元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
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『アブダラと空飛ぶ絨毯―ハウルの動く城2』  ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
2017-03-21 Tue 23:10
アブダラと空飛ぶ絨毯―ハウルの動く城〈2〉
ダイアナ・ウィン ジョーンズ
徳間書店   1997.08
売り上げランキング: 26,079

 夢見がちな若い絨毯商人のアブダラの店は、ある日店を訪ねてきた男から空飛ぶ絨毯を買った。その夜、絨毯の上で眠ったアブダラは、目を覚ますと自分の空想の中に出てくる庭にそっくりの場所にいて、美しい女性に出会った。<夜咲花>と名乗るその女性は父親以外の男性を見たことがないほど世間知らずだったが、アブダラは彼女と恋に落ちて結婚の約束をする。その矢先、<夜咲花>は魔人(ジン)に攫われてしまった。
 <夜咲花>は自国の王女で、王のスルタンは魔人の存在を信じずにアブダラを投獄したため、アブダラは脱獄して王女を救出することにする。途中、1日1つだけ願いを叶えてくれる精霊(ジンニー)、旅の兵士、猫の<真夜中><はねっかえり>と出会い、一緒にインガリーの魔法使いに会いに行くことになった。
 

 『魔法使いハウルと火の悪魔』はいかにも正統派って感じのイギリスファンタジーだけど、これは中東色がかなり濃い。というか、アラビアンナイトのオマージュ作品になっていて、1巻とは全然違う文化様式が面白い。中東の人って本当にこんな美辞麗句を言うんだろうか。それともこの本の中だけの設定なんだろうか。途中からアブダラが勝手に言ってるだけな感じになってて、それはそれで面白かった。
 アブダラは運命と恋愛感情に突き動かされていくんだけど、インガリーの魔法使いの家で急に1巻の『ハウルの動く城』と繋がった。訪ねた魔法使いはサリマンでレティーと結婚してるし、一緒に旅をしてきた<真夜中>は魔法で猫に変えられたソフィ―で、行方不明の宮廷魔法使いとはハウルの事。前作の主人公が出てきて活躍するって設定、君はここにいてきちんと活躍して生きていたんだねって感じがして大好物だ。
 1巻では「悪魔」が敵だったんだけど、2巻では「魔人」が敵。最後のドタバタ乱闘は1巻のラスボス戦を彷彿とさせて、やっぱりこのシリーズの最終決戦はこうじゃなきゃって思わされた。で、結局ハウルは出てきてないやーん!カルシファーは?マルクルは?と思ってると、ジンの事が片付くと同時に謎は解けた。扱いづらいジンニーがハウルで、物語の序盤から登場していた魔法の絨毯がカルシファー。ジンニー、確かに発言がハウルっぽかった。<真夜中>がソフィーだった時点で気付くべきだった。気付かされないほど没頭してたんで、騙されたけどいい気分。マルクルが出てこなかったのは残念だけど。
 ハウルとソフィーはいい夫婦になってるんだなーとか、ハウルとアブダラも仲良くなれるかなーとか、ジャマールと犬は最初はただのチョイ役だと思ってたけど最後まで大活躍だったなーとか、兵士は実は王子だなんて唐突過ぎて1巻のかかしと同じパターンやんとか、最後の最後に全員が幸せに終わるってやっぱりいいなーとか、幸福な読後感に浸れる本だった。
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『Xの悲劇』  エラリー・クイーン
2017-01-19 Thu 01:43
Xの悲劇 (創元推理文庫)
エラリー・クイーン
東京創元社   1970.10
売り上げランキング: 79,610

 仲間内に婚約を発表した株式仲介人ハリー・ロングストリートは、移動中のバスの中で毒殺された。すぐにバスを停めて締め切り警察を呼んだが、手掛かりはない。捜査に行き詰った警部のサムと検事のブルーノは、元役者のドルリー・レーンを訪ねた。彼はかつて難事件を新聞報道を読むだけで解決の糸口を見出し、警察に助言したことがあった。
 レーンに相談した翌日、ブルーノのもとに「犯人について知っている」という匿名の手紙が届いた。指定の場所では、ロングストリート殺害のバスの車掌チャールズ・ウッドが何者かに突き落とされて墜死する。現場近くにはロングストリートの共同経営者のジョン・デウィットがいた。彼は、自分は犯人ではなく人と待ち合わせをしていただけだが、誰と待ち合わせをしていたかは言えないと言う。
 裁判にかけられたデウィットを、レーンが犯行は不可能だったことを指摘する。救ってくれたレーンに全てを話すと言ったデウィットは、無罪放免のお祝いの帰りに銃殺された。


