元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『対岸の彼女』  角田 光代
2018-04-05 Thu 01:27
対岸の彼女
対岸の彼女
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角田 光代
文藝春秋
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 現在の小夜子の視点と、十数年前の葵の視点が交互に織りなす物語。
 3歳の娘を持つ専業主婦・小夜子は、どの公園に行っても母親同士の派閥関係に馴染めずにいた。娘のあかりが友人関係を築けない事も気になり始め、保育園に預ければ社交性も育つかもしれないと働きに出ることを決意する。
 面接を受けた小さな旅行会社の女社長・葵に気に入られた小夜子は、その会社の新事業である掃除代行業担当として雇われた。一緒に働くうちに葵のあっけらかんとした性格に引き込まれ、仕事そのものにものめり込んでいく。しかし家では、夫や姑の理解が得られず苛立ちを覚えることもあった。
 一方、高校時代の葵。中学時代にいじめられ、高校入学と同時に神奈川から群馬に引っ越して女子高に通い始めた。学校では何となく固まった地味なメンツとグループになった一方で、放課後はどのグループにも属さずにフラフラしている明るい少女・ナナコと親しくしていた。
 一年生の秋頃からターゲットを変えながら仲間外れゲームが始まったが、葵は自分がその対象にならない事だけを心配しながら地味に過ごす。ナナコのようにどのグループにも属さないで誰とでも仲良くする女子はハブられやすい。そうなった時に巻き込まれる可能性が高いと考えた葵は、自己嫌悪に陥りながらもナナコとは放課後しか離さなかった。
 一方ナナコはもし葵がハブられても絶対に味方するけど、ナナコ自身がハブられたらみんなと一緒になって自分を無視して安全でいて欲しいと言う。その恐れは、二年生で現実となった。
 夏休みに伊豆のペンションで泊まり込みのアルバイトをした二人は、そのまま家に帰らない事にした。バイトで貯めたおかねを節約しても減る一方で、カツアゲにまで走る。家に帰らない事を決意した時は「一緒だとなんでもできるような気がしていたが、ずっと移動しても「どこにもいけないような気がする」事に気付いた2人は、かつて葵が住んでいたマンションから一緒に飛び降りた。


 高校時代は人間関係にビクついた少女だった葵が、具体的には何歳か知らないけど三十数歳ではサバサバした飾らない明るい女性になっている。どう見てもナナコの影響を受けているんだろうけど、気の置けない楽しい女性だ。だけど何が悪かったのか、葵が決めた方針に不満を持つ女性から反目される。そして小夜子とも、急に心の溝ができてしまった。
 きっかけは小さい事なんだけどこうなっちゃうの、わかるわー。自分の中で勝手に被害妄想ぶちかましちゃうの、した事もされた事もある。
 小夜子は序盤では、人付き合いが下手なだけかと思ってた。母親同士の関係もそうだけど、夫・修二への不満も言えないでいるし、口うるさい姑からも嫌味を言われっぱなしで、人間関係が不器用な人という印象だった。ところが終盤で描かれた高校時代に仲間外れにされた事や、幼稚園ママ達に対する引きの態度、葵への嫌味シーンなんかを読んでると、愚かなんだと思えてきた。うーん、面倒くさい女!そしてその愚かさ私自身も似てる気がする同類嫌悪。
 結局女は女の人間関係から逃げられないものだよね。それを無視しちゃうと、足を引っ張られることがある。まさに女の敵は女。群れたがって、察してちゃんで、マウンティングが行われる中を上手に渡り歩いて自分の居場所を確保しないといけない。義務ではないはずなんだけど、気付いたら“いかに上手く渡り歩くか”を無意識に模索してる。もちろんそうじゃない人もたくさんいるんだけど、少なくとも角田さんの表現を好む人はこの世界を理解できる人が多いんじゃなかろうか。好むか好まないかは別として、ね。
 ほんと、どこにでもある女の世界の機微の描き方がリアルで上手い本だった。
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『愚行録』  貫井 徳郎
2017-12-21 Thu 11:44
愚行録
愚行録
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貫井 徳郎
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 高収入でイケメンの夫、お嬢様育ちの美しい妻、可愛い兄妹と、誰もが羨む幸せな家庭である田向一家が惨殺された。犯人は捕まる事なく一年が過ぎた頃、その夫婦を知る人々に取材をする人物が現れる。
 そのインタビューに交互に挿入される形で、謎の女性が両親から受けた虐待の思い出を兄宛てに独白のように語りかける。


