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元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『崩れる脳を抱きしめて』  知念 実希人
2019-11-15 Fri 11:41
崩れる脳を抱きしめて
知念 実希人
実業之日本社
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 医師国家試験に合格して研修中だった碓氷は、地域医療研修で『葉山の岬病院』に来た。ホスピスも兼ねたその病院で、いつ脳出血を起こすかわからない脳腫瘍を抱える患者・弓狩環ことユカリを担当する。遺産を狙う親戚から身を守るためにも、大金持ちだけど病室にこもらざるを得ない。碓氷は毎日の診察の他に空き時間の勉強でユカリと交流し、喧嘩しつつも仲良くなっていく。
 碓氷は幼い頃、大きな借金を抱えた父親に捨てられた過去を持つ。すぐに別の女性と結婚し、1年後に亡くなった父親を恨み、母と妹のためにアメリカで医師になるべく必死で勉強してきた。ユカリは外出恐怖症を解決してくれたお礼にと、碓氷のトラウマ解決に乗り出す。
 研修が終わってもユカリのことが忘れられない碓氷は、同僚に急かされてもう一度会いに行こうとする矢先にユカリが死んだことを知らされる。ユカリが碓氷の持つ借金と同額の遺産を、碓氷に分配相続させようとしていた。もう一度葉山の岬病院に行くとユカリがいたはずの病室は何もなくユカリとの関りは全て碓氷のストレスから来るによる妄想だったと言わる。


 何だかフラグの多い話だった。必死に勉強してきた研修医がちょっと不思議な雰囲気を持つ若い女性を担当するって、まず本編始まって1ページ目で恋愛フラグ立ってる。ユカリが自分で「頭の中の爆弾」とか言い出したのも死亡フラグやんって思ったし、借金抱えた父親の家出・すぐ若い女と結婚・1年後の死・その事に大きな傷を抱くってこれも深い事情フラグがビンビン。
 研修中、ユカリや他の患者との交流は穏やかながらも若干退屈ではあった。でも研修が終わって、内容が急にミステリーになる。病院ぐるみで碓氷が見てきたユカリが妄想だったことにしたのはなぜか。ユカリはなぜ横浜に行ったのか。ユカリの新しい遺言状の存在は?
 でも全部終わった時にやってきた穏やかな喜びがいい感じ。院長は碓氷には冷たい態度だったけど、悪い人じゃない印象が言葉の端々にあった。だから院長に不穏な影が出てきた時は驚いたけど、やっぱりいい人だった。
 碓氷は必死に勉強して来た人みたいだし、目指してる道が夢物語じゃなさそうな様子からも優秀なんだろう。でも、全てを投げうって何にも代えがたい目の前の大切な人との時間を選ぶって、なかなかラブストーリーの王道じゃないか。きっとこれまで培った知識をユカリさんの役に立て、今後も新しい知識を増やしていくんだろうな。
 医者が主人公の話は用語が難しかったりして苦手なんだけど、病気のことは最小限でしかもとても平易に書かれていて物語の邪魔をしてない。とてもわかりやすくて、物語の世界に存分に浸れた。
 あと、広島弁がとても可愛かった。特に同期の冴子ちゃん、勢いある明るい性格に広島弁がとても合ってて本当可愛い。
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『七つの試練』  石田 衣良
2019-11-02 Sat 00:13
七つの試練 池袋ウエストゲートパークXIV
石田 衣良
文藝春秋
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「泥だらけの星」 
 タカシの友人で俳優の鳴海一輝は、大きな仕事終わりに役者仲間とモデルの卵・エレンと3人で3Pを楽しんだ。その件でエレンの事務所の社長・市岡から脅迫されていた。タカシから呼び出されたマコトは、いい解決法はないかと相談される。

 イッキの「抱いたり抱かれたり」発言と週刊誌に売られちゃうかもって流で、このネタってあの・・・と絶句。元ネタは成宮君の件だよね。いやちょっとこれは・・・。でも、ラストの展開は嬉しかった。成宮君に向けての励ましだよね。市岡の悪行を別の週刊誌に載せるという反逆で、イッキが自身で堂々とバイセクシャルであることを前面に出すことを提案したこと、エレンの「そういうの隠す時代じゃないっしょ」という発言、CM契約は失ったけど市岡を刑事告訴するとドラマや映画はそのまま続いたこと。彼に届いてるといいなぁ。
 とはいえ、この話がアリなのかどうかはちょっと判断に迷う気もする。成宮君がこれ以上傷ついてないといいなと思う。