 本格推理小説は、やっぱ感情が乏しくて苦手だわ・・・と、世界的に超絶人気推理小説家でも思ってしまうダメ頭の私です。淡々と事実だけをつらつら書かれてると、何だかボーッとしてきて目が滑っちゃう。でも犯人逮捕の時の、畳み掛け方は胸が高鳴ったし、トリックが大胆なところは面白かった。
 情けないことに冒頭から若干引きずり続けた、海外文学あるある「ここはどこ、あなたは誰」状態で頭がついていかなかった点は本当にどうしようもない。あと、ラストのレーンによる解説は、ちょっと長すぎたかな?仮の名前が多過ぎて、全然理解してないまま読んだ。あー、やっとラストだと思ってたところに、タイトル「X」の真の意味がピリッと一行ちょっとで書かれていて、そこはいい余韻。犯人のXさんって意味じゃなかったんだ!と感動。でもさ、タイトルとのリンクは素敵なんだけど、デウィットのダイイングメッセージとしてはちょっと無理がある気がする。死ぬ間際に無理やり作ったダイイングメッセージだからって?指を絡めて「Xに見える」って、ちょっと厳しいわー。
 地名人名が覚えられないのはさておき、かなり読みやすかった。何より訳が良い。読みやすさと小難しさのバランスが良くて、誰かと思ったら鮎川信夫氏でした。さすがに名前くらいは知ってるけど、やっぱ詩人さんは言葉のまとめ方が上手い。よくもまあ、こんな熟語できれいにまとめたもんだと感心すること多々。
 それにしても、探偵役の元俳優ドルリー・レーンがなかなかチートだった。有名人で美男子で背が高くて逞しくて大金持ちで頭が良くて美声、だけど耳が完全に聞こえない。かと思いきや、完璧な読唇術でほぼ不自由はない。ロマンスグレー好きな私としては、まずメロメロ寸前だった。
 ところで、この作品から始まる「悲劇シリーズ」4作は、エラリー・クイーンがバーナビー・ロスという別名義で出版し、完全に別人物だと世間に思わせていたらしい。元々覆面作家で二人一役でやってきてたから、クイーンVS.ロスで討論もやったらしい。公表した時、どうだったんだろう。凄い!それは面白すぎる!当時のアメリカの人達、どういう反応だったんだろう。現代日本で例えるのもおかしいけど、舞城王太郎が実は西尾維新でした、みたいな?あれ?ちょっと違う?とにかく、冒頭にその件が書いてあるのを読んで、当時の推理小説文学界の盛り上がりを想像するとちょっと楽しかった。
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『タイタンの妖女』  カート・ヴォネガット・ジュニア
2016-08-29 Mon 05:06
タイタンの妖女 (1977年) (ハヤカワ文庫―SF)タイタンの妖女 (1977年) (ハヤカワ文庫―SF)
浅倉 久志

早川書房 1977-10
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<2005年12月2日読了>
 SF小説。SFって大人向けは初めて読んだけど、壮大な話だったと思う。最初がちょっと入り込めなかったけど、この小説独特の雰囲気に慣れたら一気に読めた。言葉が難しくて、説明を読んでもさっぱりわからない。途中から意味わからないものは飛ばして読んだら、それはそれで読めるもんだと気付いた。「時間等曲率漏斗」とか、結局最後まで意味不明。
 全体を通して運命論的な色が強い。すべてが起こるべくして起こったのか、何かがそう起こるようにしむけてるのかわからない辺りが絶妙。全部意味ある出来事だったのかと思うと、驚かされつつも悲しい話だと思う。宗教というか哲学的な思想が絡んで、これは確かに大作だな。個人的な好みの問題で、2回は読まないけど。
 この本自体は30年くらい前に出版されたんだけど、爆笑問題の太田が紹介してから日本で再び注目され、評価を得てるみたい。『いま、会いにゆきます』でもちらっと出てて驚いたけど、やっぱ賢い人はこういう本を読んでるんだなぁ。


