元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『本バスめぐりん』  大崎 梢
2017-11-13 Mon 11:26
本バスめぐりん。
本バスめぐりん。
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大崎 梢
東京創元社
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 システムエンジニアだった照岡久志は、定年退職後に移動図書館バス「めぐりん」の運転手を務めることになった。これまでの会社勤めとは全く違う職業に戸惑いつつ、明朗快活な若き有能司書・梅園菜緒子ことウメちゃんとのコンビで市内を巡回する。
 久志はテルさんと呼ばれながら次第に移動図書館の仕事に馴染んでいく中で、「めぐりん」の周辺で起こる小さな問題・事件をウメちゃんと共に解決していく。
 人々の本との関りを描いていくほのぼの短編集。
 

「テルさん、ウメちゃん」
 久志がめぐりんの運転手になって2ヶ月半が経つある木曜日、とある利用者が大切な写真を本に挟んだまま返却してしまったという相談があった。該当する本は貸出中だったが、相談者がいる次のステーションで返却された。借り手の女性・寺沢は心当たりはないと言ったが、彼女の態度は明らかにおかしかった。

 コージーミステリーという名称、聞いたことはあっても初めて意味と一致した。ウメちゃん、ありがとう。私、本当に司書だったんだろうかと、我ながら思うわ・・・。
 1話目で設定を色々説明しておきたかったんだろうけど、時系列が急に戻ったりしてちょっと煩わしかった。久志の業務への戸惑いや、前任者の友人・賢一の適任ぶりを描きたかったのか?文字数稼ぎなのか?初出一覧によると隔月誌に掲載されてたらしいけど、例えば私が図書館業務が未知の世界だったとしたら序盤で読む気失っただろう。内容は面白いのに、それがもったいなかった。
 

「気立てがよくて賢くて」
 久志が「めぐりん」の運転手になって5ヶ月目。「めぐりん」が巡回するステーションの見直し会議で、利用者の少ない殿ヶ丘住宅街を削る案が出た。周辺に図書館やそれに代わる施設がないため、数は少ないながら熱心な利用者がいるステーションだ。七十歳前後と思われる男性・三浦などは到着後の開館準備を手伝ったり、何かと機転を利かせてくれる有難い存在だった。
 今のところ芳しくない方針に向かっているために悩む利用者と久志・菜緒子だったが、近くにある「たんぽぽ保育園」の子供達を呼び込めないかという案が出る。張り切る三浦に、年配主婦の若林は険しい顔で反対をした。
 そもそも二十年前に保育園ができる時、町内会が大反対したらしい。役所への申請は通っているため建物は完成したが、住民の要望を呑むこととなった。その要望の中に殿ヶ丘分譲地内の立ち入りを禁止する項目があり、たんぽぽ保育園園長は「めぐりん」の利用を例外的に認めるよう頼み込んだが却下されたらしい。

 移動図書館だけじゃなくて、図書館自体が「気立てがよくて賢い」存在だよなぁ。利用権利は全住民、古今東西の知識、思想、空想を内蔵して佇む。二千数百年の図書館史の中で最大のライバルであるインターネットが台頭し、電子化も進んでいって、もしかしたら未来に図書館はなくなってるかもしれないけど、でも概念だけはずっと残っていくだろうなぁ。図書室を充実させつつも、他所でも本と出会わせたいと考えた園長先生、素晴らしい。
 昨今問題になっている幼稚園や保育園建設反対の話がうまく絡んでて、前向きに頑張ろうとするウメちゃんや利用者が嬉しくて、ラストで和やかに移動図書館利用に向かう園児達が描かれていて、素敵な話だった。図書館は「みんなのもの」であり、ただ内包して、そこにあるだけ。使う側があれこれ衝突するのは悲しい話だ。できれば館長とか教育委員会とかが間に入ってくれたら良かったのになぁ。でも、数十年を経て解決して良かった。
 ただ・・・。殿ヶ丘住宅街は図書館または代替施設がないんだったら、数人の利用者の権利を踏みにじってステーション廃止にするのはおかしい。ウメちゃんが会議でそこを突いたら良かったのに。法の下の平等または学問の自由に反してますよって。ステーションが足りないなら予算を増やして人員を確保すべき。「めぐりん」2号的な感じで、中古のバンを用意するくらいは普通でしょ。市役所の公用車を調整してもらうとか。
 あとこれはイチャモンのレベルだけど、16ステーションがぎりぎりってのは少な過ぎ。私が勤めていた図書館は倍のステーションがあったよ。田舎は図書館、分館、公民館図書室さえ少ないからねぇ。16だったら週8ステーションで、かなり少なめに見積もっても午前2ステーション午後2ステーション1日4ステーション。移動図書館、週2日しか運行してない感じ?いやいや、運行日増やそう。人件費とガソリン代だけなんだから。
 図書館を題材にする本を読むたびにこういう事を考えちゃうから、我ながら粗探し人間だと思う。