「鏡のむこうのストラングラー」
 マコトが最初に手掛けた事件、連続女子高生首絞め事件の犯人ストラングラーがまた池袋に出た。出会いカフェ『チェリーズ』のオーナーから相談されたタカシから、マコトが呼び出される。
 被害者の一人・HELAは沖縄の片隅で生まれ、14歳の時から売春をするしかない環境に育った。その生活を抜け出すために東京で大学に行き、弟を高校に行かせ、妹に売春をしなくてもいいようにするために、奨学金の他に『チェリーズ』で稼いでいると言う。彼女の協力を得て似顔絵を制作し、Gボーイズの働きで犯人はあっけなく捕まった。

 最近マコト、タカシ、おふくろ以外の人は一期一会状態だと思っていた矢先、第一話のストラングラーの再登場!?と思いきや、似た趣味を持つ変態がまたいたって話だったことにちょっとがっかり。でも第一話で似顔絵を描いたシュンが今や人気キャラクターデザイナーとして再登場したのは、ちょっと懐かしかった。とはいえ一巻読んだのは随分昔だから、あーいたいたそんな人、あったあったそんな展開っていう微かな記憶しかないんだけど。
 今回は変態に死ぬ思いをさせて二度と同じような行動を起こさせない話じゃない。日本の貧富の差って、思ったよりあるんだとほんの数ページで知らさせられた話だった。



「幽霊ペントハウス」
 マコトの中学の同級生スグルが購入した億ションの最上階で、真夜中にコツコツという音が聞こえる。スピリチュアルに凝っている妻が、土地神の機嫌を損ねたんじゃないかと引っ越したがって困っていると相談して来た。スグルのマンションに行ってみると、確かに夜の11時にコツコツという音がする。マンションからの帰り、マコトはマンションの屋上を見つめるベリーショートの女性を見掛けた。
 マコトが何気なく土地神の話を母親に聞くと、母親は一人の拝み屋を紹介した。彼女の不思議なアドバイスに従って、言われた通りの日時に再びマンションを訪れたマコトは、再びベリーショートの女性に会った。

 今回はストリートのアングラ事件というより、コージーミステリーって感じだった。美人スピリチュアル妻が言う事が意外と当たってたり、不思議なおばあさんが出てきて予言通りになったりと、いつもと経路が違う。土地神の龍神に代々仕えてきた三木元家の龍神つきの娘が監禁されてたっていうのは、コージーではないか。
 なんか、面白いんだけどIWGPにこういうのは求めてないんだけど・・・って気がした。それと、スグルが中学の同級生ならサル君も出してくれ。


「七つの試練」
 交流サイトのゲームで七つの試練というものが流行っているらしい。管理人が一つずつ試練を出し、受けた人物はその試練を行う写真やムービーをアップするとたくさんの「いいね」が付く。最初は他愛もない試練だが、段々と暴力や窃盗の試練が課され、最期には飛び降りの課題が出ると言う。
 その試練を受けた不登校の男子高生・タクミは、「いいね」欲しさに自宅の屋根から飛び降りた。Gボーイズのメンバーにも、途中の試練の窃盗で捕まった者がいるそうだ。タカシからの依頼でタクミの話を聞きに行ったマコトは、タクミの妹で中学生のユウミに声を掛けられた。彼女は兄の敵をとるため、七つの試練に挑戦しているという。ユウミの七つの試練を足掛かりに、マコトは管理人を江ノ島におびき出す作戦を立てた。

 「いいね」文化への皮肉のような事件だった。SNSの「いいね」欲しさにバイト先なんかで非常識なことやって炎上して社会問題になってたけど、「いいね」欲しさに死ねって言われたら死ぬのかっていうのを具現化してるような事件。で、住む世界も視野も狭い未熟な人間が犠牲になった。
 ネット社会という水面下に潜った犯人を釣り上げる様子が面白かったし、作戦の要はマコトが作って最後の一番おいしいところはタカシが魅せるといういつものカッコいいスタイル。今回はスレッドに影響された連中も展望台から一斉に飛び降りる(ただし命綱は自由)という展開。張り込んでいたGボーイズ達が愚かな彼らに一斉に飛び掛かるクライマックスが、かっこよかった。
 シュンに続き、今回は懐かしいゼロワンが登場したけど、結局役に立ったのか?オニオンルーターについて説明しただけじゃない?過去に登場したこういう凄腕の人達、もっと登場して欲しいなぁ。
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『西一番街ブラックバイト』  石田 衣良
2019-10-19 Sat 17:49
西一番街ブラックバイト 池袋ウエストゲートパークXII
石田 衣良
文藝春秋 2016.08
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「西池第二スクールギャラリー」
 マコトがかつて通っていた小学校がリノベーションされ、アートサポートセンターになった。そこでギャラリーを持つマコトの幼馴染・サエコによる依頼で、小門屋という男の作品が2度に渡って壊される事件の犯人を捜して欲しいと言う。
 30歳で仕事を辞めてアーティスト活動をし、迷いながらも9年も作品を作り続ける男を描く。