 ネグレクトにより子供を死なせた田中光子の新聞記事から始まり、唐突に田向夫妻の近所に住む女性への取材が始まって面食らった。世間話を交えた話が終わったと思ったら、また唐突に「お兄ちゃん」と語りかける女性による両親からの虐待の話、次は田向妻の友人の話、虐待話、田向夫の同期の話・・・と続いていき、事件ではなく田向夫妻の人物像を掘り下げられる。と同時に、虐待の話は母親の暴力から父親からの性的虐待の話へと発展していく。
 物語の真意が全然わからないままでも読み進められたのは、美男美女で夫婦共に高学歴でお金持ちで人当りもいい田向夫妻の黒い部分が垣間見えるからだと思う。人の悪口は蜜の味、みたいな。特に慶応大学の「内部」「外部」の話は田舎者の私には別世界過ぎるけど、そこから見えてくる田向妻(旧姓、夏原)の腹黒さはぞくぞくした。
 「田中さん」の話が出た時に冒頭のネグレクト事件の話に繋がると思いきやそうでもなく通り過ぎ、次の話にどんどん進んで行ったかと思ったら最後に急に戻って来て驚いた。後半の加速が激しすぎて、理解できるけど気持ちがついていかない。
 『愚行録』のどこが「愚行」だったんだろうか。田崎夫妻が内に秘めた腹黒さは、人間としてありがちな事であって「愚か」とは言い難い。母親から暴力を受け、実の父親からも母親の恋人からも性的虐待を受け、大学時代にお金持ちと結婚することを夢見て次々に男と付き合って都合のいい尻軽女呼ばわりされている事に気付かないままで、のちに実の兄との子を設けた挙句に保護責任者遺棄致死させた女性の行いは、「愚か」というより憐れみしか覚えない。大学時代に慶応学生に弄ばれ続けた妹の存在を覚えていたという理由だけで女性を殺した兄も、「愚か」というより歪んで育った恐怖感しかない。でも、このタイトルは妙に心に突き刺さる。もしかして田向夫妻の腹黒い部分に共感してしまったり、どんなにヒエラルキーのトップに立ってても不幸な死によって崩壊した周囲からの上から目線だったりする人間そのものの事だったりとか。
 事件性を追う事もなく、人間性もそう深くなく、心に響く事もなく、でも完璧人間の黒い部分を覗き込みたくなって読み進めて行った私が「愚か」だったりとかするのかな。ま、私が愚かなのは、本の感想を探らなくても自他共に認めるところではあるんだけれども。
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『本バスめぐりん』  大崎 梢
2017-11-13 Mon 11:26
本バスめぐりん。
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 システムエンジニアだった照岡久志は、定年退職後に移動図書館バス「めぐりん」の運転手を務めることになった。これまでの会社勤めとは全く違う職業に戸惑いつつ、明朗快活な若き有能司書・梅園菜緒子ことウメちゃんとのコンビで市内を巡回する。
 久志はテルさんと呼ばれながら次第に移動図書館の仕事に馴染んでいく中で、「めぐりん」の周辺で起こる小さな問題・事件をウメちゃんと共に解決していく。
 人々の本との関りを描いていくほのぼの短編集。
 

「テルさん、ウメちゃん」
 久志がめぐりんの運転手になって2ヶ月半が経つある木曜日、とある利用者が大切な写真を本に挟んだまま返却してしまったという相談があった。該当する本は貸出中だったが、相談者がいる次のステーションで返却された。借り手の女性・寺沢は心当たりはないと言ったが、彼女の態度は明らかにおかしかった。