「ランチタイム・フェイバリット」
 久志が移動図書館の運転手を務めるようになったのと同じ頃に、駅近のワーキングエリアに設けられたステーションに野庭という青年が通うようになった。読書の習慣はあまりなかったそうだが、カードを作って菜緒子に本を紹介してもらったりしているうちに「めぐりん」の常連になっていった。また彼は、菜緒子の気になる相手となっていったようだ。
 野庭が広場の一角に時々視線を送ることがあることを、何となく気にしていた久志と菜緒子。利用者同士も和気あいあいとしたステーションだったが、利用者がやたらと移動販売車「森のシチュー屋さん」のシチューを勧めてくることに気付いた。
 
 司書と利用者の恋、憧れるような、ちょっとやだなと思っちゃうような・・・。ま、実際のところ全く聞かなくもない話ではあるんだけど。
 謎そのものは大した事ではないし、私は淡い恋愛には特に全く興味ないし、11月下旬から話が始まったと思ったら急に4月に遡って出来事を追ってようやく11月に戻って来るという構成でちょっと目が滑って混乱して、取り立てて面白いとは思えない話だった。
 けど、ウメちゃんが野庭に本屋で気になる本があったら買うように勧めるシーンは大賛成の拍手喝采。「いっぱい借りて、いっぱい買って、いっぱい読む」って等身大のいい言葉だと思う。本を買うことで出版界に貢献し、支えないと図書館も困るわけで。本当に本当、皆、本買おう!


「道を照らす花」
 10月。宇佐山団地のステーションに引っ越してきたばかりの中学生・宮本杏奈が通うようになった。美しい顔立ちをした彼女は母親を亡くしたばかりらしく、ステーションのメンバーは何かと話しかけては気にかけていた。
 毎回本を借りていた杏奈だったが、ある2月の日、突然泣き出したまま何も借りずに立ち去ってしまう。利用者一同騒然となった。

 亡くなった母親から聞いたことがある移動図書館で、母親が好きだった『モモ』を借りてひっそりと偲ぶ様子がいじらしい。
 「本って、変わらないのがいい」。ウメちゃん、私も本当にそう思うよ。どんな気分で開いても同じ世界があって、同じ本を親子で読み継いで、大昔の物語さえ寸分変わらず存在する。紙や印字が劣化しても、中身は全く変わらないでこちらに語りかけてくる。知識ある全ての人間は、その語りかけを知ることができる。私は本のそういうとこが好きだと思うし、尊敬というか崇拝に近い気持ちを抱いている。「(中略)『モモ』の中身はこれからも変わらなくて、ふらりと手に取り開いたら、大好きな世界がそこにある。」本当、そこが本の素晴らしいところ。
 杏奈ちゃんが毎回借りていく本が『モモ』っていうのもいいよね。あれは本当に名作だ。ていうか、ミヒャエル・エンデは偉大。


「降っても晴れても」
 久志が「めぐりん」の運転手になって2回目の夏を迎える頃、「めぐりん」の存在を広く市民に知ってもらうために10月の市民祭りに参加する事になった。各ステーションの利用者達も様々なブースを出す事になっていて、話が盛り上がる。
 「めぐりん」をどう売り込むか意気込み過ぎて空回り気味の菜緒子だったが、野庭との距離が縮まらない事も久志は気になっていた。
 そんな中、図書館宛てに、移動図書館の運転手が特定の女性とばかり親しくし過ぎるという投書ハガキが届く。久志本人はもちろん、菜緒子にも心当たりはなかった。

 苦情の件はすぐ解決するんだけど、市民祭りで利用者もちょっとだけ浮足立ってるのが楽しい。当日は各ステーション利用者が市民祭りに参加していて、これまでの登場人物大集合。それぞれ交流はないけど「めぐりん」を仲介して繋がっていると思うと、暖かい気分になれた。もしかしたらテルさんとウメちゃんが、市民祭りでいい感じに繋いでくれるかもしれない。
 菜緒子と野庭の仲も少しずついい方向に進んでいるような、平行線のような。ま、相手も憎からず思ってるみたいだから、きっと段々と深まっていくんだろうよ。
 

