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元司書による読書備忘録ブログ。思ったことは全部書き、何様気取りの感想だったり平気でネタバレしたりします。
『蜜蜂と遠雷』  恩田 陸
2019-03-01 Fri 15:27
蜜蜂と遠雷
蜜蜂と遠雷
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恩田 陸
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 2017年本屋大賞受賞作品。
 3年ごとに開かれる芳ヶ江国際ピアノコンクールでの、4人のピアニストを描く。
 まずは今は亡き音楽界の大物ユウジ・フォン=ホフマンに師事していたという15歳の少年・風間塵。養蜂家の息子としてヨーロッパ各地を旅する彼は、ほとんど弟子を取らなかったホフマンの推薦状を持ってエントリーした。衝撃的な演奏で審査員達に賛否を巻き起こしていく。
 13歳の時に母が急逝して以来、ピアノが弾けなくなった栄伝亜夜。ジュニアのコンクールを制覇し、CDデビューも果たし、コンサートも開催し、1年半先までスケジュールが埋まっていたが、母親の死後最初のコンサートで本番直前に逃げ出してしまっていた。その後高校卒業までピアノを弾くことはなかったが、母と音大で同期であり、名門私立音大の学長・浜崎の勧めで再びピアノを弾き始めた。浜崎に言われて芳ヶ江国際ピアノコンクールに出場したものの、本人は特に乗り気でもなくのんびりしていた。「あの」栄伝亜夜が出場すると皮肉を込めた注目もあったが、彼女は誰もが認めざるを得ない演奏をする。また、幼馴染のマー君とも再会し、彼と音楽の感性が非常に似ていることを実感した。
 出場者の中では最高年齢28歳で、音大を卒業後は大手楽器店で働く妻子持ちの高島明石。サラリーマンとして仕事をこなしながら、睡眠時間を削って練習し、自身を追い込み、コンクールに臨む。栄伝亜夜のファンだった。
 世界的なピアニスト、ナサニエル・シルヴァ―バーグに師事している19歳イケメンピアニストのマサル・カルロス・レヴィ・アナトール。幼い頃に日本に住んでおり、近所に住む少女のピアノ教室にくっついて通っていた。彼がフランスに戻る時に少女がくれたレッスンバッグを今でも大切にしている。その少女・栄伝亜夜と、このコンクールで再会を果たした。ルックスが良いだけでなく、スポーツマンでもあり、何より天才的ピアニストで圧倒的な技術と表現力を持っている。
 選考が進むにつれて、絞られていく才能ある若者達が優勝を目指して予選を勝ち進んでいく物語。

