元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
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『赤朽葉家の伝説』  桜庭 一樹  
2009-05-16 Sat 00:01
赤朽葉家の伝説赤朽葉家の伝説
桜庭 一樹

東京創元社 2006-12-28
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 子供の頃に“辺境の人”から紅緑村に置いていかれ、多田夫妻に育てられた祖母の万葉。彼女には時々、人の未来が視えた。村一番の名家であり、製鉄所を営む赤朽葉家の夫人・タツに請われて赤朽葉家の息子・曜司のもとに嫁いだ万葉は、「赤朽葉家の千里眼奥様」と言われて大切にされる。その万葉は4人の子供を生みそれぞれ、泪、毛毬、鞄、孤独と名付けられた。
 万葉と曜司の長女で、美しくも気性の荒い毛毬はレディースの頭を張っていた。親友の死に取り憑かれたまま中国地方を制覇してから引退したが、高校卒業後は引退してマンガ家になる。人気絶頂のマンガ家として自分の半生を題材にしたマンガを描く中、兄の泪が不慮の死を遂げたために彼女が婿養子を取ることになった。週刊連載に追われながら生きた毛毬は最終話を描きあげた直後、「わたし」が9歳の時に死んだ。
 毛毬の一人娘「わたし」こと瞳子は家族の他に、祖母の友人・みどりや、毛毬の替え玉・アイラ、母のかつての担当編集者・蘇峰と共に暮らし、母や祖母の昔の話を聞きながら成長し、ユタカと付き合っている。祖母・万葉が死ぬ直前に残した「わしはむかし、人を一人、殺したんよ。だれも、知らないけど」という言葉が気になり、一体誰を殺したのかを調べることにした。

 第一部から第三部まで製鉄所を通して語られる無骨な時代の流れと、どことなく浮世離れした赤朽葉家の人々のコントラストが不思議ときれいな物語だった。万葉の時代は昭和の中期だけど、鳥取を舞台にしているためかもっと昔に感じる。都心は近代化しつつも、田舎はこんな風に神話が息づく時代だったんだろうか。サンカに置いていかれた万葉の不思議な雰囲気がとても神秘的だ。
 毛毬の時代は昭和後期。「懐かしの~」系のTVで見るような世界に、猛女である毛毬に視点を置きながらも変わらず存在している万葉の姿が美しい。時代背景的にも小気味良い語り口調で毛毬の青春時代が語られている。しかし瞳子は、毛毬が初めて描いたマンガには、毛毬には可視できなかった異母妹・百夜そっくりな女を登場させていたことを知っている。本当は見えていたという瞳子の推察は、正統派不良のイメージだった毛毬の固くて暗い意志が見えてちょっとぞっとさせられる。
 瞳子の時代は「ニート」という言葉も出てきていることから完全に現代を感じさせられる。ここにきて突然ミステリー要素が入ってきて、万葉が殺したのは誰か?それを調べる瞳子という具合になるけど、そこはちょっと流れにそぐわない感じがしたかな。ミステリーの解答は実に万葉らしかったんだけど、もうちょっと自然に織り込んで欲しかった。
 面白い小説というより美しい文学。色調表現が終始、物語の幻想的なイメージに拍車を掛けていた。
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『一瞬の風になれ 第三部 ドン』  佐藤 多佳子
2008-12-12 Fri 23:26
一瞬の風になれ 第三部 -ドン-一瞬の風になれ 第三部 -ドン-
佐藤 多佳子

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 充電期間である冬が終わり、「俺」は3年生になった。たくさんの新入部員が入ってきたが、中でも鍵山は根岸や桃山よりも足が速い。400mリレーのオーダーは鍵山、連、桃内、「俺」となった。しかし鍵山は癖のある性格で、尊敬する連にはべたべたと付きまとうが2年の桃内とはほとんど口をきかないでいた。
 その鍵山が、県記録会で肉離れを起こす。根岸が代走して県大会を通過したところで鍵山は復帰できたが、今度はバトンワークがなかなか上手くいかない。オーバーハンドからアンダーハンドに変わったバトンパスになかなか慣れることができず、そんな鍵山で南関東大会、総体と進めるにはリスクが高いと思ったメンバーは1走を根岸で走ることを希望する。その「俺」たちに根岸は「走らない」と宣言した。