 脱サラして芸術家になるとか歌手になるとか小説家になるとか起業するとか、よく聞くけど成功例が少ない話。大抵の人は早めに折り合いをつけてありきたりな人生を送るはずなんだけど、苦しみながら続ける人がいて、その中のごく僅かに晩年世に認められる人もいる。むしろ、人に認められるための活動じゃなくて衝動なのかもしれない。そんな中年男と、苦しい中小企業の傷つけ合いが悲しい。
 マコトが「おれも三十歳の誕生日に、そんなふうに考え込む日が来るんだろうか。」という下りがあって、IWGPシリーズの面々が歳取らないことを考えないようにしているのに先方から突き付けられた感じ。これだけ世の情勢をネタにしてるのに、マコトもタカシもまだ20代半ば設定?マコトは八百屋のトラブルシューターで年取ってもいける気はするけど、タカシは厳しいかな。本物の反社会勢力の人になるか、キングを代替わりしてそのカリスマを活かした別のことやるか。
 うーん、それはそれで読みたい。


「ユーチューバー@芸術劇場」
 人気ユーチューバーの140★流星(ワンフォーティーりゅうせい)が、ライバルユーチューバーから脅迫されているそうだ。自身のチャンネル3周年記念動画を邪魔されないようGボーイズに依頼があったが、受けるかどうかを判断して欲しいとタカシからマコトに依頼される。

 全く新しいジャンルのビジネスと、マコトとタカシのクールなテンションが奇妙な空気を醸しててちょっと面白い。そこにさらに、暴力的発言と共に破壊活動の動画をアップする戸田橋デストロイヤーZ。変な取り合わせので世界観を破壊してくるのってシリーズ通して時々あるけど、結構好きだ。
 でもなんか・・・前にも書いたけど携帯電話が爆発的に普及してきた1990年代後半に始まって、未だに若者としてユーチューバーと絡む姿は、サザエさんに薄型テレビとかスマホが出てくる奇妙な違和感がある。どっかのタイミングでIWGPは終わって、別キャラで似たようなシリーズした方が私は好きだなぁと思いつつ、大人の事情が優先されたのは仕方ないよね。
 あとちょっと気になったんだけど、一話目でサエコのギャラリー警備では警備料は破格と書いてあったのに、今回はボディーガード料金は街の興信所より安くないと書いてある。ここんとこ、どうなの?警備とボディーガードの違いってだけなの?Gボーイズ、時々よくわからない。
 

「立教通り整形シンジケート」
 物凄く美人で、とても美しい声をしているけど決してマスクを外さない女・スズカからの依頼。前の職場にいた男から付きまとわれて困っていると言う。彼女はほんの少し大きめの顎を気にして整形手術を受ける予定だった。
 一方タカシも、池袋の悪質美容外科について調べていた。無理な整形を繰り返して高額な施術代を払った挙句、顔面崩壊する女性達が集団訴訟をすると言う。スズカが控えた整形手術もその病院で行われる予定で、ストーカー男・園田は彼女を止めようとしていた。

 整形手術って、もうどれだけ当たり前になってきてるんだろう。少なくとも芸能界は整形美人だらけで、公言する人も出てきたくらいだ。
 スズカは時折、心を閉ざす様子を見せる。きっと元が美人であるが故に粗探し人間に傷つけられてきたんだろうな。ただ、彼女は顎さえ治せばかなりの美人になると予想される。このシリーズによくある弱者が少し幸せになる話ではなく、上手くやればとても勝ち組になるかもしれない超ハッピーなシンデレラストーリーな気がする。


