読んだ本をひたすら記録する備忘録ブログ。思ったことは全部書き、平気でネタバレしてます。
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2037-12-31 Thu 00:00
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『鹿男あをによし』  万城目 学
2008-07-02 Wed 21:43
鹿男あをによし鹿男あをによし
万城目 学

幻冬舎 2007-04
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 大学の研究室にいたが、「神経衰弱だから」と奈良にある高校の常勤講師に就かされることになった「おれ」。初日に遅刻してきた堀田という女子高生の「マイ鹿が駐禁を取られて遅刻した」という冗談に激怒して以来、担当クラスで毎日黒板に皮肉が書いてあるという嫌がらせを受けることになった。
 そんな状態の「おれ」はある日の早朝、突然鹿から話しかけられる。雌鹿なのにおっさんのような声で話すその鹿は、「先生は“運び番”に選ばれた」と言い出した。京都で狐の“使い番”から“目”を渡されるはずだから、それを届けなければならないそうだ。“目”がきちんと奈良に運ばれないと、地下のなまずが暴れて日本は滅ぶのだと言う。
 シカるべき時にシカるべき相手から受け取るはずの“目”は鼠の“使い番”に奪われたらしい。しゃべる雌鹿は「おれ」に印を付けたと言った。翌日から「おれ」には、自分にしか見えないが顔がどんどん鹿になっていくという現象が起こる。

 最初は「おれ」の性格が気にくわないで、話題作だけど私は好きじゃないかもと思いながら読んでいた。鹿が話し出してもイトちゃんが剣道部で大活躍しても大して興味はそそられず、話題ほど面白い本じゃないと思いつつ読み続けた。そもそも私は剣道をよく知らないから、剣道の試合を文章で読んでもあまり理解できない。それなのに一体どこからこんなに集中してたんだろうか?気付いたら前のめりになりながらページを捲ってた。記憶を辿ると、サンカクが“目”じゃなかった辺りからかなぁ。イトちゃんが“使い番”って判明した辺りかなぁ。本当に、気付いたらって感じだったからあまりよくは覚えてないんだけど。
 結論は、面白かった。あちこちに散りばめられた日本の神話や邪馬台国が、現代まで引き継がれている眷属・鹿、狐、鼠が守り続ける儀式に見事に絡んでいる。登場人物がごちゃついてなかったから、狐や鼠の使い番に私もあっさり辿りつけた。リチャードが三角縁神獣鏡を投げる辺りではハラハラするし。まったくもって作者の思う壺。さらに松尾芭蕉の話とか、上手いなぁと笑わされた。
 しゃべる雌鹿が“運び番”の願いは1つしか叶えられないという設定を読んだ時にはどう収拾つけるのかと思いきや、そっか!物語の王道だ!と。
 面白かったんだけど、鼠って印の消し方は知ってても付け方は知らないってイトちゃんの手紙に書いてあったのが引っかかる。じゃあリチャードは何で鼠化して写真に写ってたんだろう?私がどっか読み落としたかな?図書館から借りた本を2回読みしなくなってから、物語の細部を覚えられなくなってる。いかんなぁ。
 
 この本はちょっと前にドラマ化してた。見てはないけど、CMで「おれ」とイトちゃんを演じた人くらいは知っている。イトちゃんの外見が描かれてるとこを読んだら、多部未華子がいかにはまり役だったかがわかった。「おれ」が玉木宏っていうのはちょっと厳しいけど。
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『陰の季節』  横山 秀夫
2008-06-30 Mon 20:20
陰の季節陰の季節
横山 秀夫

文藝春秋 1998-10
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 D県警の内部を描いた短編集。殺人事件を調査するような刑事達ではなく、事務に携わるエリート達を描くのが地味ながら面白い。警察内部に起こった事件や揉め事を内部の者が調査するという、横山さんにしか書けないような設定。