 3年生になった新二は緊張で腹を下すこともなくなり、部長としての目配り気配りをする先輩になっていた。地道な努力によってどんどん速くなり、大会上位で上に進んでいく。髪も黒に染め、何となくバカっぽさがなくなっていったように思う。
 才能だけで走っていた連も地道なトレーニングを重ね、着実に体力をつけていった。
 新二は部長として様々な部員に視線を向ける。皆でインハイを目指すけど、通過できる人とできない人は当然出てくるわけで。自分の出番を控えながらも失敗した部員の精神フォローまで引き受けようとする新二はきっと、守屋さんを超えるいい部長になってると思う。
 若菜ちゃんとの恋の話は、序盤に急接近したかと思ったらそれっきりだった。インハイ予選を勝ち抜け、思わず新二に抱きついて喜ぶ若菜ちゃん。気を使って2人っきりにする部員達。結局皆には双方の気持ちはバレバレだったみたいで、後日鳥沢さんが「若菜も鈍いけど、あんたも鈍い」と言ったんで安心した。やっぱ若菜ちゃんも遠い存在の仙波より、不器用だけど努力家でいいヤツでどんどん速くなっていってる新二のほうがいいよね。新二は総体終わったら気持ちを伝えるって言ってたけど、南関東大会のシーンで終わったんで結局2人の恋はそれ以上見ることができずに残念だった。
 この巻ではてっきりインハイ行くのかと思っていたら、南関東大会2日目にリレーで鷲谷を破って優勝した日で物語が終わる。でもクライマックスは爽快すぎて、あの問題児の鍵山が新二に抱きついて喜んだシーンで読んでてこっちも嬉しさが爆発した。
 表現が過剰すぎないのに人物達の気持が色々伝わってきて、新二も連も成長していってて、本当に読んでて楽しい本だった。3巻は競技シーンが多くて、正直誰が何者なのかわからなくなってたりもしたけど十分楽しかった。
 新二たちはインハイで何位になったんだろうな。大学でも陸上やるのかな。新二と若菜はやっぱり付き合うんだろうな。クライマックスの試合には健ちゃんにも来てて欲しかったけど、インハイには来たのかな。終わった後にも広がっていくこの読後感、いいね。
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『一瞬の風になれ 第二部 ヨウイ』  佐藤 多佳子
2008-12-07 Sun 23:26
一瞬の風になれ 第二部一瞬の風になれ 第二部
佐藤 多佳子

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 健ちゃんはJリーガーになり、谷口若菜が短距離から中距離に転向し、連は夏に練習と試合をすっぽかしたペナルティに真面目に取り組んでいる。そんなシーズンオフを経て春になり、後輩が入り、そしてインターハイを迎える。
 インターハイ予選のリレーで連が肉離れを起こし、関東高等学校陸上競技大会には進出したものの、その大会では5着。それ以上先には進めないまま、3年生が引退する時期になった。部長の守屋に呼ばれた「俺」は、そこで次期部長に任命される。
 若菜は次第に打ち解けてきて、メールのやり取りや会話も増えた。健ちゃんの試合に誘ってみたらあっさりとOKをもらい、デートが実現する。この日のことを思い出すと「俺」は甘苦しい気分になり、どんどん若菜のことが気になっていく。
 サッカー馬鹿の家に生まれながらサッカーを辞めた「俺」は、家族が自分の走りを見に来る事をずっと拒んでいた。しかしやっと、両親に秋の新人戦関東選抜に来てもらうことになった。リレーでは全員が調子良く、4位で予選通過。しかしその日、大好きな健ちゃんが交通事故で大怪我をする。
 大会から病院に駆け付けた「俺」に、健ちゃんは「そんな格好で病院に来るな」と怒鳴りつける。手術が必要でリハビリを含めて1年以上かかる怪我で、復帰は不明。そんな状態の健ちゃんの元にチーム・ジャージで駆け付けたことをひどく後悔した「俺」は、その日から部活に行けなくなってしまう。

