元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『朔風ノ岸―居眠り磐音江戸双紙8』
2008-10-27 Mon 11:30
朔風ノ岸―居眠り磐音江戸双紙 (双葉文庫)朔風ノ岸―居眠り磐音江戸双紙 (双葉文庫)
佐伯 泰英

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 大晦日の夜、磐音は草履商備後屋の番頭・佐平と名乗る男が掏摸にあったと騒いでいるのを見かけた。何となくその男を見送ってから長屋に帰り中居半蔵からの手紙を読むと、妹の伊代が家中の御旗奉公井筒洸之進の嫡男・源太郎と祝言を挙げると書かれていた。
 年が明けて今津屋に挨拶に行った折、おこんに伊代へのお祝いを見立ててくれるよう頼むと初売りに連れて行かれた磐音。磐音からは加賀友禅の着物を、今津屋からとして象牙の櫛と簪を買い、甘い物でも食べて帰ろうとしたところで南町奉行所の木下一郎太と会った。聞けば草履商備後屋で一家毒殺事件が起こったとのこと。大晦日のことを思い出した磐音は、おこんと別れて一郎太に同行した。
 備後屋では番頭の佐平が屠蘇に石見銀山を混ぜて一家を殺害し、その後井戸に身投げしていた。さらに通いの番頭の話によると、二、三千両あるはずの金子が三百両少ししかないそうだ。また、佐平が掏摸にあったような事実はないという。
 しかし笹塚の調べで、二番番頭の陽太郎が若い頃に産ませた子供であり、伯父である寄合近藤供継の御用人・竹垣九郎平とで仕組んだことだった。松の内に近藤家で行われる賭場に踏み込む際に磐音も同行させられ、竹垣の居合いを叩き伏せた。
 
 乾物問屋の若狭屋を訪ねると、関前からの品物が届いていた。番頭の義三郎によると、若狭屋でも上の部類に入るがまだまだ改良すべき点も多いと言う。
 磐音は関前藩の江戸藩邸にいる伝之丈と秦之助を若狭屋に紹介し、その後佐々木道場に連れて行った。さらに今津屋の由蔵にも紹介した。
 今津屋でくつろいでいると笹塚から呼び出しがかかった。蘭医の中川淳庵らを狙っていた血覚上人一派の上に立つ人物と思われる「鐘ヶ淵のお屋形様」の正体が遠江横須賀藩譜代大名西尾家の隠居・西尾幻楽という人物らしい。

 品川柳次郎が父親からの紹介で、旗本大久保家の仕事を持ってきた。大久保家の知行所で不穏な動きがあるらしく、見回りに行く御用人の馬場儀一郎の用心棒の仕事だ。竹村武左衛門と3人で請け負うことになった。
 知行所では弘法大師ゆかりの温泉があり、客の遊び程度に賭場をやっていた。ところがこれに渡世人・唐次郎が目を付けてきた。さらに下田湊の網元・蓑掛の幸助も手を出してきて、二派が争っている。取り立てて策もないままに来てしまった一向だったが、3人の機転と磐音の腕で解決。

 中川淳庵が何者かに攫われた。どうやら「鐘ヶ淵のお屋形様」の仕業のようだ。笹塚らと協力して、西尾幻庵宅を見張っている時に会った尼僧にも協力してもらい、無事淳庵を救い出し、一派をお縄にすることができた。

 白鶴太夫を描いて一躍名を挙げた北尾重政が、おこんを描きたいとしつこく今津屋に通っているらしい。おこんが頑なに断り続けるのは、磐音が原因だと由蔵が言う。その北尾が命を狙われていると、一郎太が磐音の元にやってきた。
 吉原では今、途絶えていた太夫の位を作るために客に選ばせる、という催しを行おうとしていた。抱えの花魁を人気絵師に描かせようと北尾のもとには注文が殺到したらしいが、好みではない花魁は全て断ったために反感を抱かれているのではないか、ということらしい。
 磐音が長屋に戻ると、父親から手紙が来ていた。奈緒の祝言のこと、磐音を呼べない事情を詫びる言葉などが書かれていた。そこへ幸吉とおそめが相談があるとやってきた。聞くと幸吉に奉公の話が来ているという。幸吉の父親の知り合いが薬種屋の住み込み奉公の話を持ってきたが、幸吉は鉄五郎のような鰻屋になりたいと思っている。鉄五郎との話はあっさり済み、あとは父親を説得するだけとなった。
 その折、一郎太の使いの者が呼びに来た。絵師川流一伯が殺され右手首が無くなっているという事件が起こった。かつて江戸に出没した辻斬り「小手斬り佐平次」という人物のようだ。数日間の張り込みで小手斬り佐平次をおびき出した磐音は、これまた見事に仕留める。
 また、幸吉の方向の件も一件落着し、長屋に戻ると伊代から祝いの品に対するお礼の手紙が来ていた。