 移動図書館として、いや図書館全体としての理想が詰まってて、私が本や図書館に対する想いもいい感じで散りばめられていて、読んでて嬉しくなる本だった。きっと私だけじゃなくて、本好き図書館好きは誰しも思っていることに違いない。それを上手く物語に組み込んであるところが見事で、ウメちゃんもテルさんも大好きになった。
 私も司書時代は移動図書館に乗ることもあったけど、こんな風に愛されてはなかったかなぁ。マイカー1人1台の田舎住まいで、本を借りたい人は図書館行くから利用者は少なかった。当然そのせいにしちゃいけないわけで、移動図書館を担当する事を軽視していた自分を思い出して恥じ入りながら読んだ。
 これ読むと、利用者として移動図書館に行ってみたくなる。ただ、万人受けの本ではないかな。題材の地味さはさておき、文章が何というか・・・女性がストレス解消で話す無駄話に似てる。始まったと思ったら話が飛んで過去になってて、いつの間にか現地点に戻ってて、どうでもいい回想入って、結末はふんわりとどうでもいい感じ。気付いたら相手の返事が明らかな生返事になってて・・・つまり、私の無駄話でもあるわけなんだけど。地の文である久志の視点すら女々しくて、女性作家による女性向け小説って感じ。
 ほんわか系は苦手だけど、移動図書館がテーマで「あるある!」とか「こんな感じ、まさに理ですわー」とか思えたからそれなりに楽しく読めた。でもテーマが例えば看護婦とかだったとしたら、最初の数ページで読むの止めてたと思う。
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『海の見える理髪店』   荻原 浩
2017-01-13 Fri 12:32
海の見える理髪店
海の見える理髪店
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荻原 浩
集英社   2016.03.25
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 どこか歪になった家族の短編集。表題作は直木賞受賞作品。

「海の見える理髪店」
 密かに通う大物有名人もいるという理髪店をインターネットで探し当てた語り手の「僕」は、髪を切られながら店主の半生を聞く話。店主は、戦争やその他の色んな苦労を経験しつつも成功を収めた話を、なぜか一見さんに独白のように話し続けた。

 ずーっとずーっと続く穏やかな語りから、突然始まったラストの衝撃が凄い。だけど、結婚の報告だけして帰ろうとする「僕」が歯痒い。言おうとして飲み込んだ言葉は、結婚式への招待だと思う。どうして言わなかったんだろうか。
 でも最後の店主の言い訳にも似た遠回しな愛情が、もう全部吹っ飛んだ。親子の再会の喜びと同時に、別れる羽目になった哀れみとで、1行ちょっとの文を何度も何度も読んでしまった。おい主人公、何で結婚式に来てくださいって言わないんだよー。この後言えよー。
 イメージ的には寡黙そうなのに、やたら語る店主。でも退屈じゃない、穏やかで安らぐ雰囲気に飲み込まれてしまう不思議な話だった。戦後からの文化の移り変わりをくぐり抜けてきた話なのに、この丁寧で上品で美しくて、優しげな口調が伝わってくる文章だった。


「いつか来た道」
 弟から頼まれて16年ぶりに実家を訪ね、母と再会した私。あれほど厳しかった母は足が弱って車いすを使い、整っていたアトリエは雑然としていた。「私」は母とのやり取りに違和感を覚えつつ、叶わなかった母自身の夢を「私」達姉妹に押し付けてきた過去を思い出す。

 主人公の目的が不明なまま風景描写が長々と続いて、やっと物語が動き出した最初の一文で、なんか飽きた。弟からの「会ってやってよ、ママに」の言葉で、どうせ変な母親から逃げたけど久々に会ったらボケててショック受けたとかそういう話でしょー。ほら来た、なんか態度が変。家もあちこち変。
 あちこち違和感あるのに認知症の事は思い当たりもしない主人公も変だけど、退行現象が見られる母親に何だかんだ和解を示そうとしてるのにモヤモヤする。叱られ、否定され叱られ罵られ続けた幼少期に作り出した自分の分身の存在も中途半端。漂う薄幸感の中に、やたら繊細な風景描写がダラついて感じるのも、ちょっと苦手。
 結局40歳過ぎても親に愛されたかった願望には逃れられなくて、ボケた親からようやく自分への愛情を見付け出して、許すのって陳腐。年齢的には厳しいから、この先の大きな幸せも期待は薄い。フィクションなんだから、仕事かプライベートのどっちかはもうちょっと幸せになってて欲しかった。
 

「遠くから来た手紙」
 残業続きの夫に腹を立てて、1歳の娘を連れて実家に帰った祥子。自分が使っていた部屋は同居し始めた弟夫婦が使っているために、かつて祖母が使っていた仏間で過ごす事にした。居心地の悪さから目をそらしつつ過ごす祥子に、見慣れないアドレスから古臭い文章のメールが届いた。

 おっさんが考える底浅い主婦像?それとも、狙ってこういうキャラなの?仕事が忙しくて育児を手伝えない夫に腹を立てる人なんて、私の周囲には1人もいない。旦那さんが土日も忙しくて母子家庭状態って人も何人もいるけど、こんな「仕事と家庭どっちが大事なのよ」的な頭悪い不満持つ女、なんなの。でもって実家で弟嫁に対して小姑丸出しで偉そうにしてるとか、なんなの。返信不要と送っておいて返信ないと怒るとか高校生かよ。もしかしてギャグなの?
 腹いせ以外の何でもない迷惑な家出で実家に帰って孝之との交際や遠距離恋愛での手紙のやり取りを思い出していくんだけど、 取り立てて珍しい事もない恋愛だし。これでムカつく頭の悪い女に対してちょっとした霊的現象でしたとかズコーッてなるし、迎えに来ると思われる孝之とわざと入れ違いになるように帰るとか頭も性格も悪すぎる。
 