 主人公の新二は、自分の実力を未だに過小評価しつつも着実に力を付けている。大人しい若菜とも親密さが増して若い恋の予感。後輩もたくさん入り、特にサプリメントやスポーツ小物オタクの桃内が愉快だ。みっちゃんっていい先生だなって何度も思わされたりとかして、これはキャラ読みだけでも絶対楽しいはず。
 第一部よりワクワクして読んでいったけど、後半は一転して健ちゃんの試練にどう向かい合えばいいのかわからずにいる「俺」が痛々しい。怒鳴った健ちゃんではなくて自分を責める新二を、親も連もどうすることもできなかった。けど、きっかけを作ってくれたのは若菜ちゃんだった。
 きっかけはきっかけに過ぎない。でも、そこから新二を捕まえた連の「かけっこ」という言葉に拍子抜けすると同時に、新二を魅了する連には新二が必要なんだという事実には泣かされる。
 そして、神谷家のことも。1巻では母親は健ちゃんのおっかけやってて、新二も大切だけど健ちゃん優先って感じだった。けど、健ちゃんの怪我で初めて母親は決してそれだけじゃないことがわかった。息子のどちらかが体調を崩すと自分まで具合悪くなり、怪我した健ちゃんがつい怒鳴ったことはちゃんと叱る。新二は「うちは兄弟で母親を取り合うのではなく、俺と母親で健ちゃんを取り合っていた」みたいなこと言ってるけど、やっぱ母親は新二の母親でもあることには変わくて、ちゃんと愛されてるんだなって思った。
 新二があんまり思慮深い子じゃないんで、新二目線の書かれ方はどうしても全体的に軽い。でも書かれていることは意外に深く、気付いたら感動させられている。次は3巻だ。とても楽しみで、「ドン」の言葉が私を煽ってるようにも感じてしまう。
 競技シーンのリアル感のなさは相変わらずで、これはもうこういう人だと割り切ろう。

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『一瞬の風になれ 第一部 イチニツイテ』  佐藤 多佳子
2008-12-03 Wed 22:18
一瞬の風になれ 第一部  --イチニツイテ--一瞬の風になれ 第一部 --イチニツイテ--
佐藤 多佳子

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 「俺」こと新二は幼い頃からサッカーをやっているが、才能に恵まれた兄・健ちゃんにはどうしても追いつけない。健ちゃんが小学校から通うサッカー強豪の学校に、中学受験でも高校編入試験でも落ちてしまった。自分の才能に限界を感じ始めていた「俺」は、サッカーを止めて適当な高校に入学する。
 幼馴染みの連も同じ春野台高校になり、「俺」は連が伝説的なスプリンターだったと知った。体育の授業で連の圧倒的速さを見た「俺」は彼に陸上部を強く薦め、「新二も走る?」の一言で自分も陸上部に入る事を決めてしまった。
 サッカーの天才である兄とは違う道を選んだ「俺」は、今度は連の走る姿に魅了されながら陸上に染まっていく。