 以前磐音が軽くこらしめた福坂利高が再び通りかかるけど、腹立つおっさんになっていた。その日暮らしをしている磐音に、汚い恰好で藩邸前をうろつくなとか言ったり。脱藩したんだから藩主の福坂実高の周りをうろつくなとか。それら全てに納得する磐音が歯がゆい。実高は立派な藩主なのに。利高、今後失脚しないかな。
 今回は関前藩の海産物がそれなりに評価されたけど、まだまだ今後が大変そうだということ以外、物語に進展らしきものはなかった。幸吉が奉公に出る年齢になって、ちょっと大人になったとかこの程度か。こりゃシリーズが長くなるはずだわ・・・。まだ半分も読んでないのにどんどん続編が出やがるし。
 面白くないわけじゃないけど、もうちょっと全体の話のどこかしらに進展があるといいのに。
別窓 | [さ行の作家]佐伯 泰英 | コメント:3 | トラックバック:0 |
『狐火ノ杜―居眠り磐音江戸双紙7』 
2008-08-19 Tue 00:46
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佐伯 泰英

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 磐音は品川柳次郎、中川淳庵、おこん、幸吉、おそめの6人で紅葉狩りに行くことになった。お艶のことで磐音とおこんに礼をしようとするも断られた今津屋・吉右衛門からの心遣いだ。船で海晏寺に行き、紅葉を楽しみ、今津屋のコネで流行りの店で食事をする。それだけなのに、相変わらず磐音は揉め事に巻き込まれる。店から金を取ろうと直参旗本の愚息共が料理にあたったと騒いでおり、診察を申し出た淳庵を威嚇する。深川育ちのおこん、貧乏御家人の柳次郎の啖呵で逆上した輩達に磐音が灸を据えるも、帰り道でも襲われた。さらに彼らは今津屋にまで乗り込んで来たが、いつも通り磐音が切り捨てる。
 冬になり、竹村武左衛門が石垣工事の仕事中に怪我をしたと聞いて見舞いに行った磐音と柳次郎。しかし武左衛門は給料のことでもめていた。当初の予定の日数を働いていないために日当を下げられた武左衛門だったが、危険な工事にも関わらず酒を飲んでいたことが判明する。武左衛門の妻・勢津と子供達に同情した柳次郎は、残りの日数は自分が働くと言い出した。工事現場の親分はなぜか磐音も一緒に働くことを条件に、武左衛門の給料の件を承知する。
 寒い場所で水に浸かりながらの作業もあり、仕事はつらかった。そんな折、磐音は奈緒を追って旅をしていた時に世話になった鶴吉と再会する。用件を言わないまま宿に戻った鶴吉が気になって地蔵の竹蔵に調べてもらったところによると、鶴吉は江戸の三味線職人の次男で、長男の富太郎を凌ぐ腕の良さが評判の職人だった。兄弟は2人共お銀という娘に惚れていたが、彼女はどうやら鶴吉の方を憎からず思っていたらしい。父親の芳造が跡継ぎに悩む際、富太郎が後継ぎは鶴吉に譲るからお銀を娶りたいと言い出した。まずは本人の気持ちが大切と、芳造の友人の息子・長太郎という青年が確かめに行く。しかし実は長太郎もお銀に惚れていた。鶴吉の名前で呼びだしてお銀に乱暴をしようとしたところに鶴吉が駆けつけて刃傷沙汰になり、彼は江戸を出ていたそうだ。
 富太郎はお銀を娶り、父親の跡を継いだ。しかし夫婦は上手くいかず、お銀は長太郎の愛人になった。芳造が長太郎の所へ話をつけに行ったが、死体になって発見されたという。鶴吉はそれを知って江戸に戻って来ていた。
