵
2017-04-26 Wed 15:42
ハーバードでいちばん人気の国・日本 (PHP新書)
佐藤 智恵
PHP研究所 2016.1.29
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 世界最高峰の大学・ハーバードでは、「ケース」と呼ばれる教材をもとに議論を行う。その中で取り扱われた日本が題材の「ケース」を紹介する。


 浅い本だなぁと思ったら、PHP新書か。司書時代、何度も選書で弾いてきたなぁ。タイトルは面白いんだけど内容はどっかで読んだ話の劣化版、それがPHP新書。
 日本の「ケース」であるトヨタやホンダ、新幹線清掃会社のテッセイなどを紹介してあるんだけど、本当に紹介で留まってる。「ケース」の概要と、時々教授のコメント。日本を研究してる外国人のコメントより、天才、秀才達のディスカッションそのものを読みたいんだけどなぁ。浅い感想が少し書かれてるだけで、しかもよくある日本ヨイショみたいなやつばかり。これじゃたまにバラエティ番組なんかでやってる、「凄いニッポン人!」みたいなのと変わらない。この内容で「いちばん人気」というのは、大袈裟だ。
 序盤に、研修旅行で一番人気なのは日本であり満足度も高い、ゆえに「いちばん人気」と書いてある。もしかして「いちばん人気」って、この部分のこと!?それは観光地としての日本が良かったという事じゃないか。あと、幹事を務めた日本人留学生のプランが良かったんだろう。
 あと、この手の本を読むと、あまりにも自分とかけ離れた世界で妙に眠くなっちゃう。半身浴のお供にしたら、何度かお風呂の蓋の上に突っ伏してた。背伸びして社会学の本を読むもんじゃないな。
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児童文学
2016-09-13 Tue 06:05
 上の子が小学生になって読ませる本の難易度を少し上げたら、急に物語に深みが増した。と同時に、大人になって読む児童文学は、子供の頃はもちろん、子なしだった司書時代とも違った感想を抱く事に気付いた。大人になったからこそハッとする文章に出会ったり、こんなに深かったんだと初めて気付いたりするのが面白い。
 読んだ本の感想を子供と話すのも楽しい。

私「これ久し振りに読んだけど、めっちゃ面白かった!」
子「お母さんはどの話が一番面白いと思った?」
私「2番目かな」
子「私も!」
私「でも3番目の話に出てきた〇〇も面白かったから、捨てがたい」
子「えー、あれキモイ」
私「そこが面白いんだって!キモ面白い的な?」

とか、

私「お母さんはこのシリーズ嫌いなんだよねぇ」
子「えー、私大好き。一番好き」
私「ここは趣味合わないねぇ。まあ、好きなだけ読みなよ」
子「この面白さがわからないなんて、お母さんかわいそー」

とかまあ、大した会話じゃないんだけど。
 しかし!アホの私は、その感動をすぐ忘れる。下手したら下の子が小学生に上がった時には忘れてたりするんじゃないか・・・。あり得る。というわけで、できるだけ児童文学の感想も残していきたいと決意した。「児童文学」のカテゴリーを追加してみたけど、着実に増えるかどうかは疑問。
 つい知識で選書しちゃうから、評価が定着してる古い本ばっかになるのが欠点だと思ってる。でもさすがに『新刊全点案内』を毎週読むほど暇ではないから、ネットで調べたりしつつ平成の児童書の中で、松谷みよ子やいぬいとみこを超える本を見付けたいなぁ。
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