<2016年8月26日再読>
 ウィンストン・ナイルズ・ラムファードと愛犬のカザックは地球と火星の間に出現した「時間等曲率漏斗」に突入し、波動現象として存在することになった。太陽内部からベテルギウス星までの歪んだらせんの内部で脈動し続け、惑星を通る際に実体化する。実体化の折にはラムファード家に見物人が詰めかけるが、妻のビアトリスは頑なに門を閉ざし続けていた。
 ある日ラムファードの要求で、マラカイ・コンスタントが招待された。時間等曲率漏斗に入った際に未来と過去全ての事を悟ったと言うラムファードは、コンスタントが火星で火星人によってビアトリスと番わせられ、水星に行き、もう一度地球を訪れてから最終目的地のタイタンにビアトリスと息子のクロロと共に行くと言う。
 予言通り火星に行ったコンスタントは記憶を失い、アンクという名で意思や記憶を操作された火星陸軍に所属する。自分が手を下した死刑囚の言葉に従って見付けた手紙には、妻と子の存在が書かれていた。アンクは火星軍の地球進撃の際に息子のクロロと妻のビーに会いに行ったが、連れ戻されて地球進撃の相棒ボアズと共に水星に送られた。
 無人の水星で3年間過ごした2人だったが、アンクだけ地球に戻った。ラムフォードが実体化した折りに再会し、民衆の前で彼からアンクは「徹底的に無関心な神の教会」の宗教の嫌悪と怒りの的であるマラカイ・コンスタントであると告げられてビーとクロノと共にタイタンに送られた。
 タイタンにはトラルファマドール星人のサロが住んでおり、唯一の友人はタイタンで実体化したラムファードだった。
 サロはトラルファマドール星から別の島宇宙にを届ける旅に出ていたが、紀元前203117年に宇宙船が故障してタイタンで足止めされていた。母星に故障の報告を送ると、地球上にストーンヘンジ、万里の長城、クレムリン宮殿、ジュネーブ国際連盟本部ビルとして返信された。
 コンスタント達が到着する直前、ラムファードは太陽黒点の影響で体調を崩していた。間もなく爆発が起こり、ラムファードとカザックは太陽系の外へ飛ばされると言う。サロをひどく罵り、メッセージを開封するように要求したが、トラルファマドール星は機械であるために母星で受けた命令に逆らう事ができなかった。
 タイタンに到着したコンスタント達はラムファードから、地球人の行動がトラルファマドール星人によって交換部品を作り届けさせるために歴史を操られてきた事を聞かされる。部品は火星の火炎放射器工場で癇癪を起した支配人がスチールバンドを切り刻み、それをクロノが拾って「幸運のお守り」として大切に持っていた。
 ラムファードとカザックが消えた直後、サロはメッセージを開封する決意をして飛び込んで来た。メッセージにはトラルファマドール星語で「よろしく」と書かれている事をコンスタント達に告げて、サロは自分を分解して自殺した。


 10年前に読んで、わけわかんなかったけど結論としてまあまあ面白かった、これを傑作だと思う人ってスーパー賢いんだろうなって思った事しか覚えてない。今回気が向いて再読して、内容をさっぱり覚えてなかった自分に驚き。辛うじて覚えてたのはおっさんと犬が不思議現象って事と、終盤に唐突に変な宇宙人が出てきた事。あまりにも覚えてなかったから今回は10年後の自分が思い出せるようにあらすじをかっちり結末まで書いてみた。随分削ったのにまだまだ長いけど、10年後もアホであろう自分のために仕方ない。
 さて再読してみて。序盤から4/5はやっぱりつまらないけど、1/5は秀逸だと思った。フィクションの思想や哲学、歴史なんかが退屈で退屈で、特によくわかんない謎の新興宗教辺りは眠くて眠くて目が滑りまくり。この世界での火星や水星やタイタン、トラルファマドール星の説明も、外国文学の言い回しに慣れない上に長々しくて退屈。それがサロの身の上辺りから段々と私の頭が覚醒してきた。もうね、運命に・・・というかトラルファマドール星人に翻弄されるにも程がある。主要人物だけじゃなく、人類そのものがトラルファマドール星人に操られ、時には失敗されるって、これはもう神じゃないか。
 トラルファマドール星人によって、ラムファードは波状現象として存在する身となった。全てを知り不快に思いながらも抵抗できず奉仕しながらも地球のために尽力した挙句、太陽系の外に飛ばされるその無常さ。機械でありながら友情を知り、母星の行いで唯一の友人に罵られるサロの悲哀。最高のトラルファマドール星人であるはずなのに、メッセージを開封して信頼性を損ない、親友を失って能率性が下がり、20万年地球を見守りつつけて予測可能性も衰え、その結果自殺して耐久性も喪失したサロのアイデンティティを失った様子が哀れだった。たった1つの小さな部品を届けるためだけに翻弄された末に、お互い存在さえ知らなかったコンスタントとビアトリス、クロノ母子の使い捨て感も、ラムファードに次いで無常で読んでて呆然とした気分になる。
 タイタンに取り残されたコンスタントはサロの組み立てに取り掛かり、クロノはタイタンつぐみの仲間になり、ビアトリスは本を執筆して過ごしたが、それぞれの関わり方も悲しい。普段は離れつつもお互いを必要としている夫婦と、クロノとは精神的な接近をしているつもりを続けるコンスタントと、時々母親を訪れては対話した句怒り狂って飛び出すクロノ。「すべてはたいそう悲しかった。しかし、すべてはたいそう美しかったという文章に、胸を締め付けられる。
 訳わかんなくてダラダラ長くてSFってやーねって読んでて思ってたのに、最後の最後がやけに情緒を煽られた。思い返してみたら、前4/5ってあんまり感情を表してる文章がなくて感性に訴えるものがなかった気がする。感性に響かないと面白く読めない私には、そこが難しかったのかな。で、最後の最後にぐわーんと揺さぶられる。
 ラストで32年掛けてサロが甦って、旅を続けるついでにコンスタントを地球に送ってくれた。悲しくも完璧なエンディングだと思った。サロの催眠術で死ぬ直前に親友ストーニィの夢を見るコンスタントは人生を終了したけど、サロはこれから一人でまた千八百万光年の旅を続けて、目的地の島宇宙でいるかどうかさえ知れない生命を探す。桁が大き過ぎて、想像つかないにも程がある。というか、永遠とほぼ同義語にさえ感じる。前半の刺々しく荒々しい雰囲気の挙句この結末だなんて、悲しい。
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『エルマーのぼうけん』『エルマーとりゅう』『エルマーと16ぴきのりゅう』  ルース・スタイルス・ガネット
2016-08-22 Mon 11:06
エルマーのぼうけん 3冊セット (世界傑作童話シリーズ)
ルース・スタイルス・ガネット
福音館書店   1993.12.01
売り上げランキング: 3,105