「西一番街ブラックバイト」
 勢いがあり、次々に事業展開するOKグループ。マコトは家の近くにあるOKグループ従業員のマサルと顔見知りになり、社長の書籍購入ノルマや書籍からのテストの話などの話を聞いてはいた。GボーイズのメンバーもOKグループで働いている者が数多くいて、マコトはタカシに誘われて一緒に視察に行く。
 そのOKカレー店の屋上から飛び降りようとする青年がいた。彼はマサルの後輩・ミツキで、マサルの誘いでOKグループに入ったが心身共に病んで飛び降りようとしている様子だった。消防隊のマットが間に合って一命を取り留め、マサルは会社とやり合う決意をする。
 同じ時期、池袋で引ったくり事件が起こる。犯人2人組はGボーイズのメンバーでOKグループにバイトとして入ったものの、辞めようとする際に莫大な違約金を請求されていた。また、OKグループが雇う武闘派5人組から狙われていたため、彼らに見付かる前にGボーイズが見つけたいとタカシが話した。

 フィクションながら、いつもマコトの行動力と度胸にはドキドキする。その行動力と、自殺未遂後の藤本に掛ける言葉の優しさと説得力が熱い。もちろんキング・タカシの強さと気高さとカリスマもかっこいいし、二人の阿吽の仲も素敵なんだけど、マコトの頭の良さが私はとても好きだと思う。
 過去のシリーズで扱った、外国人労働者問題とかホームレス支援の問題とか低賃金者搾取の問題とか社会問題化してる大きな問題を取り上げて、マコトが世の中を変えれるわけじゃないけど目の前の一つの悪事をぶった切る姿は好きだと思う。


 過去のIWGPシリーズのレビュー読んだら、サザエさん化現象について書いてた。前に書いたこと忘れすぎでしょ、私。
 このシリーズ、短編だしレギュラー人物がマコト、タカシ、おふくろぐらいしかいないし(サルを最近見てない・・・というか読んでない)、私自身本は読み流しがちだから過去の話思い返してみたら結構忘れていることに気付いた。amazonの内容紹介読んでもピンとこない話も多数。また1巻から読んでみようかな。以前はライトに読める本はこのブログに記録を残してなかったから、書いてないのも多いし。15年前の若者の話を追ってみるか。
 今回は9巻で義妹になった子の名前がチラッと出てきて安心した。10巻で全く出てこなかったからちょっと失望してたとこだけど、良かった。
 最近ちょっとタカシのかっこよさと、そのタカシが唯一心を許すマコトっていう構造が鼻に付くことがある。ちょっと狙いすぎじゃないか。でもこの狙いすぎが癖にならなくもないんだけど。
 来年アニメ化だって。ドラマ化では長瀬君がかっこ良すぎて、実際のとこキングよりイケメンだったのはどうなんだと思ったけど、アニメはどうだろうか。アニメはジブリくらいしか見ないような私だけど、多分どんなもんかちょっと見ると思う。ただ、アニメ独特のノリって苦手なんだよね・・・。
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『僕とぼく 妹の命が奪われた「あの日」から』  川名 壮志
2019-10-10 Thu 18:12
僕とぼく 妹の命が奪われた「あの日」から
川名壮志
新潮社
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 20年前に起こった、佐世保市小6同級生殺害事件。被害者の兄2人の人生にスポットを当てたルポルタージュ。明るく社交的で要領のいい長兄と、大人しくて自己主張の薄い次兄の、それまでの人生や事件後の苦しみなどを交互に描く。