 磐音は鶴吉に、事情を調べたことを正直に話してから手を貸すことを約束した。長太郎は船を賭博場に改造しているため、笹塚に訳を話してから2人は賭博船に乗り込む。結果、富太郎、お銀、長太郎が命を落とし、笹塚の配慮で鶴吉は旅に出ることにした。この件で奉行所から褒賞として200両をもらった磐音だったが、鶴吉が江戸に戻った時にすぐに職人として働けるようにと全額今津屋に預けて由蔵に呆れられる。
 褒賞金を受け取った際に笹塚から、中川淳庵と共に「ターヘル・アナトミア」を訳した前野良沢が襲われたと聞いた磐音。淳庵を心配して訪ねると彼は無事であり、前野良沢も命に別条はないらしい。カピタンが出府するという噂に、血覚上人を頭とした一派の活動が再び活発になっているようだ。隠居した上役元用人・岩村籐右衛門の痛風を診に行きたいが外出ができないと愚痴る淳庵に、磐音が同行を申し出る。
 磐音には因縁がある血覚上人一派が岩村宅を襲って火を点けるも、賊は磐音が倒し、火も消し止められた。さらに今回の件では、血覚上人の裏に「鐘ヶ淵のお屋形様」と呼ばれる人物が存在することがわかった。
 江戸に戻った磐音は、今度は今津屋の老分・由蔵から能登湯という湯屋の用心棒の仕事を紹介される。能登湯2階の休憩所で度々会合を開いている浪人達がいるが湯屋が面倒に巻き込まれては困ると、主の加兵衛からの依頼だった。
 会合を近くで聞いていた磐音は、聞こえてきた情報から野々村仁斎という男に行き着く。彼は佳代という御家人の妻の愛人であり、佳代は品川柳次郎と古い知り合いであった。佳代は夫の通夜の席で、家を守るために義弟と結婚してはどうかと親戚から言われる。しかし病気の夫に代わって家を支えるために体を売っていたことで非難されて、結局は家を出ていた。
 能登湯での会合は磐音の説得で場所を変えてもらったが、柳次郎は姉のように思って佳代が気になる。義弟が佳代を慕っていたと彼女の体を買いに来ていたが、そこに踏み込んだ野々村仁斎に斬られ、佳代も彼に殺された。柳次郎が何とか仇を討とうとした時に磐音が駆け付け、「代わろう」と声を掛ける。
 この一件を聞いて、由蔵は能登湯に必要経費を請求せずに赤字になった磐音に腹を立てる。のんびりした磐音に代わって請求してくれた由蔵は、近年になく早い時期から狐火がよくでると評判の王子稲荷参りの付き添いを依頼した。途中の茶店で代金を強請ろうとしていた浪人を成敗した磐音。その後狐火を見物していると、おこんがいなくなっていた。
 茶店で追い払った連中に違いないと捜し回るが見つからない。狐火の探索に来ていた同心木下一郎太と偶然出会い、農家が貸している小屋に女を連れ込んだという浪人達がいるという情報を入手した。小屋の外で様子を伺うと、嫌がる女に手をかけたという話が漏れ聞こえる。耳を塞ぎたくなるのを堪えて踏み込むも、女はおこんではなかった。
 一旦番屋に戻ると、稲荷社へ向かう山道に侍の黒焦げ死体があるとの知らせが入る。死体は茶店で磐音が追い払った浪人であり、雷に打たれて死んでいた。さらに首筋には奇妙な歯形がある。おこんは稲荷社の中で発見されたが、童女のように歌いながらぼんやりしていた。磐音が振るった入魂の一閃がおこんの脳天直前でぴたりと止まると、光が抜け出ておこんは正気に戻った。
 その後江戸では、金兵衛とおこんが稲荷様を信仰していると面白おかしく取り上げられていた。