「陰の季節」
 天下り先である社団法人を、任期が過ぎても辞めないと言いだした尾坂部。彼が辞めないと次に退職する工藤部長の再就職先が無くなり、それは警務課の権威失墜に繋がる。D県警内の人事異動名簿作成を担う警務課の二渡(ふたわたり)は、尾坂部の真意を探る役割を命じられた。
 尾坂部の元に足を運んだり周辺を調べたりするうちに、もうすぐ結婚するという彼の娘がかつてキャンプ場でレイプされた事件があったことがわかった。その時期には同様の事件が何件もあり、いずれも証拠がほとんど残っておらず未解決のままだという。尾坂部はその事件を今でも調べているのではないかと考えた二渡はこの件を尾坂部にぶつけようとする。
 しょっぱなから私の嫌いなネタか。猟奇殺人もホラーも読める私だけど、レイプネタってどうしても苦手なんだよなぁ。乱読する中で唯一女らしい点といえばそれまでなんだけど。自分勝手な殺人を犯した人は死刑されるべき、レイプ犯は去勢されるべきという自論だ。
 だからこのラストは微妙な気分。運転手の青木が犯人かどうかは、疑わしいけど真実はわからずじまい。二渡、尾坂部の間だけじゃなくてこっちまで読んでて苦い後味が残る。

「地の声」
 D県警監察課にQ警察署の生活安全課長・曾根がパブのままとできているというタレコミが、内部告発の疑いがある。内部告発だった場合、監察課の動き次第によってはマスコミにリークすることもあるため、調査は慎重に行わなければならない。
 病気で出世レースに乗り遅れて監察官に着任した新堂はこの件について調べるにあたって、Q署にいるかつて部下・柳を使うことにした。頭のいい柳は頼りになる。しかし新堂は段々その切れ者ぶりが恐ろしくなっていく中で、密告書を書いたのは柳ではないかと疑い始める。
 「陰の声」の警務課もそうだけど、監察課っていう課も初めて知った。警務課は人事についての課で、監察課は賞罰に当たる課だそうだ。こんな地味な課にスポット当ててミステリー書いちゃう横山さんには改めて感服。 
 
「黒い線」
 引ったくりの目撃証言から描いた似顔絵によって、引ったくり犯はすぐに捕まった。平野瑞穂巡査が描いた似顔絵がそっくりだったことによるスピード逮捕だとマスコミに取り上げられ、喜んでいた瑞穂。しかし翌日、彼女は無断欠勤する。警務課の婦警担当係長・七尾友子は女子寮で寮母から、瑞穂は元気がなかったと聞かされる。前日の手柄を純粋に喜んでいた瑞穂に何があったのか?友子は瑞穂の身を案じ、持ち前の鋭い嗅覚で手がかりをつかみ掴みつつ瑞穂の行方を捜す。
 瑞穂の失踪の原因はプライドが傷ついたからってとこか。警察内で婦警が邪険に扱われるというのは、どこまでリアルなんだろうか。全く未知の世界すぎるけど、上司に似顔絵の書き直しを命じられて断れば警察が恥をかくことくらい瑞穂にはわからなかったんだろうか。それなら「これだから女は」って言われても仕方ないだろう。個と公のどちらが大切かっていうのは人それぞれかもしれないけど、警察組織なら確実に公を大切にしてもらいたい。警察による犯罪とかならともかく、警察の権威失墜は昨今では深刻になりつつ問題でもあるし。
 男性上司達のあからさまな女性蔑視は確かに嫌だけど、この件に関しては私は瑞穂が悪いと思う。家庭を犠牲にして働いてきた人達の前で、個人のプライドのために警察全体に恥をかかせる。「だから女は使えねえ」と言った上司の気持ちはわかるな。
 横山さんはどういうつもりでこの話を書いたのかな?ただ単に女性には働きにくい職場として?それとも男社会が悪いというふうに書いてるけど、男社会が悪いとみせかけてやっぱり女は使えないって暗に書いてると思うのは私の深読みのしすぎ?でも婦警は必要だよね。
 ちなみにこの編で失踪した瑞穂は、後の作品『FACE』の主人公らしい。『FACE』はまだ読んでないけど、何年か前にドラマ化してたよなぁ。仲間由紀江が主人公だった気がする。
 