 コージーミステリーという名称、聞いたことはあっても初めて意味と一致した。ウメちゃん、ありがとう。私、本当に司書だったんだろうかと、我ながら思うわ・・・。
 1話目で設定を色々説明しておきたかったんだろうけど、時系列が急に戻ったりしてちょっと煩わしかった。久志の業務への戸惑いや、前任者の友人・賢一の適任ぶりを描きたかったのか?文字数稼ぎなのか?初出一覧によると隔月誌に掲載されてたらしいけど、例えば私が図書館業務が未知の世界だったとしたら序盤で読む気失っただろう。内容は面白いのに、それがもったいなかった。
 

「気立てがよくて賢くて」
 久志が「めぐりん」の運転手になって5ヶ月目。「めぐりん」が巡回するステーションの見直し会議で、利用者の少ない殿ヶ丘住宅街を削る案が出た。周辺に図書館やそれに代わる施設がないため、数は少ないながら熱心な利用者がいるステーションだ。七十歳前後と思われる男性・三浦などは到着後の開館準備を手伝ったり、何かと機転を利かせてくれる有難い存在だった。
 今のところ芳しくない方針に向かっているために悩む利用者と久志・菜緒子だったが、近くにある「たんぽぽ保育園」の子供達を呼び込めないかという案が出る。張り切る三浦に、年配主婦の若林は険しい顔で反対をした。
 そもそも二十年前に保育園ができる時、町内会が大反対したらしい。役所への申請は通っているため建物は完成したが、住民の要望を呑むこととなった。その要望の中に殿ヶ丘分譲地内の立ち入りを禁止する項目があり、たんぽぽ保育園園長は「めぐりん」の利用を例外的に認めるよう頼み込んだが却下されたらしい。

 移動図書館だけじゃなくて、図書館自体が「気立てがよくて賢い」存在だよなぁ。利用権利は全住民、古今東西の知識、思想、空想を内蔵して佇む。二千数百年の図書館史の中で最大のライバルであるインターネットが台頭し、電子化も進んでいって、もしかしたら未来に図書館はなくなってるかもしれないけど、でも概念だけはずっと残っていくだろうなぁ。図書室を充実させつつも、他所でも本と出会わせたいと考えた園長先生、素晴らしい。
 昨今問題になっている幼稚園や保育園建設反対の話がうまく絡んでて、前向きに頑張ろうとするウメちゃんや利用者が嬉しくて、ラストで和やかに移動図書館利用に向かう園児達が描かれていて、素敵な話だった。図書館は「みんなのもの」であり、ただ内包して、そこにあるだけ。使う側があれこれ衝突するのは悲しい話だ。できれば館長とか教育委員会とかが間に入ってくれたら良かったのになぁ。でも、数十年を経て解決して良かった。
 ただ・・・。殿ヶ丘住宅街は図書館または代替施設がないんだったら、数人の利用者の権利を踏みにじってステーション廃止にするのはおかしい。ウメちゃんが会議でそこを突いたら良かったのに。法の下の平等または学問の自由に反してますよって。ステーションが足りないなら予算を増やして人員を確保すべき。「めぐりん」2号的な感じで、中古のバンを用意するくらいは普通でしょ。市役所の公用車を調整してもらうとか。
 あとこれはイチャモンのレベルだけど、16ステーションがぎりぎりってのは少な過ぎ。私が勤めていた図書館は倍のステーションがあったよ。田舎は図書館、分館、公民館図書室さえ少ないからねぇ。16だったら週8ステーションで、かなり少なめに見積もっても午前2ステーション午後2ステーション1日4ステーション。移動図書館、週2日しか運行してない感じ?いやいや、運行日増やそう。人件費とガソリン代だけなんだから。
 図書館を題材にする本を読むたびにこういう事を考えちゃうから、我ながら粗探し人間だと思う。


「ランチタイム・フェイバリット」
 久志が移動図書館の運転手を務めるようになったのと同じ頃に、駅近のワーキングエリアに設けられたステーションに野庭という青年が通うようになった。読書の習慣はあまりなかったそうだが、カードを作って菜緒子に本を紹介してもらったりしているうちに「めぐりん」の常連になっていった。また彼は、菜緒子の気になる相手となっていったようだ。
 野庭が広場の一角に時々視線を送ることがあることを、何となく気にしていた久志と菜緒子。利用者同士も和気あいあいとしたステーションだったが、利用者がやたらと移動販売車「森のシチュー屋さん」のシチューを勧めてくることに気付いた。
 