 今回は比較的のどかな話の中に揉め事が盛り込まれている。あちこちで諍いフラグを立てまくる磐音がかわいそうになってきた。だらしなさ全開の武左衛門も、ちょっとイラッとする。要するに、すこ~し飽きてきたなと思ってきた。ワンパターンの中にも楽しいことや悲しいことが盛り込まれてるんだけど、今回の話はすべて“あーなってこーなって解決するんだろうな”と容易に想像つくものばかりだ。私はスタンダードやワンパターンはある程度歓迎するけど、ここまでくるとなぁ。
 しかしそんな中で一番の見せ場はおこんの告白。「居眠り磐音さん、もし刀を捨てて町人になるというのなら、おこんが嫁に行ってあげるわ」と、別れ際にさらりと言う。今までは所々で磐音を想ってるような素振りを見せていたけど、磐音の心には奈緒しかいないこともちゃんと理解して出しゃばらなかったおこん。しかも磐音は豊後関前藩のため、武士の身分を捨てることはないってこともわかってるはず。その上での逆プロポーズに、おおおおお!!!となる。
 私は恋愛モノが嫌いな理由は、しょうもない事でうだうだ悩んでる話が嫌いだから。何事も結論を急ぐのは、数ある私の短所のひとつだ。でもこんなふうに、自分の気持ちを整理して理解し、相手のことも理解し、どうあるのがベストか最善の状況をわかった上で、それでも好きだから想ってるっていう現状維持は健気でいい。とてもいい。しかしまあ、その後は何事もなかったように接してる2人なんだが。
 それでいて、同じように相思相愛の人を諦めざるを得なかった鶴吉と語り合うシーンでは磐音の気持ちもわからされて、しんみりとくる。奈緒と再び会えることはあるのかなぁ。まだ7巻までしか読んでないけど、先日26巻が出てたなぁ。佐伯さん、筆早すぎ。
 豊後関前藩でより良い海産物を作らなければいけないが、領民から思いのほか反発を受けているという中居からの手紙も気になる。
 ワンパターンと書いておきながら、やっぱり登場人物は皆好きなんでどうなっていくのか見て行きたい。
別窓 | [さ行の作家]佐伯 泰英 | コメント:2 | トラックバック:0 |
『雨降ノ山―居眠り磐音江戸双紙6』  佐伯 泰英
2008-06-02 Mon 18:44
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 今津屋が、納涼祭で勘定奉行や町奉行の役人を接待するための屋根船を出すと言う。その用心棒を引き受けた磐音は、帰り道に同じ金兵衛長屋に住むお兼が男に付きまとわれている所を助けた。男はお兼の元亭主・丑松だったが、お兼は知らない男だとしらを切りと押す。元々「化粧っけのある女」として長屋の女達に嫌われていたお兼だが、その日以来磐音はお兼に色目を使われるようになり磐音まで長屋の女衆に口を利いてもらえなくなった。
 納涼祭では今津屋の船を無事あやかし船から守った磐音だったが、その帰りに丑松がお兼と連れの男を刺した所に行き当たった。この先地獄しかない丑松は、磐音の慈悲で絶命した。
 さて磐音の故郷である豊後関前藩だが、今津屋のコネで乾物問屋の若狭屋を紹介してもらうことになった。今津屋の吉右衛門と共に若狭屋を訪れた中居と磐音は、工夫次第で江戸でも売れるという評価にひとまずほっとした。
 ある日磐音が幸吉の長屋を訪ねると、同じ長屋のおつね婆さんが首を吊った事件が起こっていた。安五郎という男に金を騙し取られた末の自殺だという。幸吉は役人だけに任せてはいられないと、鰻獲り仲間にも協力させて安五郎を探していた。安五郎を見たことがあるおつねは、幸吉の暴走を磐音に相談に来た。
 また今津屋に話が戻り、元々体が弱かった内儀のお艶が最近ことさら体調が悪いそうだ。そのお艶が実家で静養したいと言っている。実家は相州伊勢原(多分神奈川・・・?)で、旦那の吉右衛門も送っていくと言うそうだ。その旅に、磐音も同行するように頼まれた。吉右衛門とお艶、お艶の世話役におこん、荷物持ちに宮松、用心棒に磐音の5人でお艶の実家まで行くことになった。道中起こる揉め事は磐音が片付けつつ旅をしたが、お艶は実家が近くなって倒れた。
 昔からお艶を知っている医師・今村梧陽の診察によると、お艶は胃に不治の病を抱えていることがわかった。お艶自身はそれに気付いていたが、隠し通してきていた。そんなお艶だが、大山詣でだけはどうしても行きたいと言う。そこで磐音が背負って大山、別名「雨降山(あふりやま)」を登り、不動堂まで行くことになった。大山詣でが叶ったお艶だが、翌日から高熱を出す。磐音は病平癒の代参のために毎日未明に山に登った。その磐音にまた面倒が降りかかる。
 先の短いお艶のために吉右衛門が伊勢原に残ると言い出した。両替商は老分の由蔵がいるから問題はないが、主のいない店は何かと気が緩むためと、吉右衛門は磐音に後見を頼む。磐音、おこん、宮松は江戸に戻るが、今度は南町奉行所の笹塚が旗本の詐欺事件の相談を磐音と由蔵に持ちかけた。
 その旗本は大判を質に大金を借りては返すことを繰り返した後、数度目に質草を請け出す際に「これは預けた大判ではない」と言って始末料を強請っていた。同じ目に合った質屋が数軒あったが、相手が旗本であるために迂闊に手を出すことができない。何となく付き合わされるような形でしかなかった磐音だったが、調べていくうちにその旗本が吉原で白鶴・・・つまり磐音の元許嫁・奈緒を気に入り、身請けしようとしていることがわかった。磐音と笹塚はこの事件を丸く収める方法を思案する。