「鞄」
 警務部秘書課の課長補佐・柘植は「議会対策」を担当する。次の定例会議で予定されている一般質問の内容をチェックして回答を準備し、恩を売っておきたい議員には県民から見てウケが良さそうな質問を提供する。三崎議員に質問内容を提供する際、鵜飼議員が一般質問で県警に向けて爆弾を投げると言っていたことを教わった。
 鵜飼議員は県警に恨みがあり、その報復として議会で本部長が答えられない質問をすることが考えられる。監察課の新堂、鵜飼の後援会会長、同期の黛を訪ね歩くが芳しい情報は得られない。元刑事の瀬島から鵜飼の愛人について教えられ、愛人宅で鵜飼と対面したがやはり教えてもらえない。鵜飼が席を外した際に彼の鞄を探ってみたが、それらしき書類も見付からなかった。課長の坂庭もそれらしき情報は掴めなかったと言う。
 一般質問当日、鵜飼は環境に関する質問をしただけだった。安堵や疑念の中、鵜飼の鞄の盗難届が出されていることを知らされる。鵜飼と坂庭が組んで柘植を陥れることが、この騒動の目的だったようだ。

 1話目で主人公だった二渡が他の編でもチラチラと出てくるけど、彼は「エース」と呼ばれる実力派エリート警視だった。「陰の声」では尾坂部に振り回されてたけど、D県警内部では恐れられる存在みたいだ。特に2話目では彼はこの事件の目的の最終的な決定権を持つし、2話目・3話目での二渡の推理、観察、結論は渋い。
 この本はどれもわだかまりを残して終わる。私が好きな横山さん的エンディングじゃないけど、読後に引きずらないのは主人公達自身の覚悟のようなものを感じさせられてるからかもしれない。そういうとこも含めて、相変わらず他のミステリー小説とは格が違う。この本で描く警察は、クールに調査する警察かっこよさも、一般市民が探偵する小説の脇役としての警察ようなマヌケさもない。ただ上を目指したいという野望があり、実際に上に行けない無念さがある。
 私はずっと、女が圧倒多数を占める社会に身を置いてる。高2で文系に進むと決めて女子が多いクラスになった時からだ。それから女子大に行き、女性が多い職場にいる。だからこういう男臭い会社って何とはなしに憧れがあるんだよなぁ。
 しかし最近横山さんの作品は短編ばっか読んでる気がする。手持ちの借り本が少ない時に図書館の書架にあったら適当に借りるというスタンスでしかないからだろうな。横山さんの短編は評価高いし、私も大好きだ。でも長編はもっと好き。『FACE』読むか。
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『陰日向に咲く』  劇団ひとり
2008-06-25 Wed 00:53
陰日向に咲く陰日向に咲く
劇団ひとり

幻冬舎 2006-01
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 芸人・劇団ひとりが書いた話題の小説で、5人の駄目人間を描く短編集。

1話目「道草」
 重大な仕事を任される立場にもあり、妻も娘もいる「私」。しかしホームレスに憧れてホームレス生活をしていたことがあった。ある日、有名野球選手が父親を探しで雇った探偵がやってきた。ホームレス達の間大ボラ吹きで有名な男であり、「私」が尊敬していたホームレスのモーゼが父親だった。
 モーゼが野球選手と一緒に暮らすために公園を出て行った後、「私」は一人の青年ホームレスとコンビニ弁当を取り合っている時に我に帰って家に帰ることにした。好奇心からモーゼの段ボールの家に入っていると、一人の男から声を掛けられた。しばらく刑務所に入っていたという男は、その段ボールの家の本当の持ち主、つまり野球選手の本当の父親だった。
 してやられた感じと、腑に落ちない気持ちを同時に味わった。でもホームレスになりたいって、何かわかる気がするなぁ。全てを捨てたいって気持ちってたまに湧きあがってくるよね。ただ、多くの人がやっぱり捨て切れなくて自分の地位を守るんだけど。