 2007年の本屋大賞を、一体いつ読んでるんだという疑問。今住んでるとこは人口が多すぎて、油断すると予約数が3ケタ後半とかなってしまってどうにも大変だ。期待感も忘れかけてる頃に届いたんで延滞ギリギリになって慌てて読んだんだけど、やっぱ面白いわこれ。予約入れた頃の期待通りじゃないか。1~3まで全部読んでから感想書こうと思ってたけど、期待以上に面白かったのが嬉しくって1冊目が終わった時点でパソコンを開いてこれを書きだしている。
 努力、葛藤、友情、恋と、青春もの扱う素材はどうしてもありがちになってしまう。そこをどう料理するかが作家の力量ってやつなんだろう。でもってこの作品、そこんとこがとっても上手い。
 主人公は金髪だし語り口調もアホっぽいけど好きなことのために最大限の努力をしてる子だ。健ちゃんと連という2人の天才が身近にいるのに卑屈になったり嫉妬したりせず、純粋に尊敬している。いい加減なところが多い連に腹を立てることもなく、こういう奴だからって感じで接してるのも心地いい。彼は彼で努力の天才だと思うんだけど、スポーツは努力だけ人に負けなくてもどうしようもないからなぁ。
 それに比べて天才の連は真面目に取り組まない。才能が平等じゃないことを痛いほどわかってる新二は、そんな連に添いつつも悔しさを覚えて叱りながら泣く。真っ直ぐないい子なんだなー。
 でも、新二も充分早いみたいだ。天才双璧の間にいるから褒められても受け止められないでいるけど、きっとこれからどんどん速くなっていくんだろう。新二と連が走る種目はリレーだ。2人でどんな世界を作っていくんだろうかと、続きが楽しみ。
 恋の話はまだっぽいけど、2巻以降明らかに色濃くなっていきそうな気配がビシバシ伝わってくる。新二と若菜ちゃんと仙波とか、クレールと連とか、どうなるのかなって思うし。
 ちょっとマイナスポイントなのは、競技シーンの筆致が淡すぎるところ。最初はわざと、さらっと書くだけに留めてるのかと思った。最初というと体育のシーンだけど、その後の大会のシーンも、合宿で体を動かしてるシーンでさえも、どこか覚束ない。
 この著者自身はスポーツと親密な間柄じゃないんだろうか。それともクライマックスでどかんと来るんだろうか。そこのとこに小さな不安を抱きつつ、今から2巻いきます。
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『私の男』  桜庭 一樹
2008-08-25 Mon 00:54
私の男私の男
桜庭 一樹

文藝春秋 2007-10-30
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 腐野花(くさりのはな)は震災で家族を亡くして、9歳の時から15歳年上の腐野淳悟に育てられている。24歳で尾崎美郎と結婚を迎えるが、花にとって「私の男」である養父・淳悟とは見えない鎖で繋がったまま逃れられないでいる。
 結婚前日に花、美郎、淳悟で食事をし、結婚式を済ませてハネムーンに出かけ、戻ると淳悟はいなくなっていた。古い知り合いである小町さんが来て、淳悟は死んだと言う。それが嘘であることをすぐに見破った花。物語はそこから、視点を変えつつ花を中心に過去へと遡っていく。
 2章は21歳の花と出会い、淳悟とも知り合ってその不思議な親子関係を見せつけられる美郎。仕事も付き合いも要領よくこなし、複数の女性と付き合いつつも花が気になり始める。
 次の3章は、東京で16歳の花を貪りつつ見守る淳悟の視点。バイク便の仕事をしながら花を養っている最中、故郷である「北」で知り合った田岡が訪ねてきた。田岡は半年前に「北」で起こった殺人事件の犯人を花と確信しており、全てを悟られていると知った淳悟は田岡を殺害した。
 4章の半年前で紋別市にいた頃の花の視点。身も心が淳悟を求めて止まず、海上保安部に所属する彼が巡視船で出かけて留守にする度に海の方を見ながら過ごす。しかし2人の関係が地元の人々から「親父さん」と慕われる大塩に知られてしまい、花は淳悟と離れて暮らすよう説得する大塩を流氷に乗せて蹴りつけ殴り、流れゆく流氷に置き去りにした。
 5章は淳悟の恋人・大塩小町が12歳の花を好きになれずに警戒している。本家の祖父や紋別警察署の田岡は震災孤児の花をかわいがるが、小町から見ると花は得体が知れなくて何となく怖かった。淳悟と花の奇妙な親しさの親子関係に、小町は花が淳悟から何かを奪っていったのではなくて淳悟が花から何か大切なものを奪い続けていることに気付く。
 そして最後の9章は9歳の花の視点。地震による津波で両親と兄と妹を失って避難所にいた花のもとに、淳悟が来て紋別に連れ帰った。淳悟は花が暮らしていける準備をサクサクと整え、若い独身男性に子育てができるはずがないと反対する連中を説得して、花を正式に養女にする。淳悟の母親の墓参りに行った日、夜中に淳悟は「ものすごく、さびしい」と言う。花が抱きしめていると、淳悟は花の服を脱がせて全身を舐めまわした。

