元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『草笛の音次郎』  山本 一力
2008-04-17 Thu 20:51
草笛の音次郎草笛の音次郎
山本 一力

文藝春秋 2003-10-28
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 恵比須の貸元・芳三郎のところに、佐原の好之助から香取神宮の祭りを見に来いとの手紙が来た。体調が優れない芳三郎は、代貸の源七と相談して名代を出すことにする。三年後に源七が組を継ぐ予定だが、その後に代貸に据えたい人間を名代に出すこととなった。源七は、見たところ優男の音次郎を推薦した。見かけと違って肚が座っていると言う。
 音次郎は話し方も渡世人らしくなく、仁義の切り方も知らない。芳三郎の名代として旅立つことは認められたものの、世間知らずで旅の序盤は失敗ばかりだった。しかし失敗から多くのことを学びとり、どんどん成長していく。また、源七も認める肚の座りっぷりや仁義の厚さに、行く先々で渡世人だけでなく役人にも彼を認める人が出てくる。

 これはもう、さすが山本一力と言わざるを得ない。若者が旅をする中で成長していくという、一見ありきたりなストーリー。しかしそこに、渡世人を持ってくるところが何とも心憎い。私は山本一力さんのこと、江戸の町人を描く作家さんだと認識していた。私が今まで読んだことあるのは『だいこん』と『あかね空』で、どちらも商売人。今度は何の仕事だろうと思ってたら、渡世人だ。やられたなぁ。そして、江戸時代のやくざな世界がかっこいいんだ、これがまた。渡世人言葉もいい。かなりいい。仁義を切る所とか、もうツボだ。
 音次郎は草笛が得意だから、「草笛の音次郎」という二つ名をもらう。彼は世間知らずだっただけで、旅をしながらどんどん大きく成長していく。度量を惚れられて、2人の舎弟も持つこととなった。その一方でうなぎを食べるとどうにも欲情する所なんかはやけに人間くさくて、そのギャップも面白い。
 他の登場人物も、やっぱ描き方が上手い。音次郎以外にスポットが当たることはそう多くないんだけど、何か厚みを感じるんだよなぁ。不思議。あくまで脇役なんだけど、みんないい味出してる。
 江戸時代の渡世人の礼儀なんかも書かれてるんだけど、説明がさらっとさり気ないから物語の妨げになることなく読めたのも良かった。時代劇で「おひかえなすって」とやってたことの意味がようやくわかった。道場破りみたいな感じだと思ってたんだけど、全然違ったのね・・・。
別窓 | [や行の作家]山本 一力 | コメント:0 | トラックバック:0 |
『あかね空』  山本 一力
2007-09-13 Thu 22:39
あかね空あかね空
山本 一力

文藝春秋 2001-10
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 2002年の直木賞受賞作。それまで無名だったけどこの受賞であっという間に人気になった作家だ。
 京で豆腐作りを修行し、独立のために江戸に来た永吉。そこで同じ長屋に住む桶屋の娘おふみに助けられながら開業するが、当時の江戸庶民の豆腐は固い物が主流。永吉の作る柔らかい豆腐はなかなか受け入れられなかった。それでも信念を貫き通した永吉の豆腐は、周囲の力添えで次第に有名になっていく。
 やがて結婚して3人の子供に恵まれた永吉とおふみだけど、少しずつ「家族」というものが狂いだす。長男の栄太郎ばかりに執着して猫っかいわいがりするおふねに、苦い顔をする永吉。豆腐屋は繁盛しても、幸せには見えない一家になってしまっていた。
 兄妹3人が互いに腹に抱えていた物を吐露できたのは、永吉もおふみも死んでからだった。これからは少しずつわだかまりを忘れていけるんだろうなって感じで終わる。
 読み終わってからしばらく考えてみたけど、取り立てて面白いとは思わなかった。序盤からあったご都合主義がずっと続くし、掘りも浅い。書き込めてない部分があるのがとても残念だ。在家には結局何もしなかったのか、序盤に名前だけ出てきた傳蔵を最後にいぶし銀な親分役で出す必要はあったのか、栄太郎の嫁とは?とか、書くだけ書いてそれだけって事柄が多いのが気になる。
 それなのに、がつがつ読んだ。引っ張られるように読まされたこの感じは嫌いじゃない。おいしそうな豆腐の様子とか、ちゃきちゃきした江戸町人の人情とか、その辺がとても魅力的で引き込まれた。
別窓 | [や行の作家]山本 一力 | コメント:0 | トラックバック:0 |
『だいこん』  山本 一力
2005-04-29 Fri 21:01
だいこんだいこん
山本 一力

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 時代小説って読んだことなかったんで、初チャレンジ。つばきちゃんという女の子が江戸でめしやを開く話なんだけど、つばきちゃんの性格がかっこいい。山本一力はお年寄りに人気あるけど、穏やか~な感じの、品のいい話だった。
別窓 | [や行の作家]山本 一力 | コメント:0 | トラックバック:0 |
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