 司書と利用者の恋、憧れるような、ちょっとやだなと思っちゃうような・・・。ま、実際のところ全く聞かなくもない話ではあるんだけど。
 謎そのものは大した事ではないし、私は淡い恋愛には特に全く興味ないし、11月下旬から話が始まったと思ったら急に4月に遡って出来事を追ってようやく11月に戻って来るという構成でちょっと目が滑って混乱して、取り立てて面白いとは思えない話だった。
 けど、ウメちゃんが野庭に本屋で気になる本があったら買うように勧めるシーンは大賛成の拍手喝采。「いっぱい借りて、いっぱい買って、いっぱい読む」って等身大のいい言葉だと思う。本を買うことで出版界に貢献し、支えないと図書館も困るわけで。本当に本当、皆、本買おう!


「道を照らす花」
 10月。宇佐山団地のステーションに引っ越してきたばかりの中学生・宮本杏奈が通うようになった。美しい顔立ちをした彼女は母親を亡くしたばかりらしく、ステーションのメンバーは何かと話しかけては気にかけていた。
 毎回本を借りていた杏奈だったが、ある2月の日、突然泣き出したまま何も借りずに立ち去ってしまう。利用者一同騒然となった。

 亡くなった母親から聞いたことがある移動図書館で、母親が好きだった『モモ』を借りてひっそりと偲ぶ様子がいじらしい。
 「本って、変わらないのがいい」。ウメちゃん、私も本当にそう思うよ。どんな気分で開いても同じ世界があって、同じ本を親子で読み継いで、大昔の物語さえ寸分変わらず存在する。紙や印字が劣化しても、中身は全く変わらないでこちらに語りかけてくる。知識ある全ての人間は、その語りかけを知ることができる。私は本のそういうとこが好きだと思うし、尊敬というか崇拝に近い気持ちを抱いている。「(中略)『モモ』の中身はこれからも変わらなくて、ふらりと手に取り開いたら、大好きな世界がそこにある。」本当、そこが本の素晴らしいところ。
 杏奈ちゃんが毎回借りていく本が『モモ』っていうのもいいよね。あれは本当に名作だ。ていうか、ミヒャエル・エンデは偉大。


「降っても晴れても」
 久志が「めぐりん」の運転手になって2回目の夏を迎える頃、「めぐりん」の存在を広く市民に知ってもらうために10月の市民祭りに参加する事になった。各ステーションの利用者達も様々なブースを出す事になっていて、話が盛り上がる。
 「めぐりん」をどう売り込むか意気込み過ぎて空回り気味の菜緒子だったが、野庭との距離が縮まらない事も久志は気になっていた。
 そんな中、図書館宛てに、移動図書館の運転手が特定の女性とばかり親しくし過ぎるという投書ハガキが届く。久志本人はもちろん、菜緒子にも心当たりはなかった。

 苦情の件はすぐ解決するんだけど、市民祭りで利用者もちょっとだけ浮足立ってるのが楽しい。当日は各ステーション利用者が市民祭りに参加していて、これまでの登場人物大集合。それぞれ交流はないけど「めぐりん」を仲介して繋がっていると思うと、暖かい気分になれた。もしかしたらテルさんとウメちゃんが、市民祭りでいい感じに繋いでくれるかもしれない。
 菜緒子と野庭の仲も少しずついい方向に進んでいるような、平行線のような。ま、相手も憎からず思ってるみたいだから、きっと段々と深まっていくんだろうよ。
 