 若い男が9歳の主人公を引き取って肉体関係を結びつつ、主人公は大人になる。主人公は彼が実の父親だと知っていた・・・という前知識を、同じ職場の人から教わっていた。彼女はこの本が気持ち悪くてたまらなかったらしい。図書館に予約しててまだ読んでない私にいかに気持ち悪いか話してくれたけど、深く語ると泣くんじゃないかって思うくらいに時々言葉が震えていた。47歳で、娘が冒頭の花くらいの年齢だから読むのが苦しかったのかもしれない。
 タイトルで既に女の業のようなものを感じていた私は、その話を聞いて万全の警戒心で手に取った。直木賞受賞してなかったら確実に避けるところだけど、職業上そうもいかないんで心をフル装備にして読み始める。
 半分くらいまでは確かに気持ち悪かった。でも、時系列が段々と遡るにつれて2人の心の闇を理解させられていく。父親が死ぬと同時に、母親が父親のように厳しくなってしまった淳悟。自分だけ父親が違うことは知らないで育ったものの、家族の中で浮いているために出来るだけぼんやりと過ごしてきた花。耐えられない寂しさの満たし方を知らない淳悟から、愛情という物を初めて向けられた花が受け止める・・・と書くと月並みだろうか。
 私事だけど、うちの両親は家を支えるために一生懸命働くあまり、子供への愛情の示し方が手間とお金だけという人達だ。精神的に支えてもらったことがない。小さい頃くらいはあるのかもしれないけど、記憶を小学生くらいまで遡らせても思い当たらない。でもい両親から愛情をいっぱい受けて育った配偶者から向けられる物には、男女間の愛情と共に別の物を感じていた。考え抜いて、これが家族愛ってやつかなぁと思い始めてる今日この頃。例えば今、彼の愛情は変わってないのに問題があるから一緒にいてはいけないと言われたとして、私は大丈夫だろうか。
 読後に何となく寂しい気分になって身を寄せると、「その本に何か寂しい事が書いてあったの?」と言ってきた私の配偶者。いきなりズバリと当てられて仰天すると同時に、理解してもらえてる安心感から離れることができるか自問自答。難しさを改めて実感した。
 書評サイトで叩かれてるのを読んでて想ったんだけど、成長過程で両親の愛情に疑問を感じなかった人には理解し難い作品かもしれない。理解できる人が不幸な家庭ってわけじゃないだろうけど、理解できない人達は幸せな人達なんだろうなと思う。
 私だってどう見ても普通の家庭の部類で、こんな深いとこまで行きつくことはできないだろう。でも深い所に来てしまっているこのフィクションを全力で否定することはできない。6章の出会って間もない頃、若い男らしい乾いた愛情を娘に注ぐ淳悟と、その愛情を受けて離れられなくなった花。まだ健全な頃のやりとりが可愛らしくて、次第に不健全になっていく過程を読むために章ごとに逆に読んでいくと切なくなる。
 面白い小説というわけじゃないけど、私の内面をグサグサほじくり返して潜り込んでくるような作品だった。独特のひらがな使い、読点使いにも魅せられて、どうにもこの作品が頭から抜けない。淳悟、どこ行ったんだろうなぁ。花は幸せになってほしいなぁ。淳悟と花の母親はどうやって関係を持ったのかなぁ。
 それにしても、これが直木賞?わかりやすめの芥川賞じゃなくて?これのどの辺が大衆文学なんだろうか。少なくともR指定は必要なんじゃなかろうか。多感な年齢の子にはとても読ませられない。
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