「空は今日もスカイ」
 母親が離婚して、母子でおじの家に身を寄せた小3の茜は肩身の狭い生活に嫌気が差していた。海を見るために家出をして寄り道をした神社で、ゴミ袋を被った少年に出会う。彼をフォレストと名付けて、海に誘った。
 海に着いて遊んだものの暗くなると心細くなって帰りたくなった茜と、帰らないと父親にぶたれると震えだすフォレストは、ホームレスの男に見付かって一晩お世話になる。

 序盤のルー大柴ばりの英単語が鬱陶しかったけど、それが後半から出てこなくて最後まで全く活きてなくてただダラダラ長いだけだった。あの辺、大幅にカットして英語への現実逃避のとこだけの方が私は好みだなぁ。不要な情報が長くて役に立ってない話は苦手だ。1章目の「海の見える理髪店」は、あの長さが活きてたんだけど。
 小説家を目指すも失敗続きで酒乱の父親も駄目だけど、田舎にある身内の家に世話になって田舎だから仕事がないと言う母親も駄目だ。男を見る目がなさすぎるのと、そんな男と子供を作ったことも駄目だけど、田舎には仕事がないのは常識だし病院がなくなってるのもすぐわかる事なんだし、どんだけ情報弱者なのか。早めに見切りをつけて都会で母子手当もらいながら頑張る方が得策って早く気付いてほしい。
 いまいちな話が3章続いて、ちょっと苦痛になり始める。


「時のない時計」
 父親の形見に貰った古い時計を、商店街の外れにある古い時計屋に修理に持って行った「私」。店主は修理・分解掃除をしながら、店内にある思い出の時間で止めてある思い出の時計の話をする。結婚した時の時計、娘が生まれた時の時計、娘が死んだ時の時計・・・。時計の話を聞きながら、「私」は見栄っ張りだった父親の事を思い出す。

 主題はどこなのか。父親の思い出なのか、止められた時間なのか。薄暗い店内を彷彿とさせるどことなく薄暗い文章の中で、娘が死んだ話はまだ小さな驚きだった。店主が帝王切開を拒んだせいで娘が障害を患った話が、とても重い。些細な見栄が、一生かけても償えない罪を背負っていると思うと、重い。
 ただ、思い出の時間に囲まれた店主に対して主人公の「私」がどうも薄っぺらくて、彼の思い出話はかなりどうでも良かった。


「成人式」
  15歳で亡くなった娘・鈴音のことを5年間引きずったままの夫婦の下に、成人式の着物のカタログが届いた。それをきっかけに、「私」は妻に鈴音として成人式に出席することを提案する。乗り気になった妻・美絵子を前に撤回できなくなった「私」は、自分も男物の晴れ着を着て一緒に参加することを決意する。

 読んでて痛々しい。娘を失って5年が経ち、平静を取り戻しつつあるのにふとしたきっかけでパニックを起こす美絵子が、情熱を傾けられる事を見出したことは喜ばしいと思う。でもやっぱり、本当に成人式に行っちゃうのはやっぱり痛々しい。鈴音の友達に会えて集団に紛れさせてもらえたのは救いだけど、痛々しさを少し薄められただけだったと思う。
 喜ばしいことに子供を失ったことはない私だけど、子供に先立たれた親はこれだけのことを成し遂げられる負のパワーを秘めてるんだろうか。一人娘が先立たれて、人は悲しみながら生きていけるものなんだろうか。私は子供が死んだら生きていけないと思ってるけど、後ろ向きながらも生きていくものなんだろうか。死んで5年経ったら、友達にはナチュラルに忘れられるんだろうか。
 ちょっと考えさせられる話だった。