 タイトルから、ビバルディ「四季」の「夏」を連想し、目次チラ見で音楽小説と知って、やっぱりねと思っていた私。全然関係なかったことに衝撃の結末を迎えた。感想として真っ先にそれが浮かぶくらい、楽しめなかった。いわゆる左脳タイプの文系で、音楽経験ゼロ、生活の中で音楽を流すことは少なく無音が好きなため知識も教養もゼロ、さらに純然たる音痴の私に、この本を楽しめるわけがなかった。だって演奏家によって音楽が変わるってことさえピンとこないんだもん。
 それでも恩田陸先生の表現力は素晴らしく、歌詞のない音楽に言葉を尽くして文章で表現してある。どうにか理解できたような気になって読み進めたけど、コンクール始まって次々に演奏されていって知りもしない曲を文章で表現されてもチンプンカンプンな挙句眠くなる始末。
 人物の視点が目まぐるしく変化していくのも、音楽という抽象的な物をさらにあやふやにしている気がする。メインの人物達5人だけじゃなく、審査員、亜夜に付きそう浜崎の娘・奏、ドキュメンタリー番組制作のために明石を撮影する同級生の雅子、明石の妻・満智子、マサルの師匠・ナサニエル、調律師、コンサートマネージャー、他にも様々、同じシーンも複数の視点で細かく行き来して展開するために、あやふや感が加速してしまった。
 それでも人間模様の機微なんかは妙に伝わってきて、塵の音楽に対す愛情や渇望、ホフマンの推薦を受けたことへの嫉妬や、亜夜の音楽に対する真っすぐな心、明石の意気込みやためらい、何でも悠々とやってのけるマサルの抱く恋心、どこか通じ合う天才達、その他の人々諸々の感情がありありと息づいていている。
 表現力に感心することに終始しつつどう終わるのか楽しみにしていたんだけど、何かフワッとしたラスト。クライマックスがないまま、終わったように感じる。結果発表、ないし。ラストにワードで横書きしたような順位表が書かれているだけだし。もっとガッと盛り上がったんならともかく、各々の到達した音楽観だったからページ飛ばしたかと思った。
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『破滅の王』  上田 早夕里
2019-02-22 Fri 16:37
破滅の王
破滅の王
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上田 早夕里
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 宮元敏明は満州事変から4年経った中国へ渡り、上海自然科学研究所の細菌学科で働くことになった。友人もでき、大都市の中の国際色豊かな研究所生活を楽しんでいたが、日中の対立は次第に激しさを増していく。宮本の友人・六川も行方不明になった。
 ある日、日本領事館に呼ばれた宮本は、バクテリアを食べるバクテリア「R2v」、暗号名「キング」の存在を知る。コレラに似た強い毒性を持っているが抗生物質が効かず、目下のところ治療法は皆無だと言う。生物兵器として作られたキングは、自然界に存在した細菌から人為的に作られた。しかしキングが作られた研究所は閉鎖され、開発社・真須木や研究員は死亡、混乱に乗じて研究文書と菌株を持ち去った人物がいると言う。
 キングについて調べ始めた宮本の下に、半年間行方不明だった六川の死体が見付かったと知らされた。六川は何らかの事情でキングの存在を知り、ワクチンと治療薬開発を試みようとしていたようだった。
 

 序盤は時代背景の説明が細かかったため、知性も教養もない私は時間を掛けてもなかなか読み進められないで難儀した。宮本と灰塚が出会った辺りから急に面白くなり、軍への協力に抵抗を見せていた宮本が否が応でも戦争に巻き込まれていく辺りから面白いというより空恐ろしさから読み止めがたくなっていった。さすが直木賞候補作品。
 宮本のジレンマは、まだ軽い。キングの開発に携わってしまった早川と兄の六川、マッドサイエンティストになり下がりキングを作り上げ人体実験の要望まで出すようになった真須木、真須木とは古くからの友人でありながら最期に青酸カリを注射したうえに解剖までさせられた藤邑。この時代は誰しも戦争から無関係ではいられなかったし、抗えなかい悲しさやつらさは想像を絶する。
 そんな中で断じて科学者であろうとした宮本達や、軍人然とした冷酷さの灰塚少佐が内に秘める真の軍人像を持っていることには感動すら覚えた。生真面目な木戸少尉が時折表情豊かになるところなんて、何だかかわいい。
 ただ、その背景にはかくも悲惨な戦争がある。物語の中に西暦の年数が出る度に祈りのような気持にさせられた。早く1945年になってくれと、何回も思った。
 ラストは美しいけど、やっぱり宮本と灰塚はもう一度会ってほしかったなぁ。補記として灰塚は行方不明、宮本はキングの研究に障害を費やしたことが書いてある。記録に残ってないだけで灰塚はどうにかしてドイツから日本に戻り、戦後の日本で宮本と交流していて欲しい。
 この本は時代背景を細かく描写してあるし、実在の人物の名前も多く登場する。これって本当の話?キングって本当に存在するの?え?フィクション?あれ?やっぱ実話?と、読みながら何度も考えた。このリアリティ、相当に調べ上げられてるんだろうとおもったら、巻末の参考文献の多さが凄い。
 補記に「R2vは、まだ世界各地に生息している」とあって、私の中で実話確定したけど、最後の最後に補注である菌をモデルにしてあるだけであることが書かれていてホッとした。でも、戦争中にあらゆる国で似たようなことが行われていたことは事実だ。人としての尊厳を奪われそうになりながらも守り通した人達の存在に、感謝したい。
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『ファーストラヴ』  島本 理生
2019-01-09 Wed 17:41
ファーストラヴ
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島本 理生
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 アナウンサー志望の女子大生・聖山環菜が、父親を刺殺した。彼女のルポルタージュ執筆を依頼された臨床心理士「私」こと真壁由紀は、ルポ執筆の依頼をされる。偶然にも環菜の国選弁護人に選ばれたのは、由紀の夫の義弟・庵野迦葉。2人は協力しながら環菜との面会を重ね、本人もわからないと言う動機を探っていく。
 実の母親は検察側として出廷することになっており、現状不利な環菜のために協力し合っていた「私」と迦葉。2人は、次第に過去の確執とも向き合っていくことになった。