 エルマーは年老いた野良猫から、どうぶつ島で捕らえられて無理やり働かされている子供の竜の話を聞いて助けに行くことにする。クランベリー島行きの船に上手く潜り込み、クランベリー島からどうぶつ島に渡り、行く手を阻む動物達を知恵の力でかわして竜が捕らえられている川までたどり着く。(『エルマーのぼうけん』)
 空を飛んでエルマーの家まで行く途中、嵐に遭ってカナリヤだけが住んでいる島にたどり着いた。そこにはエルマーが昔飼っていたフルートも住んでいて、島中のカナリヤが「しりたがり病」に罹っていると教えられる。王様に話を聞きに行くと、かつて住んでいた人間が埋めた宝が気になって仕方ないと言う。エルマーは宝を掘り出してあげることにした。(『エルマーとりゅう』)
 エルマーを無事に送り届けた竜が家族のいるそらいろこうげんに帰ってみると、砂嵐が止んだために人間達が山に入り込んで竜の家族15匹を捕まえようとしていた。竜は色んな人間に目撃されながらもエルマーに助けを求めに行く。竜から話を聞いたエルマーは道具を揃えてそらいろこうげんに行き、見事に竜の家族を助け出す事に成功する。(『エルマーと16ぴきのりゅう』)


 昔からあるロングセラーだとは思ってたけど、日本語訳版は1963年刊。原書は1948年出版だとか。こんな古くから読み継がれてきたんだと思うと感慨深い。ちゃんと読んだことなかったとか、駄目でしょ私。
 シリーズ物あるあるだと思うんだけど、2巻があんまり面白くなかったけど3巻で大きく盛り返してすっごく面白かった。三部作というより3冊で1話だと思うと、2巻の存在もただの小話としてありかなって思う。でもなくてもいい気がしなくもない。
 1巻ではどうぶつ島の動物達を、3巻では竜ファミリーを閉じ込めている人間達を騙すんだけど、使うのは身近な物だけ。そのせいか親近感があって、エルマーの知恵や機転に純粋に感動できた。
 まあ、あくまで子供心にね。冷静に考えて、そう上手くいくかよっていう綱渡り的な展開・・・ご都合主義まで言うと言い過ぎかな?大人目線で見ると子供騙しなんだけど、こうやって子供目線ではどうとか考えちゃうところに自分の中の純粋さが気持ち悪いほど皆無になってる事に気付かされると言うか何というか・・・もうまっくろくろすけは見えないんだなぁっていうか、そういう感じ。年齢一桁の頃に出会いたかったと思う。