 最初の話はすごく良かった。『明日の記憶』だけ読んだことあるけど、やっぱ美しくて哀しい話が上手い人なんだなぁって思った。でも残りの話はちょっとイラッとなる事が多発。
 母ちゃん娘に夢押し付けんなよ、娘も振り切るなら振り切りなってば。余計なものがそぎ落とされてやっと見えた愛情に縋っちゃいかんよ、幸せになりなよ。
 忙しい夫に何やってんだよ、夫に非はないじゃんよ、世の中子供が1歳になる前から預けて働いてる人もいるのに我が儘過ぎ。怒ってみせて相手がじゃあもう帰ってくんなってなったら、離婚に不利になるのはアンタなんだよ。なんで相手の愛情が尽きることは想定にないんだよ。妻子の幸せのために働いてるんだろうに、息抜きは上手にやれよ。
 小3の子供に罪はない。主人公の両親がクズで、フォレストの両親はもっとクズで、どうなってんのマジで。フォレストの両親は虐待の罪で捕まりますように。茜の母親は、ちゃんとハロワで検索地域の範囲を広げなさい。公共施設で一定時間自由に使えるパソコン使って調べてもいいんだから。それか、前住んでた街の前に就いてた仕事に戻らせてもらって、役所に行って母子手当関係をちゃんと聞きなさい。
 意地とか見栄とかで辞表出すな。庶務課が何で駄目なのか。庶務課から営業なら大変かもしれないけど、営業から庶務ならいいじゃん。給料下がるかもしれないけど、57歳で無職よりは絶対いいって。局長が上層部からの覚えがめでたくて、自分は局長から煙たがられて異動って、被害妄想じゃなくてあり得るの?今の世の中、ベテラン営業マンを異動させても大丈夫なくらい安泰の会社って何系よ。そんな簡単に飛ばされるような成績しかなかった営業マンだったって事なんじゃないの?
 お父様とお母様は・・・うーん、事情が事情だけに、ご自重くださいとしか言えないわ・・・。
 と、架空の人物に真面目にツッコミ入れてしまうくらいのリアリティがあったのは確かだ。
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『キング誕生―池袋ウエストゲートパーク青春篇」 石田 衣良
2015-12-14 Mon 11:53
キング誕生 池袋ウエストゲートパーク青春篇 (文春文庫)
石田 衣良
文藝春秋 (2014-09-02)
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 池袋で絶対的なカリスマを持つキング・タカシの高校時代を、その頃からの親友であるマコトの目を通して描いた物語。
 タカシの家族は、皆から慕われる池袋のボスでありボクシングでインハイ準優勝の実力を持つ兄・タケルと、病弱で入退院を繰り返す母・華英がいた。兄とは一線置いた付き合いをしようとしていたタカシだったが、自分とマコトの不手際からタケルに怪我を負わせた事をきっかけにGボーイズの幹部となる。
 カラーギャング団同士の対立が激化する中、母の華英が病死。その日の夜、何者かによってタケルも刺殺された。一時的にボーイズのボスになると宣言したタカシは、タケルの復讐のブレーンにマコトを指名する。

 以前に出た外伝「赤(ルージュ)・黒(ノワール)」がかなり面白かったから期待して読んだんだけど、何だかイマイチだったなぁ。この設定、いつ考えられたんだろう?少なくとも最初から考えていたものではないと思うし、あちこちツッコミどころが多い。
 いつだったか、前のキングが存在だけ出てこなかったっけ?もちろんご存命設定。前のキングから言われたみたいな感じで。
 それから、カラーギャングが流行ったのは、IWGPシリーズが始まった頃で間違いない。でも、そうすると現在のマコト達の年齢が30代半ば~40代になっちゃうんだけど・・・。私の中で彼らは永遠の20代前半だったんだけど、もしかして意外と・・・?いや、そんなわけないよね・・・。
 でもって、で、オレオレ詐欺ってもっと後じゃない?いや、まだオレオレ詐欺のパイオニアの話だと思えばいいのか?でも少なくともキラキラネームは随分後のはず。もちろん当時からその手の変な名前はあったけど、「キラキラネーム」って名前が付いたのは少なくともここ10年内。というか、私の上の子が生まれる時はなかったように思うから、正確に言うと7年以内かな。私がその言葉を知らなかっただけと言われればそれまでだけど、だったら不良生活してる彼らがワイドショーや雑誌を読むとは思えないから、やっぱ正味5年以内ってとこか。まあ、私の不確かな記憶による年代確認はどうでもいい。
 オレオレ詐欺、ノックアウト強盗、カラーギャングの池袋乗っ取り、病弱な母親がいる不良少年、どれもIWGPでいかにも出てきそうな出来事だけど、どれも長編小説で扱うにはパンチ不足っていうのが一番の不満。いかにも出てきそうな出来事を複数出したところで、ストーリーに一体感がなくなるだけ。そこにきて、華英さんが病死からの脈絡ないタケルの死。精神的にも弱ってたって?何かピンとこないんだよなぁ。カラーギャング抗争でまだ戦ってもないのにいきなり殺すとか、ちょっと唐突過ぎ。うーん、誕生のいきさつは、何かドラマ性が足りない・・・。同人誌読んでるみたいな、コレジャナイ感だった。
 あと、私の記憶違いだったら申し訳ないんだけど、シリーズの序盤で「マコトの母親はタカシが嫌い」みたいな描写がなかったっけ?あのお母さんらしい設定だと思ったけど、いつだったか突然母親がタカシと親し気に話し始めて「?」ってなった。で、今回は嫌いとか親しいってレベルじゃない。タカシの恩人じゃないか。だったらタカシ、マコトに会いに来た時くらいフルーツ大量買いしなよって話で。いや、それだとお母さんが売らないであげちゃうかな?だったら、たまに力仕事を手伝う程度でもね。そういう前ふり一切なしで、実は昔めっちゃ世話になってたって言われても納得いかない。
 吉岡さんがマコトの母親の事好きってのもなかなか唐突。さらに、高校時代のマコトって結構ワルで吉岡さんにお世話になったんじゃなかったっけ?このマコト、全然大した事ない。もっとカツアゲのシーンとか、思春期パワーを持て余して夜の校舎窓ガラス壊して回るシーンとかあるかと思った。
 まあ、パラレルワールドだと思えばいいのかな?『シティーハンター』と『エンジェルハート』くらいの、割り切ったパラレル。それならそれで、もうちょっと面白くしてくれてもいいと思うんだけど。昔から密かに考えてた裏設定を練り直し、やっと書き上げましたみたいな話が読みたかった。
 さて、本編10巻まで出ておいて、この外伝。10巻最後のタカシのちょっと疲れた様子からして、最終回を連想してしまった私。調べたら普通に11巻が出てて、勝手にズコーッて状態。11巻目は面白く読める事を期待してる。
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『PRIDE-池袋ウエストゲートパークⅩ』 石田 衣良
2015-11-21 Sat 16:53
PRIDE—プライド 池袋ウエストゲートパーク10
文藝春秋 (2012-09-20)
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 立て続けに池袋ウエストゲートパークシリーズいきました。