 移動図書館として、いや図書館全体としての理想が詰まってて、私が本や図書館に対する想いもいい感じで散りばめられていて、読んでて嬉しくなる本だった。きっと私だけじゃなくて、本好き図書館好きは誰しも思っていることに違いない。それを上手く物語に組み込んであるところが見事で、ウメちゃんもテルさんも大好きになった。
 私も司書時代は移動図書館に乗ることもあったけど、こんな風に愛されてはなかったかなぁ。マイカー1人1台の田舎住まいで、本を借りたい人は図書館行くから利用者は少なかった。当然そのせいにしちゃいけないわけで、移動図書館を担当する事を軽視していた自分を思い出して恥じ入りながら読んだ。
 これ読むと、利用者として移動図書館に行ってみたくなる。ただ、万人受けの本ではないかな。題材の地味さはさておき、文章が何というか・・・女性がストレス解消で話す無駄話に似てる。始まったと思ったら話が飛んで過去になってて、いつの間にか現地点に戻ってて、どうでもいい回想入って、結末はふんわりとどうでもいい感じ。気付いたら相手の返事が明らかな生返事になってて・・・つまり、私の無駄話でもあるわけなんだけど。地の文である久志の視点すら女々しくて、女性作家による女性向け小説って感じ。
 ほんわか系は苦手だけど、移動図書館がテーマで「あるある!」とか「こんな感じ、まさに理ですわー」とか思えたからそれなりに楽しく読めた。でもテーマが例えば看護婦とかだったとしたら、最初の数ページで読むの止めてたと思う。
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「ぼくはめいたんてい」シリーズ
2017-11-09 Thu 07:09
 パンケーキが大好きな9歳の少年ネートが、周囲で起こる小さな事件を解決していくシリーズ。各話のタイトルからわかるように、どの話も大人にとっては大した事ないながら子供にとっては大事件だ。ネートは小さな手掛かりを集め、家に帰ってパンケーキを食べながら推理を巡らせて解決していく。その姿はまさしくハードボイルド本格ミステリー。
 名探偵の名にふさわしくクールで論理的。パンケーキに目がないけど、その食べ方もクールに自分で作って食べている。クールなネートに代わって、周囲の人物が個性的で賑わわせてくれているのもいい。
 これを読んだ子は、成長してシャーロックホームズを読んだ時に親近感を覚えるに違いない。パクリって思うかな?いいえ、インスパイアだよって教えてあげたい。

 一番気に入ってるのは、探偵の掟。話を聞くとか、相棒を持つとか、どうしても解決できなかったら両親を頼ろうとか、探偵することだけじゃなくて生きていく色んな場面で応用できる。「両親」のところは、先生だったり先輩だったり上司だったり変わっていくだけ。ネート、最高にクールな少年だと思う。


きえた犬のえ (ぼくはめいたんてい 1)  まよなかのはんにん (ぼくはめいたんてい 2)  なくなったかいものメモ (ぼくはめいたんてい 3)  きょうりゅうのきって (ぼくはめいたんてい 4)  かぎはどこだ (ぼくはめいたんてい 5)  ゆきの中のふしぎなできごと (ぼくはめいたんてい 6)

『いそがしいクリスマス』
『きえた草のなぞ』
『ねむいねむいじけん』
『2るいベースがぬすまれた』
『ペット・コンテストは大さわぎ』
『だいじなはこをとりかえせ』

ハロウィンにきえたねこ―ぼくはめいたんてい  なぞのかみきれをおえ!―ぼくはめいたんてい

『スウェーデンこくおうをすくえ!』

ふたつのバレンタインじけん―ぼくはめいたんてい

『にげだしたファングをさがせ!』
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『現場不在証明(アリバイ) ミステリーアンソロジー』
2017-08-03 Thu 00:51
現場不在証明(アリバイ) (角川文庫)
赤川 次郎 有栖川 有栖 今邑 彩 黒川 博行 姉小路 祐
角川書店   1995.08
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「二つの顔」  赤川 次郎
 人気タレントの有沢道彦と瓜二つのサラリーマン・西崎岳矢は、時々入れ替わって有沢の息抜きに協力していた。ある日いつものように入れ替わった西崎はマネージャーの花岸にもバレることなく有沢のマンションに到着したが、学校新聞の記者だと言う女子高生に押し掛けられてインタビューを受けた。
 唯一秘密を知っていた恋人の光子が有沢と浮気をしている事を知った西崎は、会社で隣の席の三宅敏子に話を聞いてもらうと同時に彼女に惹かれるようになっていく。そんな矢先、自分を有沢と思い込んだままインタビューをしてきた女子高生が電車に飛び込んで自殺したことを知り、有沢の仕業だと考えた。
 そんな折に来た有沢からの依頼を断った西崎だったが、殴られて服を盗られてしまう。仕方なく有沢の服を着て出て行こうとした際に花岸を突き飛ばして、家に帰った。
 翌朝、光子が殺されたと警察署に連れて行かれた西崎は、有沢との事を話したが信じてもらえない。その上、有沢は花岸への暴行で捕まっているという。