2話目「拝啓、僕のアイドル様」
 マイナーアイドルであるミャーコの熱心なファンである「僕」は、ミャーコへの愛なら誰にも負けないと自負する。ミャーコにパソコンやブランド物などをプレゼントするために極貧生活までしているが、ファンである以上愛は一方通行だ。ミャーコがゴールデンタイムの番組に出ると知って楽しみにしていたが、役割は健康番組でドロドロ血液の「ドロ子」。見ていられなくなってテレビは消したものの、愛するミャーコのために番組のホームページに色んな人になりすましてミャーコを絶賛する書き込みを百件以上書きこんだ。その甲斐あってかミャーコは、今度は同じ健康番組の生放送にスタジオ出演することになった。そこでの放送事故で、彼女は一躍有名になる。「僕」は心の痛みを感じながら、ミャーコから卒業する日が見えるようになる。
 以前極貧のあまりコンビニの廃棄弁当を取り合ったホームレスと再会したが、社会の勝ち組になっていて「僕」にブランドもののスーツを買ってくれた。その男に電話をして「社会復帰できました」と報告すると、彼は自分のことのように喜んでくれた。
 最初は度を越したオタクの話かと思ったら、最後の話でちょっと切なくなった。ミャーコは「僕」の小中学時代の同級生で、かつて一度だけ現実の恋をしたYさんだった。つまり「僕」はミャーコにしか恋をしたことがない。私は外見に気を使わないオタクは正直キツいと思ってたけど、この「僕」の今後は応援したい。普通の恋ができるといいですね。でも「僕」が外見重視なら、いたずらに彼女いない歴=年齢を更新するだけだよね。

3話目「ピンボケな私」
 飲み会の席で皆が将来の夢を語る中、何も考えてなかった「私」は勢いで「カメラマンになる」と言ってしまった。その嘘を嘘じゃなくするためにデジカメを買ったが、説明書を読む気になれず、パソコンの設定もできないからプリンターで印刷することもできず、メモリーカードのこともわからない。仕方なく、
本体に保存できる16枚が限度の使い捨てカメラだと割り切ることにした。
 ある日、親友ミキの大学の飲み会にお邪魔した時に出会ったタクミ君に恋をした「私」。遠まわしなアピールが利いたのか、後日タクミ君から誘いが来た。居酒屋で飲んだ後にタクミ君の部屋で体の関係を持ち、付き合うことになったのだと浮かれていた「私」。しかしその後タクミ君と音信不通になったために彼の部屋を訪ねると、ケータイを失くしたと言っていた。タクミ君の部屋には友達が来ていたけど、友達が買出しに行ってる間にセックスをした「私」と「タクミ君」。友達が戻って来てタクミ君が出て行った後、今度は土下座されてその友達ともセックスをしてしまう。
 この女、最後までアホすぎる。ミキについての叙述トリックはお〜!と思ったけど、それにしてもこんな女のどこが良かったんだろうか?放っとけない感じ?女の私にはわからない部分なのかもしれない。とりあえず、顔はいいんだろうな。
 
4話目「Over run」
 ギャンブルにはまり過ぎて多重債務者になってしまった「俺」。借金は気が付けばどうにも返せないほとに膨らんでいて、自殺をしようとするも逆に自殺しそうな若い女に生きるための説教をしていた。そんな「俺」が思い付いたのが振り込め詐欺。失敗を繰り返した後につながった電話は、「俺」を「健一」と呼ぶ老女だった。「健一」になりすました「俺」は、その後毎日その老女に電話して色んなことを話す。しかし借金の返済日はどんどん迫り、意を決してお金のことを切り出そうとした「俺」。何とか50万円を用意してもらえることになり、友達に取りに行かせると行って自分で老女のアパートに向かった。しかしその老女と会う直前、老女は心不全で亡くなっていた。
 単純かもしれないけど、これはきた。特に最後の手紙が。老女は全て知っていて、「俺」と「健一」を重ねていた。「健一」の母親と自分を重ねようとしていた。そこにささやかな幸せを感じたであろう老女に泣けた。このアホンダラはちゃんと更生したのかなぁ。