 末っ子さっちゃんの誕生、大好きだった母親が乳がんになり乳房の切除、転移、死亡。祖母に手伝ってもらいながらも上手く回っていた御手洗家に、突然起こった事件。被害者の遺族とはこうも辛いのかと、胸が痛くなる。
 周囲の大人に守られながら徐々に立ち直っていく長兄「僕」と、さっちゃんと歳が近かった分だけ多少の事情も知っていて自分を責めてしまう次兄「ぼく」の視点は随分違っていた。こうやってお互いの過去の答え合わせみたいなルポが、どうかより遺族の心の繋がりを強固にしますように。特に長兄の子供が鎹となりますように。
 被害者の父親、新聞社の支局の人だったとかで事件後わりとすぐに会見をしたし、その後も節目に求められれば意見を述べ、手記を出したりした。憔悴しつつも取り乱さない様子はとても立派だったけど、そうか、息子達を守るためにマスコミの前に立ったんだな。改めて、立派な人だと思う。
 事件のきっかけは、交換日記やHP書き込みのトラブルだったらしい。現在、さらに時代は進んでSNSトラブルもよく聞くようになった。我が子に、どうやって身を守り方を教えたらいいだろうか。ほとんどの人間は恙なく社会人になっていくけど、ごく稀にこうやって不幸極まりない事件もある。もちろん事故もあるけど、事件との大きな違いは大きな悪意が存在するということだと思う。家族がこれほどの悪意を向けられること自体が、とてもつらくて悲しくて、想像を絶する苦しみなんだろうと思うことしかできない。
 でも、長兄が結婚して子供が生まれたと知って少しホッとした。人の死の不幸は、新しい命の誕生で少しは癒えるんじゃないかと思う。願わくば、次兄も結婚して子供を作って、大きな苦しみが少しでも埋められて、幸せだと感じれる瞬間が数多くあるといいなと思う。
 兄達2人の心境をじっくりインタビューしたんだろうと思われる丁寧な文章で、読んでて計り知れない苦しみが伝わってくる。でも、2人の違いを漢字とひらがなの「僕」「ぼく」にしたのは、ちょっとイマイチかな。「僕」に比べて「ぼく」は幼い印象がするけど、実際のところ2人は性格の違いは如実だけど精神年齢にそう大きな差はないように感じる。変に幼い印象がする「ぼく」表記の次兄に、ちょっと失礼ではないか?でも、遺族の了解を得て出版してるから、次兄も了承済みなのかな?だったら私がインネン付けるのも変だし、何百倍も失礼なんだけど。とりあえず、脳内で朗読するタイプの私にはそれほど区別が感じられなくてわかりづらかった。「俺」と「僕」だったら、もうちょい違ったか?いや、いまいち感増したな・・・。何か他のタイトルなかったんかなーと思った。
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『AX アックス』  伊坂 幸太郎
2019-09-24 Tue 17:14
AX アックス
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伊坂 幸太郎
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 冷静で優秀な殺し屋である兜は、表向きは冴えない会社員かつ恐妻家である。妻の機嫌を損ねないよう細心の注意を払って日々生活し、高校生の息子・克己が呆れるほどだった。
 克己が生まれた頃から裏の仕事を辞めたいと思っていたが、しかしそう簡単に辞められる世界でもない。仕事の仲介者である通称・「医者」によると、兜を育て上げるために掛かった資金を取り戻すまでは辞められず、無理に辞めると家族に危険が及ぶという。兜は殺し屋の仕事を辞めるために殺人を続けていた。
 最終話は殺し屋の仕事を無理やり辞めることにして「医者」から命を狙われる兜と、10年後の克己の視点が入り混じる。ひょんなことから父親の自殺について調べる事にした克己は、自身も気付かないうちに危険な状況に向かっていた。


 敏腕殺し屋だけど恐妻家という設定は面白いながら、気分屋で自己中の妻にイラッ。尻に敷かれている兜にもイラッ。でも克己のクールさがいい味出していて、不快さが中和されている。殺し屋モードの兜が殺し屋モードの兜はとてもかっこいい。ただそれだけの感覚で読み進めた。
 兜ほどの人がなぜ妻の機嫌を損ねないよう細心の注意を払っているのか疑問だった。でも、ふとした拍子に兜はやはり一般人ではない事に気付かされる。ただ強いだけじゃなくて、有事に反応が早かったり、他人に妙に淡泊だったりすることから普通じゃない育ちをしている人間だということが伺える。怖ろしく不器用なだけで、家族をこの上なく大切にしようとしている人間だと思えてきて、読んでて少し切ない。
 兜が嫌々ながらも殺しの仕事をしている間の「医者」は、ちょっと味のある仲介人でしかなかった。でも10年後に克己が兜のことを調べ始めてからの「医者」は、危険な雰囲気がぷんぷんする。兜はこんな奴から仕事を紹介されてきて、こんな奴に殺されて、果ては克己に目を付けている状況が改めて恐ろしく感じてしまった。その極限状態で、大人になった克己と10年前の兜の視点が交錯して、兜の家族への不器用な愛がビシビシ伝わってきた。そうか、そうだったんだ、だから兜は・・・っていう感じに、ゾクゾクした。読み始めはこの妻不快だなって思ってたけど、やばい、読み進めると面白さがじわじわ増幅されていく。
 ラストで、兜と妻の出会いらしきシーンが描かれているけど、きゅんときた。恋しちゃったんだね。真っ当ではない生き方しかできなかった兜だけど、息子の克己は普通に育って結婚して、孫もできてるよって教えてやりたい。
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