 今まで登場しなかったお艶だったが、彼女が病に倒れてからの磐音の優しさは胸を打つ。そんな優しい磐音なのにトラブルは必ず向こうからやって来て、結局血生臭い話になってしまう。それが哀れでもあり、この本の面白味でもあるんだろうけど。
 江戸っ子は相変わらず、意外なところで思いやりがある。やくざの親分がおそめを心配して、船頭には悪い奴もいるからと子分を一人付けたりとか。駕籠に乗って山に登るお艶に文句を言う輩が病人と知ると道を空けるよう大声を出してくれたり。何かそういう小さいシーンに、古き良きって匂いがしていい。
 豊後関前藩の海産物輸出の話も、退屈なく読めてしまうのが不思議だ。今後、無事軌道に乗るかな?トラブルに好まれる性分の磐音がいるんだから、もしかしたらもう一悶着くらいあるのかな?
 あと気になるのは、花魁白鶴の浮世絵を描いた北尾重政がおこんに声を掛けてきたこと。ナントカ小町のおこんの絵を是非描きたいと言ってきた。磐音がいてもいなくてもおこんは断っただろう。ただの行埋めにこんなエピソードを書く著者じゃない。今後何か起こるのかな?
別窓 | [さ行の作家]佐伯 泰英 | コメント:2 | トラックバック:0 |
『龍天ノ門―居眠り磐音江戸双紙5』  佐伯 泰英
2008-02-13 Wed 22:51
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佐伯 泰英

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 前作『雪華ノ里』では、身を売った許嫁の奈緒を追って西日本をほぼ一周してきた磐音。奈緒はあちこちに転売される度に値が上がり、最終的には千両で江戸の吉原に売られることになっていた。
 今回は磐音が江戸に戻って正月を迎えたところから始まる。磐音には千両の金を用意することはできない。かといって真っ当でない方法で金を用意して奈緒を身請けしても、奈緒は決して喜ばないことを知っている。磐音は奈緒を見守るという苦渋の決断をし、その代り「生涯、妻を娶らないこと」で奈緒と添い遂げるという決意をした。しかし奈緒はまだ波乱に巻き込まれそうになる。最後に奈緒を売った京の妓楼は江戸の吉原だけでなく尾張の宮宿にも奈緒を見せており、奈緒を買うつもりでいた尾張の怒りを買っていた。そんな中、奈緒を改め白鶴の花魁道中が始まる。磐音は奈緒を守るために、陰ながら剣を振るった。
 また、正月早々江戸では漆工芸商が押し込み強盗に皆殺しにされていた。被害を受けた漆工芸商が今津屋と知り合いだったため磐音と由蔵が現場に駆け付けると、南町の切れ者、年番与力の笹塚孫一がいた。
 一方、豊後関前藩。分家の福坂利高が江戸家老に着任した。世間知らずではあるが、話せばわかる人物のようだ。また磐音は父親から、参勤交代の費用二千五百両を今津屋に借りる口利きをしてほしいと頼まれる。無茶な借金の申し入れだったが、磐音が間に入ったことや豊後関前藩は全てを曝け出したこと、何にも代え難い担保で借りることが可能になった。
 それから竹村武左衛門が持ってきた仕事。仕事が重なった武左衛門は、一晩三百文という安さのおとくのばば様の用心棒を磐音に押し付けた。武左衛門は狙われていると言うのは妄想だと思っていたが、どうやら本当らしい。孫一に頼んで調べてもらうと、おとくは数年前に江戸を荒らした霜夜の鯛蔵の娘であり、鯛蔵は手下に裏切られて獄門になったことが判明した。
 おとくの件を解決させると、割の悪い仕事を磐音に押し付けた武左衛門が行方不明になっている。知らせに来た品川柳次郎と共に雇い先の不知火現伯という医師の家に行くと、武左衛門は現伯と共に匂引にあっていた。町方に知らせると現伯の命がないと考え、磐音は孫一に相談した。
 その件も無事解決し、磐音は久し振りに佐々木玲圓道場に行く。そこへ道場破りが現れたため、磐音が退ける。家に戻ると、中居半蔵が来ていた。江戸家老となった利高が吉原に行き、自分の藩から出た白鶴に会おうとしていた。利高から同情の眼差しでも向けられたら白鶴こと奈緒は自害するだろうと、2人は利高を止める作戦を立てる。