5話目「鳴き砂を歩く犬」
 鳴子は不幸な自分に気付き、東京に行くことにした。東京には、かつて修学旅行で東京に来ていた鳴子にしょうもないギャグを聞かせまくった挙句にお尻を出して警察に連れて行かれた男がいる。その男を好きになっていた鳴子は東京でいくつもの劇場を見て回るが見付けられず、やがて手持ちのお金がなくなる。ストリップ劇場で下働きをさせてもらおうとしていた矢先、そこのショーで司会をしていたあの男を見付けた。相変わらず全く面白くないその男―プードル雷太に、鳴子はコンビを組むことを提案する。
 雷太は鳴子が苦手だったが、鳴子が作ったネタはお客さんを笑わせることができる。しかし雷太には全く面白く感じなかった。以前修学旅行生にネタの一環でお尻を出そうとして警察に連れて行かれた雷太は、警察署でジュピター小鳥というストリッパーと出会った。自分のことをヌードアートと言う彼女と共に働くことになった雷太は、ずっとジュピターさんに心惹かれていた。
 体調が悪いと言って劇場を休んだジュピターさんを見舞いに行った雷太は、アメリカ兵のジュピターさんの彼氏と揉めたことをきっかけに芸人を辞める決意をする。最後の最後に、「アメリカ兵をぶん殴った話」というネタを作って、鳴子とのコンビを解消する。

 それぞれの話が微妙にリンクしているこの話。ホームレスごっこのおっさんはオタク男とコンビニの廃棄弁当を取り合ったことがあり、娘がカメラマンを目指すことになったアホ女だ。そのアホ女がタクミ君を追いかけて写真を撮りまくってたところを自殺の可能性ありと駅員室に連れて行った駅員がギャンブラーで、振り込め詐欺の電話をかけた老女がジュピターさん。お金を取りに行ったアパートで老女の葬式にいたのが年をとった雷太だ。
 些細過ぎて見落としかけた共通点が、「アメリカ兵をぶん殴った話」をするおっさん。「道草」では主人公がモーゼと呼ぶホームレス。「拝啓、僕のアイドル様」では主人公の高校時代、好きだった女の子が引っ越す日に電車で泣いた主人公に説教する爺さん。「ピンボケな私」ではタクミ君と体の関係を持った日に浮かれてタクシーで帰る主人公が、タクシーの中で聞いたラジオにリクエストをしていた人のペンネーム。「Over run」では老女のお通夜にただ一人いた老人。「鳴き砂を歩く犬」でそれが雷太だったことがわかり、「Over run」の老女がジュピターさんだったことがわかる。最後の最後で本人が出るとは。
 人間関係が混乱しそうだったから図にしたら、

陰日向に咲く


 図が汚いとか置いといて、見事に四角くなってまた驚き。この図は最初、雑紙の裏に手書きしたけどあまりにも汚かったんでペイントで書いてみた。エクセルにすりゃ良かった。いや、そんなことどうでもいいんだけど。
 諸事情で読むのがこんなに遅くなったけど、流行りに乗り遅れまくったのがちょっと悔しくなるくらいには面白い。芸人にしてはとかじゃなくて、普通に作品として面白い。売れ続けたのには書いた人の知名度も大きいだろうけど、劇団ひとりではなく川島 省吾で出してたとしても結構売れたと思う。話もいいし、構成もすごくいい。何より何人もの視点で描けるこの引出しの多さはすごい。主人公によって語り口が全く違うのも上手い。
 この本が出てから2年以上経つけど、もう書かないのかな?また書いてほしいけど、私は劇団ひとりの芸人としてのネタも結構好きなんだよね。お笑いは知性がないといけないとは思うけど、作家っていうわかりやすい知性があまり定着し過ぎるとお笑いとしては難しいと思うなぁ。そういうイメージとかを凌駕する面白い芸人かつ作家になってくれると、それはそれで面白い。
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『片耳うさぎ』  大崎 梢
2008-06-23 Mon 10:37
片耳うさぎ片耳うさぎ
大崎 梢