「データBOXの蜘蛛」
 中堅企業ながら最近勢いを増しているIT企業「ライフゲート」の開発部長・松永悟が、会社の新規プロジェクトの情報が入ったスマホを落としたという。スマホの拾い主は松永を脅迫し、600万円を請求していると言う。相手が情報をコピーしていつまでも脅迫し続ける事を恐れた松永は、彼らが二度と脅迫してこないようにする事をマコトに依頼した。
 マコトが犯人とのメールをやり取りし、金の受け渡し現場でGボーイズが犯人一味を痛めつけるだけで済むと思っていたが、犯人の仲間が松永の不倫相手・オリエに一目惚れした事で事態は急変する。

 仮にもIT系の会社員ならスマホのセキュリティについてもっと知ってて!と頭を抱えたくなる設定だった。オンラインゲームを開発するような会社が、スマホアプリの企画が上がってないわけがない。スマホの事、もうちょっと知ってていいんじゃないの?IT齧ってる程度ならまだしも、開発部長でしょ!?・・・いや、この話の本質はそこじゃないんだけどね。わりと引っかかって読み進んだけど、後半のオリエ危機で、見どころは脅迫事件じゃなかったんだと納得。


「鬼子母神ランダウン」
 ロードレーサーでサイクリングに行ったマコトとタカシは、鬼子母神で弟を自転車でひき逃げした犯人を捜しているというナナと出会った。サッカーでU16の日本代表候補に選ばれるほどの選手だった弟のマサヒロは利き足を骨折し、医者からは元のパフォーマンスを取り戻すのはほぼ不可能だと言われていると言う。
 
 話聞いちゃったから成行き的に協力するのかと思いきや、タカシがぽっちゃり系のナナに一目惚れしちゃったんで半分はタカシのために協力する模様。孤高のキング、まさかのデブ専ですか。Gボーイズにまで犯人捜しを協力させちゃうとは。
 事件自体はいつも通りマコトの機転で解決するんだけど、タカシがナナにいいとこ見せようと不必要に行動的だったり饒舌になったりするとこは新鮮だった。こういう可愛いとこもあるんだなーみたいな。最終的には付き合ったと書いてあったからちょっとうれしかったんだけど、数行後には破局。もっとタカシがナナにデレデレするとこが読みたかったなと残念に思った。
 今回の件もそうだけど、今までマコトも彼女できては次の話では別れてたりして、このシリーズは良くも悪くも恋愛に淡泊。レギュラーメンバー達もいつまで経ってもそれほど年齢は変わってないっぽい分、私の中でサザエさんやコナンみたいな存在になりつつあるかもしれない。


「北口アイドル・アンダーグラウンド」
 マコトが働く果物屋に、イナミと名乗る地下アイドルが訪ねてきた。最近変なストーカーに狙われているようで、マンションのドアに血が塗り付けられていた事もあったと言う。マコトがボディーガードを務める間にも、マンションのドアに赤マジックで誹謗中傷が書かれる事件があった。

 地下アイドルとはいえ、アイドル。やっぱり内情はドロドロしてそう・・・っていうイメージ通りのドロドロ感がライトに描かれていた。事件も些細だし、解決した時も何だかちょっと滑稽さも入ってて、その中でイナミの爽やかさがいい感じだった。でもいい大人になっちゃった私は、老後どうすんだよーなんて夢もへったくれもない事考えちゃうんだけどね。


