元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
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『カシオペアの丘で 下』  重松 清
2008-10-14 Tue 17:51
カシオペアの丘で(下)カシオペアの丘で(下)
重松 清

講談社 2007-05-31
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 シュンはトシとも再会を果たし、4人は無事に顔を合わせることができた。その翌日、風邪をひいた哲生を連れて行った病院で、シュンが倒れてしまう。癌は確実にシュンの体を蝕み、東京に戻ることもできない状態になっていた。そうなったことでシュンは、祖父への憎悪やミッチョとトシへの罪悪感と向かい合い始めた。

 癌ってこんなに恐ろしい病気なんだと初めて知った。若くて体力がある人ほど癌細胞はどんどん転移する、逆に年とっている人の癌細胞の方が増えにくい、というのは知識として知っていた。でもこんなふうに、昨日まで大丈夫だったことが今日は駄目になっていく病気だとは・・・。
 残された時間を病院にいるのではなく家族と過ごしたい、だけど東京には帰りたい、というシュンの気持ち、いい大人が馬鹿みたいだと思う。入院して癌の症状を和らげないと移動は無理だけど、入院は嫌だなんて、そりゃトシがイラつくのも当然だ。でもシュンが家族を想ったり過去を思い出したりしている所を読むと、泣けてきちゃうんだなぁ。もし自分の配偶者が・・・って考えないわけにはいかない。
 過去に炭鉱で起きた事件のこと、身体障害者となったトシ、流れた赤ちゃんで終わった恋、不幸な殺人事件、交通事故のトラウマ、そして病気のこと。それから、「許す」ということ。下巻は上巻以上にめいっぱい詰め込んである。上巻では詰め込んであった内容が調和していたのに、下巻はやっぱ爪l込み過ぎ感が出てきたように思う。ただの詰め込み過ぎじゃなくて、不幸を詰め込んである。読者としては受け止めたいんだけど、下巻を読んだことで病気以外のことがボヤけてしまって残念だ。
 正直、ミッチョとシュンの恋の破綻やミウさんのトラウマの話は引っ張る必要なかったんじゃないか?下巻で出されても、「ま、そんな事だろうと思ったよ」という程度。ミウさんの話なんて、「今知りたいのはシュンの残り少ない人生なんですけど?」みたいな。
 すごく美しい話なのに、そういうとこが残念。『その日の前に』の方が断然いいと思う。
 それでもやっぱり、大人になってからも友達っていうのはいいな。皆が何かを抱えている中、ユウちゃんのいい奴っぷりが読んでてもすごく癒しになった。哲生くんもいい子で、この子が北都に行って父親の幼馴染たちに会えたのは本当に良かったと思う。最後に少しだけ書かれていたシュンの葬式のシーンが、一番涙が止まらなかった。
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『カシオペアの丘で 上』  重松 清
2008-10-10 Fri 14:25
カシオペアの丘で(上)カシオペアの丘で(上)
重松 清

講談社 2007-05-31
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 炭鉱の町、北海道の北都。アメリカが打ち上げた衛星ボイジャーを見るために家を抜け出して、炭鉱跡地で星空を見上げる小学4年生の仲良し4人組トシ、シュン、ユウちゃん、ミッチョ。ここが将来遊園地になるといいねと話し、そこを「カシオペアの丘」と名付けた。
 それから30年が経ち、炭鉱跡地は本当に遊園地ができた。市役所職員だったトシが園長になり、ミッチョは彼と結婚していた。遊園地の名前はミッチョが応募した「カシオペアの丘」。夢が叶ったように見えたが、どんどん廃れていく現実は厳しかった。
 その遊園地に遊びに来た川原夫妻が巻き込まれた事件で、「カシオペアの丘」での思い出の写真がテレビで流される。そこから4人の友情は、再び「カシオペアの丘」に向かった。
 40歳を目前にして肺に悪性の腫瘍が見付かったシュンは、ワイドショーで「カシオペアの丘」の写真を見かけて衝撃を受けた。炭鉱の町を取り仕切っていた「倉田」家の次男だったシュンは、炭鉱で起こった事故で生存が絶望視されていたとはいえ、消防団員のトシの父親他7人の救出を諦めた祖父を嫌悪している。小学校の時の喧嘩以来車椅子生活になったトシに罪悪感を抱いている。大学時代に交際していたミッチョにも罪悪感を感じている。故郷を捨てて暮らす東京で、帰りたい、謝りたいと思いながらも帰ることができないでいた。