 
 大人しくて気弱そうで頼りなげな環菜ちゃんは、ずっと何か裏にある感じを秘めたまま話が進む。環菜ちゃんは自分のことを「嘘つき」と言い、母親は彼女を我が儘娘のように言い、元交際相手達は浮気性だとか虚言癖や感情の起伏の激しさを語る。何かを秘めてる様子だけど、語らないのか語れないのか、真実へは牛歩の歩み。だけど色んな人からの断片的な話を集めてようやく真実にたどり着く。
 環菜ちゃんは故意に何かを隠してるのかと思ったら、ずっと存在ない物として扱われてきた自分の不快感や恐怖感に蓋をすることに慣れ過ぎてしまってたんだね。性的な視線を向けられることから逃れさせてもらえないという、なかなか注目も理解もされにくい形の虐待にスポットが当たった話だった。弁護士も「軽い虐待」って言ってたけど、軽いために表面化しづらく、本人も不快感を説明できないまま無自覚のトラウマが残っている。こんなデリケートで壊れやすい題材、下手したら駄作で終わるところなのに、ちゃんと考えさせられる話になってるのが凄い。
 環菜ちゃんと同時進行で同じくらいゆっくりと進んで行く、「私」と迦葉の関係。「私」はルポのため、迦葉は裁判のために協力し合っていたけど、こっちはこっちで始めから過去になにかあった雰囲気を漂わせまくり。「迦葉君」「お義姉さん」と呼び合ってたのに段々呼び捨てで呼び合うようになっていって、これ絶対昔男女の仲になったってやつじゃん!と思ってたけどもっと深かった。父親の児童買春を知ると同時に自分も性的な目で見られていたことに恐怖した「私」と、母親に虐待され8歳から伯母夫婦に育てられた迦葉。心の友って言ったら安っぽくなってしまうけど、同類同士で安心を求めあったというか。
 タイトルの『ファーストラヴ』って、何を意味してるのかなぁ。環菜ちゃんの?由紀の?迦葉の?このタイトルとこの表紙は、ちょっと損してる気がするなぁ。より多くの人に知ってもらいたい虐待の形なのに、こんな不穏な作品を好む人には訴えかけが薄いし、恋愛物を好みそうな人には内容が合わないと思う。
 あと、主要人物が美形だらけなのはいただけない。環菜ちゃんがついつい橋本環奈ちゃんで脳内再生されてしまったのは置いといて、不細工だったら男性に押し切られる経験はそうなかっただろうから美形設定なのは必然。主人公の義弟が優秀で飄々としたイケメンっていうのも、ありがちかな。殺された環菜ちゃんの父親も血は繋がってないながらイケメンで、「私」も我聞さんから一目惚れされたって辺りで辟易し始め、実は我聞さんもメガネを取ると超イケメンときて、何だかなぁって思う。深い話なんだけど、安いテレビドラマみたいな締め括りで微妙。作者のコンプレックス?それとも、過剰反応してしまってる私がコンプレックス?
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『君の名は』  加納 新太  原作:新海 誠
2019-01-09 Wed 00:24
小説 君の名は。 (角川文庫)
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 映画『君の名は。』のアナザーサイドストーリー。


