元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『ダリの繭』  有栖川 有栖
2017-03-06 Mon 00:26
ダリの繭 (角川文庫)
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有栖川 有栖
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 宝石チェーンのオーナー社長・堂条秀一が、別邸で殺害された。彼はリビングで殺害され、自慢の癒し道具であるフロートカプセルの中で全裸で専用液に浸かった状態で発見される。ダリを模してトレードマークにしていた髭が切り取られていた。
 それぞれ母親の違う弟である堂条秀二と吉住訓夫が財産目当てで殺害したか、それとも鷺尾優子を巡った恋のライバルである長池伸介が犯人か。
 「私」こと有栖川有栖は、吉住とは元々昔の仕事関係の知り合いであり、数日前に共通の知り合いの結婚式で彼と再会していたために兵庫県警捜査一課の警部・樺田から証言を求められる。樺田はアリスの親友であり臨床犯罪学者である火村に捜査の協力を依頼したと言う。火村に同行する形で、アリスも事件現場を訪れた。
 作家アリスシリーズの2作目。


 決して大きくはない人間関係の中で噂や嫉妬が錯綜し、有力な証拠がある容疑者は火村によって覆される。このパターンが面白くもあり、ややお約束感もあったけど、全体的には面白かった。今まで読んだ有栖川さん作品は誰が誰だかわかんないまま巻頭の人物紹介頼りで読み進んでたけど、今回はそれぞれの役割がはっきりしてて人物が人間臭くて、混乱することなく読めて楽しめた。
 読めば読むほど、剛腕だけど繊細だった被害者の人物像に好感が持てて妙に同情してしまう。かなり年下の優子に純粋に想いを寄せる様子も、社長の立場のせいかどこか控えめで切ない。そして、想われ人の優子の聡明さも素敵。
 トリックも面白い。なぜ殺害後フロートカプセルに運び込まれたのか、なぜトレードマークの髭がなくなっていたのか、犯行時刻にフロートカプセルに入っていた吉住の無実は証明されるのか?なぜ凶器は長池が持っている物と全く同じ物が使われたのか?その凶器に企画室室長の相馬の指紋が付いていた理由は?相馬と優子の関係は?と、色んな謎と、それに関する火村の尋問がワクワクする。賢くない私にとっては、登場人物だけじゃなくトリック自体がわかりやすかったのもありがたい。
 でも、相馬に女装癖があることを引き延ばしたのと、優子がハマってる占い師にセクハラされたっぽい事を仄めかす設定、必要だった?優子の浮気疑惑からの相馬女装癖はもっとパッと判明してもいいレベルだし、占い師がやったことは妙に抽象的で不快な後味が残るだけだからもう少し何とかならなかったのかなーと。
 あと大前提にいちゃもん付けるけど、アリスの存在意義が薄い。いわゆるワトソン役なんだろうけど、ワトソンほど役には立ってないというかぶっちゃけ金田一少年の美幸ちゃんよりも役に立ってないし、ただ吉住と知り合いだったから個人的に話が聞けたって点だけかな?火村の「フィールドワーク」においてアリスはおらんでもいいやん・・・って何回も思った。ドラマで見てた時から薄々思ってたけど、原作からしてこうだったとは。火村がアリスをフィールドワークに付き合わせる理由は?作品の参考のために呼んでくれた?だったら横溝正史とか内田康夫みたいに、事件後に探偵から話を聞かされるという設定で十分じゃないか。いや、私がそういう設定が好きってだけなんだけど。
 というか、そもそも警察も素人をあんまり巻き込むなっつーの。樺田警部は口が軽すぎて、そりゃ野上刑事の面白くなさそうな様子も仕方ない。これまで読んだ有栖川さん探偵物はクローズドサークルばっかだから「語り部」としてのアリスは必要だったけど、今回の事件においては変にうろつき過ぎてハラハラする。吉住と旧知の間柄だから関わった以外の役割がもう少しあると、もっと読んでて楽しいと思う。警察が火村を信用している根拠も教えて欲しい。火村がアリスを連れてくることに難色を示さない警察についても、もう少し説明して欲しい。警察と火村・アリスの関係が完成した状態で幕が開いてるから、そこんとこあやふやなのが個人的に気になり過ぎる。
 アリスが火村に作中のキャラクターがいつも似てることを指摘されて「単純に技量の問題や」と憮然とするシーンがあるけど、自嘲なのかブーメランなのか・・・。前者だとは思うけどね。
 とはいえ、アリスと火村の掛け合いが仲良さげで読んでて楽しい。今後もう少し、上記のことを掘り下げてくれると嬉しい。
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