 トシとミッチョの夫婦愛、炭鉱王だった倉田千太郎のこと、シュンの病気と家族のこと、川原真由ちゃんの事件でボロボロになっていく川原さん。ユウちゃんと取材に来て以来、妙に北都のことを知りたがるミウさん。これだけのことを1つの話に収めるなんて、なんて欲張りなんだろうか。皆色々抱え過ぎ!でも内容は重すぎるのに、全体的に優しさを感じる不思議な物語。やっぱ重松清だからだろうか。
 でもやっぱり冒頭ののどかな始まりから一変して、次の章の幼女殺人事件で顔をしかめてしまう。最近本当に子供を狙った殺人が多い。少し読み進めたところで捕まる犯人にはさらに衝撃を受ける。それでも生きていくことを選択した以上は、冷静になっていくしかないのがまた辛い。殺人事件で子供の葬式を挙げるなんて、人が経験し得る中でも上位の不幸だろう。
 真由ちゃん殺しの犯人が獄中から書いた友人宛ての手紙が出てくるんだけど、この手紙がかなり引っかかる。実在するある少年犯罪者が、獄中からあんな感じで虚勢を張ったような手紙を書いているのを知ってる。縁もゆかりもないながら個人的に注目してる事件だけに、この手紙には憤慨してしまった。物語の中ではいちキーパーソンでしかない川原さんを何でこんなに苦しめるのかなぁ。要るのかな、こんなシーン。体がどんどん癌に侵されていくシュンのすぐ近くに、こんなにも精神的に痛めつけられる川原さんの存在があることが読んでてきつい。不幸の比較をしてしまうじゃないか。
 うさぎの着ぐるみを着たミッチョが川原さんと再会し、思わず泣いてしまったミッチョがシュンとも再会を果たしたところで上巻は終わる。
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『トワイライト』  重松 清
2007-09-21 Fri 18:26
トワイライトトワイライト
重松 清

文藝春秋 2002-12
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 小学6年生の時に埋めたタイムカプセルを開くために集まった39歳の元同級生達。集まったのは半数ほどだけど、その中に今の厳しい現実と向かい合いかねている4人がいた。それぞれの目の前にある問題をどう乗り越えればいいか、戸惑って前に進めないでいる。
 彼らの子供の頃の人柄を「ドラえもん」の登場人物に例えながら現実と比較しているのが見事に嵌ってて、相対する現在の彼らの姿が妙に重苦しく感じられる。
 メガネをかけていたために「のび太」と呼ばれていた克也はリストラ寸前、当時体が大きくて乱暴だった「ジャイアン」の徹夫は家庭崩壊。そのジャイアンと結婚した皆のマドンナ「しずかちゃん」である真理子は、徹夫からの暴力に苦しんでいる。一人だけ輪から外れている淳子には「ドラえもん」のキャラ役柄はないけど、予備校講師としての地位がどんどん低迷している最中だ。
 当時の未来の象徴だった大阪万博も絡め、徹夫と真理子の2人の娘も巻き込まれながら、現実はますます歪になっていく。
 重いけど読まされる。どうなるのかと読み進めたけど、何とかなりそうな、ならなさそうな、でもわりとほのぼのする終わり方で良かった。徹夫・真理子夫婦は本当に、どうなるんだろうなぁ。結構末期っぽかったけど、再スタートできるんだろうか。読み終えてからそんなこと考えてしまうくらいリアルな現実を、読み手にも突きつける本だと思う。
 「トワイライト」は「黄昏」という意味。最後のシーンと、人生における39歳という地点を掛けてるんだろうか。上手いよなぁ、清。
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『ナイフ』  重松 清
2007-09-09 Sun 23:26
ナイフナイフ
重松 清

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 『その日の前に』を読んで、他の著作物も読んでみたくなった作家さん。適当に借りたけど、ダークな話だった。「いじめ」と「家族」をテーマに描いた5編の短編集で、リアルだけど何か冷静で、やっぱすごい作家さんなんだなぁと改めて思った。

「ワニとハブとひょうたん池で」
 ある日突然、つまらない理由でハブられることになった女子中学生ミキが主人公。平坦な日常にゲーム感覚で「ハブられ」てると理解したミキは、ゲームに負けないように耐え続けた。時々、ワニが住み着いたという噂の近所の池に行って、ちょっと心を病んでるっぽいおばさんと話す。多分それが息抜きみたいになってたんだろう。あとは極力平静を装ってる。
 彼女が両親にだけは知られないようにと願う心理描写が見事だった。心配をかけたくないからじゃなくて、意地というかプライドというか、そんな感じ。
 男子は「弱い者いじめ」がエスカレートしていくイメージだけど、女子って変哲ない所から集団無視が始まる気がする。何でなんだろうね。
 