「ブラジャーに関する一考察」
 東京に住んでいる男子高生・立花瀧は、時々朝起きると岐阜県の山奥に住む女子高生・宮水三つ葉と体が入れ替わる。女子の体に戸惑いつつ次第に1日をやり過ごすことに慣れていくが、女子として、または堅苦しい宮水家長女としては不自然極まりなく、携帯のメモ機能でやり取りする三葉を怒らせてばかりいた。


「スクラップ・アンド・ビルド」
 元の土建屋「勅使河原建設」の跡取り息子である勅使河原克彦は、町長である三葉の父と癒着している。その事に嫌気がさしつつも、責任や恩義で跡を継がざるを得ない状況を受け入れていた。勅使河原は、幼馴染の三葉と早耶香が町を出たいと愚痴る様子を静かに見守っていたが、オシャレなカフェがないなら作ればいいと提案する。


「アースバウンド」
 最近時々様子がおかしい姉を、不審に思う小学生の四葉。特に自分のおっぱいを揉んでいるのが疑問だった。
 ある日、ふとした拍子に自分と姉が作った口噛み酒は本当に酒になっているのか疑問に思い、自分が作った方の口噛み酒をこっそり味見してみた。
 その日のお神楽の稽古の時、四葉は突然意識が遠くなり、気が付いた時には知らない大人の女性の体に入っていた。目の前の女性にお神酒に悪戯をしたことを諭される。


「あなたが結んだもの」
 映画の舞台より20年前。歴史文化学を研究していた溝口俊樹は、宮水神社を訪ねた。宮司の娘・宮水二葉によると、宮水神社には竜退治の伝説が残っていると言う。俊樹は糸守町にある隕石湖から、竜とは隕石のことではないかと推測した。
 研究のためと何度か二葉と会ううちに、惹かれ合った二人は結婚し、二人の娘が生まれた2年後、二葉が病死した。二葉の死の悲しみが怒りとなり、二葉が入院も大病院への転院も拒んだのは宮水がムスビと呼ぶ人々の関係性を恨んだ。この町を根底から変える決意をし町長に立候補、当選した。
 20年後、隕石が糸守町落ちようとした時、三葉の姿をした別の人間が俊樹を訪ねてきた。


 散々話題になり尽くしてから映画を観て、浅く観ると面白い、深く考えると行き詰ってつまらない映画だと思った。何かもうちょっと深いとこがわかるかなぁと思ってアナザーサイドとやらを読んでみたんだけど、これまた浅い。あくまで別視点の話なだけで、そこに深みとか映画に描かれなかった設定とか疑問の答えとかは書いてなくてがっかり。
 そもそも読み物としてもいまいち面白くない。映画『君の名は。』のテンポあるストーリー運びが好きで、そこに主題歌の『前前前世』の疾走感がマッチしてて良かったんだったけど、この小説の作家さんは思考描写が堂々巡りしてるタイプ。うだうだダラダラと続くモノローグがつまらない。映画にはない点を描こうとしすぎてるせいなのか?この作家の特徴なのか?とにかく読んでてつまらなかった。
 結局『君の名は。』って、タイムスリップなのかパラレルワールドなのか。宮水家の女性に起こる体の入れ替わりは何なのか。何のために忘れていくのか。記憶だけじゃなく記録も消えていくのはなぜか。三葉と瀧に2年のタイムラグが起こったのはなぜか。 そして私的一番の疑問、平成生まれの若者が相手に名前を尋ねる時に「君の名は」なんて聞くか?「名は」って!
 ていうこの辺の疑問が宙ぶらりん過ぎる。不思議な力が謎のままなのは、まあいい。忘却の設定がやけに悲しく感じるのも、きっと原作者の思う壺なんだろう。でもタイムスリップなのかパラレルワールドなのかはかなり重要じゃない?まあ、パラレルっぽいかなと薄々思ってはいるんだけど、それだと別の並行世界では三葉達は死んでることになる。そう思いたくなくて、私はタイムスリップであって欲しいと思ってる。
 あれ?最終的に映画の感想になっちゃった。
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『カッコウの卵は誰のもの』
2018-12-18 Tue 11:23
カッコウの卵は誰のもの
東野 圭吾
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 元スキーヤーの緋村のもとに、娘が所属する新世開発社のスポーツ科学研究所副所長・柚月が訪ねてきた。スポーツ選手の才能を発掘するために科学的に研究している柚月は、ある種のスポーツに適した遺伝子パターンを発見した。スキー界期待のホープである緋村の娘・緋村風美がその遺伝子パターンを持っていることが判明したため、研究のために緋村自身の遺伝子パターンを調べさせて欲しいと言う。
 努力こそが才能に勝ることを理由に断った緋村。実は風美は緋村の子供ではなかった。風美が2歳の時に自殺した緋村の妻の遺品から、風美は緋村夫妻の子ではないことを調べ上げていた。19年前に起こった新生児誘拐事件と関りがあると思われるが、警察に相談することが出来ないまま月日が過ぎていた。
 一方、才能にも容姿にも恵まれた風美にスポーツライター達が注目し始めていたが、彼女を試合の出場メンバーから外すよう書かれた脅迫状が届いていた。ワールドカップを控えた彼女を動揺させないよう、柚月が広報担当と称して風美の身辺を監視することとなる。2通目の脅迫状が届いた直後、風美が乗る予定だったシャトルバスが何者かによってブレーキに細工されて事故を起こし、風美のファンを名乗る初老の男が重体を追う。
 その初老の男は風美を訪ねる前に父親の緋村を訪ねており、風美が天涯孤独の知人女性によく似ているためにDNA鑑定をさせて欲しいと言っていた。