 さすが赤川次郎、と脱帽。恋人の浮気、ちょっとした接点があった女子高生への暴行を疑い、そこから自分自身への殺人容疑と畳み掛け、八方塞がりと見せかけておいて、あっさりした形で解決する潔さがいい。抜群の読みやすさ、わかりやすさ、追い込まれて絶体絶命の主人公、それらのまとまりの良さなんか最高だった。作者の50音順のアンソロジーだと思うけど、知名度や人気以上に内容でグッと引き込まれた気がする。
 赤川次郎は小中学生の頃によく読んだけど、今読むとむっつりスケベ感がちょっと笑える。10代の私はたぶんこの人のせいで、世の中の男女間には浮気は付き物だと思ってる節があったなー。
 
「ダブルライン」  姉小路 祐
 エリートコースを行き詰っていた多田は、懇意にしていた上司の娘を紹介された。彼女に惹かれるうえ、上司と義理の親子になれば出世も有利になるが、それまで付き合っていたキャバクラのエリからは妊娠したからと結婚を迫られていた。悩んでいるところに同期の狩野川から、エリから話を聞いたと言って声を掛けられる。
 狩野川は横領を証券係のお局・三谷にバレて恐喝されているため、多田に交換殺人を提案した。社内誌に載せる旅行記を書くため一緒に長崎のハウステンボスに行く道中、交互に抜けて殺人を犯す計画に、多田も賛同することにした。
 お互いの殺人が成功して博多からハウステンボスに向かおうとする時、狩野川がエリの死体遺棄現場で煙草の吸殻をうっかり捨ててしまったことを思い出した。証拠を回収するために戻った狩野川とはハウステンボスで待ち合わせたが、いくら待っても狩野川は戻って来ない。何かあったのかと東京に戻った多田だったが、会社では狩野川が何食わぬ顔で仕事をしており、問いただしても怪訝な態度をとるばかりだった。多田が殺害した三谷は来ていなかったが、狩野川が殺害したはずのエリからは会社に電話が掛かって来た。

 1話目のスッキリ結末とは打って変わって、モヤッというかイラッとした。多田は学歴エリートらしいけど、エリの狂言妊娠を疑わなかったのはなぜ?狩野川が殺したと言うエリが本当に事切れてるか確認しなかったの?煙草を捨てたの見てたのに吸殻残しちゃいかんと思わなかったの?狩野川が先に殺したからけど、殺人なんて大それた事なのに「やっぱ俺はできない」ってならなかったの?
 動機の薄さ、追い詰められたってほどじゃないのに働かない殺人へのリミッター、学歴高い設定なのに賢さの片鱗のなさ、そして前半は主人公だったのに精神を病んで終了。
 あと、このモヤッとした内容がトラベルミステリー仕立てなのも、ちょっと気持ちがついていかない。
 そして一番言いたいのは、この時代のハウステンボスは30歳前後の野郎2人で行くとこじゃない!比べてるディズニーランドでさえ野郎2人で行くとこじゃないけど、ハウステンボスに野郎2人は目立つよ。無理あるよ。史跡巡りの方がマシだよー!!!と、ハウステンボスの名前が出る度に変な笑いが出そうになった。