 ・・・ああ、盛りだくさん。今回はどのエピソードも面白かったから極力書いてみたけど、こんだけの量になってしまった。この著者の上手いところは、エピソードが単体で起こらないこと。ごちゃごちゃするからエピソードごとにまとめて書いたけど、この本の中ではあっちの事件が起こってる最中にこっちでトラブルが・・・となる。磐音が次々に事件を抱え込む様子が読み取れて楽しい。
 『雪華ノ里』で散々引っ張った奈緒の件は、悲しい結末を迎えていた。まあ同じ江戸にいるんだから、何かの運命の巡りあわせで会える日も来るかもしれない。今津屋が手を貸す意思を伝えても、磐音なりの理由でやんわりと断るのが真っ直ぐすぎる。
 ところで、磐音ってどんだけ負け知らずなんだろうか。1巻で幼馴染と斬り合っての怪我と今津屋の用心棒業で負った怪我があったけど、2巻以降は全勝してるのでは?最初は強いけどまだ発展途上ってくらいだったのが、今や無敵だ。修羅場を潜って強くなっていったみたいな、少年マンガのような設定なんだろうか。
 幸吉とおたねを浅草に連れて行く所は和やかで好きだったんだけど、2人を送って行く途中で撃退した道場破りに勝負を申し込まれた。磐音は穏やかな人なのに、本当にどこまでも血生臭い。そういうマンガも小説も嫌いじゃなけど、時代小説で剣術となるといまいち戦闘シーンを思い描けないんだよなぁ。おじいちゃんっ子だったから時代劇は良く見てたけど、あの戦い方は作られた緊張感や迫力ない剣技でしかないし。
 ひとまず豊後関前藩は着々と建て直しに向けて進んでるようだけど、次はどうなるのかな。金兵衛長屋に新しく引っ越してきたお兼が何かやらかすんだろうか。どうなんだろうか。冬のシーンが続いてるから、そろそろ春になってもいいと思うんだけど。
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『雪華ノ里―居眠り磐音江戸双紙4』  佐伯 泰英
2007-12-27 Thu 00:59
雪華ノ里―居眠り磐音江戸双紙 (双葉文庫)雪華ノ里―居眠り磐音江戸双紙 (双葉文庫)
佐伯 泰英

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 3巻で一応、豊後関前藩の一連の事件が一区切りついた。この巻では磐音は、一家を支えるために女衒に身を売り長崎の遊郭に連れて行かれたという許嫁・奈緒の行方を追う。しかし奈緒はその美貌を買われ、どんどん転売されていった。長崎、小倉、赤間関、京都、金沢、そて江戸へと、磐音が奈緒を追い続ける話。ていうか本当に追うだけで終わった。
 もちろん磐音は各所でいざこざに巻き込まれていく。長崎に行く道すがら「ターヘル・アナトミア」(和題「解体新書」)の和訳完成を目指す蘭学者を助ける。小倉に着くと岩田屋善兵衛と赤間関の唐太夫の抗争に加わり、京では再会した東源之丞と賭け事で手持ちの金を増やそうとしたが失敗。金沢では関所破りの女衒・愛蔵に手を貸す。
 金沢まで行っておいて、やっと会えたと思った女性は結局は「なお」違い。奈緒は京から金沢ではなく、江戸に売られたという。こうして磐音は江戸に戻ったけど、江戸では白昼堂々と両替商を狙った強盗が出没していた。

 奈緒さんは最終的に千両以上の値が付いてたけど、そんなに美人だったのか。ドラマでは笛木優子がやったらしいけど・・・うーん。あんまり好きじゃない女優なんで微妙だ。
 奈緒さんを追いかけて日本を半周くらいしてる磐音だけど、この巻では決着つかなくてがっかり。とはいえ、磐音と奈緒さんが今後再会したとしてその後二人はどうするのかちょっと気になってたりする。まあこれまでの巻の中で一番つまらなかったから、早めに終わらせてほしい。
別窓 | [さ行の作家]佐伯 泰英 | コメント:0 | トラックバック:0 |
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