 緋村の葛藤、風美の出生の謎、意識不明の初老男性の目的、脅迫状と事故の犯人の目的、服従させられている男子高生・伸吾、柚月の有能さなどなど。成り行きが気になる設定盛りだくさんで、東野ワールドをいつも通りワクワク読ませてもらった。でも、ラストがいつもに比べて弱いかなぁ。普通に面白い作品だと思うけど、「東野圭吾ブランド」とでも言ったらいいのか、普通の面白さを遥かに超える読後感を期待してしまう。読者を振り回しておいてラストでズシンとくる感じ来るはず、きっと来る・・・、あれ?そこまでない、みたいな。いつもより感動が弱かった。
 例えば風美の遺伝子Fパターンの秘密。父娘で血は繋がってないのに同じスポーツが得意な理由には必然があるはず、だって東野さんだもん・・・だと思って読み続けたけど、緋村の妻・智代に新体操の才能を持つ友人がいたのは偶然に過ぎないみたいでちょっとがっかり。期待し過ぎたのは自覚してるけど。
 バスに細工した動機もちょっとありがちというか、手垢が付いた感じがあるかな。そして、上条文也にはどうにかしてドナー提供を受けて生きて欲しかった。絶対、真実を受け入れる風美の傷心とそれを上回る生命の感動が待ってると思ったのに。
 さすがだと思ったのは、「カッコウの卵」の意味。風美を育ててきた緋村と、カッコウの托卵の話を掛けてあると思ったら大間違いだった。音楽に興味があったのに、遺伝子パターンによって才能を見出されてスキーの訓練を受けさせられる高校生の鳥越伸吾。受け継がれた才能を「カッコウの卵」とし、その才能は伸吾自身の物だから伸吾の好きにさせるべきという想い。私も人の親だから、子の才能を見出すことには興味ある。調べてわかるものならぜひ知りたいけど、それが子にとって幸せとは限らない。伸吾に音楽の才能がなくて鳴かず飛ばずのインディーズのまま壮年期半ばまで行ってしまう手痛い人生の可能性だって大きい。でも大人が先回りせず、子はきちんと自分の意志で考え、行動すべきなのかな。うーん、理想論だけどね。
別窓 | [は行の作家]東野 圭吾 | コメント:0 | トラックバック:0 |
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