「ローカル線とシンデレラ」  有栖川 有栖
 土曜の夜、スナック『えいぷりる』に集まった常連客、紳士服店の猫井、歯医者の三島、写真館を営む床川夫妻、レンタルビデオ店を経営する私こと青野良児は、山伏・地蔵坊の話を聞くことを楽しみにしている。この日の地蔵坊は、ある事件に出くわした時の話を始めた。
 ある時、置き石があって到着が遅れたローカル私鉄に乗った地蔵坊は、ご当地出身の女優・星野舞と乗り合わせる。その列車で白いコートの男が殺されていた。駅員や車掌の証言によると、見慣れない黒いコートの男が乗っていたそうだ。黒いコートの男は、列車の窓から飛び降りて逃走したらしい。殺されたのは舞の熱狂的なファンである米沢卓也という大学生だった。
 何人かに話を聞くうちに、地蔵坊は置き石があったと言う場所が人によって違う事に気付いた。

 全員が犯人だったっていうアガサ・クリスティーの有名な推理小説があったと思うけど、それを思い浮かべずにはいられない。読んだことないんだけどね、アガサ・クリスティー。ああ、未読のくせに書かずにはいられないのが、我ながら恥ずかしい。
 架空の駅が数駅出た時点で残念な頭の持ち主である私はやや混乱してるけど、単純なローカル私鉄の設定だからわかりやすかった。ただ、あっさりテイストなのがちょっと残念。事件と事件関係者はあっさりしてるんだけど、強烈なのは山伏・地蔵坊。胡散臭さに、逆に好感を覚えてしまう。
 さらにちょっと気になるのは、ラスト。レンタルビデオ店経営の「私」なら星野舞が誰なのか知ってるんじゃないかと聞かれ、「さぁね」と答えるんだけど、誰だか見当がつかないだけで言ってるのか。それともそんな女優は存在しないけど、皆が楽しみにしている地蔵坊の話に水を差さないための返答なのか。後者であって欲しいかな。好みの問題だけど。
 

「黒白の反転」  今邑 彩
 かつての大女優・峰夏子は、彼女自身が運転する車で事故死した監督・氷見啓輔以外の作品に出たくないと言って人気絶頂の中、引退した。世話役の妹・久代と2人で40年も暮らしてきた彼女達のもとに、大学の『邦画研究会』の5人が訪れる。映画監督を目指す深沢明夫、脚本家を目指す「私」、「私」と幼馴染の美人・安達かほる、かほるを狙っている髭面の熊谷雅人と大手食品会社社長息子の辻井由之は老姉妹の家に泊まる事になっていたが、かほるを巡って熊谷と辻井が些細な諍いを繰り返す。そんな中、かほるは辻井と婚約したと発表した。
 翌日、絞殺されたかほるが物置で発見された。午前2時に峰夏子が物置に入ったため、死体が置かれたのは2時以降だと考えられる。15分置きに鳴る設定のおかげで、それぞれの動線は見えてきた。アリバイのない辻井が怪しいと思われたが、疑われて動揺した辻井は道に飛び出して車にはねられ死んでしまった。

 冒頭の部屋で過ごす峰夏子の様子で、彼女が盲目であることはわかった。見えない事には触れずにとても自然に盲人の生活を描いているところに今邑先生の表現力の繊細さ感じる。
 主人公の存在感のなさがずっと気になってたんだど、推理を深沢に披露し終わって暗に結婚を迫っている様子にはゾッとした。その後の峰夏子の回想にも怖ろしさと悲しさがある。女って怖いってやつか。男がこの手の話を書くと陳腐になるけど、やっぱ繊細な表現力が最後まで効いていた。
 それにしても邦画サークルの5人組の人間関係はひどいな・・・。男3人女2人のサークルで、うち2人の男がかほるが好きなんだと思いきや残りの1人までも。三角関係と見せかけておいて四角関係、と思った直後に五角関係。共学って怖いのね、と女子大出身の私は戦慄。


「飛び降りた男」  黒川 博行
 大阪府警一課深町班に属している吉永誠一は、妻のデコに酒井夫人を紹介された。彼女の息子・保彦が何者かに殴られて救急車で運ばれたが、警察では父親による家庭内暴力を疑ってる様子なので助けて欲しいと言う。管轄の同期に話を聞きに行ってみると、父親ではなく最近頻発している下着泥棒による仕業を疑っていた。
 間もなくして窃盗犯は捕まったが、酒井保彦への強盗傷害は否認している。その後日、仕事中にデコから電話があった。デコの店の客の娘が下着泥棒を目撃したが、男は見付かった際に2階のベランダから飛び降りたそうだ。