「PRIDE-プライド」
 若いホームレスを相手にした支援施設が話題になっている事を知ったマコトは、週刊誌に掲載しているコラムのネタにならないかと動く。そこへ偶然、リンという美しい女性が仕事を依頼してきた。3年前に自分をレイプした連中を探していると言う。彼らは現在、池袋周辺で何件も事件を起こしており、タカシの元カノも被害にあった事でGボーイズも動き出す。

 リンって、9巻に出てきた中国人の名前と一緒じゃーん!なんて鬼首取ったかのように言うのは下世話ですか、はい。タカシって2話前にデブ専って言ってたのに元カノは美人なのかよ!?とかもツッこんじゃ駄目ですか、そうですか。
 それはさておき、物語の常だけどホームレスの自立支援事業とリンの件はつながってる。今回の件はそんな物語の構成の単純さなんてどうでもいいくらい苦しい事件だった。輪姦事件に、一昔前に一部でよく取り上げられた警察でのセカンドレイプ。そこからさらに、ラストでマコトへの圧力のためにリンが拉致される。
 この話はフィクションだからマコトとGボーイズがいい感じで片付けてくれるけど、現実でもこういう事件はあちこちで起こっているわけで。本当に刑罰が軽すぎるよ。去勢してやってくれって思う。
 ラストのマコトとタカシのやり取りがまるで最終回みたいだったんでちょっと焦って検索してみたら、去年11巻目が発売されていた。最終回なのかと焦ったくせに、出てるなら出てるで「なーんだ」って気持ちになっちゃう不思議現象。なんていうか、こんだけヒリヒリした物語を書いて、ちょっとセンチメンタルな終わり方しておいて、次回はまたマコトもタカシも彼女いませんって感じの体で新しい事件を迎えるんだと思うと「なーんだ」ってね。阿藤快みたいに、「なんだかなぁ」でもいい。
 このシリーズを読み始めたのは、15年近く前。マコトやタカシと同世代だったんだけど、当然ながら私は年を取って彼らは相変わらず若いまま。ただ、絡む事件は世相を反映してたり、アイテムもスマホが出てきたりなんかするもんだから、彼らの変わらなさが逆にちょっと寂しい。つらかったり苦しかったり魂を削るような事件もあったのに、成長しないのか。フィクションだからと言ってしまえばそれまでだけどね。似たような感じで別のシリーズ始めるってわけにはいかないのかなぁ。まあ、いかないんだろうけど。
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『ドラゴン・ティアーズ―龍涙 池袋ウエストゲートパーク9』 石田 衣良
2015-11-20 Fri 13:38
ドラゴン・ティアーズ―龍涙 池袋ウエストゲートパーク9
文藝春秋 (2012-09-20)
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 再読じゃない読書、久し振り。5~6年振りかな。読書すると集中しちゃうのは人間の性だし、私の仕事モードスイッチでもあるから、なるべく読まないように過ごしてきた。私的記念すべき第一冊目は、サクッと読めて展開も何となくわかっちゃうけど飽きるようで飽きないシリーズ物の新刊。
 それにしてもタイピングが退化したな・・・。速度は変わらないけど、頭の中にある次の文字を打っちゃう不思議現象が・・・。以前はSEの配偶者より速くて正確だったのに。
 さて、久々にレビュー。

「キャッチャー・オン・ザ・目白通り」
 タカシからの紹介で、有名エステで大金を騙し取られた女性達からの依頼を受けたマコト。テレビに出るほど有名なオカマエステティシャン・ブラッド宮元に近付くため、マコトとタカシはまず求人案内に応募して何の苦も無くキャッチとして相手の懐に入った。
 
 何だか、タカシがいかにイケメンかって事を描くのに躍起になってる気がして鼻についた。でもって、今回の件を解決に導いた案はタカシ。顔と戦闘とカリスマはタカシだけど、頭脳は断然マコトっていうIWGPセオリー形式が好きな私としては、久々に読んだ1話目がこの展開っていうのに何だかちょっとがっかりだった。
 最後の短い戦闘シーンも、マコトもいいけどタカシはもっとかっこいいみたいな。これはいつも通りなんだけど、前半にマコトの活躍が少なかった分、最後までマコトが冴えない感じでちょっと寂しい。
 流れはいつも通りの勧善懲悪で、すっきり解決だったんだけど。

「家なき者のパレード」
 今回もタカシからの紹介で、ホームレスの支援組織「絆」のヨウスケからホームレスに関する依頼。行政の働きで最近街でホームレスを見ることが少なくなったが、彼らの数が減っているのではなく分散して生活せざるを得なくなっているうえに不況の煽りでますます生存競争が厳しくなっているそうだ。そんなホームレス達の中で、時々ひどい怪我をしている者がいると言う。話を聞こうとしても何があったのかは教えてくれない。問題のありかも解決の方向もわからない件を丸投げする依頼だった。