「ナイフ」
 体が小さいことで悩んだ少年期を過ごした父親が、同様に体が小さいためにいじめを受けている息子に向ける眼差しの変化を描いたもの。心配する母親に、大丈夫と言いつつ息子と向かい合うことを避けているように見えた。当然息子も、いじめられていることは隠している。
 ある日父親はナイフを買ってポケットに忍ばせ、何かある度に「けれど私はナイフを持っている」と思うことで自分を強く保とうとする。
 我が子がいじめを受けた時の親の無力さってこんなんだろうか。最終的にはいじめられている息子と向かい合うんだけど、何も解決してないと思うんだけどなぁ。内容的には釈然としないけど、親が関わっても解決しないのが「いじめ」なんだろう。

「キャッチボール日和」
 ひどいいじめを受けている大ちゃんの幼馴染み、好美の目線。
 高校球児だった大ちゃんの父親は、息子に大好きな野球選手の名前を付けた。しかし息子はひ弱で、陰湿ないじめの対象になっている。父親はそれを認めることができないで「逃げるのは負けだ」と転校も許さない。
 好美はいじめにも大ちゃんの親子関係にも口を挟むことなく、明るくて無難で冷静な少女として存在している。傍観者って一番ありがちで、一番賢い手段だと思う。でも最終的には相容れない親子の架け橋となって、少しだけ2人が歩み寄る手助けをしてくれて、良かった。
 これはいじめのシーンが一番悲惨だった。よく自殺しないで耐えたなと思うけど、多分こういう子は自殺する勇気もないんだろうな。いじめる側を認める言葉になるけど、「いじめられる方も悪い」タイプだと思う。

「エビスくん」
 ひろしは重病を抱えて入院している妹に、学校で起こったことを何でも話す。クラスに転校してきた戎(えびす)という苗字の少年のことを「きっと神様の子孫だ」と話すと、妹は願い事を叶えてもらうためにエビスくんに会いたがるようになった。
 ところがエビスくんは暴力的な少年で、ひろしは彼からいじめられるようになる。妹の頼みのために耐えるが、クラスメイトはそれを知らず無抵抗なひろしを蔑む。小学生の話だけどそれぞれ譲れない思惑があって、そこが妙に大人びていた。ひろしは本当に強い子だと思う。

「ビタースィート・ホーム」
 この話は5話中唯一、いじめとは少し違う。主人公は小学生の娘を持つ父親。小4の娘の日記をけなすだけで理解しようとしない担任に苛立つ元教師の妻を、主人公は持て余しつつも黙って話を聞く。事態はどんどん悪い方向に行き、保護者対担任の直接対決にまで持ち込まれる話。
 娘の日記は出来事を淡々と書いているだけのもので、担任は「それについてどう思ったかを書け」としつこい。娘は頑として書かないが、最後にその理由が明らかになる。あまりにもしょうもないんだけど、確かに小学生の女の子ってしょうもない事を実行しちゃうんだよね。
 最後には幸せそうな一家になってて、後味悪い話を4話読ませられた後だったからやっと人心地つけた気がした。

 評価が高い理由がよくわかる内容とリアルさの本だったけど、2度読みはしたくないな。1度でおなかいっぱい。
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『その日のまえに』  重松 清
2006-04-13 Thu 00:06
その日のまえにその日のまえに
重松 清

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 もっとヘビーな話を書く作家だと思ってたけど、わりとさらっと読めたのは短編だったからかな。

「ひこうき雲」はクラスメイトが難病にかかったことを知った小学生の話。
「朝日のあたる家」は、10年前に夫を亡くした女性教師がかつての教え子に再会する話。
「潮騒」は癌を告知された中年男性が、小学生の頃に行方不明になった友人を回想する話。
「ヒア・カムズ・ザ・サン」は母が癌を問いただせない高校生の話。
「その日のまえに」「その日」「その日のあとで」の最後の3連作は、妻の癌を告知された夫婦の回顧、死ぬ当日、残された夫と息子達の3ヵ月後の話。

 「病死」をテーマにしたオムニバスだったけど、登場人物たちの受け止め方が重過ぎないのに妙にリアルだった。「その日」で義父が言った「丈夫に生んでやれなくてごめんな」にはやられたよ・・・。
 ほとんどの話が、小説の中の現在進行形では人は死なない。きれい事だけ集めたみたいで、途中まではもやもやしながら読んでいた。これが「その日のあとで」でつながり、きれいな連鎖になる。浅くも深くもないつながりの匙加減が絶妙。すごいな清。
 大作家に対して自分でも何様のつもりと言いたいけど、ちょっと不満だった点がある。「朝日のあたる家」はなくてよかったんじゃないかな。唯一つながりのない話だったから、ちょっと浮いてる。それから、迎え火の話が一番感動したから、最後の花火大会、もうちょい盛り立てて欲しかった。
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