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『さいごの戦い―ナルニア国ものがたり7』  C.S.ルイス
2009-05-27 Wed 09:24
さいごの戦い (ナルニア国物語)さいごの戦い (ナルニア国物語)
ポーリン・ベインズ 瀬田 貞次

岩波書店 2005-11-11
売り上げランキング : 67226
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 ライオンの毛皮を拾った毛ザルのヨコシマとロバのトマドイ。ヨコシマはその毛皮をトマドイに着せて、アスランになりすますことを思い付いた。長いことアスランが姿を見せていなかったナルニアで、住民たちはライオンの毛皮を着たトマドイをアスランだと信じてしまう。
 カロールメンと手を組んでナルニアの住民達を奴隷のように扱うヨコシマに疑念を抱いたチリアン王は、親友の一角獣・たから石と共に立ち向かう。しかし狡猾なヨコシマやカロールメン軍によって窮地に立たされていく。ナルニアはカロールメンから侵略されることとなった。

 「ナルニア国ものがたり」シリーズ最終巻。先日6巻目を読んだ時は出産近いから最終巻は当分読めなさそうと思ってたのに、何だかんだで読めちゃった。
 この巻は全シリーズの中で一番面白かったように思う。ヨコシマとカロールメン軍のデマのせいでチリアン王子がどうにも身動きが取れない状態になってしまう。今回は敵がちょっと頭を使った作戦で来たもんだから、どう打破するのかとドキドキした。これまでは勇気ある行動を求められることが多かったけど、今回は下手に動くと墓穴を掘ることになる状態。でも、結局はアスランの不思議な力で全て解決なわけなんだけど。
 この最終巻で人間界から来たのは、ピーター、エドマンド、ルーシィ、ユースチス、ジル、ポリー、ディゴリーの7人。彼らは時々会ってナルニアの話をしているそうだ。けどスーザンだけはナルニアを信じない大人になっていて、他の人がナルニアの話をしても昔遊んだごっこ遊びとしか覚えていない。子供時代にこの本を読んでいたらスーザンのようにはなりたくないと思っただろうけど、三十路の私としては仕方ないよなぁって思ってしまう。でもスーザンって最後まで目立たない存在にさせられてる、かわいそうな子でもあるよな。
 それにしても、このラストには驚いた。みんな死んでるって・・・。で、みんなして神の御許へ行ったみたいな?ナルニアが終わり、ナルニアに関わった人はみんな死に、ペベンシーきょうだいの両親も死に、スーザンは残ったわけか。で、懐かしい面々とも再会できる。ちょっと戸惑う結末だな、これは。キリスト教ではこれが幸福なんだろうか。「え?」って感じで終わった。
 「ナルニア国ものがたり」シリーズが聖書を強く意識して書かれてることは随分前に調べて知ってたけど、知らずに読んで理解できただろうか?西洋宗教臭いなぁとは思ったかもしれない。少なくとも知らずに読んでたら、このラストには納得いかなかっただろうな。
 ちなみにアスランはアスランより偉大な存在の息子だから、神そのものではないらしい。神の子=キリストということか。で、エドマンドが『ライオンと魔女』で裏切った時、その罪を許し身代わりとなって処刑されたけど復活したというシーンが既にキリストの復活のことだったらしい。で、ナルニアとカロールメンの戦いがハルマゲドンで、その後、最後の審判でキリストの教えに忠実に生きてきた善人だけがミレニアムキングダムに行けるっていうシーンがこの『さいごの戦い』のラスト。ルイスがそう言ってるわけじゃなくてあくまで一説らしいけど、なるほどなー。まさに宗教書じゃないか。カロールメンはイスラム教という説が有力だとか。そうだとしたら結構蔑視した書き方してる気がしなくもない。アスランはタシ神を信じている若者にも優しかったし認めていたけれども。
 ナルニアが滅んで、隣国であるカロールメンやアーケンがどうなったのかはわからない。ナルニアを竜や大きなトカゲ類が荒らしまわってなくなってしまったシーンはあるけど「ナルニアを」荒らしたとしか書いてない。しかしその後昇ってきて太陽は黒ずんでて死にゆく太陽だとか。カロールメンやアーケンなんかはどうなったんだろう。キリストを信仰してなかったから選別されず、滅んだってことなのか?そういうところ、わざと書いてないのかアスラン信仰者以外はアウトオブ眼中だったのかも不明。ただ、キリスト教じゃない私から見たら、そういうとこちょっと微妙・・・。宗教ってやっぱり怖いもんだ。

1956年刊。アマゾンの画像は新装版。
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