 ヨウスケとタカシのつながりは、Gボーイズメンバーにもホームレスがいるからだそうだ。第一巻が出たのはもう20年近く前。あの頃の怖かっこいいストリートギャング団は物悲しさ漂うようになってきてるんだなぁ。微妙に流行ったカラーギャング闘争を模した1巻最終話・・・タイトルは忘れた・・・は、なかなかのわくわく感と感動を持って行ってくれたというのに。タカシは相変わらず羽振りいいけどね。
 マコトが話を聞いたホームレスに圧力をかける者が現われて手掛かりが聞き出せなくなっていき、ついには重傷を負うホームレスまで出た。腕の骨を折られたホームレスのガンさんの発起で、事件が実態を現す。ホームレスが働けなくなった時に一定期間収入を保証する「日雇労働被保険者手帳」通称「あぶれ手帳」を騙し取る、城用建設の存在が明るみになった。
 無血闘争に近いデモで解決したその饒舌っぷりこそが、このシリーズの見どころだと思う。こういう話を最初にして欲しかった。

「出会い系サンタクロース」
 一見マンションに見えるが中は壁が薄くて狭い部屋がたくさんあって、そこでいわゆる「素人」の女性と、時間単位でお金を払う男性とが会って話をする「出会い部屋」という物があるという。太めのサラリーマン・ヒデトは、その出会い部屋で知り合ったアヤに恋をした。アヤは母親の借金返済のために出会い部屋で働かされているそうだが、それでも足りずに身体を売るように圧力をかけられているそうだ。ヒデトはアヤを助けてほしいとマコトに依頼する。
 風俗の事ならプロ・・・暴力団の本部長代行・サルの協力を得ながら、ヒデトが通う出会い部屋「カルプス」について調べていく。

 暴力団が絡むと、ザ・アンダーグラウンドって気がするのは私が凡人過ぎるからだろうか。暴力団の人達ってどうやってお金を稼いでいるのか全く知らなかったから、IWGPに書いてある事が私が知ってる暴力団知識の全てだ。だから、何だかよくわからないけどかっこいいイメージがあるのはマコトの友達の羽沢組部長代行・サルのせいだと思おう。
 新しい稼ぎ口として出会い部屋に手を出したいサルとの利害が一致したマコトは、世間知らずが故に法外な利子の付いた借金を背負うアヤを出会い部屋から救い出す。マコトは完全に虎の威を借る狐状態なのは2話目と一緒だけど、こういう軽くて読みやすいアングラ話は結構好きだ。

「ドラゴン・ティアーズ―流涙」
 中国の戸籍制度は厳しく、生活も労働も生まれた場所でしかできない。貧しい農村で生まれた者は、どう足掻いても一生貧しさから抜け出すことはできないそうだ。そんな農民達は、日本への出稼ぎを夢見て外国人研修制度に選ばれる事を切実に願っている。日本では3K長時間過酷労働でも、彼らにとっては3年で中国での生涯収入に匹敵する賃金を得られるそうだ。
 今回河南省から送られてきた労働者250人のなかで、クーシュンクイという女性が脱走した。彼女が1週間のうちに見付からないと、他の250人も強制退去させられる上に、中国の送り出し組合も3年間派遣を禁止されるという。今回マコトは、送り出し組合からアドバイザーとして雇われた日本国籍を持つ中国人リンからクーシュンクイを探すように依頼される。
 池袋の中国人組織「東龍(トンロン」)が絡んでいるらしいとの事で、マコトは今回もサルに協力を仰ぐ。サルの方はサルの方で、東龍とみかじめ争いが起こっていた。サルが所属する羽沢組のライバル京極会が、東龍のバックについているらしい。

 よくある事だけど、やっぱり表題作が一番面白い。
 東龍のボス・楊は、低賃金重労働から逃げ出して当然だと言う。リンは、逃げ出した女性を風俗業に就かせる違法就業であり、脱走は他の中国人にも過大な迷惑を掛けると言う。マコトも私も、多分他の読者の方々も、何が正しいのかわからなくなる。
 しかしながら、制度の網を潜り、楊の面子も潰さないたった一つ・・・少なくとも私には他の方法は考えられないたった一つのやり方で、クーは救われる。マコトのお母さん、やっぱいいわー。マコトのお母さんとリンのやり取りで、こんな方法があったんだ、リンの帰化の話はただの生い立ち話じゃなくて伏線だったんだと感激がじわじわ押し寄せた。クーに「書類のうえだけでもマコトの妹になってみないかね」と言うその穏やかな言い回しが、マコトのお母さんの温かさズドンと伝わってきた。
 ラストがいいよね。「かわいい妹と花見をする。そいつはなにを隠そう、おれのガキのころからの夢なのだ」っていうこれ、些細ながら叶わない夢を淡く抱き続けてきた感じが、マコトがとても可愛く思えた。
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