 他の話は殺人事件を扱ってるのに今回は下着泥棒と、ちょっと軽めの犯罪。そこにコテコテ大阪弁を話すノリのいい夫婦が出てくると、何となく置いてけぼりな感じがしてしまった。楽しそうなんだけど、ついていけない。
 会話の様子から勝手に中年夫婦を想像してたけど、デコさんが女子大生に成りすますシーンで事件の真相以上に驚いた。大阪弁って何となくおばちゃんを連想しちゃうのは、吉本新喜劇やその他お笑い芸人のせいだろうな。存在感ある主人公なのに、その人物像が目立ちすぎて事件が二の次に思えてしまった。でもキャラクター小説ってほどでもなく事件もキャラも中途半端なインパクトで、何だったんだろうという読後感が残った。
 あんまり笑えない大阪ボケツッコミが続いたけど、もし嫁の下着が盗まれたら犯人を地の果てまで追いかけてブラジャーも渡すという話には笑ってしまった。
 

「百物語の殺人」  高橋 克彦
 浮世絵研究家のは、推理小説作家の長山作治からテレビのプロデューサー・宇部を紹介された。夏に公演する北斎の階段芝居の監修をして欲しいとの事だった。
 制作発表の記者会見では芝居で使う仕掛けを一部公開したが、その直後に宇部が技術室で刺殺されているのが発見された。動機がありそうな劇団員が3人いたが、2人はアリバイがあり、もう1人は残された血の足跡に合わない。稽古場に幽霊が出るという話を容疑者の高松と上田が広めていたが、宇部の死体が発見される直前の仏壇返しの仕掛けのシーンに白い影が映りこんでいた。

 トリックや動機は大した事なかったけど、人物模様で面白く読めた。主人公が浮世絵研究家で友人がミステリー作家で紹介されるのがテレビのプロデューサーだなんて大混乱の予感がしたけど、宇部の仕事ぶりばかり描きつつも会話から塔馬の有能さ、長山の気さくさが伺えて面白かった。
 ラストで長山が塔馬の推理を自分の推理として周囲に話したお調子者っぷりには呆れたけど、彼が言う合作するという設定の小説が書かれたなら読んでみたいなぁ。彼らのやり取りをもっと読むために、このシリーズをいつか読んでみたいと思う。


「凶悪な炎」  深谷 忠記
 西多摩郡で火事現場で焼死体が見付かり、ホステスの白河恵利とスーパー経営者・石岡康明と判明した。火は外側から中へ燃え広がっており、二人は睡眠薬と鮭を飲んでいたために放火殺人として調査される。
 当初身元がわからなかった男性について、父ではないかと訪ねてきた夫婦によって石岡康明であるとわかったが、恨みを持つ人間には心当たりはないと言う。
 工藤刑事と松木刑事は、恵利に借金をしている大泉正雄が別荘に火を点けたと思われる女性を見たという証言を得て徹底的に調査したが、怪しい女は浮かんでこない。工藤は同じ警察官である恋人・ケイから娘の美千代が怪しいという助言を受けて、美千代の母親であり康明の妻である瑞江を訪ね、美千代のアリバイが不確かであることがわかった。その直後、美千代が遺書のコピーを残して母を絞殺し、自宅に火を点けて自殺した。

 本庁捜査一課殺人班の刑事を目指す恋人・ケイの安楽椅子探偵ぶりが魅力・・・なのか?いや、この短さじゃケイの魅力は生きてなくて、工藤達の詰めが甘いだけな気さえする。さらに確たる証拠が、全てが書かれた美千代の日記というのもちょっとショボい。もっと推理力で追い詰める展開が欲しかった。
 夫婦間で日記を盗み見るって何だよ。もう1冊真の日記が隠されてたって、中二病かよ。いい大人が夫に盗み読みされているとわかってる偽日記に、「ああ、わたしたちは、なんということをしてしまたのだろう。」なんて書いてるって滑稽。この辺の不自然さというか、無理やり感というか、都合良さというか、そういった物を感じてしまった。
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