光文社 2007-08
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 小学6年生の蔵波奈都は父の事業の失敗で父の実家に母と共に身を寄せている。父は職探しで留守がちだったが、そのうえ母も祖母の体調不良で奈都を残して自分の実家に行ってしまった。古くて広大な敷地を持つ格式高い「蔵波屋敷」は奈都にとっては恐怖であり、一緒に住む親戚達のほとんどと馴染めてない。学校で暗く沈んでいると、隣の席の一色祐太が古い建物が大好きな「ねえちゃん」のさゆりを紹介してくれ、彼女が泊まりに来てくれることになった。
 夜になってさゆりの誘いで屋敷内を探検した2人は、隠し扉から入った暗い屋根裏部屋で誰かに出くわす。慌てて逃げる際にカーディガンを忘れてしまった奈都だったが、翌日そのカーディガンが片耳が切られたうさぎのぬいぐるみと共に部屋に置かれていた。蔵波家にとってうさぎは不吉な存在、片耳ならなおさらだと言う。誰がこんなことをしたのか?屋根裏には何があるのか?奈都は好奇心旺盛なさゆりに引っ張られる形で、蔵波家の謎を探る。

 大崎梢が初めて出した「成風堂」シリーズ外の本。大きな屋敷に隠し部屋、言い伝えに出生の謎・・・ってまるで毒のない横山正史。謎の答えを知りたくてどんどん読むような本ではないけど、昔それなりに好きだった青い鳥文庫のミステリー本のような軽いドキドキ感がある。謎自体は緩いけど最後にはほんわかくるエンディングが待っていて、ほのぼの系のミステリーも悪くないかなって思ってしまった。『晩夏に捧ぐ』で長編はコケたと思ってたけど、いけるじゃないか。ちょっと中だるみあったけど、面白かったよ。
 冒頭で奈都の心中が延々と書かれている辺りは、子供らしくない文章で子供らしいこと考えてて違和感があった。対象読者はあくまで大人ってことなんだろうけど、何か馴染めなかった。私の大好きな作家・乙一もそんな手法を使っててその違和感がスパイスになってるんだけど、この本だとイマイチに感じてしまったのはどうしてだろうか。乙一はホラーだったからスパイスとなり得たのかな?この本は小6と中3の女の子が活躍するから、大人っぽい文章がマイナス印象に思えたのかもしれない。まあ、読んでくうちに慣れたけど。
 最後には潔の雪子に対する態度には切なくなり、さゆりの正体にもちょっと驚いた。でもさゆりの正体がずっとバレなかったのは不自然じゃね?祐太の紹介の仕方が悪く、さゆり自身も祐太の姉ってことにしてた方が動きやすかったから黙ってたとかいうつもり?だとしたら祐太アホすぎる。小6男子は確かにアホだけど、隣のねえちゃん紹介するのに名前しか言わないほどアホじゃないよ。それに中学生の制服なら普通名札付いてない?しかも公立。私の地元だけかな?とりあえず出身地の違う私の配偶者に聞いてみたけど、あるよね、名札。さらに、奈都とさゆりの母親同士って電話で挨拶交わしたことになってたよね。噛み合ったのか?それとも、そんなにバタバタした挨拶だったのか?ある意味謎が謎を呼ぶ衝撃に事実だった。些細だけど。もういっそ、祐太は実の弟だったってんで良かったんじゃねーの、と適当感漂わせたことを思う。
 また、雪子の出生の真実を記した手紙が選挙妨害のネタとして狙われていたというのは、どうにも取って付けたような動機だ。本当に、心温まる謎は上手いのに、エゴが絡んだ謎は苦手な人だよなぁ。面白いほどにわかりやすい。
 まあでも円満解決で良かった。今後、雪子は父親違いの妹に会うことができるだろう。良彦はさゆりに恋でもしたか。さゆりが応えれば過去が巡って結ばれたことになるんだろうけど、どうだろうか。奈都とさゆりは今後ずっと仲良しなんだろうな。こうやって、物語のその後が幸せな感じで広がるエンディングっていいよね。
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